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Printロカルノ国際映画祭凱旋『ハッピーアワー』公開記念
濱口竜介の軌跡 東京=東北=神戸

 

11月14日(土)・15日(日)
21日(土)〜23日(月・祝)
28日(土)〜30日(月)

 

人間描写と映画表現、このあまりにもかけ離れた二つの作業を、完全に平等に、かつ同時に行おうとする濱口竜介は、果たして映画の救世主なのか、それとも破壊者なのか…今後の映画史が決めてくれるだろう。
黒沢清(映画監督)

 

濱口竜介監督 来館日決定
*都合により、下記の通り監督挨拶の回を変更いたします。何卒ご了承くださいますようお願いいたします。(11月12日更新)
14日(土) 監督挨拶は中止となりました
15日(日)最終回 すべての回の上映終了後、監督挨拶
21日(土)最終回の上映終了後、監督挨拶

第1週

nanikuwanu01「何食わぬ顔」

(2003/98分/8mm[DVCAM上映])
製作・監督・脚本・編集:濱口竜介
撮影:渡辺淳、濱口竜介、東辻賢治郎
録音:井上和士 音楽:David Nude、ROMAN
出演:松井智、濱口竜介、岡本英之、遠藤郁子、石井理絵

友人に言われるままに亡兄の遺作となる8ミリ映画を撮影する野村。彼の煮え切らない態度が周囲を戸惑わせる。

技術的な諸々の難点を除けば(これは大学の映研で撮られた8ミリ映画なのだ)、濱口竜介が既に濱口竜介であることが驚異的だ。的確な演出とショット割り。映画と映画内映画の関係を複雑かつ緻密に構成した脚本。しかもここには、若さと仲間との親密さから来る瑞々しさが溢れている。

 

PASSION01「PASSION」
(2008/115分/HD[Blu-ray上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
プロデューサー:藤井智 監督・脚本:濱口竜介
撮影:湯澤祐一 照明:佐々木靖之
録音:草刈悠子 美術:安宅紀史、岩本浩典
編集:山本良子 助監督:野原位
出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、岡部尚、渋川清彦

同級生の結婚を祝福する若者たち。しかしそこで男の浮気が発覚し、カップルは別々の夜を過ごすことになる。

濱口竜介の名を世界に知らしめた記念碑的作品。5人の男女の恋愛感情がもつれ合い、ほんのわずかのきっかけでさえ激しく変化する様が、緻密に構成された脚本と周到でねばり強い演出の下に、繊細に、かつエモーショナルに描かれる。そして緻密さと周到さに支えられ、偶然を超えた次元で、今や伝説となった映画の奇跡が訪れる。

 

THE_DEPTHS01「THE DEPTHS」
(2010/121分/HD[Blu-ray上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科・韓国国立フィルムアカデミー
プロデューサー:原尭志、シム・ユンボ
監督:濱口竜介 脚本:濱口竜介、大浦光太
撮影監督:ヤン・グニョン 照明:後閑健太
整音:金地宏晃 美術:田中浩二
編集:山崎梓 助監督:菊地健雄
出演:キム・ミンジュン、石田法嗣、パク・ソヒ、米村亮太朗、村上淳

韓国人カメラマン・ペファンは日本滞在中に男娼のリュウをモデルとして見出すも、過酷な運命が二人を待つ。

東京藝術大学と韓国国立映画アカデミーの共同製作。キャストだけでなくスタッフも混成チームという容易ならざる状況を、濱口は作品そのものの危うい魅力へと転化し、韓国/日本、ホモセクシャル/バイセクシャル/ヘテロセクシャル、大人/子供、金持ち/貧乏人、堅気/ヤクザといった境界線の上で登場人物達を漂流させる。
 
*15日(日)の回は英語字幕版での上映

 

第2週

naminooto01「なみのおと」

(2011/142分/HD[Blu-ray上映])
製作:東京藝術大学大学院映像研究科
プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:北川喜雄 整音:黄永昌

2011年7〜8月に撮影された岩手県から福島県沿岸部の、津波被災者6組11人への対話形式インタビューの記録

酒井耕と共同監督で、東日本大震災についてのドキュメンタリー。濱口と酒井は、震災の爪痕を撮影したり、地震発生時の記録映像を引用したりはせずに、被災者の証言を記録することに集中する。その際二人は、ドキュメンタリーでは掟破りともされかねないある方法を用いるが、これは被災者の表情により迫るための真摯な試みだ。

 

kesennuma01「なみのこえ 気仙沼」
(2013/109分/HD[Blu-ray上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:佐々木靖之 整音:鈴木昭彦

2012年1月から2013年3月に行われた宮城県気仙沼市に暮らす7組11名への対話形式インタビューの記録。

人口が減り続け復興の未来の見えない気仙沼だが、未来への希望を人々は微かに見ようとしている。濱口と酒井は『なみのおと』の方法論を受け継ぎながらもそこに着目し、震災に直接関わる内容を超えて、被災者の過去をも掘り起こそうとする。喋るのが苦手な人にあえてカメラの前で語らせることで、確かに見えてくるものがある。

 

shinchimachi01「なみのこえ 新地町」
(2013/103分/HD[Blu-ray上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
実景撮影:北川喜雄 整音:鈴木昭彦

2012年1月から2013年3月に行われた福島県新地町に暮らす6組10名への対話形式インタビューの記録。

震災後約一年、原発事故後の不安と海の汚染や海産物の風評被害の下にある福島県新地町という、被災地の中でも相当に微妙な状況の下で、濱口と酒井は、『なみのおと』の特異な方法論を先鋭化・徹底化させながら、複雑なものを単純化せず、分かり易くせずに提示し、観客に共有させようと、あるいは共有の困難さを示そうとする。

 

utauhito01「うたうひと」
(2013/120分/HD[Blu-ray上映])
製作:サイレントヴォイス
プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕
撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之
整音:黄永昌

宮城県に暮らす語り手による東北地方伝承の民話語り。これは同時に彼らを訪ね続けた聞き手の記録でもある。

酒井耕との共同監督作品で被災地に取材しながら、ここで濱口と酒井が取り上げるのは民話(昔話)を語る老人達である。取材やインタビューの経験から触発されたこの作品では、語りは聞き手の反応があってのコミュニケーションであることが浮き彫りにされ、さらには映画とは何かの根源さえも問われることになるだろう。

 

第3週

shinmitsusa01「親密さ」

(2012年/255分[途中休憩あり]/HD[Blu-ray上映])
製作:ENBUゼミナール
監督・脚本:濱口竜介 撮影:北川喜雄
編集:鈴木宏 整音:黄永昌
助監督:佐々木亮介 制作:工藤渉
劇中歌:岡本英之
出演:平野鈴、佐藤亮、伊藤綾子、田山幹雄

ともに演出家であり、恋人同士でもある令子と良平は互いに傷つけ合いながら舞台劇『親密さ』初演を迎える。

4時間を越える大作だが、ENBUゼミナールの演技コースの修了作品としてスタートした企画である。映画と映画内の舞台劇の関係においてだけでなく、それぞれの中でも、現実と虚構が複雑、微妙に交錯し続け、虚実の彼岸にあるリアリティーの核心が胸を揺さぶる。美し過ぎるラストが、岡本英之の音楽とともに脳裡に焼き付く。

 

eienni01「永遠に君を愛す」
(2009/58分/HD[Blu-ray上映])
製作:竹澤平八郎 監督:濱口竜介
脚本:渡辺裕子 撮影:青木穣 照明:後閑健太
録音:金地宏晃 美術:原尚子 編集:山崎梓
助監督:佐々木亮介 音楽:岡本英之
出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、菅野莉央、天光眞弓、小田豊

結婚式当日の花嫁、永子は幸福の絶頂…のはずが、永子には婚約者・誠一に言い出せない秘密があった。

秀れた監督でもある渡辺裕子の脚本は、普通に映画にすればこの上なくウェルメイドなスクリューボール・コメデイーとなったはずだ。しかし濱口は普通ではない。生まれ落ちたのは、凍りついた笑いと不思議な解放感が共存する怪作である。ヒッチコックの『スミス夫妻』に匹敵するこの異常事態を、あなたは見ずにいられるのか?

