プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2017

神戸クラシックコメディ映画祭2017
2017年1月7日(土)〜9日(月・祝)
 

Aプログラムショート・コメディのマエストロ
hauntedspooks01「化物退治」Haunted Spooks
(1920/29分[16コマ]/16mm)◎
ロリン・フィルムズ=パテ・エクスチェンジ作品
製作:ハル・ローチ
監督・脚本:アルフレッド・J・グールディング、ハル・ローチ
出演:ハロルド・ロイド、ミルドレッド・デイヴィス、ウォーレス・ハウ

「なかなか冴えてる」Crazy Like a Fox
(1926/32分[16コマ]/16mm)
crazy_like_a_fox01ハル・ローチ・スタジオ=パテ・エクスチェンジ作品
製作:ハル・ローチ 監督:レオ・マッケリー
監修:F・リチャード・ジョーンズ
脚本:H・M・ウォーカー、チャールズ・アルフィン、チャーリー・チェイス
出演:チャーリー・チェイス、マーサ・スリーパー、ウィリアム・V・モング

「デブ君の漂流(旧題:デブと海嘯)」
Fatty and Mabel Adrift (1916/39分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー=トライアングル・ディストリビューティング作品
製作:マック・セネット 監督・脚本:ロスコー・アーバックル
出演:ロスコー・アーバックル、メーベル・ノーマンド、アル・セント・ジョン、犬のリューク、フランク・ヘイズ、ウェイランド・トラスク

独自のキャラクター性を模索する姿が初々しいハロルド・ロイド作品。若き日のレオ・マッケリー監督が最も尊敬していたという夭折のコメディアン=チャーリー・チェイスとの最強タッグ作品。そして、抒情的な画面創りとスラップスティックを調和させた伝説のコメディアン=ロスコー・アーバックル初期の傑作(1980年代末に発見・復刻されたノーカット染色版)を組み合わせた豪華三本をここに! 幻惑と様式美を贅沢に堪能する無声映画の至宝プログラムです!(新野)

 

Bプログラムローレル&ハーディ
flying_deuces01「天国二人道中」The Flying Deuces
(1939/68分/トーキー/16mm)◎
ボリス・モロス・プロダクション作品
監督:A・エドワード・サザーランド
撮影:アート・ロイド
脚本:ラルフ・スペンサー、ハリー・ラングドン
出演:ローレル&ハーディ、ジーン・パーカー、レジナルド・ガーディナー

2016年の《新春コメディ宝箱》で一躍人気者になったローレル&ハーディが、長編作品で帰ってくる! やせのスタンとふとっちょオリーの極楽コンビはパリで楽しい休暇中。オリーは美しいパリジェンヌに恋をするもあっさりフラレてしまう。「傷心を忘れるなら軍隊がイチバン」と外人部隊に入隊するふたりだったが…。
ローレル&ハーディらしいノンシャランな物語とスラップスティックが絶妙に融合した後期の傑作。クライマックスの飛行機アクションなどそれまでの作品にはない大規模な視覚ギャグに大笑いさせられる。ミュージカルシーンではオリーが美声を聴かせ、スタンが軽快に踊る。名コンビぶりに酔い痴れて、お正月からまさに極楽気分! 脚本にハリー・ラングドンが参加している。(いいを)

 

Cプログラム100歳映画
fatty_butcher01「デブ君の女装」The Butcher Boy
(1917/33分[16コマ]/16mm)
コミック・フィルム・コーポレーション=パラマウント・フェイマス・プレイヤーズ・ラスキー作品
製作:ジョゼフ・M・スケンク
監督・脚本:ロスコー・アーバックル
出演:ロスコー・アーバックル、アル・セント・ジョン、ジョセフィーヌ・スティーブンス、バスター・キートン、犬のリューク

「ポリドールvs.日本人」Polidor e il giapponese
(1917/10分[16コマ]/16mm)
polidor01ティベル社作品
監督:フェルディナンド・ギラウメ(フェルディナン・ギョーム=ポリドール)
出演:ポリドール、マティルデ・ギラウメ、トモシロー・マツモト

「ガッスルの潜水艇」The Submarine Pirate
(1917/37分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー=トライアングル・ディストリビューティング作品
製作・脚本:マック・セネット
監督:チャールズ・アヴェリー、シド・チャップリン
出演:シド・チャップリン、フィリス・アレン・グレン・カヴェンダー

「雨中の逃亡」Teddy at the Throttle
(1917/30分[16コマ]/16mm)◎
キーストン・フィルム・カンパニー=トライアングル・ディストリビューティング作品
製作:マック・セネット 監督:クラレンス・G・バジャー
出演:ボビー・ヴァーノン、グロリア・スワンソン、ウォーレス・ビアリー、犬のテディ

