プログラムPROGRAM

ロメール&シャブロル『ヒッチコック』刊行記念
ひとはどうしてヒッチコック主義者でありうるのか
2014年12月27日(土)・28日(日)

ヒッチコック、新たな波
映画史を発見することからヌーヴェル・ヴァーグは始まり、ヒッチコック(とホークス)を再発見することを通じて「作家主義」は標榜された。推理ものの通俗的娯楽映画と思われていたヒッチコックのなかに、映画のみが実現し得る形式(フォルム)の体系によって形而上学的主題が周到に仕組まれていることを解き明かしたのが、批評家時代のロメールとシャブロルによる1957年の挑発的書物『ヒッチコック』である。当時ロメール37歳、シャブロル27歳。その二人も既に亡く、ヒッチコック作品が上映・放映される機会もめっきり減った昨今であるが、原著刊行から半世紀以上の後に不意に登場することになった日本語訳『ヒッチコック』を受けて、訳者2氏によるレクチャーと、若き監督と脚本家とを交えたトークセッションも加え、あらためてヒッチコックの画面に、視覚の愉楽とサスペンスに、その作劇術と演出術に、つまりは「映画術」に、目を凝らす好機になればと願う。(éditions azert)

出版案内
本イベント開催時に先行発売!
『ヒッチコック』
エリック・ロメール&クロード・シャブロル=著
木村建哉・小河原あや=訳
インスクリプト、2015年1月10日刊行
世界初のヒッチコック研究書、本邦初訳。ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家二人が、刊行時までのヒッチコック全作品を仔細に論じ上げる、1957年「作家主義」のマニフェスト。秘密と告白、悪の誘惑、精神かつ道徳としてのモラル、堕罪と救済のカトリシズム、同時代的政治性、そしてサスペンス。ヒッチコック映画の精髄に迫る一冊。「ヒッチコックは、全映画史の中で最も偉大な、形式の発明者の一人である」(「結論」より)。

12月27日(土)17:20〜(終了予定18:50)
レクチャー「ヒッチコック映画の見方」木村建哉+小河原あや

12月28日(日)15:30〜(終了予定17:00)
トークセッション「ヒッチコック映画の撮られ方」濱口竜介+高橋知由+木村建哉+小河原あや

[参考上映]
「三十九夜」The 39 Steps
(1935/86分/16mm上映)
製作:マイケル・バルコン、イヴォール・モンタギュー
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:チャールズ・ベネット
台詞:イアン・ヘイ 原作:ジョン・バカン『三十九階段』
撮影:バーナード・ノウルズ
出演:ロバート・ドーナット(リチャード・ハネイ)、マデリン・キャロル(パメラ)、ゴッドフレー・タール(ジョーダン教授)、ペギー・アシュクロフト(クロフターの妻)
ロメール&シャブロルは、『殺人!』、『リッチ・アンド・ストレンジ』とともに本作をヒッチコックのイギリス時代の三本の最高傑作の一つに挙げている。追われつつ追う、というその後のヒッチを代表するパターンを確立した記念碑的作品である。主人公ハネイは、イギリス諜報部員である女性を偶然匿うが、彼女は謎の組織「三十九階段」に殺される。ハネイは殺人の濡れ衣を着せられ、警察に追われつつ、その過程で知り合ったヒロインとともに、「三十九階段」の陰謀を阻止し、その正体を明らかにしようとする。「この物語の中でヒッチコックを魅了したのは、それが非常に正確に、犯罪もののプロットを純粋なままに体現しているということだ」。

「海外特派員」Foreign Correspondent
(1940/120分/16mm上映)
製作:ウォルター・ウェンジャー
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:チャールズ・ベネット、ジョーン・ハリソン
台詞:ジェームズ・ヒルトン、ロバート・ベンチリー 撮影:ルドルフ・マテ
出演:ジョエル・マックリー(ジョン・ジョーンズ)、ラレイン・デイ(キャロル・フィッシャー)、ハーバート・マーシャル(スティーヴン・フィッシャー)、ジョージ・サンダース(フォリオット)
主人公のアメリカ人ジャーナリストは、ナチスのスパイたちによって誘拐されたオランダ高官の行方を追うが、自らもスパイに追跡され殺されそうになる。スパイの首領は、ヒッチコック好みの、エレガントで魅惑的な悪役だがその正体は……。オランダ、イギリス、大西洋上と舞台を移しつつ「波瀾に富んだ、ユーモラスなあるいは残酷な山場がいくつか続き、そのトーンは『三十九夜』を思い出させる」。一方で「ハリウッドのメカニズムは、ヒッチコックにとって貴重な助けであった。イギリスだったならば、例えば、殺人者が山高帽と雨傘の大群を掻き分けて進むテロの場面を、同じように見事には演出できなかっただろう」。

「汚名」Notorious
(1946/102分/16mm上映)
製作:アルフレッド・ヒッチコック、バーバラ・キオン
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ベン・ヘクト
撮影:テッド・テツラフ
出演:イングリッド・バーグマン(アリシア・ヒューバーマン)、ケイリー・グラント(デヴリン)、クロード・レインズ(アレクサンダー・セバスチャン)
ヒロインであるアリシアの父は、ナチスのスパイとしてアメリカの裁判所で有罪判決を受ける。ヤケになって堕落した生活を送っていたアリシアは、政府の捜査官デヴリンから、汚名を雪ぐために協力するよう依頼される。父の友人たちであるナチスの残党の巣窟への潜入捜査だ。予想外にもヒロインは、残党たちのリーダーから求婚され受け入れざるを得なくなる。愛し合いながらもそれを認めないままに、アリシアとデヴリンは捜査を続けるが……。「主人公二人の不幸は、互いに対する先入観の犠牲者である彼らが、救済の「言葉」を発するのを拒むことに由来する。彼らは、すべてのヒッチコック映画の鍵である(…)告白の徳を理解していないのである」。

 
作品紹介:木村建哉(引用はすべてロメール&シャブロル『ヒッチコック』から)
 
協力:éditions azert

《料金》1日通し
一般2000円 学生・シニア1800円 会員1800円 学生会員・シニア1500円
《割引》2日続けて参加の方は2日目200円割引

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