 

bukimi01「不気味なものの肌に触れる」
(2013/54分/HD[Blu-ray上映])
製作:LOAD SHOW、fictive/
監督:濱口竜介
脚本:高橋知由 撮影:佐々木靖之
出演:染谷将太、石田法嗣、渋川清彦、瀬戸夏実、水越朝弓、河井青葉、村上淳

斗吾(トウゴ)の暮らす町に弟・千尋が引っ越して来た。その日以来斗吾の町では不穏なできごとが起こり始める。

わずか55分の内に、自らを異質性に向けて解放し変容し続ける濱口の特異性が凝縮されている。脚本の高橋知由、踊りの指導を担当し出演もしている砂連尾理らとの出会いが濱口に進化/深化をもたらしている。染谷将太と石田法嗣の踊りの官能性と荘厳さ、不可解かつ表面的には不連続な物語にもかかわらず一貫して持続するエモーション、端正さと異様さとが入り交じるショット構成等々、必見。

 

作品解説:木村建哉

 

運のいい映画たち
月並みだけれども自作への思いは、ただただ感謝の言葉に集約される。カメラの前に立ってくれた人たち、カメラの後ろにともにいてくれたスタッフたち、その状況自体を可能にしてくれたすべての人たちにお礼を言いたい。ありがとうございます、私たちが時間を費やした作品は幸運なことに、まだ見る意味を失っていないらしいですよ、と。運のいい映画たち。その字の通り、まだまだどこまでも運ばれて欲しいし、新たに、もしくは何度でも、観客の元まで届くことを願う。

濱口竜介

濱口竜介
1978年、神奈川県生まれ。東京大学文学部卒業後、助監督やテレビ番組のADを経て、東京藝術大学大学院映像研究科に学び、修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。東日本大震災後、東北に拠点を置き、被災者へのインタビューから成る『なみのおと』『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(共同監督:酒井耕)を制作。『なみのこえ』が山形国際ドキュメンタリー映画祭のコンペティションに選ばれる。2012年、4時間を越える長編『親密さ』を完成させ、東京・渋谷で「濱口竜介レトロスペクティヴ」開催、2週間のレイトショーで1500人の動員を記録する。2013年春、染谷将太を主演にむかえた新作『不気味なものの肌に触れる』を引っ提げ神戸に移住。関西のミニシアター5館を横断する特集上映「濱口竜介プロスペクティヴ」を開催。自ら企画した「即興演技ワークショップ in Kobe」の参加者を演者にむかえ長編劇映画『ハッピーアワー』を監督。本作は今年のロカルノ国際映画祭で主演の4人が最優秀女優賞を受賞、12月からの劇場公開に期待が集まっている。

 

《料金》
3回券 3000円  1回券 一般:1300円 学生・会員:1100円
*3回券は複数人で使用可 *3回券は『親密さ』には使用できません
「親密さ」 前売[日付指定]1800円 当日 一般:2000円 学生・会員:1800円
*「親密さ」前売券について
10月19日より、神戸プラネットシネマ倶楽部会員およびサポーター会員限定で先行予約を受付(精算は鑑賞当日)。メールに会員番号・氏名・鑑賞日を記入しお申し込みください。10月26日より一般発売開始。神戸映画資料館および元町映画館にてお買い求めください。

『ハッピーアワー』神戸先行公開
12月5日(土)〜 元町映画館 078-366-2636

HH1


神戸が舞台の戦前アクション映画
2015年10月 24日(土)サイレント上映 / 25日(日)生演奏付き上映

国際都市とアクション映画は相性が良い。冒険と秘密が似合うからだろう。19世紀末、舶来の新発明キネトスコープが紹介され、日本映画史の第一歩を刻んだ神戸もまた、長く世界に開かれた港町である。今回は神戸が舞台の戦前アクション映画を二本お贈りする。

「大活劇 爭鬪」
(1924 / 101分[16fps] / サイレント / 35mm)
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター
東亜キネマ(等持院)
監督:金森万象
原作・脚本:壽々喜多呂九平
撮影:大塚周一
出演:高木新平、関操、青山万里子、森静子、荒木忍、松葉文子

 
ニューヨークで知り合った南京鼠のサム、寄席芸人李鵬勝、お花の三人は、李が娘・桃鈴を残した町・神戸にやって来る。サムは李の娘探しを手伝うが、彼女には魔の手が迫りつつある…。サム役の高木新平は旧居留地の大阪商船ビルから神戸オリエンタルホテルに吹き替えなしで飛び移る超絶アクションを見せ、「鳥人」の愛称とともに人気を得た。

 
 
 

ougon03「黄金の弾丸」
(1927 / 89分[16fps]欠落あり/ 染色 / サイレント / 35mm)
東亜キネマ(甲陽)
監督:印南弘 原作:ヘルマン・ランドン
脚本:竹井諒 撮影:小野平一郎
出演:宮島健一、一木突破、大岩栄二郎、千種百合子、中村園枝、島田富美郎、月岡正美

ougon02東亜キネマ甲陽撮影所で製作された探偵活劇。阪神間や神戸のハイカラな都市の情景をふんだんに盛り込み、スリル満点のアクション映画に仕上げたのは当時新進気鋭の監督、印南弘。旧居留地跡でのカーチェイス、逃げる悪党と追う騎馬警官、神戸港船上でのラストシーンなど大正末期のモダニズムを感じさせる逸品。残念ながら全7巻のうち5巻目は欠落。
 

演奏:Momee(トイピアノ、キーボード)
弁士と音楽でサイレント映画を修復・再上映するチーム「深海無声團」のメンバー。今回はソロで即興的な演奏を披露します。

 
協力:東京国立近代美術館フィルムセンター

《料金》入れ替え制
サイレント上映 一般1200円 学生・シニア1000円 会員1000円 会員学生・シニア900円
演奏付き上映 一般1400円 学生・シニア1200円 会員1200円 会員学生・シニア1100円
*招待券のご利用不可 *当日に限り2本目は200円割引


ジャック・ターナーの傑作怪奇ノワール
2015年10月3日(土)・4日(日)
「怖いもの見たさ」とは言うが、「怖いもの聞きたさ」とは言わない。やはり怖いものは見るものなのだろう。パリ市民を恐怖のどん底に陥れたファンタスマゴリから今日のJホラーまで、映像の歴史は怪奇の歴史でもある。今回はハリウッド黄金期の怪奇映画から、ジャック・ターナー監督作品を上映する。
 
catpeople02「キャット・ピープル」Cat People
(アメリカ/1942/73分/16mm)
製作:ヴァル・リュートン
監督:ジャック・ターナー
撮影:ニコラス・ムスラカ
出演:シモーヌ・シモン、ケント・スミス、ジェーン・ランドルフ、トム・コンウェイ

造船設計技師のオリヴァーは、セントラル・パークの動物園で黒豹の写生をしていたイレーナと知り合いやがて結婚するが、猫族の末裔という妄想にとりつかれたイレーナは、自分が興奮すると黒豹に変化するのではないかと苦悩しはじめる…。ジャン・ルノワールの『獣人』などフランスでも活躍したシモーヌ・シモンのアメリカでの代表作。ヴァル・リュートンがプロデュースしジャック・ターナーが監督した怪奇映画の第一作。

 

walkedwithzombie01「私はゾンビと歩いた!」I Walked with a Zombie
(アメリカ/1943/63分/16mm)
製作:ヴァル・リュートン
監督:ジャック・ターナー
脚本:カート・シオドマーク
出演:トム・コンウェイ、フランシス・ディー、ジェームズ・エリソン
 
南国カリブ海の国ハイチの農園に招かれた美人看護婦。彼女はそこでブードゥー族の呪いをかけられ生きた屍となって生と死の間をさまよう農園主を見るが…。30年代に流行したモンスター主役の怪奇映画の裏をかいて低予算で製作した『キャット・ピープル』に続くヴァル・リュートン&ジャック・ターナーのゾンビ映画。