1917年は、映画産業が迎えた最初の大転換期にあたります。動乱の世界情勢を背景に、「写真や演劇の従弟」の類と見られていた映画が、「臨場感と時空間をまるごと再生できる表現手段」に急成長し、新たな大衆芸能として娯楽の王様になりました。そして、映画は卑近なエンタテインメントながらも、文芸化、大作化の潮流が湧き起こります。こうして活況を呈する映画産業ですが、第一次世界大戦を境に、その中心地はヨーロッパ(疲弊したフランスやイタリア)からアメリカ(新興のハリウッド)に移行し、やがて観客の嗜好を反映して、映画(声のない芝居)における「仰々しいジェスチャー」は「日常的な所作」へと方向転換します。当プログラムでは、映像表現の原点となる喜劇から、その100年前の大転換期を再考察してみようと、映画史に埋もれた問題作・名作・珍作を選んでみました。

『デブ君の女装』は、コメディアンの伝統芸“女装”を活かした佳品で、何とバスター・キートンの銀幕デビュー作!『ポリドールvs.日本人』は、欧米に並び列強国となったアジアの小国ニッポンを茶化した珍作で、ダダイズム勃興の時代背景を考えるとシッチャカメッチャカな展開も納得できる!? 『ガッスルの潜水艇』は、1915年に発表された作品を、1917年のドイツ軍・Uボートによる通商破壊から第一次大戦にアメリカが参戦した事により、改めてマック・セネットが再編集したアメリカ海軍協力のドタバタ劇! 『雨中の逃亡』は、若きグロリア・スワンソンが美貌のヒロインを演じる、“元祖”勧善懲悪ロマンティック・コメディ! さてさて、スペクタクル性とドラマツルギーの“大転換期”を再考察するプログラム、とくとご覧あれ!(新野)

 

Dプログラム激レア・キートン1
spite_marriage01「キートンの結婚狂」Spite Marriage
(1929/73分[24コマ]/16mm)
M.G.M.=エドワード・セジウィック・プロダクション作品
製作:バスター・キートン、エドワード・セジウィック
監督:エドワード・セジウィック、バスター・キートン(ノン・クレジット)
原作:リュー・リプトン 改作:アーネスト・パガーノ
脚本:リチャード・スカイヤー
撮影:レジー・ラニング 美術:セドリック・ギボンズ
メイク:モンテ・ウェストモア
出演:バスター・キートン、ドロシー・セバスチャン、エドワード・アール、リリア・ハイムズ、ウィリアム・ベッチェル、ハンク・マン

長年連れ添った家族同様のスタッフたちと訣別し、M.G.M.の専属スターとなって作られた、キートン最後のサイレント作品。晩年にキートンは、製作サイドより即興的なパントマイムやアクロバットを封印された事で凡作に陥ってしまったような事を語っておられましたが、何をおっしゃいますか! 映画史に於いても、まぎれもない特級作品の完成度ですゾ! しかも本作のギャグを支えていたのは、のちの『硫黄島の砂』のカメラマン、『オズの魔法使』の美術、『風と共に去りぬ』のメイクなど、M.G.M.が誇る優秀なスタッフたち!

復刻ニュー・プリント・伴奏付き日本初公開!
かつてはキートンの研究書などに「M.G.M.にはプリントが現存せず、ネガも修復不能のために再上映は永遠に不可能」とされていた作品で、アルゼンチンの個人コレクター・故エンリク・ブッシャール(英語発音ではエンリック・ブーチャード)氏が所有する1929年初公開時の劣化したプリントだけが、唯一の研究向け資料とされていた。今回上映のプリントは、1990年代にアメリカのメディア王テッド・ターナー氏が莫大な費用をかけて、M.G.M.所蔵のネガを復刻したニュー・ヴァージョン! まさにキートンの映画デビュー100周年を飾る超目玉!お見逃しなく!(新野)

 

Eプログラム激レア・キートン2
playhouse01「即席百人芸(別題:一人百役)」The Play House
(1921/30分[16コマ]/16mm)
ジョゼフ・M・スケンク・プロダクションズ=ファースト・ナショナル作品
製作:ジョゼフ・M・スケンク
監督・脚本:エドワード・E・クライン、バスター・キートン
撮影:エルジン・レスリー 美術:フレッド・ガブリー
出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス、ジョー・ロバーツ

「早撮りレスターの勝利」The Triumph of Lester Snapwell
(1963/21分/トーキー/16mm)
イーストマン・コダック=コダック・インフォメーショナル・フィルム作品
監督:ジェイムズ・カールホーン 脚本:ラルフ・バートン
出演:バスター・キートン、シグリッド・ネルソン、ニナ・バレラ

機械マニアにして特殊効果に研究熱心であったキートンの、才気煥発の初期作品。よくぞここまで! と感心する間もなく笑いの渦へと巻き込まれる。溢れるキートン、若きキートン、沢山のキートンをご堪能あれ♪♪♪ さらに、コダック製品の宣伝として製作された、愉快でキュートな老キートン主演の珍作。無声映画へのオマージュがちりばめられた作風が微笑ましい総天然色PR映画!(新野)

