プログラムPROGRAM
2015 6

西独・日本の秘録ドキュメンタリー

2015年6月5日(金)〜7日(日)

1962年にヤコペッティの『世界残酷物語』が世界的に大ヒットし、後に「モンド映画」と呼ばれる作品群が騒がれることになったが、それ以前から秘境もの、残酷もの、性医学もの、歴史ものなど数多くのドキュメンタリー映画が製作され、壮絶な題名や誇大な広告とともに一般映画館で公開されていた。今回は50年代、60年代に西ドイツと日本で作られた作品を特集上映。

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chitonamida02「血と涙と墓場」

(日本/1966/72分/モノクロ/16mm)
構成編集:伊勢長之助 監修:大宅壮一
取材:井出昭、中村清美 音楽:八洲秀章
解説:杉山真太郎

約二年十カ月にわたり、ドミニカ、キューバ、アラブ、イスラエル、インド、パキスタン、インドネシア、中国、ソ連、ベトナムを取材、動乱の地の現状を平和への希求を込めて描く長編記録映画。児童劇映画『ドレミハ先生』(1951)に主演したり、数々の流行歌や校歌の作曲などで知られる八洲秀章が音楽を担当。

 

13kaidan02「ニュールンベルクの戦犯 13階段への道」
Der Nurnberger Prozess
(西ドイツ/1957/67分/モノクロ/16mm/日本語発声&字幕)
監督:フェリックス・フォン・ポドマニツキー
日本版解説:佐々木敏全

第二次世界大戦の終了後、ドイツによって行われた戦争犯罪を裁く国際軍事裁判「ニュールンベルク裁判」が開かれたが、その裁判記録を軸に1933年のナチス政権獲得から45年の敗戦までの12年間のドイツファシズムの歴史を描き出す。冒頭の絞首刑や戦後ユダヤ人強制収容所など、残酷な映像の数々を提示することにより平和の尊さを浮き彫りにする。

 

seinohokoku01「W・ブルグハルト教授の性の報告書
―黒い血の恐怖―」
Seitenstrassen Der Prostitution
(西ドイツ/1967/85分/モノクロ/16mm/日本語発声&字幕)_
監督:ゲルハルト・アンマン
撮影:ペーター・バウムガルトナー
音楽:フランク・ファルドル
日本語版監修・解説:木崎国嘉

チューリッヒのW・ブルクハルト教授とオスロのN・ダルンボルト教授の共著『現在の性病』というレポートにもとづいて製作されたセミ・ドキュメンタリー。第一部は、写真および図表を豊富に使用し、性病の恐ろしさ、広がり方を示す。第二部では、港の労働者と売春婦、トラック運転手とヒッチハイクの娘、同性愛、海外旅行、ティーン・エージャーの乱交パーティ、浮気、フリーセックス、などのエピソードを連ねて、性病がどのような径路で感染して行くかを示す。

 

hadakanotairiku01「アマゾンの魔境 ―裸の大陸―」Hito Hito
(西ドイツ/1958/80分/カラー/16mm/日本語発声)
監督:ハンス・エルトル
撮影:モニカ&ハンス・エルトル

ヒトラーのキャメラマンと言われ、レニ・リーフェンシュタールの『民族の祭典』(1938)のメイン・キャメラマンとしても知られるハンス・エルトルと、その娘のモニカ・エルトルら探検隊が、ボリビア奥地に入りアマゾン流域の自然や人々を記録したドキュメンタリー。生まれたままの姿で生活するシリオノ族という部族の生活風習、探検隊との交流を中心に描かれる。上映プリントの経年によるカラー褪色が残念だ。

《料金》入れ替え制1本あたり
一般900円 学生・シニア800円 会員800円 学生・シニア会員700円
《割引》当日に限り2本目は200円引き

没後30年 加藤泰監督の幻の映画特別上映
2015年6月19日(金)〜21日(日)
これまで上映プリントの状態が悪く永らく幻の映画となっていた『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』のネガが発見され、シネマヴェーラ渋谷の特集「祝・芸能生活50周年 安藤昇伝説」のためにニュープリントが作成された。折しもこの6月17日は加藤泰の没後30年にあたる。これはなんとしても神戸で上映したいという想いがついに実現した。併映はハムレットの翻案で大川橋蔵主演『炎の城』。