 

参考上映(イギリス/95分/16mm)
 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般900円 学生・シニア800円 会員800円 学生・シニア会員700円
《割引》当日に限り2本目は200円引き

新収蔵ポーランド映画特集2
2015年9月5日(土)・6日(日)
ポーランド映画の輸入配給、演劇研究家として知られるYAKOの山田正明氏が遺したフィルムや映画文献、オリジナル・ポスター、ビデオテープなどが神戸映画資料館に寄贈され2013年に6作品を上映したが、今回はその第2弾。

 
zycie01「家族生活」Zycie Rodzinne
(1970/72分 92分/35mm)
製作:映画製作集団トール
監督・脚本:クシシュトフ・ザヌーシ
撮影:ヴィトルト・ソボチンスキ
出演:マヤ・コモロヅスカ、ダニエル・オルブリフスキ、ヤン・クレチマル、ハリーナ・ミコワイスカ
ヌーヴェル・ヴァーグの後継世代〈モラルの不安派〉の代表的監督ザヌーシの長編第2作。若い技師ヴィッテは父が倒れたとの報を受け、友人を伴って故郷へ帰る。風変わりな妹と妻の妹と暮らす父は病気ではなかったが、孤独な父の心情を思い去るのをためらうのだった…。救いようのない家庭崩壊と人間不信を描いた作品で、シカゴ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。

 

「偶然」Przypadk
(1981/119分/35mm)
製作:映画製作集団トール
監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ
撮影:クシシュトフ・パウルスキ
出演:ボグズワフ・リンダ、タデウシ・ウオムニツキ、ズビグニエフ・ザパシェビッチ
「トリコロール」3部作などで知られるキェシロフスキ監督の初期代表作。 ポーランドにとって激動の1980年が始まろうとしていた時代を背景に、ある医学生が辿り得る三通りの人生を描き出す。検閲による上映禁止処分を受け、完成から6年後の1987年に公開された。

 

austeria01「宿屋」Austeria
(1982/109分/35mm)
製作:映画製作集団カードル
監督:イェジー・カヴァレロヴィチ
原作:ユリアン・ストゥリコフスキ
撮影:ジグムント・サモシュク
出演:フランチェシカ・ピイエツカ、ヴォイチェフ・プショニアック、ヤン・シュルミエイ
『尼僧ヨアンナ』で知られる〈ポーランド派〉の巨匠カヴァレロヴィチが描くポーランド系ユダヤ人の記憶。1914年、第一次大戦勃発直後の東ガリチア地方の小さな街が舞台。ユダヤ人たちがコサックの虐殺から逃れオーストリアに向かう途中、ユダヤ人タグが営む宿屋に立ち寄るが…。

 

プラネット・シネマテーク
《会費》収蔵協力費として
入れ替え制1本あたり
会員900円 会員学生・シニア800円
《割引》2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録をお願いします。


戦後70年特集 収蔵フィルムで綴る 戦時下の暮らし
2015年8月29日(土)・30日(日)

Aプログラム
参考上映+講座:運命の歌姫 李香蘭
8月29日(土)13:00〜(終了予定15:10)
羽鳥隆英(神戸映画保存ネットワーク研究員)
山口淑子(1920年‐2014年)とは何者か? 敗戦70年を迎えるに際し、この難問に取り組みたい。彼女が中国人歌手=女優李香蘭の仮装の下、15年戦中期の日本人を熱狂させ得たのはなぜか? 敗戦後、彼女はいかに日本の芸能界に「復員」し、さらにアメリカや香港の芸能界に進出したのか? あるいは今年、彼女にはいかなる別れの言葉が送られたのか? 激動の世紀を生きた運命の歌姫の軌跡を辿りつつ、新たな研究の可能性を探りたい。

 

Bプログラム
issen01「一銭の力」

(1940/17分/16mm)
愛國兒童協会作品 監修:国民貯蓄奨励局
後援:大蔵省企画院 原案:天野雉彦
製作:長瀬鉄男 撮影・現像・録音:日本ラヂオ・トーキー
福島県小高町の小学生が登校中に一銭のお金を落としたが、授業で先生から偉人の話を聞いた。その人は明治の水害で天皇から下賜されたお金をもとに無駄遣いせず増やし学校に奉安殿を寄付した。感動した少年は下校する際に必死にお金を探す。勤倹貯蓄、消費節約がテーマ。

 

santa01「三太のラッパ」(1941/39分/16mm)
原作:高須賀公正 監督:津田不二夫 撮影:源裕介
出演:林文夫、高橋君子、田中春男、末鮫洲
愛媛県三津浜梅田小学校。出征する兵隊さんを送るために楽隊を作りたいと願う三太らが、仲間を集め先生と共に練習する。ラッパを買うために果物市場で働き病に倒れるが、仲間の皇国少年音楽隊が出演したラジオを聴いて元気が出る。「愛国行進曲」「愛馬進軍歌」「出征兵士を送る歌」などの軍歌が聴ける。部分欠落、画像不良。

 

Cプログラム
tachiaga01「銃後美談 起ち上った少年」(1940/29分/16mm)
提供:国民精神総動員聯盟、大阪朝日新聞社
脚本・監督:細山雅皓 撮影:源祐介 装置:小池一美
照明:服部卯三郎
出演:小高まさる、小高たかし、鴨川京子、土屋詩郎、小柳壽郎、竹村信夫、一條真一郎、観堂正夫、小山富士雄
一家の大黒柱である父親が出征し、母と弟との三人で暮らす貧しい一家の少年が大阪朝日新聞の配達をして母親を助ける銃後の美談。堅忍持久の精神こそ国民の心構えひとつであると訴える。

 

gohei01「五作ぢいさん」(1940/31分/16mm)
監督:徳光壽夫 撮影:高井四郎 装置:小池一美
照明:轟木次郎
出演:横山運平、片桐日名子、朝川清、河田京子、竹村信夫、田邊若男、大友純、國方博之、澤村春次郎
尋常小学校国語読本・巻七の挿話を映画化。病に倒れ納税免除になっていたじいさんが、納税のために溜めたお金を自ら村に差し出す感動美談。アナウンサーの徳光和夫の父で神戸出身の映画監督・徳光壽夫の珍しい残存作品。

 

Dプログラム
akatsukino01「暁の路(無声版)」(1935/51分/16mm)
原作:簡易保険局 脚色・監督:清涼卓明 撮影:藤井清
照明:内田照天 舞台設計:伊藤熹朔 舞台装置:橋本欣三
出演:浅田健二、歌川八重子、森山保、山縣直代、一條桂子、片岡好右ヱ門
父を亡くし母の苦労で大学を卒業したものの職はなく、毎日職探しに明け暮れる主人公。自分が今あるのは亡き父が残してくれた郵便年金のお陰と知る。ある日、酒場で不良に絡まれた紳士を助けたのがきっかけでその紳士の勤める会社に就職ができた。トーキー作品の字幕入無声版。

 

kiku01「菊作る家」(1941/27分/16mm)
企画:逓信省 原作・脚色:青地忠三
潤色・演出:下間登良男 撮影:宮崎正男
出演:第一協団・全日本自由契約映画俳優協会(浅田健三、木下ゆづ子、金光嗣郎、阿部好司、文野朋子、國方博之、清水元、原田耕一朗、上野市郎、千葉栄)
紀元二千六百年紀念映画。景気が良かった頃に遊び惚けたために不景気になって困窮した老人の例を示した後、父が菊作りをする一家に場面は転じ、長兄が出征中にもかかわらず三男が飲み歩くのを次男が戒め、兄弟ともに工場の団体年金に加入し銃後の使命を果たす。最終部欠落。

 

*すべて当時のプリントにつき画像・音声共に不良で、欠落部分もございます。予めご了承ください。

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円 会員1000円 学生・シニア会員900円
《割引》当日に限り2プログラム目は200円引き


エドガー・G・ウルマー入門
2015年8月23日(日)・24日(月)