 

Fプログラムコメディエンヌ特集
danger_girl01「水の妖精」The Water Nymph
(1912/11分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー作品
監督:マック・セネット
出演:メイベル・ノーマンド、水着美人、フォード・スターリング

「チーズ戦争」A Strong Revenge
(1913/15分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー作品
監督:マック・セネット
出演:マック・セネット、フォード・スターリング、メイベル・ノーマンド

「危険な娘」The Danger Girl
(1916/30分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー作品
監督:クラレンス・C・バジャー
出演:グロリア・スワンソン、ボビー・ヴァーノン

hold_your_breath01「息を殺して」Hold Your Breath
(1924/48分[16コマ]/16mm)
クリスティ・フィルム・カンパニー作品
監督:スコット・シドニー
脚本:フランク・ローランド・コンクリン
出演:ドロシー・デボア、ウォルター・ハイアーズ、マックス・デイヴィッドソン

「つらあて」A Busy Day
(1914/6分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー作品
監督・脚本:チャールズ・チャップリン 撮影:フランク・D・ウィリアムズ
出演:チャールズ・チャップリン、マック・スウェイン、フィリス・アレン

アメリカ初の女性大統領はいまだ誕生しない。しかし映画界には100年以上前から多くの「喜劇の女王たち」がいた!特に、才能発掘に長けていた大プロデューサーマック・セネットが世に送り出したコメディエンヌは数知れない。今回は彼が設立したキーストン社の1910年代の作品を中心に、コメディエンヌの魅力のつまったレアな作品をそろえてみた。
喜劇界のミューズ、メイベル・ノーマンド。元祖AKB48的(?)アイドルユニット「水着美人」。グロリア・スワンソンの短編には『サンセット大通り』の原点が垣間見える…か!? 20年代の作品『息を殺して』はハロルド・ロイドの『要心無用』にインスパイアされたもの。高層ビルアクションに果敢に挑むドロシー・デボアにご注目。女装姿で暴れまくるチャップリンが加わったのはご愛嬌。女装は英国の寄席(ミュージックホール)の伝統芸で、その歴史はモンティパイソンの「ペッパーポット」や現代の英国シットコムまで脈々と受け継がれている。(いいを)

 

kurakome2017omote◎以外はすべて喜劇映画研究会所蔵作品

プログラム解説:新野敏也(喜劇映画研究会)、いいをじゅんこ

 

 

 

 

ピアノ演奏付き上映
1月8日(日)Dプロ、Cプロ 演奏:天宮遥
1月9日(月・祝)Aプロ、Fプロ 演奏:鳥飼りょう

1月9日(月・祝) コメディ学入門 クラコメ特別編
講師:いいをじゅんこ(クラシック喜劇研究家) ■参加費 500円
クラシックコメディなう!2016-2017
2016年1月の「新春コメディ宝箱」から1年。2017年酉年は「神戸クラシックコメディ映画祭」と銘打って新たなスタートを切る。今回のコメディ学入門特別編では、3日間の映画祭をふりかえっての総括と、クラシックコメディの豊かさやその意義についてあらためて考えたい。また、ここ1、2年の間に新たにフィルムが発掘・修復されたコメディ映画や、現在進行中のさまざまなプロジェクトを紹介して、世界のアーキビストたちの活躍に敬意を表することにする。
「クラシックコメディ」とは、映画史の鉱脈の奥深くに埋もれながら、今なお強い輝きを放ち生き続ける「永遠の原石」なのである。ひとりでも多くの人とその輝きをわかちあえる幸福を感じながら、3日間の映画祭をわたしも心から楽しみたい。

新年会 & クラシック喜劇総選挙結果発表
1月9日(月・祝)18:30ごろ〜(終了予定20:30)
最終日の上映終了後に新年会を予定しております。お時間のある方は気軽にご参加ください。

今回もやります、クラシックコメディ総選挙!酉年のセンターをとるのはどのコメディアン?ぜひお気に入りを見つけて一票を投じて下さい。映画祭終了後の新年会にて開票予定。選挙結果は後日ネット上でもお知らせします。

会費:1000円(おつまみ程度をご用意)*差し入れ大歓迎
会場:神戸映画資料館カフェスペース

喜劇映画研究会
1976年11月6日(土)に東京都渋谷区立広尾中学校の文化祭にて、二年生の小林一三(現在はケラリーノ・サンドロヴィッチ)の行なったチャップリン上映会が起源となる。1984年より新野敏也が中興の祖となって改組、「文化啓蒙と社会貢献」「伝統の継承と再発見」を大義名分に、欧米の喜劇映画史を網羅したフィルム・コレクションと関連資料による自主企画イベントを開催、学校、各種メディア、公共機関、映画祭などでも執筆、講演、企画協力を行なっている。今日までに『サイレント・コメディ全史』『〈喜劇映画〉を発明した男 帝王マック・セネット、自らを語る』を発刊、青息吐息で悶絶しながらも、2026年の設立50周年を目指している。
→公式サイト

