連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見
第7回 ネオリアリズムから遠く離れて──『無防備都市』再考
2019年7月7日(日)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
15:10〜 参考上映
「無防備都市」
Roma città aperta
(イタリア/1945/103分/16mm)
監督:ロベルト・ロッセリーニ
脚本:セルジオ・アミディ、フェデリコ・フェリーニ
撮影:ウバルド・アラータ
出演:アルド・ファブリッツィ、アンナ・マニャーニ、マルチェロ・パリエーロ
17:00〜(終了予定18:30) 講座
ロッセリーニの名前はネオリアリズムという言葉と分かちがたく結びついている。むろん、この映画作家はそんな言葉に収まってしまうような小さな存在ではないのだが、ロッセリーニに貼られたこのレッテルが、彼の地位を不動のものにする一方で、その全体像を見えづらくしてきたことも確かである。ネオリアリズムの誕生を世界に知らしめ、イタリア映画史上最も重要な作品と言われたりもする『無防備都市』でさえ、今見直してみれば、多くの人が抱いているネオリアリズムのイメージとはいろいろな点でズレていることに気づくだろう。今回の講座では、様々な要素が混在するこの〈不純な〉ネオリアリズム映画を、『戦火のかなた』や『ドイツ零年』はもちろん、ファシズム時代のイタリア映画などとの関係も探りつつ、さらにはメロドラマや映画的クリシェなどといった様々な観点からも、考察していく予定である。
井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」
《参加費》 参考上映付き 一般1500円 学生1000円 会員1200円