講座:〈亡命〉映画作家エドガー・G・ウルマーが辿ったまわり道
8月23日(日)16:30〜 参加費1000円
井上正昭(翻訳・映画研究)
〈亡命〉という言葉は適当ではないかもしれない。しかし、エドガー・G・ウルマーという映画作家が生涯置かれていた状況を知れば知るほど、”exile” という言葉こそそれにふさわしいと思えてくる。『日曜日の人々』の制作に共に携わったワイルダー、シオドマク、ジンネマンらがハリウッドで成功を収める姿を横目で見ながら、同じヨーロッパ移民組のなかで彼らよりも遙かに映画的才能に恵まれていたはずのウルマーだけは、なぜ生涯日陰の道を歩まねばならなかったのか。ヨーロッパで生まれ育ち、そこで映画デビューし、その後渡米してハリウッドで成功をつかみかけた矢先に、メジャーで活躍する道をなかば完全に断たれ、マイナー映画、アンダーグラウンド映画、少数民族向け映画、はては健康PR映画といった、ありとあらゆる映画の周縁をさまよい続けた、真にマージナルな映画作家ウルマー。彼の映画にはヨーロッパの影がいつもちらついて見えるのだが、その一方で、晩年、ヨーロッパで映画を撮ることを余儀なくされてからも、彼はハリウッドで成功する夢を決して諦めなかった。いわば、ヨーロッパとアメリカの狭間で帰るべき場所を失ってしまった故郷喪失者。そしてそんな故郷喪失者たちは、『黒猫』や『恐怖のまわり道』を始めとする彼の映画作品の中でも暗に繰り返し描かれてきた。ウルマーはしばしば〈B級映画の王者〉などと呼ばれる。たしかにそれは間違ってはいない。しかし、この呼称がウルマーという映画作家を型にはめてきたことも事実である。この講座では、伝説と事実が分かちがたく入り交じり、いまだ謎に満ちた彼の生涯を、新資料にもとづいて改めて辿り直しながら、より大きな視点からウルマーの映画について再考してみたい。そしてそれは、表には描かれることのなかった、映画史の影の領域を浮き彫りにすることにもなるはずである。

「日曜日の人々」生演奏付き上映
8月24日(月)18:40〜 ピアノ演奏:柳下美恵
nichiyobino01nichiyobino02
「日曜日の人々」Menschen am Sonntag
(ドイツ/1930/73分/DVD提供:株式会社ブロードウェイ)
製作:モーリツ・ゼーラー、ハインリッヒ・ネーベンツァール
監督:ロバート・シオドマク、エドガー・G・ウルマー 脚本:ビリー・ワイルダー、カート・シオドマク
撮影:オイゲン・シュフタン 撮影助手:フレッド・ジンネマン
編集:ロバード・シオドマク(クレジットなし)、オイゲン・シュフタン(クレジットなし)
音楽:オットー・シュテンツェル 美術:モーリツ・ゼーラー
出演:エルヴィン・シュプレットシュテーサー(タクシー運転手)、ブリギッテ・ボーヒャート(レコード店員)、ヴォルフガング・フォン・ヴァルタースハウゼン(ワイン店員)、クリストゥル・エーラース(エキストラ女優)、アニー・シュライヤー(モデル)
後にハリウッドで名を馳せる監督らが一堂に会し、ラフな脚本だけを頼りに、素人俳優を使ってほぼ即興で撮り上げた彼らの記念すべき処女作。当時のベルリンの日常を活写したこの映画は、『伯林-大都会交響楽』などの前衛作品を受け継ぐ一方で、その斬新な映画作りはヌーヴェルヴァーグを遙かに予告しており、今見ても新鮮である。
Photo by スズキマサミPhoto by スズキマサミ

 
 

wifeofmont「モンテ・クリストの妻」The Wife of Monte Cristo
(アメリカ/1946/78分/16mm/日本語字幕無し)
製作会社:PRC(Producers Releasing Corporation)
製作:レオン・フロムケス 共同製作:ジャック・D・グラント
監督:エドガー・G・ウルマー 脚本:ドルカス・コクラン
脚色:エドガー・G・ウルマー、フランツ・ローゼンワルド(アレクサンドル・デュマの小説『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』より)
脚本監修:シャーリー・ウルマー(クレジットなし)
撮影:エドワード・A・カル(アドルフ・エドワード・カルの名前で)、オインゲン・シュフタン(クレジットなし)
編集:W・L・バジエ(ダグラス・バジエの名前で)
音楽:パウル・デッサウ 美術:エドワード・C・ジュエル
舞台:グレン・P・トンプソン 衣装:モナ・バリー
出演:ジョン・ローダー(警察長官ド・ヴィルフォール)、レノール・オベール(モンテ・クリスト伯爵夫人)、チャールズ・ディングル(ダングラール男爵)、フリッツ・コートナー(メイヤール)、エドゥアルド・シャネリ(ジャック・アントワーヌ)、マーティン・コスレック(モンテ・クリスト伯爵)

PRC時代のウルマー作品としては破格の製作費をあてて作られた冒険活劇。スタッフ・俳優の大部分が中欧系移民で占められ、『日曜日の人々』の名キャメラマン、オイゲン・シュフタンも撮影に協力している。ワイマール時代のドイツ映画を思わせる夜の街頭風景や、ラングの『M』を彷彿とさせる悪夢めいた裁判シーンが目を惹く。

 

hersisterssecret「ある姉妹の秘密」Her Sister’s Secret
(アメリカ/1946/83分/16mm/日本語字幕無し)
製作会社:PRC(Producers Releasing Corporation)
製作:ハインツ・ブラッシュ(ヘンリー・ブラッシュの名前で)
監督:エドガー・G・ウルマー
脚本:アン・グリーン(ジーナ・カウスの小説『Die Geschwister Kleh』[英題「Dark Angel」]より)
脚本監修:シャーリー・ウルマー(クレジットなし)
撮影:フランツ・プラナー 編集:ジャック・W・オギルヴィー
音楽:ハンス・ゾマー 美術:エドワード・C・ジュエル
舞台:グレン・P・トンプソン
出演:ナタリー・コールマン(トニ・〈アントワネット〉デュボワ)、マーガレット・リンゼイ(ルネ・デュボワ・ゴードン)、フィリップ・リード(ディック・コノリー)、フェリックス・ブレサート(カフェ店主ぺぺ)、レジス・トゥーミイ(ビル・ゴードン)、ヘンリー・スティーブソン(デュボワ氏)

ウルマーがPRCで撮った最後の作品で、彼には非常に珍しいメロドラマ。画面の華麗さでは敵わぬものの、繊細な感情描写はダグラス・サーク作品と比べても少しも遜色がない。ウルマーの隠れた傑作の一つである。原作の舞台をウィーンからアメリカに移し替えてあるが、ウルマーのコスモポリタニズムは随所に垣間見える。

 

作品解説:井上正昭
協力:株式会社ブロードウェイ

《料金》入れ替え制
演奏付き上映 一般1500円 学生・シニア1400円 会員1300円 *招待券のご利用不可
上記以外(日本語字幕無し) 一律700円 *当日に限り2本目は200円割引


ヴェルナー・シュレーター映画祭2015
7月17日(金)〜20日(月・祝)

オペラ・狂気・愛と死を主題に先鋭的な映像作品を発表し続けたヴェルナー・シュレーター。古典映画・演劇に傾倒しつつ、一方でウォーホルなど実験映画のエッセンスを受け継いだ独自の映像美学はファスビンダーやダニエル・シュミットにも大いに影響を与えた。今回はシュレーター初期から中期の代表作6本を一挙上映。

トーク「シュレーター映画と西洋芸術・思想」
7月18日(土)17:25〜 参加費600円
鈴木創士(フランス文学)・渋谷哲也(ドイツ映画研究)
鈴木創士氏をゲストに迎え、かつてミシェル・フーコーがシュレーターについて述べた「パッション(情熱・受難)」というキーワードを手がかりに、シュレーターの映画に織り込まれた様々な西洋芸術や思想、その古さと新しさの混在するコラージュの手法を紐解いてみたい。

