プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2012

昭和桃色映画館 50年目の幻のフィルムと活動屋たち 前編
 
成人映画系の「ピンク映画」とも呼ばれる「独立プロ映画」が誕生して、今年で「50周年」を迎えた。今もなお製作を続けるのは老舗の大蔵映画一社という情況は、「消え行くピンク映画」の印象は拭えない。だが、逆に昭和の「独立プロ映画」への郷愁とオマージュ、マニアックなファンの心理は高まっているようだ。2009年の「60年代・独立プロ伝説 西原儀一と香取環」、2011年の「まぼろしの昭和独立プロ伝説」と神戸映画資料館ならではの「発掘上映」に各方面からの注目と賛辞が集中した。
戦後の日本映画史における「独立プロ」「成人映画」の実態と全貌は、「50周年」を迎えて、ようやく明らかになろうとしているようだ。神戸映画資料館のフィルム収集、保存、修復という活動もまた、「独立プロ」の仕事、成人映画の「まぼろしの女優たち」を発掘・研究して、「娯楽映画の裏面史」「もうひとつの映画史」に光を当てる。本邦唯一のプリントが、伝説から目覚める時を待っているようだ。それらが伝説の活動屋たちによって、いかに作られたかを検証してみよう。また、神戸のスクリーンで、新しい「伝説」が刻まれるかも知れない。
 
小林悟 元祖独立プロ監督
8月31日(金)・9月1日(土)
「不能者」
(1967/86分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:小林悟 撮影:浜野誠之 音楽:竹村次郎
出演:仲小路彗理、島たけし、清水世津、谷ナオミ、白川和子、鶴岡八郎、椙山拳一郎、松井康子
桃色映画を開拓した監督の一人小林悟は、ヌーベル・ヴァーグを担う監督となってもおかしくはなかった。幼馴染みの恋人は理解してくれたが、少年の悩みは晴れなかった。身体的コンプレックスから、性的関係が上手にできない主人公たち。都会の風俗の中で揉みくちゃになっていく。放浪と多作とに明け暮れた異能の活動屋が、当時パートナーだった女優・松井康子を製作者に、果敢に挑戦した意欲作。異形だが、ならではの青春映画の佳作。
 
「女紋交悦」
(1971/71分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:小林悟 脚本:岡田昇平 撮影:池田清二
出演:宮下順子、山本昌平、保津美アヤ、吉田純、田中敏夫、市村譲二、日野伸二
幸せな夫婦生活を送っていたが、交通事故で不能になってしまった夫。看病しながら酒場で働く甲斐甲斐しい妻。だが、夫婦の絆は、肉欲の前にはもろく愚かしいものでしかなかった。乱心と絶頂。二人の葛藤や絶望を照らし出すように明滅する光、幻想と迷宮へ招待するような音楽。脚本にも参加した山本昌平の迫真演技。デビューまもなく体当たりで悩殺する宮下順子。日活ロマンポルノ裁判の参考試写作品になったことでも知られる作品。
 
「ニッポン発情地帯」
(1971/68分/パートカラー・ワイド/35mm)オムニバス全5話 
監督:小林悟 脚本:神谷伸之、千葉隆志、小林悟 撮影:池田清二
出演:杉村久美、野沢はるみ、志野原千恵、島江江梨子、小池ジュン、相原香織、野上正義、大河原功、久保新二、今泉洋、浅川洋子、宮本圭子、市村譲
緊張感と才気の漲る作品から捨てばちな作品まで、起伏の激しいエロスのアルチザンだった小林悟。旧知の西原儀一に再会、葵映画で作品を撮るように。失神を売り歩く男、妻の秘密、関西パンマの実態など艶笑小話をオムニバス形式で巧みに撮った。女優たちをはじめキャストもスタッフも若々しく新しかった。大手のポルノ攻勢に、業界は変貌していった。小林も、この頃から開き直ったように、女の裸体を舐めるように撮り始めるのだった。

※『ニッポン発情地帯』フィルム状態不良の為、急きょ差し替えて上映いたします
「好色回春物語」
(1970/69分/パートカラー/16mm) 
製作:葵映画 監督:武田有生 脚本:中原圭司(石森史郎) 撮影:舵川常義
出演:白川和子、青山美沙、黒瀬マヤ、鶴岡八郎、里見孝二、今泉洋、関多加志
『約束』『同棲時代』など青春映画の名脚本家として知られる石森史郎先生の「ピンク映画時代」の脚本作品が見つかった! 斎藤耕一の助監督などを経て成人映画で一本立ちした武田有生監督作品。「有生は文芸調のなかなかいい作品を撮ってね。気も合って何本もホンを書いているんだ」(石森)。亀松(鶴岡八郎)は会社を経営していたが、別荘に引きこもり回春法に精を出し、女中相手に発散していた。ある日、純情そうな娘が女中としてやってきたのだが……。ピンク時代の白川和子の愛らしい姿も見られる貴重な発掘作品である。
 
