プログラムPROGRAM
2016 10

katotai01加藤泰監督生誕100年 初期作品集

今年は加藤泰監督生誕100年の記念すべき年。加藤監督が亡くなられたのは1985年6月17日のことだったが、もうあれから31年が過ぎてしまったとは、信じられないくらい時の経過は早いものである。映画を愛していた加藤監督が生きておられたら、現在の映画状況をどう考えておられるのかを聞いてみたかった。
神戸映画資料館では加藤監督の偉大さを再確認するために、35ミリニュープリントで甦った『剣難女難』『清水港は鬼より怖い』『潜水艦』の3作品を上映する。この秋は京都文化博物館やシネ・ヌーヴォでも特集上映が企画されているので併せてご覧いただければ嬉しいところである。(安井喜雄)

 

第一週
2016年9月24日(土)・25日(日)

「剣難女難 第一部・女心流転の巻」(1951/70分/35mm)
「剣難女難 第二部・剣光流星の巻」(1951/71分/35mm)
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宝プロ・新東宝提携作品 製作:高村将嗣
監督:加藤泰 脚本:木下藤吉 原作:吉川英治 撮影:藤井春美 音楽:高橋半
出演:黒川弥太郎、市川春代、堀正夫、加賀邦男、阿部九州男、澤村國太郎、東龍子

加藤泰監督の記念すべき劇映画第一作で、吉川英治原作の痛快娯楽時代劇。加藤泰は「チャンバラ映画への初心とウンチクを、この前後篇一万三千呎のチャンバラにつぐチャンバラへ、唯一筋に、何の衒いもなく傾けて、脇目もふらず撮りあげたと言えるのを、今でも嬉しく思っている」と回想している。一部二部ともに東京国立近代美術館フィルムセンターでの特集上映のため、権利者である国際放映の協力のもと神戸映画資料館保存16ミリプリントからブローアップして作製したニュープリントを上映。

[第一部]主人公、福知山藩の春日新九郎は剣が全くダメな武士。兄の重蔵が宮津藩との剣道試合で自斉に破れため、兄共々藩を追われた。許嫁・千浪に横恋慕する玄蕃に命を狙われ、それを助けた女に惚れられるなど紆余曲折。江戸の道場に入門し剣に励むが、ある日、宿敵の自斉が現れ試合するも惨敗。その後、将軍家綱の側室の姉・お光の方に見初められ愛欲に溺れる。

[第二部]玄蕃に父を殺された千浪が、兄の重蔵とともに江戸に出てきた。新九郎は、お光の方から離れ賭場を転々とし、巷では「御曹子の新九郎」と呼ばれていた。千浪と重蔵に出会えた新九郎は心機一転、信州の山奥で剣の修行に励む。お光の方の取り計らいで宿敵・自斉との御前試合が実現。千浪と病に伏した重蔵は剣の達人となった新九郎の勝利を祈った。

 

第二週
2016年10月1日(土)
shimizuminato01「清水港は鬼より怖い」
(1952/79分/35mm)
製作:宝プロ 監督:加藤泰
脚本:木下藤吉、友田晶二郎 撮影:近藤憲昭
音楽:高橋半 美術:鈴木孝俊
出演:大泉滉、林加壽惠、桂春団治、広沢虎造、永田とよ子、加東大介、澤村國太郎、林田十郎、芦の家雁玉、鳳衣子、美ち奴、山茶花究、坊屋三郎
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

「宝」の看板がかかった茶屋で繰り広げられる奇想天外なハチャメチャ・コメディー・ミュージカル。江戸の老舗の若旦那が侠客に憧れて次郎長の子分になるという次郎長もの映画だが、二代目広澤虎造や二代目桂春團治、歌手の美ち奴ら多彩な芸人が登場し歌って踊る。娯楽映画を志向する加藤泰ならではのサービス精神に満ちた作品。フィルムセンター所蔵35mmオリジナルネガの欠落部を、神戸映画資料館保存16mmプリントを35mmブローアップして補完作製した現存する最長版での上映。なお、メイン・タイトルは『虎造の清水港』と改変されている。