 
→facebook
 

20年代風モボ・モガファッションでご来場の方に1ドリンク券を進呈します。ロイド眼鏡、山高帽子などモボ・モガなりきりを宣言すれば何でもOK! 着物も大歓迎! 初詣、成人式のお帰りにぜひお越しください♪

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生1000円 会員1000円
演奏付き上映[一般1400円 学生1200円 会員1200円 *招待券のご利用不可]
*当日に限り2プログラム目は100円割引
会員限定フリーパス 6000円(10枚限り/売り切れ次第終了/コメディ学入門も使用可/新年会会費は別)

主催:古典喜劇映画上映委員会


ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第19回 ソヴィエト・ウエスタン

2017年1月21日(土)・22日(日)
1970年代に作られたソ連版 “西部劇” 二作品を上映。

「七発目の銃弾」Седьмая пуля
(1973/84分/35mm)ウズベクフィルム
nanahatsu01 nanahatsu02
監督:アリ・ハムラーエフ
脚本:フリードリヒ・ゴレンシュテイン、アンドレイ・コンチャロフスキー
撮影:アレクサンドル・パン、ハサン・ファイジーエフ
音楽:ルミーリ・ヴィリダーノフ
出演:スイメンクル・チョクモーロフ、ディロロム・カムバーロヴァ、タルガト・ニグマトゥーリン
1920年代、中央アジアに権力を樹立しようとするソヴィエト政権は、“バスマチ(中央アジアのムスリム)”の攻撃を受けていた。捕虜となった部下の救出のため、主人公はわざと敵に捕まる。ソヴィエト・ウエスタンの代表作の一つで、バスマチは典型的な反革命の悪役としてよく登場した。ただし、ソ連崩壊後は一種の民族独立運動として再評価が進んでいる。

 

「光と影のバラード」Свой среди чужих, чужой среди своих
(1974/95分/35mm)モスフィルム
hikaritokage01 hikaritokage02
監督:ニキータ・ミハルコフ
脚本:エドゥアルド・ヴォロダルスキー、ニキータ・ミハルコフ
撮影:パーヴェル・レベシェフ
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ
出演:ユーリー・ボガトィリョフ、アナトーリー・ソロニーツィン、セルゲイ・シャクーロフ、アレクサンドル・ポロホフシコフ、ニコライ・パストゥーホウ
1920年代初頭、ロシア革命によりソ連が成立するも国内戦の戦火が治まらぬ混乱の時代、革命を担って死闘を繰り広げる男たちを描いたアクション映画。赤軍兵士らが護送する金塊をめぐり、白軍や無政府主義者たちが入り乱れて激烈な争奪戦が展開する。列車強盗あり、銃火戦ありのソ連版 “西部劇”。『太陽に灼かれて』(1994)や『シベリアの理髪師』(1998)で知られるニキータ・ミハルコフ監督の長篇第一作。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日2本目は200円引き


神戸大学・国際文化学研究科の研究プロジェクト
映画/ファッション/食

多様な研究者が集まる神戸大学・国際文化学研究科の研究プロジェクトとして開催する2日連続の公開研究会。1日目は「映画とファッション」というテーマで、衣装から日本映画の魅力を読み解くトークと上映。2日目は「映画と食」をテーマに、アメリカ、日本、イタリアの映画を解明する。当日の会場では、たかぎみき氏のイラストの展示も実施。

司会:板倉史明(国際文化学研究科准教授)

 

©日活

©日活

映画とファッション
2017年1月28日(土)

13:30~ トーク
たかぎみき(ホームページ「キネマ洋装店」店主)

14:30~ 上映
『街燈』

(中平康監督、日活、1957年、91分、35mm)
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

上映終了後、ディスカッション(16:30終了予定)
たかぎみき、朝倉三枝(国際文化学研究化准教授)、板倉史明

たかぎみき イラスト展

たかぎみき イラスト展

 

映画と食
2017年1月29日(日)

13:30~ 講演「アメリカン・ホラーと人肉食——食肉の視点から」
小澤卓也(国際文化学研究科准教授)

14:15~ 講演「屠畜と日本映画」
岡田尚文(学習院大学大学院助教)

15:15~ 講演「イタリア映画における食」
中島梓(立命館大学非常勤講師)

16:00~ ディスカッション(16:30終了予定)

 

《参加費》 無料

協力:東京国立近代美術館フィルムセンター

企画:神戸大学大学院国際文化学研究科 国際文化学研究推進センター 研究プロジェクト 「領域横断的映画研究の推進」(代表者:板倉史明)