   
時代を作った活動屋たちと発掘フィルム
9月2日(日)・3日(月) 
「禁じられた乳房」
(1966/80分/白黒・ワイド/16mm)
監督:小川欽也 脚本:五里木純一郎 撮影:岩橋秀光 美術:宮坂勝巳 音楽:長瀬貞夫
出演:新高恵子、左京未知子、森美千代、飛田八郎、大原百代、九重京司、野上正義、椙山拳一郎
若々しく力強い演出を見せる小川欽也。「50年間撮り続けた活動屋」である。小川監督自身が保持されている貴重なフィルムは、関西地区初上映。子供に会いたい一心で脱走を図る女囚。転がり落ちていくように、運命の坂を走らされ殺人を犯した。ヒロイン新高恵子は、桃色映画界初期を代表するスター女優の一人。ラテン系歌手だったが、憧れの映画の世界に飛び込む。美貌と演技力は、同郷の寺山修司に見出され演劇界へ転進していった。
「女体開花」
(1968/61分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:奥脇敏夫
出演:水咲陽子、青木マリ、椙山拳一郎、渡辺允雄、泉田洋志、中野歩、立花加幸
結婚、それは何? 幸せ、人間の絆、家庭、どうして? 問いかける男女。蜜月旅行に出た新婚男女たちは、ホテルの部屋で。男女には「性生活の知恵」こそ必要と説き、味のある演出ぶりの奥脇敏夫監督。初代「ピンクの女王」香取環のパートナーだったこともある、黄金時代を代表する「桃色活動屋」だ。売り出し中の新人女優水咲陽子、青木マリの新妻ぶり。屈指の演技派ぶりを見せる椙山拳一郎。当時求められていた、典型的なヒット作品だ。
 
「濡れた紅薔薇」
(1972/64分/カラー・ワイド/16mm)
監督:向井寛
脚本:棟由多歌 撮影:鈴川芳彦
出演:武藤周作、千原和加子、沖さとみ、芹河美奈、嵯峨正子、三条聖子、安藤麗子、丸美園子、港雄一、吉岡一郎、吉田純、他
60年代に数々の傑作を発表した俊英監督向井寛は、70年代に入っても軽快なフットワークで作品を撮り続けていた。「処女喪失」をテーマにしたレコードを企画した主人公が、テレコを片手に街頭インタビューに飛び出した。OL、女子高生、女優、歌手など、様々な女性の性的エピソードがオムニバス風に描かれる。一億総ハレンチ時代といわれたが、女性の「処女性」はまだまだ大きなテーマだった。冒頭、監督自身も颯爽と登場して懐かしい。
 
「パンマSEX裏のぞき」
(1973/63分/カラー・ワイド/35mm)
監督:関孝二 撮影:長島訓 照明:明地五郎 編集:中島照雄
出演:港雄一、北見マリ、西条マリ、城モニカ
関孝二は、「女ターザン」を皮切りに桃色映画初期からアイデアマンといわれ、時代風俗に敏感で作品にも取り入れた。「パンマ」も、昭和の風俗。「パンパン・マッサージ」の略と言っても、既に「パンパン(街娼)」が死語だが。ヤクザ(港雄一)は情婦(北見マヤ)と温泉に来た。頼んだアンマ(河森真樹)の顔を見て驚く。それは、以前そのヤクザの女房だったが、彼に酒をかけられ盲になり捨てられ、この温泉に流れてきた女だったのだ。
 

9月1日(土)トーク
《本木荘二郎と桃色映画の50年を考える
 前篇:黒澤明の盟友、撮影所を去り桃色映画の開拓者となる!》
鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
ピンク映画第一号は『肉体の市場』だが、半年遅れて本木荘二郎監督『肉体自由貿易』が公開される。「50年」の歴史がスタートした。それまで黒澤明のなくてはならない相棒、盟友プロデユーサーとして『羅生門』を始め数々の名作を生み出した本木は、ある理由から東宝撮影所を追われ、いつしか「街場」といわれる桃色映画の監督となる。それは、その後「ピンク映画」と呼ばれるジャンル、市場を切り拓くこととなった。本木の助監督だった小川欽也を筆頭に、小林悟、関孝二、向井寛、奥脇敏夫、草創期の監督たちは根っからの活動屋たちばかりだった。本木と競うように、桃色映画を撮った監督たち、その知られざる作品と素顔をも検証する。関連映像の上映あり。
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹
後編 9月28日(金)〜10月1日(月)

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き


昭和桃色映画館 50年目の幻のフィルムと活動屋たち 後編

特設コーナー1
なぜ、いま「本木荘二郎」なのか!?
~「昭和桃色映画館50年目の幻のフィルムと活動屋たち」上映企画に寄せて~

特設コーナー2
「プロ鷹クロニクル」への招待、、
あるいは「特集」を楽しく御覧いただく為に!

鈴木義昭(映画史家・ルポライター)


成人映画系の「ピンク映画」とも呼ばれる「独立プロ映画」が誕生して、今年で「50周年」を迎えた。今もなお製作を続けるのは老舗の大蔵映画一社という情況は、「消え行くピンク映画」の印象は拭えない。だが、逆に昭和の「独立プロ映画」への郷愁とオマージュ、マニアックなファンの心理は高まっているようだ。2009年の「60年代・独立プロ伝説 西原儀一と香取環」、2011年の「まぼろしの昭和独立プロ伝説」と神戸映画資料館ならではの「発掘上映」に各方面からの注目と賛辞が集中した。
戦後の日本映画史における「独立プロ」「成人映画」の実態と全貌は、「50周年」を迎えて、ようやく明らかになろうとしているようだ。神戸映画資料館のフィルム収集、保存、修復という活動もまた、「独立プロ」の仕事、成人映画の「まぼろしの女優たち」を発掘・研究して、「娯楽映画の裏面史」「もうひとつの映画史」に光を当てる。本邦唯一のプリントが、伝説から目覚める時を待っているようだ。それらが伝説の活動屋たちによって、いかに作られたかを検証してみよう。また、神戸のスクリーンで、新しい「伝説」が刻まれるかも知れない。
 
プロ鷹クロニクル PART-1
9月28日(金)・29日(土)
「好色魔」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽:スクリーン・ミュージック
出演:美矢かほる、鶴岡八郎、野上正義、相原香織、立花加倖、矢島弘、起田志郎
65年8月「プロダクション鷹」は、京都で発足した。東映の番線落ちの添え物映画を作らないかという要請に応えてのものだった。本作は、プロ鷹四周年記念作品。鳥がさえずり人間の欲望と無縁の山の中に、一人の獣のような男が現われ、欲望のまま蛮行をくりかえす。強烈なレイプ。山小屋の占拠。迷い込んだアベックの運命は……。鶴岡八郎が好色魔を演じて怪演、恐怖と猟奇の世界に引きずり込む。プロ鷹出演作の多い美矢かほるが好演。
 