 

sensuikan01併映「潜水艦」
(1941/18分/35mm)
製作:理研科学映画 後援:海軍省
演出:西尾佳雄 原案:八木保太郎 脚本:加藤泰通
撮影:笠間公夫 音楽:永岡研介
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

潜水艦に対する国民の認識を深めるため海軍省の絶大なる援助の下に製作された我国はじめての本格的な潜水艦映画。本物の潜水艦を使用、呉の海軍潜水学校を舞台に潜水艦の活動を縦横に描きその機能を科学的に解説したもの。加藤泰が初めて監督した作品だが、映画法下で監督として登録されていなかったため、クレジット上では西尾佳雄が演出となっている。劣化の激しかったフィルムセンター所蔵16mmプリントから復元した35mmプリントによる関西初上映。

 

協力:国際放映、東京国立近代美術館フィルムセンター

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円 会員1000円 会員学生・シニア900円


[貸館]韓国映画週間
2016年10月6日(木)〜9日(日)
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beyondtheyears_w「千年鶴」Beyond the Years
2007年作 106分 監督:イム・グォンテク
出演:チョ・ジェヒョン(ドンホ役)、オ・ジョンヘ(ソンファ役)
他人同士であるが、歌い手である養父に預けられて姉弟になったドンホ(チョ・ジェヒョン)とソンファ(オ・ジョンヘ)。お互いに歌と太鼓を合わせながら育ってきた二人は、いつの間にかお互いに切ない心を持つようになる。しかし、心の恋人をお姉さんと呼ばなければならない苦しみに耐えられなくなったドンホは家を出てしまう。それから数年後、養父が亡くなり、目が見えなくなったソンファは行方不明に…。ソンファを見つけて再び彼女の歌声に太鼓の拍子を合わせながら、彼女の目になってあげたいドンホは、愛しいひとの跡を探すために旅立つ。

 

 
 
 

hwang-jin-yi-04_w「黄真伊」Hwang Jin-yi
2007年作 141分 監督:チャン・ユンヒョン
出演:ソン・ヘギョ(ファン・ジンイ役)、ユ・ジテ(ノミ役)
女は地、賤民は獣だと言われていた16世紀に両班の家で生まれ育ったジニ(ソン・へギョ)は、出生の秘密が明かされてから最も賤しいとされる妓生の身分を自ら選択する。人間として一番底の身分にまで落ちてしまったが、士大夫さえもあこがれる最高の女性になったジニ。彼女の側には、友人であり、奴隷であり、初の男であるノミ(ユ・ジテ)がいた。ノミは反逆者として手配され、ジニは自分のすべてをかけた運命の選択をおこなう。

 

happulife_w「楽しい人生」Happy Life
2007年作 112分 監督:イ・ジュンイク
出演:チャン・グンソク(ヒョンジュン役)、ジョン・ジンヨン(ギヨン役)、キム・ユンソク(ソンウック役)、キム・サンホ(ヒョクス役)
いつも顔色をうかがうことになれたプータローのギヨン(ジョン・ジンヨン)、負担になるほど勉強ができる子供を持ったせいで昼は宅配、夜は代理運転手として精一杯の中年ソンウック(キム・ユンソク)、外国に妻と子供達を留学に行かせた自分を誇らしく思っているヒョクス(キム・サンホ)。彼らは、20年前に解散したロックバンド“活火山”のメンバーだ。リーダーであったサンウの葬式の後、さえない人生を活き活きとしてくれる“活火山”を再結成することを決心する。

 

 