ストローブ=ユイレ
音楽+映画、絵画+映画、そして歴史
2017年2月4日(土)・5日(日)
bach01

レクチャー:音楽+映画、絵画+映画、そして歴史
2月4日(土)16:50〜18:20 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
ストローブ=ユイレ映画の中でもっともよく知られている『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』の大胆な構成はどれだけ言葉を尽くしても称賛しきれない。歴史の再現ドラマを排しながらバッハという人物の芸術と愛と生涯を見事に浮き彫りにしてゆくからだ。映画(シネマトグラフ)が捉えられるのは事物に過ぎない。ストローブ=ユイレにおいて音楽と絵画は決して映画の中に浸透しない。そして歴史は現在形においてのみ痕跡を示す。そこに秘められた精神性を見出すのはひたすら観客の眼力と聴力に委ねられる。

bach02「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」
Chronik der Anna Magdalena Bach
(1967-68/93分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング
ストローブ=ユイレが最初に映画化しようとした作品。作曲家J・S・バッハの後半生を二番目の妻の視線から語る。出演者自身によるライブ演奏場面、バッハの自筆譜や手紙、教会や家庭のドラマ場面が交錯し、ドキュメンタリーとファミリーメロドラマの極めてユニークな融合を果たしている。

 

cezanne01「セザンヌ」
Cézanne
(1989/50分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:アンリ・アルカン
詩人ジョワシャン・ガスケによる『セザンヌとの対話』第1章と第3章からセザンヌの言葉が朗読される。映像はセザンヌの絵画が動かぬフレームの中に提示される。そこにジャン・ルノワール監督の『ボヴァリー夫人』と自作『エンペドクレスの死』からの抜粋映像が挟まれる。

 

lothringen01「ロートリンゲン!」
Lothringen!
(1994/21分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:クリストフ・ポロック、エマニュエル・コリノ
「ロートリンゲン」とは「ロレーヌ」のドイツ名である。本作はストローブの生地であるこの地方を巡りながら、様々な風景や歴史的記念碑を捉え、国粋主義的なフランス作家モーリス・バレスの小説『コレット・ボドッシュ』を引用しつつ、決して宥和できないフランスとドイツの関係を語る。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円

《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可


木村卓司・井手豊 新作上映会
2017年3月11日(土)・12日(日) 18:00〜
木村卓司監督は両日来館、井手豊監督は12日来館。

ミクロとマクロが交錯する木村卓司と井手豊の映像宇宙。

「宙」

「宙」

「懐中散策」

「懐中散策」

 

木村卓司 監督作品
「宙」

(2016/59分/DVD上映)
常に映画とは何かを追求していたが、最近映画は存在しないと思えてきた。無時間だけが存在していると思えてきた。映画の消滅と再生を石を使って撮りました。なんじゃそれ、と気になる方は是非見に来てください。

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木村卓司
1964年京都生まれ。スピルバーグや宮崎駿に憧れ高校時代から自主映画を撮り始める。主な作品は『さらばズゴック』 (1986)、『眼の光』『非在/風景』(2004)、『阿呆論』(2008)、『シネマトグラフオブエンパイア』(2009)、『街に映画館を造る』(2011)、『時』(2012)『庭』(2015)

 

井手 豊 監督作品
「懐中散策」

(2016/18分/サイレント/ブルーレイ上映)
虫と風景に自分の心の世界を思い浮かべます。

「静寂の光」
(2016/11分/サイレント/ブルーレイ上映)
桜で有名な地元津山の鶴山公園で心惹かれた光景。

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「懐中散策」

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「静寂の光」

井手 豊
1965年生まれ。出身の岡山県津山で、1988年頃から映像づくりをはじめる。最初は劇映画をめざすが、個人的なイメージ映像の存在を知りその時々に出会い、心惹かれた人や風景や生き物などを心象映像として作り続けている。 映像展として、2014年「アートの今・岡山2014『時のカタチ』巡回展」(岡山県天神山文化プラザ)、2015年「井手豊映像の世界~仄かに灯る宇宙~」(奈義町現代美術館)がある。
 

魅了するものに留まる眼差し、ひたすら現在であり続ける時間、主体と客体の距離化や弁証法は井手さんの作品からは消え失せているように感じられる。でもその対象物ははっきりと世界の法則の中にある。風を光を受け、具象的な場にとどまりながら生を格闘している。井手さんの映画は世界への感嘆であり、そしていつもどこか残酷だ。その対象物の生命や美が映画作家の技巧や語りで生まれるのではないことを知っているからなのだろう。そう、世界は残酷なまでに奇跡に満ちていることを、その映像は教えてくれる。
──渋谷哲也(ドイツ映画研究)

 

《料金》入替なし
一般:1400円 学生・シニア:1300円
会員一般:1300円 会員学生・シニア:1200円


公開研究会
[貸館]デジタルアーカイブス・地域映像サミット

2017年3月20日(月・祝) 10:30〜18:00

現在、各地でさまざまなデジタル映像のアーカイブがつくられている。これらのアーカイブはその地域の歴史や状況にあわせて、その姿・形はさまざまであるだけでなく、収蔵されている映像の内容も千差万別だ。今や、これまでの通念や研究のあり方を根本から考え直す時期にきている。地域の映像アーカイブに何が求められているのか、新たに議論する。(原田健一)