「灼熱の暴行」
(1968/67分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督;木俣堯喬 撮影:杉田正二 照明:加藤広明 音楽:スクリーン・ミュージック 録音:東京録音現像 現像:目黒スタジオ
出演:星冴子、美矢かほる、港雄一、鶴岡八郎、金田洋、渡正夫、島田一郎、木村正治、木村昌治、鬼塚大吉、ジョン・クライフトン
同じく「プロ鷹四周年記念」を銘打ち、八丈島小笠原黒潮園にオールロケした大作。何度も映画化された「アナタハン事件」を想わせる漂流譚。沈没船から辛くも逃れ、南海の孤島に漂着した男女五人の生存者たち。孤島で見たものは、異常な状況下で展開する色と欲との人間模様だった。専属を多数抱えたプロ鷹が売り出した星冴子、姉御ぶりも勇ましい美矢かほる、そして重要な役で木俣堯喬監督自身も出演、声の吹き替えは津崎公平だった。
  
「或る色魔」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽:スクリーン・ミュージック 照明:桑名正浩 編集:矢折省一 
出演:谷ナオミ、林美樹、桂奈美、鶴岡八郎、野上正義、山本昌平、乱孝寿
最愛の妻を寝取られた夫は、怒りに震えて狂おしい「色魔」に変貌した。どこにでもいる実直な課長の心の底には、獣が潜んでいた。『好色魔』と対をなし連続的に作られた鶴岡八郎主演の狂気サスペンス。早春のある日、夜更けから朝にかけ単純そうに見える三つの事件が起きた。通り魔。ガス漏れ。スピードの出し過ぎ。初動捜査では、三つの事件に関連があるとは思われなかったが。デビューまもない谷ナオミの若く豊満な肢体も必見だ。
 
   
プロ鷹クロニクル PART-2
9月30日(日)・10月1日(月) 
「娼婦」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠 音楽:河原淳
出演:水城リカ、ほかプロ鷹常連俳優陣
東京に拠点を移し、精力的に映画作りを進めたプロ鷹は、女優の発掘・育成も手がけた。初期の五社出身の女優たちが年長になった為もあるが、自分たちで女優を育てるメリットが大きいだろう。水城リカはその筆頭。本作は、水城をフィーチャーした女性の転落物語。雷鳴の中で自らを回想する女。ハイキングの日、雨さえ振ってこなければ山小屋で犯される事もなかった。純情なればこそ、娼婦にまで身を堕としていく。それでも生きていく女。
 
「広域重要指定犯108号 嬲りもの」
(1969/55分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督・脚本:木俣堯喬 撮影:杉田正二 美術:衣恭介
出演:久保新二、芦川絵里、清水世津、浜田恵美、宮瀬健二、鶴岡八郎、木南清、矢島広志
時代が激しく揺れた69年、「連続射殺魔」といわれた永山則夫の事件を、未解決で永山が逃亡中だった段階で映画化して、一部で大きな反響を呼んだ作品。桃色映画らしくデフォルメされているが、当時の社会の荒れた気分を切り取っていて興味深い。ホテルの庭でガードマンをピストルで射殺。女と車で京都まで逃げるが、事件は意外な方向に。永山役には、その後怪優となる久保新二の若き日。当時人気の芦川絵里、清水世津らが犯される。
 
「裸体の街」
(1969/55分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽スクリーン・ミュージック
出演:芦川絵里、田中小実昌(友情出演)、美矢かほる、清水世津、桂奈美、星リナ、三木悠子、鶴岡八郎、野上正義、黒木護、小代一夫(ミノルフォンレコード)、田中敏夫、関多加志
冒頭からコミさんこと田中小実昌が客引きに登場。主題歌の「裏町人生」に乗せて哀愁を漂わせるスクリーン。下町に生まれ、運命に翻弄される少女。義理の母に育てられたタミ子(芦川絵里)はアイマイ屋に売られ、好色な男に処女を奪われる。家出した彼女は、中学時代の同級生の次郎(黒木護)に出会い、若い恋が芽生える。若く美しい肉体に群がる男たち。懸命に生きる二人。せつなく一途な青春映画の佳作。プロ鷹五周年記念特別作品。
 

9月29日(土)トーク
《本木荘二郎と桃色映画の50年を考える
 後篇:桃色映画を撮り続けて死んだ活動屋が残したものとは…》
鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
本木荘二郎は、東宝撮影所に戻ることも、テレビや一般映画で再起することもなく桃色映画を撮り続け、1977年62歳で急死した。多くの出来事があったが、本木が映画を離れることはなかった。本木が「ピンク」に埋没しようとしていた頃、多くの活動屋が一旗上げようと業界の扉をたたいた。関西でうぶ声を上げためずらしい「エロダクション」プロ鷹もそのひとつだった。「プロ鷹」は、京都の映画人だった木俣堯喬監督が率いて関西から東京に乗り込んだ独立活動屋集団。本木荘二郎を軸に、桃色映画監督の人間模様を追う。関連映像の上映あり。
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹
前編 8月31日(金)〜9月3日(月)

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き


全篇新長田ロケ 「ペデストリアンデッキの対話」初公開
2012年11月2日(金)~6日(火)
神戸映画資料館は、2008年より未来の映像文化の担い手を育成することを目的とした「神戸映画ワークショップ」を開講し、その一環として若手監督を招いて映画製作にも取り組んでいます。
『ペデストリアンデッキの対話』は、『MISSING』(監督:佐藤央)に続く第二弾。全篇新長田ロケでつづる現代の不条理悲喜劇の誕生です。
 