主催:駐神戸大韓民国総領事館、韓国国際交流財団

《料金》 入場無料
※先着順無料入場(満席時入場不可) ※各回上映開始30分前から整理券配布


特別プログラム[参加無料]
1930年代の韓国映画と日本映画にみるアクション
2016年10月29日(土)
近年韓国で発見された無声映画『青春の十字路』と日本のアクション映画『争闘阿修羅街』を比較検討する試み。
『青春の十字路』は韓国映像資料院主任研究員の鄭琮樺(チョン・ジョンファ)氏の解説、『争闘阿修羅街』は神戸大学の板倉史明准教授の解説で読み解く。なお、『争闘阿修羅街』は天宮遥氏による生伴奏付き。
 
13:30〜
「青春の十字路」
청춘의 십자로
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(韓国/1934/54 72分/無声/デジタルベーカム上映)製作:金剛キネマ社
脚本・監督:安鍾和 撮影:李銘雨
出演:李源鎔、申一仙、金蓮實、朴淵
デジタルベーカム提供:韓国映像資料院
故郷を離れてそれぞれ上京した兄妹の視点から都市生活の断面を描き出した無声映画。2007年に韓国内でオリジナルネガが発見され、韓国映像資料院の手で復元されたもの。監督の安鍾和(アン・ジョンファ、1902-1966)は羅雲奎とともに釜山の朝鮮キネマで俳優として活動した後、監督としてデビュー。著書『韓国映画側面秘史』(春秋社、1962年)は、日本語に翻訳され『韓国映画を作った男たち:一九〇五―四五年』(長沢雅春訳、青弓社、2013年)として出版されている。羅雲奎の『アリラン』でも主演を務めた女優・申一仙(シン・イルソン)をはじめ、金蓮實(キム・ヨンシル)、李源鎔(イ・ウォンヨン)ら創成期における無声映画の名だたる俳優たちが登場している。「日韓国交正常化50周年 韓国映画1934-1959創造と開花」(於/東京国立近代美術館フィルムセンター、福岡市総合図書館)に次ぎ今回が関西初上映。
 
14:50〜
「争闘阿修羅街」

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(1938/36分/無声/16mm)大都映画
監督:八代毅 原作・脚本:吉村操 撮影:下村晴夫
出演:ハヤブサヒデト、大岡怪童、大河百々代、高村栄一、松村光夫
フィルム提供:マツダ映画社 生伴奏:天宮遥(ピアニスト、シンガーソングライター)
新聞記者が悪党の手から発明品と研究者の令嬢を救い出すアクション映画。三流映画として人気があった大都映画(巣鴨撮影所)の数少ない残存作品。

レクチャー 15:35〜16:20
鄭琮樺(チョン・ジョンファ)
(韓国映像資料院主任研究員)
板倉史明(神戸大学准教授)

《参加費》無料

 
 

新発掘韓国映画初上映
2016年10月29日(土)
2014年に神戸映画資料館で35mmのポジフィルムが見つかり、韓国映像資料院が復元し話題となった『鴎(原題・海燕)』の関西初上映。今回は東京国立近代美術館フィルムセンター提供による日本語字幕を付して上映。
 
16:40〜
「鴎」
갈매기(海燕)
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(韓国/1948/74分/35mm)芸術映画社
監督:李圭煥 脚本:李雲龍 撮影:梁世雄 美術:金晩炯
出演:南美林、金東圭、朴學、趙美鈴
日本語投影字幕提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
海辺の感化院に赴任した女性教師が少年たちの更正に情熱を注ぐ。同年に製作された清水宏監督の『蜂の巣の子供たち』(1948)と同様に、世の中から見放された子供を主人公にした作品で、無声映画時代の名匠・李圭煥(イ・ギュファン)監督作。解放後初の文芸映画で、韓国の有名女優・趙美鈴(チョ・ミリョン)のデビュー作でもある。「日韓国交正常化50周年 韓国映画1934-1959創造と開花」(於/東京国立近代美術館フィルムセンター、福岡市総合図書館)に次ぎ今回が関西初上映。

《料金》
一般1400円 学生・シニア1200円 会員一般1200円 会員学生・シニア1000円


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。