第一部 10:30〜12:00
アマチュア映画の研究とアーカイビング

司会:板倉史明(神戸大学)
 
「1920年代半ばから1930年代における「アマチュア」と「プロフェッショナル」の考察−−日本とアメリカのアマチュア映画」
森末典子(イェール大学大学院映画学・東アジア言語文学学部)
本発表は、戦前における日本とアメリカの小型映画文化の比較を通して「アマチュア」と「プロフェッショナル」の概念を考察する。その方法として、まずアメリカのアマチュア映画の特徴及び近年の先行研究を解説し、同時代の日本のアマチュアがどのように特徴づけられるかを検証したい。特に注目するのは、日米のアマチュアによる商業映画の捉え方の違いである。ハリウッド及び国内商業映画がどのようにアマチュア文化の形成に影響したのかを、当時の機関誌等を通して検討する。

「1950年代のアマチュア映画“らしさ”――「シネマ57」の批評から読み解く」
大谷晋平(神戸大学国際文化学研究科博士後期課程)
1950年代後半の8ミリ映画ブームに注目したのが、映画監督・羽仁進などが所属した映画集団「シネマ57」である。彼らはニューヨークの映画集団「シネマ16」を参考にし、アマチュア映画作品を研究する上映会を実施。さらに『芸術新潮』の8ミリ映画特集欄へ積極的に記事を投稿した。本発表では「シネマ57」が新しい映画表現の可能性を見出していたアマチュア映画“らしさ”を、当時の言説を分析することから解明する。

第二部 13:00〜14:30
モノと対話すること――アーキビストの目と手を編制する

松谷容作(同志社女子大学)、郷田真理子(IMAGICAウェスト)、北村順生(立命館大学)

第三部 14:45〜18:00
各地のデジタル映像アーカイブの現状と連携ネットワーク編制の可能性

司会:佐藤守弘(京都精華大学)
水島久光(東海大学)、原田健一(新潟大学)、久世均(岐阜女子大学)、高橋耕平(アーティスト)

《参加費》無料   《会場》神戸映画資料館

主催:神戸大学地域連携事業「映像を媒介とした大学とアーカイブの地域連携」(代表者:板倉史明)

→過去の関連企画等


ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第20回 ペレストロイカの時代1

2017年3月25日(土)・26日(日)
ソ連最後の最高指導者、ゴルバチョフ書記長により進められた改革運動「ペレストロイカ」は映画界にも大きな影響を与えた。タブーとされてきたテーマを扱った作品や検閲による上映禁止からようやく公開にいたった作品を上映する。

「テーマ 田舎の出会い」Тема
(1979/98分/35mm)モスフィルム
teme02 teme01
監督・脚本:グレーブ・パンフィーロフ
撮影:レオニード・カラシニコフ
出演:ミハイル・ウリヤーノフ、インナ・チュリコワ、エフゲーニー・ヴェスニク

体制に迎合した作品により名声を得てきた劇作家が、友人と女子学生を伴い休暇に田舎を訪れる。その「テーマ」や亡命のエピソードにより検閲でお蔵入りとなり、ペレストロイカが始まった1986年にようやくオリジナルが公開、そして翌年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した作品。

 

「自由はパラダイス」СЭР
(1989/78分/35mm)モスフィルム
paradise02 paradise01
監督・脚本:セルゲイ・ボドロフ
撮影:ユーリー・スヒルトラーゼ
美術:ワレーリー・コストリン
音楽:アレクサンドル・ラスカトフ
出演:ヴォロージャ・コズィリョフ、アレクサンドル・ブレーエフ、スヴェトラーナ・ガイタン、ヴィタウタス・トムクス

カザフ共和国の首都アルマアタの少年院。13歳の不良少年サーシャは、まだ見ぬ「自由」と「父」にあこがれる。その父が極北アルハンゲリスクの刑務所にいると知り脱走する。「自由はパラダイス」の頭文字“СЭР”の入れ墨は少年を見つける目印。出会った人びとの好意に支えられ少年の旅は続く。ソヴィエト版『大人は判ってくれない』と言われるボドロフ監督の出世作。

 

主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日2本目は200円引き


連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第1回 『市民ケーン』とは何だったのか

2017年4月8日(土)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
 
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
 
13:30〜 参考上映
kane01「市民ケーン」Citizen Kane
(アメリカ/1941年/119分/16mm)
製作・監督:オーソン・ウェルズ
脚本:ハーマン・J・マンキウィッツ、オーソン・ウェルズ
撮影:グレッグ・トーランド
編集:ロバート・ワイズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オーソン・ウェルズ、ジョセフ・コットン 、ドロシー・カミンゴア、エヴェレット・スローン、アグネス・ムーアヘッド
 