初日の上映終了後、唐津正樹監督の舞台挨拶を予定しています。
  
「ペデストリアンデッキの対話」
(2012/50分/HD[ブルーレイ上映])
製作:神戸映画資料館 
監督・脚本:唐津正樹
撮影・照明:岡山佳弘 
録音:中島雄介 美術:塩川節子 
制作:佐藤麻衣子 助監督:大岸智博
音楽:山川亜紀
出演:丹羽実麻子、田邊正和、岩谷美花、谷五郎 ほか
 
取り立てて目立った人生を送ってこなかった千田は、ふと「自分の店」を持ちたいと思い、不動産屋で働く奥村に協力を仰ぐ。テナントの入居契約を取り付けた千田だったが、想像のみで決意した出店に途方もない現実を見る。それから2人は多少ちぐはぐながらも、出店への可能性をさぐるが…。
  

唐津正樹
1979 年京都生まれ。大阪電気通信大学在学時に大森一樹監督の研究室で映画を学ぶ。卒業後、インターネットTV 会社勤務、一年間で40 本近くの映像を制作&配信。神戸ビエンナーレ(2007/2009 年)やハーバーランドFamilio 内イベントにおいて過去に映像制作&記録を担当。また新長田神戸映画資料館で2008 年より4 度にわたるワークショップのおいて講師を務める。現在は京都にあるKyotoDU においてパナソニック映像機器のコーディネート業務に従事。

試写会でお寄せいただいたご感想
自分が知っている街並みがロケ地だったのもあって、凄く親しみやすい作品だなと思いました。今の自分にピッタリな内容。(20才・女性)
 
常に不穏な空気に満ちている点が良かった。それは街の印象にもつながる。出ている登場人物もまともだと思っていた人が少しずつズレている印象。(38才・男性)
 
なんなんでしょう このジャンル……。コメディのような社会派のような人間ドラマのような。なんなんでしょう……(51才・女性)
 
私も、やりたい事がたくさんあるにも関わらず空回りしたり、体力的にも精神的にも疲れたりとか、やるせない事があります。周りの気持ちを考えられなくなったり、突っ走ってしまったりと、そういうところが色々と気づかされるような作品だったんじゃないかなと。(18才・女性)
 
ひとことで言って荒けずりな作品だなと。けっして悪い意味だけでは無いんで評価がムズカシイんですが…。(34才・男性)
 
現代の若者の不安と無気味さを感じさせる。(62才・女性)
 
おもしろい題材だと思うが、描ききれていたのかどうか。(29才・男性)
 
生きる事に自信のない人間のなさけなさ。やはり、目的をしっかり持って生きなければいけない事が判りました。(79才・女性)
 
訳がわからん。単なる若者の行動ととらえることもできず消化不良です。(20才・女性)
 
OLさんの心の動きがよめました。その後の起業の様子を知りたいです。(65才・女性)
 
不思議な作品。屈折した世相を映し出しているか。(55才・男性)
 
続きがすごく気になります。予想外のラストでした。でも、とてもリアルで説得力があります。(女性)
 
主人公と相手役の心の「かっとう」が上手く表現できていた。(男性)

《料金》
特別鑑賞券(ドリンク&お菓子付き)1000円
映画のみ 700円
※学生、および神戸映画資料館会員は上記価格の200円引きにてご鑑賞頂けます。


ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク ドイツ三部作
11月3日(土)・4日(日)、9日(金)〜11日(日)
 
1970年代、ニュー・ジャーマン・シネマの時代に発表され、注目を集めたジーバーベルクの「ドイツ三部作」を一挙上映。ナチズムを生み出した近代ドイツを前衛的手法で描き出し、ドイツ国内では激しい議論を呼ぶ一方、国際的な評価を得た作品群である。
 
「ルートヴィヒII世のためのレクイエム」
Ludwig- Requiem für einen jungfräulichen König
(ドイツ/1972/134分/DVCAM上映)
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ハリー・ベア、ペーター・ケルン、ペーター・モーラント、ギュンター・カウフマン
 
バイエルン国王であり、リヒャルト・ヴァーグナーのパトロンとしても知られるルートヴィヒII世(1845-1886)。ヴァーグナーのオペラを髣髴とさせる書き割りセットを背景に、ルートヴィヒII世をめぐる夢幻的な物語が、ヴァーグナーからヒトラーを結ぶドイツ史を照らし出す。既存の映画美学を否定する「未来の音楽としての映画」として制作された「ドイツ三部作」の第一作。
   
「カール・マイ」Karl May
(ドイツ/1974/182分/DVCAM上映)
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ヘルムート・コイトナー、クリスティーナ・ゼーダーバウム、ケーテ・ゴルト、アッティラ・ヘルビガー
ドイツの冒険小説家カール・マイ(1842-1912)の半生を描いた「ドイツ三部作」の第二作。ネイティヴ・アメリカンと白人の友情を描いた「ウィネトウ」を始め、映画化されたマイの小説は多数。ヒトラーも熱烈な愛読者だったと言われる。マイを演じるヘルムート・コイトナーは、40年代から50年代にかけてのドイツを代表する映画作家。クリスティーナ・ゼーダーバウムなど、ナチ時代のスター俳優も出演。
 
「ヒトラー、あるいはドイツ映画」
Hitler – Ein Film aus Deutschland
(ドイツ/1977/410分/DVCAM上映)
第1部「盃」(91分)
第2部「ドイツの夢」(126分)
第3部「冬物語の終わり」(93分)
第4部「われわれ、地獄の子どもたち」(100分)
 
監督・脚本:ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
撮影:ディートリヒ・ローマン
出演:ハインツ・シューベルト、ペーター・ケルン、ヘルムート・ランゲ、ライナー・フォン・アルテンフェルス
 
