プログラムPROGRAM

ストローブ=ユイレ 回顧から新地平へ
2018年4月28日(土)〜30日(月・祝)

渋谷哲也編『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』(森話社)の刊行を記念し、ストローブ=ユイレの代表作品の上映と映画研究者堀潤之氏のレクチャーを開催し、映画史上稀に見る妥協なき映画作家たちの片鱗に今一度触れてみたい。2006年にダニエル・ユイレが死去しその共同製作は終わりを告げたが、彼らの遺した作品は時代の中に埋もれるどころかむしろその孤高性をさらに高らかに示しつつある。映画の政治性とは抽象的な概念の戯れではなく、映画の本質を画面に定着しようとする営為に他ならない。彼らの闘争の具体的な記録をフィルム作品から跡付けつつ、ストローブ=ユイレに向ける新たなまなざしの可能性を探ってみたい。(渋谷哲也)

 

「アンナ・マグダレーナ・バッハの日記」
Chronik der Anna Magdalena Bach
(1967-68/93分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング
作曲家・宮廷楽長としてのバッハの後半生を2番目の妻の語りによって綴ってゆく伝記映画。楽曲の演奏シーンが大半をなす構成ではあるが、そこにバッハの職業上の苦境、アンナ・マクダレーナとの絆、死の予感などが運命の波のように打ち寄せる。

 

「モーゼとアロン」
Moses und Aron
(1974-75/105分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウーゴ・ピッコーネ、サヴェーリオ・ディアマンティ、レナート・ベルタ
出演:ギュンター・ライヒ、ルイ・ドヴォス
シェーンベルク未完の大作オペラをイタリアの円形劇場にて上演した歴史巨編。エジプトのファラオ支配を逃れてイスラエルの民を率いるモーセとアロン、目に見えない神のための偶像を禁止された彼らはいかに民と向かい合えるのか?

 

「アンティゴネー」
Die Antigone des Sophokles nach der Hölderlinschen Übertragung für die Bühne bearbeitet von Brecht 1948(1991-1992/100分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ソポクレスの古代ギリシャ悲劇を近代ドイツ語に翻訳したヘルダーリンの戯曲をブレヒトの大胆な翻案で戯曲化した作品の上映版。クレオン王はファシズムの独裁者に見立てられ、アンティゴネーは家族愛に殉じる抵抗と闘士として際立つ。

 

「マホルカ=ムフ」
Machorka-Muff
(1962/18分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ヴァンデリン・ザハトラー
ストローブ=ユイレの監督デビュー作となった短編。戦後西ドイツが再武装してゆく過程を極めて辛辣な風刺劇で表現した。当時の彼らは「若いドイツ映画」として戦後ドイツの新世代映画の体現者と見なされた。

 

「シチリア!」
Sicilia!
(1998/66分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
イタリアのネオリアリズム小説であるヴィットリーニの『シチリアでの対話』を映画化した。15年ぶりに帰郷した男が目撃するのは打ち捨てられたオレンジの山。そうして故郷の貧しい状況と両親の抑圧的な関係に改めて直面させられる。

 

作品解説:渋谷哲也
協力:神戸ファッション美術館、アテネ・フランセ文化センター

レクチャー 4月29日(日)15:05〜
 講師:堀 潤之(映画研究・表象文化論) 参加無料(当日の映画鑑賞者対象)
カフェトーク 4月30日(月・祝)17:20〜
 ゲスト:渋谷哲也(ドイツ映画研究) 参加費:500円(1ドリンクとスナック付き)

《料金》入れ替え制
一般:1400円 学生:1200円 会員:1200円
《割引》当日2プログラム目は200円引き
*招待券のご利用不可

 

「ストローブ=ユイレ──シネマの絶対に向けて」
渋谷哲也編 森話社
執筆:赤坂太輔、伊藤はに子、小澤京子、金子遊、サリー・シャフトウ、渋谷哲也、筒井武文、竹峰義和、千葉文夫、中尾拓哉、中島裕昭、細川晋、堀潤之、持田睦

これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。