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トークイベント
6月20日(土)15:15〜 参加費1000円
山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『マキノ雅弘―映画という祭り―』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)などのインタビューや編著が多数ある。最新刊は『日本映画時評集成2000-2010』。

幻の加藤泰映画が没後30年に蘇る

山根貞男(映画評論家)

 加藤泰没後30年——この言葉を聞いたとき、しみじみするよりも前に愕然とした。日頃、歳月を数える習慣がないから意表をつかれたのである。たしかに加藤泰が世を去ったのは1985年で、思えば、その翌年、わたしは今に続く日本映画時評の連載を始めたわけではないか。ああ、馬齢を重ねるとはこのことだ……。
 いや、私的な感慨を振り払い、そんな2015年に、幻の『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』が蘇ったことを喜ぼう。永らく上映プリントがなく、ネガが行方不明で、VHSもDVDも出ていなかったのが、ネガが発見され、ニュープリントで見られるのである。
 かつて加藤泰監督、安藤昇主演の映画が3本、立て続けに撮られた。1966年の『男の顔は履歴書』と『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』、そして67年の『懲役十八年』である。このうち『男の顔は履歴書』は、少し前、神戸映画資料館で上映された。あのとき見た諸氏は、あの映画に渦巻く活気、ヤバイほどの面白さに、半世紀という歳月などないかのように魅せられたに違いない。
 さて、『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』はどうか。いっさいの予断を抜きに、画面に接していただきたい。ただひとことだけ、安藤昇のほほえみが素敵ですよ、とひそかに囁いておこう。
 もう1本は大川橋蔵主演の『炎の城』。1960年の時代劇版「ハムレット」として知られるが、めったに上映されない。
 この2本立てはじつに珍しい。神戸だからこそ成り立つプログラムであり、神戸は加藤泰の生地である。
ネガ発見のいきさつ、2作品の魅力についてなど、触れるべきことは多々あるが、それは神戸で聞いていただくとしよう。

 

©1966松竹株式会社

©1966松竹株式会社

「阿片台地 地獄部隊突撃せよ」
(1966/92分/カラー/35mmニュープリント)
製作:ゴールデンぷろ 監督:加藤泰 原作:紙屋五平
脚本:国弘威雄、加藤泰 撮影:川崎新太郎
出演:安藤昇、ペギー・潘、南原宏治、佐々木孝丸、菅原文太、久保菜穂子、伊沢一郎、左卜全、砂塚秀夫

加藤泰は松竹大船に招かれ安藤昇を主演に『男の顔は履歴書』(1966)を監督した後。安藤のゴールデンぷろで『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』(1966)を、さらに東映で『懲役十八年』(1967)を監督。これらの三作品は戦中・戦後三部作と呼ばれ、ファン必見の映画となっている。中国の北支戦線で地獄部隊員となった陸軍少尉と、日本軍による阿片栽培を憎む美しい中国娘との男女の物語を軸に、八路軍(パロ)や日本軍との軋轢の間で苦しみ生きた人々の姿を満州映画協会啓民映画部に所属した加藤監督が大陸経験を活かして描く。

 

©東映

©東映

「炎の城」
(1960/98分/カラー/35mm)
製作:東映 
監督:加藤泰 脚本:八住利雄

撮影:吉田貞次 音楽:伊福部昭
出演:大川橋蔵、三田佳子、大河内傳次郎、高峰三枝子、明石潮、黒川弥太郎、薄田研二

シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の翻案で、『緋ざくら大名』(1958)、『紅顔の密使』(1959)、『大江戸の侠児』(1960)に続く加藤監督による橋蔵主演の第四作目。遣唐使として唐に渡っていた王見城の跡継ぎが、留学から帰ってみると叔父が城主の父を毒殺し母を娶って独裁権力を振るっていた。狂人を装い復讐する機会を窺う橋蔵の演技が見どころで、最後は農民一揆の大群が城内に流れ込み城が炎上、ついに復讐が遂げられるという展開。ハムレットのような結末にならなかったのは、会社側がファンの希望に沿うよう、悲劇的な結末を避けるよう指示したからと言われている。「別冊近代映画」の特集号で加藤監督は「怒りと憎しみの中で苦悩する若い魂……を橋蔵さんは力いっぱい演じぬいてくれるものと私は大きな期待を寄せています」と抱負を述べている。

 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1300円 学生・シニア1200円 会員1200円 学生・シニア会員1100円
《割引》当日に限り2本目は100円割引
*招待券のご利用不可

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。