レクチャー「ニュージャーマンシネマにおけるシュレーター」
7月19日(日)15:25〜 参加無料
渋谷哲也(ドイツ映画研究)
ドイツ敗戦の年に生まれたシュレーターは、彼なりの鋭いセンスで戦後ドイツの停滞した空気を芸術的に引き裂いた。そこで彼の映画の手法やモチーフ等から、彼の映画の政治的な内包と他のニュージャーマンシネマの映画監督(ファスビンダー、クルーゲ、シュミット、ジーバーベルク)との関係性を検証する。

 

EikaKatappa_s「アイカ・カタパ」Eika Katappa
(西ドイツ/1969/143分/DVD上映/*一部日本語字幕無し)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:ヴェルナー・シュレーター、ロベルト・フォン・アッケレン
出演:ギゼラ・トロヴェ、カルラ・アウラウル、マグダレーナ・モンテツマ

若きシュレーターの実験映画の集大成。9つのパートに分かれ、奇数パートは脈絡のない映像・音楽・言語がコラージュされる。偶数パートは映画やオペラの場面の再現で、2部『ニーベルンゲン』、4部『リゴレット』、6部『トスカ』、8部『椿姫』である。北国ドイツの南国イタリアへの憧れと苦悩が通奏低音となる。

 

Bomberpilot_s「爆撃機パイロット」Der Bomberpilot
(西ドイツ/1970/65分/DVD上映)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:ヴェルナー・シュレーター
出演:カルラ・アウラウル、マーシャ・エルム、マグダレーナ・モンテツマ
ドイツ第二テレビ(ZDF)の放映用映画として製作された奇想天外な歴史ドラマ。ナチ時代に舞台で活躍した3人の女優たちが、第二次大戦中と戦後のアメリカ占領下の時代を生き抜いてゆく。鍵十字のはためく悪趣味なレビュー演出は、シュレーター自身によれば「不真面目なナチ・オペレッタ」とのこと。

 

MariaMalibran_s「マリア・マリブランの死」
Der Tod der Maria Malibran
(西ドイツ/1972/104分/DVD上映)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:ヴェルナー・シュレーター
出演:マグダレーナ・モンテツマ クリスチーネ・カウフマン キャンディ・ダーリング

19世紀に実在したオペラ歌手マリア・マリブランの生涯をモチーフとしつつ、全般に童話・絵画・オペラへの憧憬を散りばめた。人の顔と身振りへの注目により限りなく純粋な映像ドラマを生み出したシュレーター初期の代表作。彼の常連女優マクダレーナ・モンテヅマの七変化の怪演も見どころ。

 

WillowSprings_s「ウィロー・スプリングス」
Willow Springs
(西ドイツ/1973/78分/DVD上映)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:ヴェルナー・シュレーター
出演:マグダレーナ・モンテツマ、クリスチーネ・カウフマン、イラ・フォン・ハスペルグ

異郷アメリカの荒野で生活する3人の女、彼女たちは他人と交流せず女の自立を守ってきたが、ハワイ出身の青年が入り込んできたことで均衡が乱されてゆく。マリリンやガルボなどアメリカの女優神話を再現する試みであり、シュレーターのオペラ的身振りが西部劇と交錯し衝撃の大団円へと向かってゆく。

 

Regno4presse_s「ナポリ王国」
Nel Regno di Napoli(Neapolitanische Geschwister)
(西ドイツ/1978/130分/DVD上映)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:トーマス・マウホ
出演:ロメオ・ジーロ、アントニオ・オルランド、ティツィアーナ・アンブレッティ

シュレーター初の商業映画。ナポリを舞台に第二次大戦末期から70年代までのある貧しい一家の年代記が語られる。初期ヴィスコンティのネオレアリスモを引き継ぐように素人の出演によるドキュメンタリータッチと濃厚なオペラ的身振りが融合し、資本家やコミュニストに翻弄される人々の姿を浮き彫りにする。

「オーストリア映画博物館にて―監督、「ナポリ王国」を語る」
Werner Schroeter im Österreichischen Filmmuseum
(オーストリア/1978/16分/DVD上映)
編集:シュテファン・ドレスラー、クリスティアン・ケテルス
協力:ヴェルナー・シュレーター、ペーター・コーンレヒナー

ウィーンでの『ナポリ王国』上映に際しての会場の質疑応答を記録したもの。映画製作の背景やナポリの事情を語っており、映画の副次資料として大変興味深い。

 

Tagderiditoen_s「愚か者の日」
Tag der Idioten
(西ドイツ/1981/106分/DVD上映)
監督:ヴェルナー・シュレーター
撮影:イヴァン・スラペータ
出演:キャロル・ブーケ、イダ・ディ・ベネデット、イングリット・カーフェン

女優デビュー間もないキャロル・ブーケを主演に迎え、社会で生きられない一人の女の彷徨と精神病院での生活を描く。映画は内と外、狂気と正常、不安と平静の境界を絶えず揺るがせ、最終的に逃げ場の見出せない非情な現実世界を見せつける。叫びと囁きと恍惚のポリフォニーが展開する映画的受難劇。

 

ヴェルナー・シュレーター Werner Schroeter
1945年生まれ。少年時代にラジオでマリア・カラスを聴いて心酔する。ミュンヘン映画大学に入学するが数週間で退学し、自主的に8ミリや16ミリの実験映画を撮って各地の映画祭で注目を集める。1969年に長編第一作『アイカ・カタパ』を発表、幅広く才能を注目された。以後独自の映像スタイルを貫き、ニュージャーマンシネマの中でもっとも異色の存在として個性を発揮している。1972年以降は演劇やオペラの演出と活動の場を広げた。日本公開作は『薔薇の王国』(1986)、『マリーナ』(1991)、『愛の破片』(1996)。2010年65歳で死去。彼の撮影監督だったエルフィ・ミケシュが生前の彼の姿を捉えたドキュメンタリー『MONDO LUX』が2011年に公開。

 

*「アイカ・カタパ」はドイツ語と英語の科白は日本語字幕有り。オペラの歌詞とナポリ方言の科白は字幕なし。
GI_Logo共催:大阪ドイツ文化センター、神戸映画資料館
協力:アテネ・フランセ文化センター、渋谷哲也

 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般 600円
大阪ドイツ文化センタードイツ語講座受講生・神戸プラネット会員 500円(会員ポイント対象外)


没後30年 加藤泰監督の幻の映画特別上映
2015年6月19日(金)〜21日(日)
これまで上映プリントの状態が悪く永らく幻の映画となっていた『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』のネガが発見され、シネマヴェーラ渋谷の特集「祝・芸能生活50周年 安藤昇伝説」のためにニュープリントが作成された。折しもこの6月17日は加藤泰の没後30年にあたる。これはなんとしても神戸で上映したいという想いがついに実現した。併映はハムレットの翻案で大川橋蔵主演『炎の城』。

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トークイベント
6月20日(土)15:15〜 参加費1000円
山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『マキノ雅弘―映画という祭り―』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)などのインタビューや編著が多数ある。最新刊は『日本映画時評集成2000-2010』。

幻の加藤泰映画が没後30年に蘇る

山根貞男(映画評論家)

 加藤泰没後30年——この言葉を聞いたとき、しみじみするよりも前に愕然とした。日頃、歳月を数える習慣がないから意表をつかれたのである。たしかに加藤泰が世を去ったのは1985年で、思えば、その翌年、わたしは今に続く日本映画時評の連載を始めたわけではないか。ああ、馬齢を重ねるとはこのことだ……。
 いや、私的な感慨を振り払い、そんな2015年に、幻の『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』が蘇ったことを喜ぼう。永らく上映プリントがなく、ネガが行方不明で、VHSもDVDも出ていなかったのが、ネガが発見され、ニュープリントで見られるのである。
 かつて加藤泰監督、安藤昇主演の映画が3本、立て続けに撮られた。1966年の『男の顔は履歴書』と『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』、そして67年の『懲役十八年』である。このうち『男の顔は履歴書』は、少し前、神戸映画資料館で上映された。あのとき見た諸氏は、あの映画に渦巻く活気、ヤバイほどの面白さに、半世紀という歳月などないかのように魅せられたに違いない。
 さて、『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』はどうか。いっさいの予断を抜きに、画面に接していただきたい。ただひとことだけ、安藤昇のほほえみが素敵ですよ、とひそかに囁いておこう。
 もう1本は大川橋蔵主演の『炎の城』。1960年の時代劇版「ハムレット」として知られるが、めったに上映されない。
 この2本立てはじつに珍しい。神戸だからこそ成り立つプログラムであり、神戸は加藤泰の生地である。
ネガ発見のいきさつ、2作品の魅力についてなど、触れるべきことは多々あるが、それは神戸で聞いていただくとしよう。