「ドイツ三部作」の掉尾を飾る最大の問題作。ヒトラーおよびドイツ史をめぐるさまざまな視覚的、音楽的、言語的要素のシュールレアリスティックな混合。ジーバーベルクの目指す「ブレヒト+ヴァーグナー」の壮大な実験であると同時に、「未来の音楽としての映画」の完成形を模索する。スーザン・ソンタグから「20世紀最高の芸術作品かつ史上最高の映画」と激賞された。
 
 
共催:ドイツ文化センター・大阪、神戸映画資料館
協力:アテネ・フランセ文化センター

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2プログラム目は200円引き


井上陽一の活弁映画シリーズ 8「江戸怪賊伝 影法師」
2012年11月18日(日)13:30〜
 
活動写真弁士・井上陽一さんが最も得意とする阪妻(バンツマ)の時代劇をご堪能ください。
「江戸怪賊伝 影法師」
(1925 / 70分[18fps]/ サイレント / 16mm)
東亜マキノ等持院
監督:二川文太郎 原作・脚色:寿々喜多呂九平
撮影 : 田中重次郎
主演:阪東妻三郎、マキノ輝子
 
江戸の街に現れた怪賊は影法師と人々に恐れられたが、人情深く貧しい者たちの味方だった……。時代劇に恋愛とヒューマニズムを持ち込むことにより、斬新な映画として大ヒットした。主演の阪東妻三郎は、阪妻(バンツマ)の愛称で親しまれた人気俳優で田村高廣ら田村三兄弟の父である。
本来は前後篇完結の映画だが、残存するフィルムは前半のみ。上映プリントは70年代に埼玉のコレクター大橋正英から大阪の森田留次(明星映画社、日本映画保存協会)、そしてプラネット映画資料図書館へと引き継がれた16ミリフィルムに、欠落部を京都のコレクター田渕宇一郎が入手した9.5ミリプリントから補完したもの。9.5ミリフィルムのブローアップにあたっては、ボレックス撮影機とパテベビー映写機を連結した自作のコマ撮り装置で行ったのでオプチカルプリンターのようにレジ(レジストレーションの略)が取れず、若干のブレが生じ、フォーカスも甘いですがお許しのほどを。 

井上陽一(弁士)
いのうえよういち。1938年、姫路市生まれ。浜星波に師事。60年から活動写真弁士として活躍。02年「OSAKA映像フェスティバル」で『雄呂血』、04年の京都映画祭では『特急三百哩』『からくり蝶』、08年には『実録忠臣蔵』、11年大阪歴史博物館の「浪花の映画事始め」で『僕らの弟』を名調子で活弁するなど、各地の映画祭等で活躍。関西唯一の現役弁士である。

《料金》
一般1800円 学生・シニア1500円
会員1500円 学生会員・シニア会員1300円


[貸館]映画『ひろしま』 神戸上映会
2012年11月16日(金)・17日(土)・19日(月)・20日(火)

『ひろしま』
1953年/104分/モノクロ/ブルーレイ上映
 
出演:月丘夢路、岡田英次、加藤嘉、山田五十鈴 
製作:伊藤武郎 監督:関川秀雄 脚本:八木保太郎 音楽:伊福部昭 撮影:中尾駿一郎・浦島進
監督補:小林大平 助監督:熊井啓
 
58年の時を経て、幻の映画が奇跡の再公開!
広島の市民ら約8万8千人が出演し、原爆が投下された直後の惨状を再現した―

 
自らも広島で被爆した教育学者・長田新が編纂した文集『原爆の子~広島の少年少女のうったえ』を、日本教職員組合が映画化を決定し、八木保太郎の脚色により映画化された本作は、日教組に参加する広島県教職員組合と広島市民の全面的な協力の下で制作され、多数の広島市の中学・高校生と父母、教職員、一般市民等約8万8500人が手弁当のエキストラとして参加した。その中には原爆を直接経験した者も少なくなかったと伝えられている。映画に必要な戦時中の服装や防毒マスク、鉄カブト等は、広島県下の各市町村の住民から約4000点が寄せられた。『ひろしま』で描かれる原爆投下後の圧倒的な群衆シーンの迫力は、これら広島県民の協力なくしてはあり得なかっただろう。
 
東宝出身で戦後独立プロに転じた監督の関川秀雄は、原爆が投下された直後の地獄絵図の映像化に精力を傾け、百数カットに及ぶ撮影を費やして、克明に原爆被災現場における救護所や太田川の惨状等の阿鼻叫喚の修羅場を再現した。
 

お問い合せ:黒潮物語元気な子の会
       小林 090-8961-5019  E-MAIL pon_9640@ybb.ne.jp

《料金》 大人¥1500(税込) 中高生¥900(税込)
小学生以下無料


急遽上映決定!「子宮に捧げる愛の詩・女体拷問研究所の真実」
2012年11月24日(土)〜30日(金)[水・木曜日休館]

 
噂のアダルトメーカーの大ヒット作品
「女体拷問研究所」シリーズが遂に映画化!
全ての女性に捧げる愛とファンタジー。

 
 
「子宮に捧げる愛の詩・女体拷問研究所の真実」
(2012/84分/XDCAM[ブルーレイ上映])R18+
STUDIO GREAT HOPE 作品
配給:STUDIO GREAT HOPE +生駒隆始
監督:Koolong
プロデューサー:生駒隆始、SHIN-ICHI
脚本:淵井正文、SHIN-ICHI
撮影:渡辺厚人 音楽:石山理
出演:飛坂光輝、江波由実子、姫川亜由美、塩入正章、大塚真弓、木内あきら、村野武範
 
