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はたのこうぼうのアメリカ映画研究会#3
「ヒッチコック――『交換』から『交換不可能』へ(前編)」

2014年1月13日(月・祝)
13:30〜 参考上映『海外特派員』
15:45〜 発表 高橋知由(脚本家)
 
かつてクロード・シャブロル=エリック・ロメールが『ヒッチコック』のなかで指摘し、後にジル・ドゥルーズが『シネマ』において二人の指摘を支持したように、ヒッチコックの多様なフィルモグラフィーを貫く主題の1つに「交換」が挙げられる。それは、登場人物間の「罪」や「責務」の交換であることもあれば、単に物理的な交換のこともある。そしてそれらは複雑に絡み合っている。一見して、ヒッチコックの作品世界において交換できないものはないように思われる。しかし、その終わりなき交換の果てに―—或いは、その果てから還ってきたところで―—突如として、「交換不可能」な物事が立ち現れる。交換可能性から交換不可能性へ。その流れは、一方で、古典的ハリウッド映画と(ハリウッドのみならず)現代映画を繋ぐ線となるだろう。
 
濱口竜介、高橋知由、野原位が2013年に結成した脚本ユニット「はたのこうぼう」のアメリカ映画研究会の不定期発表会、その第3回。研究会は全体として、フリッツ・ラング、アルフレッド・ヒッチコック、エルンスト・ルビッチを取り上げる。
 
[参考上映]『海外特派員』 Foreign Correspondent
(アメリカ/1940/120分/16mm)
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:チャールズ・ベネット、ジョーン・ハリソン
撮影:ルドルフ・マテ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ジョエル・マクリー、ラレイン・デイ、ジョージ・サンダース、ハーバート・マーシャル
第二次世界大戦前夜、欧州全面戦争が始まるか否かのキーマンとなる外交官の同行を探る為、アメリカの新聞社からヨーロッパに送り込まれた海外特派員が主人公である。この主人公は外交官が公衆の面前で暗殺されるのを目撃するが、暗殺された外交官が実は偽者の「替え玉」であることも知ってしまう。戦争を止めるため行方不明になった本物の外交官を探すとともに、一連の事件を引き起こしたナチスのスパイ一味から命を狙われる主人公。反ナチスのプロパガンダ的側面を持っているにも関わらず、ナチスのゲッペルスが好んで観たとも言われている。公開時既に第二次大戦は勃発しており、主人公たちが開戦を阻止出来ないのは自明であるが、クライマックスのカタルシスが予め封印されていることで、却ってヒッチコックによる「交換」の主題を浮かび上がらせている。
 
発表者:高橋知由
1985年生まれ。日本大学大学院芸術学研究科修士課程修了(映像芸術専攻)。大学在学中からシナリオを学び、卒業後、自主制作映画に参加する傍らホラー系OVやウェブ配信ドラマなどのシナリオを書く。現在は映画監督の濱口竜介、野原位とともに活動拠点を神戸に移している。脚本作に『不気味なものの肌に触れる』(監督/濱口竜介)。

《参加費》 1500円

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