15:45〜(終了予定17:15) 講座
『市民ケーン』とは何だったのか
映画批評家や映画雑誌が選ぶオールタイム・ベストで長らく1位を独占してきた文字通りの不朽の名作『市民ケーン』。だがしかし、今となっては、この映画がなぜ当時あれほどのスキャンダルを巻き起こしたのか、その理由さえ知らない人も少なくない。『市民ケーン』とは一体何だったのか。いまだに信じられている数々の神話を解き明かしながら、様々な角度から作品を分析してゆき、この映画の登場がなぜ、映画史における「コペルニクス的転回」とまで言われるほど、映画の様相を一変させることになったのかを再検証する。
 

井上正昭
1964年生まれ。京都大学文学部仏文科卒業。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)などの訳書がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」

 

《参加費》 1500円(参考上映付き)


日本映画史上初! ロシアで撮られたSF映画
『レミニセンティア』
2017年4月14日(金)〜18日(火)

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「レミニセンティア」
(2016/89分/ロシア語/HD[ブルーレイ上映])
監督・脚本・撮影・編集:井上雅貴
プロデューサー:井上イリーナ
配給:INOUE VISUAL DESIGN

出演:アレクサンダー・ツィルコフ、井上美麗奈、ユリア・アサードバ

アレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』の
日本人スタッフが描くロシアSF感動作

忘れたい記憶がありますか? 取り戻したい記憶はありますか? あなたの記憶は真実ですか?
記憶をテーマに日本人監督がロシアに渡り、ロシアSF感動作を作り上げた。
記憶を消すことのできる父と絵が大好きな娘、父は悩める人々の記憶を消し、その記憶で小説を書いていた。しかし、ある日、愛する娘との思い出が消えている事に気づく。
忘れたい記憶と取り戻したい記憶、果たして記憶に翻弄される人間の存在とは何なのか?

哲学的なテーマを持つ、エンターテイメント作品
監督の井上雅貴は、アレクサンドル・ソクーロフ監督の映画『太陽』のメイキング監督を務め、その時ロシアの映画制作を学んだ。本作が初監督であるが、映画を作るならスケール感のある作品を作りたいという監督の熱意と、今まで培った映画製作のノウハウにより、商業映画に匹敵するクオリティの作品が出来上がった。自主映画ながらロシアロケを敢行、監督自ら脚本、撮影、編集を兼ね、日本の自主制作映画の限界に挑んだ。ちなみにこの作品は出資が日本の為、日本映画に分類される。

撮影場所はモスクワから300km離れた古都ヤロスラブリ。黄金の輪と呼ばれる歴史的な建造物が立ち並ぶ街でありながら、旧ソ連時代は工業地帯だった街。
主人公の娘を演じるのは監督とプロデューサーの娘、井上美麗奈。それ以外の出演者は実際にこの街に住むヤロスラブリ劇場に所属する本格的な役者達で、この映画のテーマを感じ取り出演してくれた。

ロサンゼルスシネマフェスティバル・オブ・ハリウッドで主演男優賞、監督賞、長編作品賞など主要部門を受賞、ハリウッドで評価されたことが全世界の人々に伝わる作品であることを証明している。

レミニセンティア=記憶の万華鏡
映画は現実ではなく虚構の世界、現実とは記憶による曖昧なもの。美しい映像と様々な仕掛けの物語があなたの脳を刺激する。

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4月15日(土)各回上映後 ミニトーク:井上雅貴(監督)、井上美麗奈(出演)
4月16日(日)15:30の回上映後 監督挨拶+トーク:扇千恵(ロシア語講師/ロシア映画研究)

井上雅貴(監督)
1977年、兵庫県生まれ。日本工学院専門学校映画科にて16mmの短編映画を製作し始める。卒業後、MVビデオ、CM、TV番組などのディレクターをつとめ、2005年に有限会社INOUE VISUAL DESIGNを設立。映画編集として石井岳龍監督の『DEAD END RUN』『鏡心』に参加。メイキング監督として、『スカイハイ』『最終兵器彼女』『ラフ』『ディアフレンズ』『犯人につぐ』『腑抜けども、悲しみに愛を見せろ』『シャカリキ!』『しあわせのかおり』『きみの友だち』『毎日かあさん』『深夜食堂』など数々の映画作品に参加。映画制作のノウハウを多方面から学ぶ。アレクサンドル・ソクーロフ監督のロシア映画『太陽』にメイキング監督として参加。3ヶ月ロシアに滞在し、ロシアの映画製作を学ぶ。ロシアでの撮影を決意し、映画企画を進める中、内容、撮影、共に商業映画の企画として難しい為、自主制作を決意。いままで参加した映画の知識をすべて使い初長編映画『レミニセンティア』を完成させる。