女性に対してトラウマを持つ主人公テツヲ。そんな彼の前に、突然現れた女捜査官・鈴と女体拷問研究所の所員達。テツヲは「愛する」ことが出来ない。愛が生まれそうになると身体が拒絶してしまうから……。
AVスタッフ&キャストと映画スタッフが本格的なチームを組んで製作、女体オーガズムAV作品の鬼才Koolongが映画監督に初挑戦。これまでありそうでなかった注目の青春エロス作品だ。
 
[公式サイト]
 

《料金》
一般1500円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


ドキュメンタリー映画 「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」
2012年12月1日(土)〜4日(火)

法隆寺昭和の大修理の最初から携わり、金堂・五重塔が完成するまで棟梁として修理に従事し、薬師寺金堂を復興した宮大工として有名な故・西岡常一(1908-1994)。その発言を中心に、その教えを現在に受け継ぐ若き棟梁の姿などを盛り込み完成したドキュメンタリー。今年2月に公開され、大ヒットにより全国60数館に拡大公開された。
神戸映画資料館では西岡常一生誕100年を記念し、2008年9月に宮大工志望者向けの「西岡常一 社寺建築講座」4部作を上映したが、『鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言』は劇場公開を前提とした作品である。今回の上映は、神戸出身の山崎佑次監督による本年の上映の締めくくりの意味を込めている。
西岡常一の教えを受けた宮大工の石井浩司氏と山崎佑次監督とのトークも聞き逃せない。

12月1日(土)14:40〜
トーク:石井浩司(薬師寺宮大工) × 山崎佑次(監督)
石井浩司=薬師寺中門建設より西岡常一棟梁に師事。現在、東塔解体修理に参加中。

「鬼に訊け 宮大工西岡常一の遺言」(2011/88分/HD[ブルーレイ上映])
製作:『鬼に訊け』製作委員会 配給:太秦
監督:山崎佑次 音楽:佐原一哉 撮影:多田修平 編集:今岡裕之 録音:平口聡 タイトル:上浦智宏
聞き手:青山茂(帝塚山短大名誉教授)、中山章(建築家)、山崎佑次
出演:西岡常一、西岡太郎、石井浩司、速水浩、安田暎胤(薬師寺長老)
ナレーター:石橋蓮司
 
そんなことしたら木が泣きよります
西岡家の床の間には今でも「不東」と書かれた軸が掛けられている。玄奘三蔵法師が経典を求めてインドに旅立、途中で危険な西方に行くのを諌められた時、「志を遂げるまで唐には帰らない」と自らに誓った言葉である。同時に法隆寺の昭和の大修理、薬師寺白鳳伽藍復興工事に携わった西岡常一が終生大事にした言葉でもある。
 
西岡常一、明治41年奈良県生まれ。木のいのちを生かし千年の建物を構築する。戦争による幾度かの応召を挟み、法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を棟梁として手がけ、飛鳥時代から受け継がれていた寺院建築の技術を後世に伝え、「最後の宮大工」と称せられる。平成7年没。
技術の伝承、とりわけ宮大工の奥儀は、言葉ではなく体で覚えるもの、技術は盗むものといわれ長い時間をかけ、厳しい修練の後にごく一握りの者だけが獲得できるものである。しかし、西岡は宮大工の経験と技術、研ぎ澄まされた感覚を若い人たちに最後の力を振り絞り、残された時間と戦いながらあえて言葉で伝えようとしていた。西岡が言葉に託したものは、技術の取得の領域をはるかに超え、我々日本人の失ったものに対する警鐘と回帰ではなかったのではないか。西岡の言葉である「飛鳥に帰れ」とは、永遠なるものへの思いにほかならない。
 
「千年の檜には千年のいのちがあります。建てるからには建物のいのちを第一に考えなければならんわけです。風雪に耐えて立つ―それが建築の本来の姿やないですか。木は大自然が育てたいのちです。千年も千五百年も山で生き続けてきた、そのいのちを建物に生かす。それがわたしら宮大工の務めです」と西岡は言う。木は鉄を凌駕する、速さと量だけを競う模倣だけの技術とは根本的に異なる日本人のいにしえの叡智、そして自然への洞察、千年先へいのちを繋いでゆくという途方もない時間へ執念が、所縁ある人々へのインタビューから浮かび上がってくる…。
 
西岡の「永遠なるものへの想い」、「木との対話」を記録した本作は、我々が顧みることのなくなった根源的な日本人の有り方に再び目を向け、心の復興を願う「祈り」のドキュメンタリー映画だ。
 

西岡常一が関わった建築
「法隆寺三経院」及び「西室」(国宝) 「法隆寺東院礼堂」(重要文化財)
「法隆寺大講堂」(国宝) 「法隆寺東院舎利殿」及び「絵殿」(重要文化財)
「法隆寺東院伝法堂」(国宝) 「法隆寺金堂」(国宝) 「法隆寺五重塔」(国宝)
「法隆寺東室」(国宝) 「明王院本堂」(国宝) 「明王院五重塔」(国宝)
「法隆寺中院本堂」(重要文化財) 「唐招提寺講堂」(国宝)
「法輪寺三重塔」(旧国宝、焼失のため新築再建) 「薬師寺金堂」
「薬師寺西塔」 「玄奘三蔵院伽藍」

山崎佑次
大島渚の『東京戰争戦後秘話 』(1970)『愛の亡霊』(1978)、黒木和雄の『日本の悪霊』(1970)の助監督を務め、金井勝の『無人列島』(1969)『GOOD-BYE』(1971)の美術に携わる。ドキュメンタリー映画『アイヌ・シタッピリ』(1972)『反国家宣言 非日本列島地図完成のためのノート』(1972)を監督。その後、大阪で製作プロダクション(サンクラフト)を立ち上げテレビ番組やPR映画づくりを行う。現在は神戸に住み著述家兼映画監督として活動中。主な著書に「宮大工西岡常一の遺言」(彰国社)、「李朝白磁のふるさとを歩く」 (洋泉社)、「還暦をすぎて始めた骨董露天商という生き方 」(宝島社)、「すかたん」(神戸新聞総合出版センター、11月刊)。