 

©1966松竹株式会社

©1966松竹株式会社

「阿片台地 地獄部隊突撃せよ」
(1966/92分/カラー/35mmニュープリント)
製作:ゴールデンぷろ 監督:加藤泰 原作:紙屋五平
脚本:国弘威雄、加藤泰 撮影:川崎新太郎
出演:安藤昇、ペギー・潘、南原宏治、佐々木孝丸、菅原文太、久保菜穂子、伊沢一郎、左卜全、砂塚秀夫

加藤泰は松竹大船に招かれ安藤昇を主演に『男の顔は履歴書』(1966)を監督した後。安藤のゴールデンぷろで『阿片台地 地獄部隊突撃せよ』(1966)を、さらに東映で『懲役十八年』(1967)を監督。これらの三作品は戦中・戦後三部作と呼ばれ、ファン必見の映画となっている。中国の北支戦線で地獄部隊員となった陸軍少尉と、日本軍による阿片栽培を憎む美しい中国娘との男女の物語を軸に、八路軍(パロ)や日本軍との軋轢の間で苦しみ生きた人々の姿を満州映画協会啓民映画部に所属した加藤監督が大陸経験を活かして描く。

 

©東映

©東映

「炎の城」
(1960/98分/カラー/35mm)
製作:東映 
監督:加藤泰 脚本:八住利雄

撮影:吉田貞次 音楽:伊福部昭
出演:大川橋蔵、三田佳子、大河内傳次郎、高峰三枝子、明石潮、黒川弥太郎、薄田研二

シェイクスピアの戯曲「ハムレット」の翻案で、『緋ざくら大名』(1958)、『紅顔の密使』(1959)、『大江戸の侠児』(1960)に続く加藤監督による橋蔵主演の第四作目。遣唐使として唐に渡っていた王見城の跡継ぎが、留学から帰ってみると叔父が城主の父を毒殺し母を娶って独裁権力を振るっていた。狂人を装い復讐する機会を窺う橋蔵の演技が見どころで、最後は農民一揆の大群が城内に流れ込み城が炎上、ついに復讐が遂げられるという展開。ハムレットのような結末にならなかったのは、会社側がファンの希望に沿うよう、悲劇的な結末を避けるよう指示したからと言われている。「別冊近代映画」の特集号で加藤監督は「怒りと憎しみの中で苦悩する若い魂……を橋蔵さんは力いっぱい演じぬいてくれるものと私は大きな期待を寄せています」と抱負を述べている。

 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1300円 学生・シニア1200円 会員1200円 学生・シニア会員1100円
《割引》当日に限り2本目は100円割引
*招待券のご利用不可

西独・日本の秘録ドキュメンタリー

2015年6月5日(金)〜7日(日)

1962年にヤコペッティの『世界残酷物語』が世界的に大ヒットし、後に「モンド映画」と呼ばれる作品群が騒がれることになったが、それ以前から秘境もの、残酷もの、性医学もの、歴史ものなど数多くのドキュメンタリー映画が製作され、壮絶な題名や誇大な広告とともに一般映画館で公開されていた。今回は50年代、60年代に西ドイツと日本で作られた作品を特集上映。

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chitonamida02「血と涙と墓場」

(日本/1966/72分/モノクロ/16mm)
構成編集:伊勢長之助 監修:大宅壮一
取材:井出昭、中村清美 音楽:八洲秀章
解説:杉山真太郎

約二年十カ月にわたり、ドミニカ、キューバ、アラブ、イスラエル、インド、パキスタン、インドネシア、中国、ソ連、ベトナムを取材、動乱の地の現状を平和への希求を込めて描く長編記録映画。児童劇映画『ドレミハ先生』(1951)に主演したり、数々の流行歌や校歌の作曲などで知られる八洲秀章が音楽を担当。

 

13kaidan02「ニュールンベルクの戦犯 13階段への道」
Der Nurnberger Prozess
(西ドイツ/1957/67分/モノクロ/16mm/日本語発声&字幕)
監督:フェリックス・フォン・ポドマニツキー
日本版解説:佐々木敏全

第二次世界大戦の終了後、ドイツによって行われた戦争犯罪を裁く国際軍事裁判「ニュールンベルク裁判」が開かれたが、その裁判記録を軸に1933年のナチス政権獲得から45年の敗戦までの12年間のドイツファシズムの歴史を描き出す。冒頭の絞首刑や戦後ユダヤ人強制収容所など、残酷な映像の数々を提示することにより平和の尊さを浮き彫りにする。

 

seinohokoku01「W・ブルグハルト教授の性の報告書
―黒い血の恐怖―」
Seitenstrassen Der Prostitution
(西ドイツ/1967/85分/モノクロ/16mm/日本語発声&字幕)_
監督:ゲルハルト・アンマン
撮影:ペーター・バウムガルトナー
音楽:フランク・ファルドル
日本語版監修・解説:木崎国嘉

チューリッヒのW・ブルクハルト教授とオスロのN・ダルンボルト教授の共著『現在の性病』というレポートにもとづいて製作されたセミ・ドキュメンタリー。第一部は、写真および図表を豊富に使用し、性病の恐ろしさ、広がり方を示す。第二部では、港の労働者と売春婦、トラック運転手とヒッチハイクの娘、同性愛、海外旅行、ティーン・エージャーの乱交パーティ、浮気、フリーセックス、などのエピソードを連ねて、性病がどのような径路で感染して行くかを示す。

 

hadakanotairiku01「アマゾンの魔境 ―裸の大陸―」Hito Hito
(西ドイツ/1958/80分/カラー/16mm/日本語発声)
監督:ハンス・エルトル
撮影:モニカ&ハンス・エルトル

ヒトラーのキャメラマンと言われ、レニ・リーフェンシュタールの『民族の祭典』(1938)のメイン・キャメラマンとしても知られるハンス・エルトルと、その娘のモニカ・エルトルら探検隊が、ボリビア奥地に入りアマゾン流域の自然や人々を記録したドキュメンタリー。生まれたままの姿で生活するシリオノ族という部族の生活風習、探検隊との交流を中心に描かれる。上映プリントの経年によるカラー褪色が残念だ。

《料金》入れ替え制1本あたり
一般900円 学生・シニア800円 会員800円 学生・シニア会員700円
《割引》当日に限り2本目は200円引き

三里塚特集
2015年5月2日(土)〜6日(水・祝)
土本典昭や小川紳介など日本のドキュメンタリー映画を支えた名キャメラマン、大津幸四郎氏が昨年11月に亡くなられ遺作となった『三里塚に生きる』が公開された。ここにその背景を探るべく三里塚映画の主要作をまとめて上映する。一般劇場では上映の機会が少ない貴重な作品の数々。お見逃しなく。

トークイベント
5月3日(日)17:20〜 参加無料(要当日の映画チケット半券)
鈴木卓爾(映画監督)× 藤井仁子(映画評論家)
『私は猫ストーカー』(2009)、『ゲゲゲの女房』(2010)で元小川プロのたむらまさきキャメラマンと組み、『ポッポー町の人々』(2012)などで独自の闘争映画を作り出してきた鈴木卓爾監督と、2014年の「キネマ旬報ベスト・テン」で『三里塚に生きる』を一位に選出した映画評論家の藤井仁子による対談。