→公式サイト
→予告編

《料金》 特別鑑賞券(前売り):1400円
一般:1700円 大学・専門学校生:1500円 中高生:1200円 シニア:1100円
会員:1100円
*初日サービスDAY 一律1100円


堀禎一監督特集 part2
2017年4月22日(土)〜24日(月)

昨年末のpart1に続く今回は、堀禎一が自主製作するドキュメンタリー映画「天竜区」シリーズを一挙上映します。

4月22日(土)16:15〜
トーク 堀禎一 + 細馬宏通
(人間行動学/コミュニケーション論/滋賀県立大学教授)
*参加無料(要当日の映画チケット半券)

「天竜区」シリーズについて
cha02堀禎一が初めて手掛けるドキュメンタリー作品。堀が以前から興味を持っていた山の暮らしや風景をテーマとしている。具体的な始まりは、静岡県在住の内山丈史と知り合い、2013年の6月より大井川流域、天竜川流域を月2回程度の頻度でロケハンを始めたことである。この準備期間に山の中腹に位置する斜面集落のひとつである天竜区奥領家大沢集落に偶然辿り着く。そこで集落の眼前にそびえる麻布山の姿、道を歩く竹腰さん(『夏』の終盤でカヤを背負って歩いている女性)の姿を目にし深く心うたれたという。山々の形、端々に長い歴史をうかがわせる山の生活風景を撮影するには、4:3のスタンダードサイズ、またHDよりSDでの撮影がふさわしいと判断し、2014年の4月末までロケハンとテスト撮影を続ける。また、この準備期間にジャン=クロード・ルソー監督の作品など小規模予算、小規模スタッフ編成による“説明というより余白の多い映画”を数多く見たことが制作を始めるきっかけにもなった。 撮影は2014年の5月から1年間続けられる。大沢集落だけが持つ時間、空間、人々をあるがままに捉えている。

Aプログラム
cha01「天竜区奥領家大沢 別所製茶工場」
(2014/64分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
5月後半の、大沢での茶摘み、そして工場での製茶の様子を淡々と捉える。雨に打たれ霧に包まれた大沢の茶畑と緑に輝く茶の新芽の美しさに触発され、撮影された。

 

 

Bプログラム
gion01「天竜区旧水窪町 祇園の日、大沢釜下ノ滝」
(2014/27分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
6月、祗園祭の日に合わせ年に一度だけ花火を楽しむ「ぎおん」という風習や、町の中心部を流れる水窪川の様子を捉える。『別所製茶工場』より後に撮影されたが、「天竜区」シリーズで最初に完成した作品。

 

 

natsu02「天竜区奥領家大沢 夏」
(2014/67分/DVD上映)
話:別所賞吉 制作:内山丈史 監督:堀禎一
「別所製茶工場」の持ち主である別所賞吉さんの大沢についての話や思い出をナレーションに、大沢の夏の様子を捉える。ナレーションは夏の風景と重なって心地良いリズムを刻む。

 

 

Cプログラム
fuyu02「天竜区奥領家大沢 冬」
(2015/94分/DVD上映)
話:別所賞吉 制作:内山丈史 機材協力:葛生賢
監督:堀禎一
別所賞吉さんのナレーションとともに、山の長い冬を捉える。度々登場する写真は村人たちが自身の生活を写したもの。それはこの映画に写る大沢での営みと同様に、今まで過ごしてきた膨大な時間が刻み込まれていることを感じさせる。映画は、大沢集落の春の訪れと共に終わる。

「天竜区旧水窪町 山道商店前」
(2017/2分/DVD上映)
制作:内山丈史 監督:堀禎一
「天竜区」シリーズの最新短編。水窪町にある山道商店の駐車場にカメラを据え山々を見上げる。

 

堀禎一
1969年兵庫県たつの市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。1994年に佐藤真監督が構成・編集を担当した『おてんとうさまがほしい』の制作に参加。1996年から小林悟、北沢幸雄、サトウトシキ監督らの助監督を務める。1998年『樹海熟女狩り』(小林悟監督)の脚本を手がけ、2003年『宙ぶらりん(SEX配達人 おんな届けます)』で監督デビュー。2005年『草叢』、2006年『笑い虫(色情団地妻 ダブル失神)』とピンク映画、2007年『妄想少女オタク系』で一般映画を監督する。その後も『憐 Ren』や『魔法少女を忘れない』などのライトノベルや漫画が原作の映画や、『東京のバスガール』などのピンク映画を監督。一方、「映画芸術」、「月刊シナリオ」、「ユリイカ」、「中央評論」では映画論、映画評の執筆も行う。最新作「天竜区」シリーズは自身初となるドキュメンタリー映画である。

 
協力:アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
Aプログラム一般1000円 学生・シニア900円 会員900円 学生・シニア会員800円
BプログラムCプログラム一般1200円 学生・シニア1100円 会員1100円 学生・シニア会員1000円
《割引》当日に限り2本目は200円割引


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。