公式サイト

《料金》
一般1300円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円(映画半券持参の方は700円)


年忘れ幻の時代劇
2012年12月8日(土)・9日(日)
「忠臣蔵」
(1933/139分/35mm)
監督・原作・脚本:衣笠貞之助 撮影:杉山公平
音楽:塩尻清八、杵屋正一郎 美術:吉川観方
出演:阪東寿三郎、林長二郎、市川右太衛門、田中絹代、川崎弘子、岡田嘉子
 
日本初の土橋式トーキーは現代劇では『マダムと女房』、時代劇ではこの『忠臣蔵』。林長二郎や市川右太衛門が二役を演じるなど豪華キャストが見どころ。長年、幻の映画と思われていたが35mmの可燃性フィルムが1970年代に三重県で発見され、不燃化プリントが1975年の第12回なにわ芸術祭古典映画鑑賞会として大阪のサンケイホールで初上映された。当時のチラシには「幻の名画遂に発見! 幾多の紆余曲折をへて奇跡的に発見! 天の巻・地の巻一挙上映!」とある。「大忠臣蔵」と改題されたプリントで、途中に『赤垣源蔵』(1938)の一部が挿入されているほか、音声が良好でないことをお断りしておく。
   
「寶の山に入る退屈男」
(1938/65分/16mm)
監督:西原孝 原作:佐々木味津三
脚本:原健一郎 撮影:竹野治夫
音楽:深井史郎
出演:市川右太衛門、高山廣子、國友和歌子、甲斐世津子、原聖四郎
佐々木味津三による大衆小説を原作に、市川右太衛門が主演して1930年に最初の「旗本退屈男」が作られた。以後、右太衛門の当たり役となり、戦後は東横から東映の時代劇シリーズとして定着していった。この『寶の山に入る退屈男』は戦前に作られた最後のシリーズ作品。額に三日月傷でお馴染みの早乙女主水之介が、秩父山中に残された武田家の軍資金百万両を巡る地図争奪戦の中で大活躍する。
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


キートン × ベケット──『フィルム』を中心に
2012年12月15日(土)・16日(日)
サミュエル・ベケットの唯一の映画作品にして、バスター・キートンの最晩年の出演作『フィルム』。この二人の邂逅を出発点に企画した特集上映です。
 
[関連企画] 12月15日(土)
神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊
講師:木内久美子(比較文学研究、東京工業大学)

Aプログラム
「フィルム」Film
(アメリカ/1965/20分/DVD上映)
監督:アラン・シュナイダー 脚本:サミュエル・ベケット
撮影:ボリス・カウフマン
出演:バスター・キートン
キートンが死去する約一年半前に撮影された作品。すでに癌に冒され体調が芳しくなかったキートンは、当初は出演に乗り気ではなかった。だが映画史家ケヴィン・ブラウンローに、「あなたにとって『天井桟敷の人々』のような作品になるかもしれない」と説得され、出演を決心した。冒頭でキートン演じる主人公がカメラの視線を逃れんと疾走する姿が印象的だ。カメラは主人公を執拗に追いかける。両者のチェイスは街頭の人々を巻き込みながら、室内戦へもつれこむ。逃げ場を失った主人公を待ちうける結末とは?
「キートンの空中結婚」The Balloonatic
(アメリカ/1923/27分[18コマ映写]/16mm)
監督:エディ・クライン、バスター・キートン
出演:バスター・キートン、フィリス・ヘイヴァー
キートンが長篇作に移行する1923年に公開された短篇喜劇の最後の時期の傑作。スマートにアウトドアレジャーを満喫する女性と、それと対照的なキートンの悪戦苦闘ぶりが素晴らしい。
 
Bプログラムサミュエル・ベケットのテレビ作品
「幽霊トリオ」Geister Trio
(ドイツ/1978/30分/DVD上映)
BBCおよび南ドイツ放送で「亡霊/影たち」という番組で放映された作品のひとつ。A(遠景)・B(中景)・C(近景)の三点固定で撮影された作品。『幽霊トリオ』という題名は、作品中で繰り返し聴こえてくるベートーヴェンのピアノ三重奏曲『幽霊』の第二楽章第二主題による。テレビという表現媒体で、目に見えない「幽霊」をどう表現するのか──これこそが、この作品の課題である。作品冒頭では全面白壁の室内が映され、続いて女性の声が観客をその室内へと誘う。そこには一人の男が何かを抱えて座っている。すると不意に音楽が聴こえてくる。女の声と男の動作、さらに音楽という三者が反復的に組み合わせられるなかで、「幽霊トリオ」の正体が浮かび上がる。
 
「……雲のように……」… nur Gewölk …
(ドイツ/1978/15分/DVD上映)
『幽霊トリオ』同様、「亡霊/影たち」で放映された作品。作品のタイトルは、W・B・イェイツの詩「塔」の一節からとられている。イェイツの詩に似て、『……雲のように……』では、男が亡き女の幻影を想う。不意に画面に現れる女の顔。だがそれはすぐに消える。女の顔は男性の夢想なのか、それとも亡き女の幽霊的な現れなのか。画面上ではこの二つのイメージが交錯している。
 