苦労して耕した自分の土地から、ある日突然、出て行けと告げられる。無茶な話だと抵抗すれば、金目当てにごねる気かと責められる。そんなカフカ的ともいうべき理不尽な状況に突き落とされれば、どんな昔気質の百姓でも怒りに燃えて立ちあがらずにはいられまい。仕事に旅行に誰もが気軽に飛行機を利用する今日、われわれが享受している便利な生活がどれほどの犠牲と引き換えに得られたものであるか。「3・11」すら経験した今のわれわれなら、その事実に党派やイデオロギーの色眼鏡を通すことなく、虚心に向きあえるはずだろう。去った者がいる。残った者もいる。もはや大津幸四郎のいない2015年、震災から20年を経た神戸の地で、いま一度「三里塚」を見るためのまたとない道づれとして鈴木卓爾監督をお迎えしたい。なぜ鈴木氏なのか。すぐにピンときた年季の入った小川プロのファンにも、釈然としない「三里塚」初心者にも、この催しはもちろん等しく開かれている。

──藤井仁子(映画評論家)

 

summer_in_Narita01「日本解放戦線 三里塚の夏」

(1968/108分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
 演出:小川紳介
撮影:大津幸四郎、田村正毅 録音:久保田幸雄
1978年に開港した成田国際空港は地元農民の猛烈な反対を無視し国家の政策で建設された。この映画は1968年4月から7月、条件付き売却賛成の農家の土地立入り調査をする空港公団職員、護衛する機動隊と、阻止しようとする農民・学生を、「三里塚映画班」として農民側についた小川プロがとらえた記録で、その後も続く「三里塚」シリーズの第1作。撮影中の大津幸四郎カメラマンが公務執行妨害罪で逮捕された。

 

dainitoride01「三里塚 第二砦の人々」
(1971/143分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション
監督:小川紳介 助監督:福田克彦、湯本希生
撮影:田村正毅 整音:浅沼幸一
海外での評価も高いシリーズ第4作。地元農民に事前説明なく、新空港建設用地を測量しようとした国と公団は、機動隊を引き連れ強制収用を強行。農民側は徹底抗戦し砦を築く。鎖で自らの体を木にくくりつけ、一歩も動かない女性。助けようとスクラムを組む人々。農民、学生たちは公団、機動隊の乱入に対し、投石、竹槍、火炎瓶で応戦。カメラは砦に密着して一ヶ月に及ぶ闘いを記録した。マンハイム国際映画祭にてジョセフ・フォン・スタンバーグ賞を受賞。

 

 

hetaburaku01「三里塚 辺田部落」
(1973/146分/モノクロ/16mm)
製作:小川プロダクション 監督:小川紳介
撮影:田村正毅 録音:久保田幸雄
スタッフ:福田克彦、湯本希生、白石洋子、飯塚俊男、野坂治雄、伏屋博雄、他
シリーズ第6作。1971年に三里塚青年行動隊・三ノ宮文男さんが22歳の若さで自死して以来、小川プロでも激しいスタッフ討議が重ねられてきたが、その文男さんが生まれ育った辺田部落の歴史や人々の日常を見つめた作品。それまでの闘争映画ではないため、活動家からは不満の声が上がった。小川が稲作りに傾斜して行く記念碑的な作品。

 

tsuchinokoshin01「土の行進 三里塚14年、青年たちはいま」
(1981/50分/カラー/8mm)
製作:三里塚ノートフィルム
製作・構成・撮影・編集:福田克彦
撮影:瓜生敏彦 音楽:高橋悠治と水牛楽団
小川プロの助監督だった福田克彦は小川が山形に移った後、78年に三里塚に移住して地元の人々と共に行動することを選んだ。1966年に農民が「三里塚芝山連合空港反対同盟」を発足させ三里塚闘争を初めてから14年、青年たちが独自の方法で田圃を改良していく姿を追った。三里塚の少年行動隊の一員で幼少期から小川プロの現場に出入りし、黒沢清や四ノ宮浩作品でも知られる瓜生敏彦が撮影を担当。

kusatori01「草とり草紙」
(1985/82分/カラー/8mmから16mmブローアップ)
製作:波多野ゆき枝 監督:福田克彦
撮影:瓜生敏彦、福田克彦 ナレーション:清水絋治
音楽:小向京子 題字:石毛博道 整音:浅沼幸一
写真・絵:波多野ゆき枝
空港二期工事に反対し家族と離れて一人で生活する反対派農民・染谷の婆ちゃんの農作業などを軽便な
8mmカメラで淡々と追い、愚痴めいた独り語りを重ねて福田ならではの味わいある作品に仕上げた。小川プロのような集団製作を止めた個人的な自伝映画で、自主上映のために16ミリにブローアップして上映展開を図った。

 

sanrizuka02c「三里塚に生きる」
(2014/140分/カラー・モノクロ/ブルーレイ上映)
企画・製作:三里塚に生きる製作委員会
監督・撮影:大津幸四郎 監督・編集:代島治彦
朗読:吉行和子、井浦新 音楽:大友良英
写真:北井一夫 題字・筆文字:山田麻子 整音:滝澤 修
プロデューサー:赤松立太、代島治彦
制作・配給:スコブル工房
昨年逝去された大津幸四郎キャメラマンが、『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968)以来45年を経て三里塚の農民にキャメラを向け撮影し、共同監督を努めた作品。現在の三里塚の人々の姿から、空港闘争とは何だったかのか、国家権力に振り回されてきた人々のくらしや考えが静かに浮かび上がる。

 

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1400円 学生1200円 会員1200円 学生会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円割引

筒井武文監督特集 part2
2015年4月11日(土)・12日(日)

筒井武文監督 来館!
監督挨拶 4月11日(土)「オーバードライヴ」の上映前
トーク 4月12日(日)「学習図鑑」「ヒカリ」の上映終了後
聞き手:吉野大地(ラジオ関西『シネマキネマ』ディレクター)

gakushu_zukan01「学習図鑑」
(1987-89/50分/16mm)
監督:筒井武文 撮影:宮武嘉昭 録音:浅利公治
音楽:太田恵資 製作:西村朗、菅安映
出演:高泉淳子、白井晃、篠崎はるく、遊◉機械/全自動シアター
高泉淳子と白井晃たちが1983年に旗揚げした劇団、遊◎機械/全自動シアターが87年に初演をおこなった『学習図鑑』をもとにした作品。テレビ番組『ポンキッキーズ』でも知られる、高泉演じる小学生「山田のぼる君」のひと夏の出来事を中心に描く。ロケ撮影パートも織り交ぜた構成で、公演記録をキャメラで収めるのではなく、「舞台を使ったフィクション映画を撮る」野心が全編にみなぎる。子供、ノスタルジー、奇想、無垢と無意味の交錯というモチーフには、初期作品『レディメイド』(82)や『ゆめこの大冒険』(86)との親和性も見出せるだろう。

hikari01「ヒカリ」
(2006/8分/HD-CAM[HDV上映])
監督:筒井武文 脚本:小林美香 撮影:宮武嘉昭
照明:箕輪栄一 美術:磯見俊裕
出演:長島良江、本間幸子、熊本野映
教鞭を執る東京藝術大学映像研究科が制作した短篇。和室に集まった三姉妹。長女の突然の告白に動揺する次女と三女。影が三人を覆うが、三女のあるアクションをきっかけに映画は光を獲得する。間取りを見失うキャメラ位置、風鈴の音色と対を成すように鳴る氷の音など、細部に趣向を凝らし、不思議な味わいを湛えた点描に仕上げている。