「夜と夢」Nacht und Träume
(ドイツ/1983/10分/DVD上映)
南ドイツ放送局の依頼でベケットがドイツ語で執筆した作品。作品中で聴こえてくる音楽は、シューベルトの歌曲『死と乙女』である。この歌曲では若い女と死神との対話が歌われる。若い女は死神を拒むが、死神は穏やかな死へと女を誘う。同様に『夜と夢』でも、死との穏やかな和解の兆しが描かれている。覚醒状態と夢とを行き来するなかで、主人公は聖餐に似た儀式を夢に見る。
 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2プログラム目は200円引き
[レクチャー:第11回 音・イメージ・言葉──キートン×ベケット=幽霊] 参加者は1プログラム目も200円引き

企画:木内久美子、神戸映画資料館 協力:Samuel Beckett Estate


[貸館]フェラスティーン(パレスティナ)、フェダイーン、ガザ 広島、長崎、沖縄、
   そして現在進行中の福島から、そしてガザへ

Ferastine,Palestine,,Fedaeen,Gaza
Hiroshima, Nagasaki,OKINAWA,
then still spreading the nuks radiation ongoing Fukushima
2012年12月21日(金)
 
開場:17:30
開演:18:00
「パレスチナ1976−1983 パレスチナ革命からわれわれが学んだもの」布川徹郎(110分)
Palestine 1976-1983 : What We Learned from the Palestinian Revolution  Nunokawa Tetsuro(110min)
(休憩:10分)
開演:20:00
「2010 Asian Caravan to Gaza」阪口浩一 BLUE
2010 Asian Caravan to Gaza Sakaguchi Koichi BLUE
(終了予定時刻 21:00)
 

お問い合せ:BLUE 080−7009−5925

《料金》 ¥1500


『二つの祖国で 日系陸軍情報部』公開記念
「東洋宮武が覗いた時代」「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
 
すずきじゅんいち監督、渾身の日系史ドキュメンタリー
三部作一挙上映!
 
2012年12月21日(金)〜23日(日)「東洋宮武が覗いた時代」
撮った。生きた。戦った。
かつてアメリカに日系人強制収容所があった—
第二次大戦中、アメリカ政府は市民権を持つ日系人、在米日本人を強制的に収容所に押し込めました。その収容所に禁じられたレンズを隠し持ち、手製のカメラを完成させて、その実態を写した写真家がいました。東洋宮武、その人です。そして東洋と親交があった20世紀を代表する写真家アンセル・アダムスとエドワード・ウェストン。彼らの作品と共に、東洋の500枚の写真で証言しながら、収容所の真実と日系人の歴史を描く感動のドキュメンタリーです。
「東洋宮武が覗いた時代」Toyo’s Camera
(2008/日米合作/98分/HD[ブルーレイ上映])
製作:Toyo’s Camera Film Partners(UTB フイルムヴォイス 東北新社 米国日本ハム)
制作:UTB+フイルムヴォイス
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち 
撮影監督:小渕将史(UTB)、本間秀幸(日本部分) 
編集:水原徹 音楽:喜多郎
出演:アーチーミヤタケ、ダニエルイノウエ、ジョージタケイ、渡部昇一、細江英公、ジミーサコダ、スティーブンオカザキ
 このドキュメンタリーに写る約500枚の写真にアンセル・アダムスとエドワード・ウェストンの作品も登場。風景写真の第一人者として有名なアダムスが写したものは収容所の人物主体の写真でした。東洋が師と仰ぐウェストンは8×10インチの大判カメラを使用する先鋭的な写真家。収容所でのふたりの感動的な出逢いは、我々に深い感銘を与えます。監督はアメリカ在住のすずきじゅんいち。初のドキュメンタリー作品。
[公式サイト]
 
2012年12月24日(月・祝)・25日(火)・28日(金)「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
 
名誉のために命を賭け、栄光と偏見に挑んだ65年目の真実。
兵士たちの最後の証言で綴るドキュメンタリー
知られざる歴史のヴェールが開かれる!

 
「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
442 Live with Honor, Die with Dignity
(2010/日米合作/97分/HD[ブルーレイ上映])
製作:442フィルムパートナーズ(UTB フイルムヴォイス NTTラーニングシステム、かねふくアメリカ、米国日本ハム、トレンド社)
制作:UTB+フイルムヴォイス
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち 
撮影監督:小渕将史 
編集:水原徹 音楽:喜多郎
 アメリカ陸軍442連隊は、第二次大戦時に日系二世で編成された部隊で、アメリカ軍史上最も多くの勲章を受けた。
 本作は父母の祖国・日本と戦う苦悩を抱えながら、アメリカの中で人種差別と戦い、ヨーロッパ戦線ではファシズムと戦った伝説の兵士たちのドキュメンタリー。終戦後、トルーマン合衆国大統領は「諸君は敵だけでなく偏見とも戦い、勝ったのだ」と賛辞を送り、自ら生還者を激励した。
 アメリカ国内における日系人の地位向上に寄与しただけでなく、フランスをはじめとしたヨーロッパ諸国では、長期間ナチスドイツに占領されていた自分たちの町を解放に導いたヒーローとして、現在も語り継がれている。
 しかし、日系人強制収容所から出征した兵士たちが、ユダヤ人強制収容所を解放したという真実は、ほとんど知られていない。
 日系アメリカ人として、星条旗を背負って戦う自尊心と愛国心、その一方で敵性国民に指定された人種差別への怒りと哀しみ、葛藤を描いた問題作。現在、元兵士たちは80代半ばから90代と高齢になり、当事者たちによる貴重な証言はこれが最後になるかも知れない。
 
「東洋宮武が覗いた時代」に続く米国日系人史映画の第二作目。前作同様、監督はベテランのすずきじゅんいち、音楽はゴールデングローブ賞やグラミー賞受賞者の喜多郎、その他メインスタッフも、同じメンバーである。 ハリウッドの日米バイリンガル放送局UTBと、日本からはフイルムヴォイスが共同で製作に当る。
 
[公式サイト]
 

《料金》
【当日券】1000円


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。