 

overdrive02「オーバードライヴ」
(2004/127分/35mm)
監督:筒井武文 脚本:EN 撮影:芦澤明子
照明:白石成一 美術:磯見俊裕 製作:榎本憲男
出演:柏原収史、鈴木蘭々、杏さゆり、ミッキー・カーチス、小倉一郎、諏訪太郎、石橋蓮司

overdrive01『ゆめこの大冒険』から約20年ぶりに取り組んだフィクション長篇は、サイレント/活劇/ミュージカル/アニメ/CGなど、映画の歴史を横断するかのごとく数多のスタイルで繰り広げられるエンターテインメント。音楽ユニット「ゼロデシベル」をクビになった主人公の弦が拉致同然に連行された先は下北半島。津軽三味線の修行を積み、己の再生と恋を賭けて強者たちとのバトルに火花を散らす。荒唐無稽な物語に、ハードロック/ラップとこれまた多種な音楽を絡めて束ねる手さばきは、それまでの映画制作・批評活動で培った確かなもの。当時の筒井武文の集大成と言える一作である。歌姫を語り手に据えた話の運びも軽妙。芦澤明子がHDカムで撮り上げた映像をもとに様々な加工が施された画面から、フィルムを至上のものとする筒井監督がデジタルの可能性を探求するさまが窺える。またそこには、映画をつくる悦びも息づいている。サイレントの様式で描かれたシーンは、「アタマじゃなくてからだで撮っている感じで、もしかしたら僕の生理が一番出ているかもしれない」(劇場パンフレットより)。

 

kodokuwakusei02「孤独な惑星」
(2010/94分/35mm)
監督:筒井武文 脚本:宮崎大祐 撮影:芦澤明子
照明:御木茂則 サウンドデザイン:森永泰弘
出演:竹厚綾、綾野剛、三村恭代、水橋研二、ヒカルド、市山貴章、ミッキー・カーチス

kodokuwakusei01原点である16ミリフィルム撮影に立ち返って生み出したモダンなラブ・コメディ。隣室から追い出された哲男を招き入れ、ベランダに居候させることになったOLの真里。ガラス越しに心を通わせはじめるが、その透明な扉はふたりを隔てる「見えない境界線」でもあった。真里のほのかな恋ごころの行き着く先は……? 戸や壁を使った巧みな空間設計とシュールな音響デザインにより、ありふれた都市風景が異世界へと変容。『オーバードライヴ』に続く芦澤明子の撮影とミッキー・カーチスの怪演も筒井作品ならではの虚構性を飛躍させる。ファッションモデルとしても活躍する竹厚綾が都会の片隅に暮らすヒロインをたおやかに演じ、ラストに訪れる彼女の「解放」は切なくも清々しい。身体性を生かした綾野剛のコミカルな演技も魅力。公開が待たれる新作『自由なファンシィ』へ連なる「筒井武文・愛の三部作」第一作。ヌーヴェル・ヴァーグ作品群の「部屋の映画」の記憶を呼び起こす珠玉の一本。
 
作品解説:吉野大地

●筒井武文監督インタビュー ──『筒井武文監督特集Part2』によせて──
『学習図鑑』『オーバードライヴ』『ヒカリ』『孤独な惑星』(取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ』吉野大地)
筒井武文監督ロング・インタビュー(取材・文/ラジオ関西『シネマキネマ』吉野大地)

筒井武文
東京造形大学在学中より映画を撮り始める。フリーの助監督、フィルム編集者を経て、自主制作映画『ゆめこの大冒険』(1986)を完成させ劇場公開。映画制作と並行して、東京藝術大学大学院映像研究科、映画美学校などで後進の育成につとめるほか、映画批評を執筆。現在、「キネマ旬報」のレビューコーナーを担当している。最新監督作は、映画美学校第10期高等科生とのコラボレーション作品『孤独な惑星』(2011)。

 

《料金》入れ替え制1プログラムあたり
一般1200円 学生1000円 会員1000円 学生会員900円
《割引》
当日に限り2プログラム目は200円割引

チャンバラ=剣劇の魅力
1月31日(土)・2月1日(日)
daisatsujin01Aプログラム
「大殺陣 にっぽん剣優列伝」
(1976/75分/16mm)羅針盤
製作:伊藤公一 監督・脚本・原作:夢野京太郎
撮影・編集:井上修 ナレーション:西村晃
*早稲田大学演劇博物館研究事業への協力による特別上映
竹中労(夢野京太郎)が情熱を傾けた「浪人街」リメイクの予告篇的意味合いで、映像ルポの一環として作ったチャンバラ映画のアンソロジー。大正から昭和初期にかけて隆盛したチャンバラ活動写真36本の名場面を集め、夢野京太郎の斬新な脚本によって新たな生命が吹き込まれた。銀幕の剣豪たちとともに、マキノ映画を始め映画黄金時代の青春が甦る。だが、76年に公開されて以後、さまざまな理由で忘れられた幻の映画となった。この映画のプロデューサー・伊藤公一は、週刊誌時代から竹中の同志だったが、2010年2月1日に永眠。撮影・編集の井上修はNDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)のスタッフで、2005年に台湾原住民の靖国合祀問題を追いかけた『出草之歌 台湾原住民の吶喊 背山一戦』で健在ぶりを示した。『浪人街』リメイクで竹中と協働中のマキノ雅弘と稲垣浩が監修に当たり、ナレーションには「二代目水戸黄門」、昭和の名優・西村晃が名調子を披露している。

 

Bプログラム2本立て
kageboushitorimono01「影法師捕物帖」
(1926-27/49分 56分[16コマ 14コマ]部分/35mm/無声/染色)マキノ御室
総指揮:牧野省三 監督:二川文太郎
原作・脚本:壽々喜多呂九平 撮影:松浦しげる
出演:市川右太衛門、鈴木澄子、武井龍三、中根龍太郎
二川文太郎監督でバンツマ(阪東妻三郎)主演の有名な無声映画『江戸怪賊伝 影法師』(1925)の続篇で、市川右太衛門主演で映画化したもの。前篇12巻は元号が昭和に改まった1926年末公開の正月映画。後篇12巻も翌年4月に公開。今回の上映フィルムは、後に前篇、後篇を10巻に縮尺して再公開された中の前篇と後篇の各2巻分のみ。東京国立近代美術館フィルムセンターの「発掘された映画たち2014」で初上映された新発掘フィルム。冒頭には台湾の検閲刻印が入っているので、台湾での公開後、内地に配給されたフィルムと思われる。

kengekijyoyu01「剣劇女優とストリッパー 」
(1953/26分/35mm)
新大都映画
監督:平澤譲二 撮影:富澤恒夫
美術:古川健一 音楽:志村道三
出演:大都あけみ、奥山紗代、三島百合子、空飛小助、キャロル都
当時人気のあった女剣劇とストリップを組み合わせた客受け狙いの際物映画。田舎の芝居小屋で歌舞伎芝居が不入りだったが、東京から呼び寄せたストリップと歌舞伎の二本立て興行をしたところ大成功。映画スターに出世した女座長の回想として描く。無声映画の弁士として知られる加藤柳美が画面を説明。フィルムセンターの「発掘された映画たち2009」で上映されたもの。

 

[関連企画]1月31日(土)・2月1日(日)企画展『寄らば斬るぞ! 新国劇と剣劇の世界』の世界
講師:羽鳥隆英(早稲田大学演劇博物館助手)

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》当日に限り2プログラム目は200円引き

「その街のこども 劇場版」
2015年1月16日(金)〜20日(火)

「その街のこども 劇場版」
(2010/83分/HD[ブルーレイ上映])
監督:井上剛
脚本:渡辺あや
音楽:大友良英
テーマ曲:阿部芙蓉美
プロデューサー:京田光広
上映企画:NHKプラネット近畿
配給:トランスフォーマー
出演:森山未來、佐藤江梨子、津田寛治

震災を体験したふたりの演技が心を揺さぶる
阪神・淡路大震災からちょうど15年目にあたる2010年1月17日、NHKで放送されたドラマ「その街のこども」は、実際に震災を体験している森山未來と佐藤江梨子の切なくリアルな演技に加え、心の傷を抱えたまま生きる若者たちを優しい眼差しで描いた渡辺あや(『天然コケッコー』、連続テレビ小説『カーネーション』)の脚本が大きな話題を呼び、放送後には視聴者から感動と絶賛の声が多数寄せられた。その後本作は第36回放送文化基金賞を受賞。さらに反響は拡がり続け、遂に『その街のこども 劇場版』として、NHKの制作したドラマとしては前代未聞の全国公開が決定。放送時にはカットせざるを得なかった未公開シーンを含む、再編集バージョンでの上映が実現した。
 
それからさらに5年が経った震災から20年の節目にあたる今年、神戸での再上映が決まりました。忘れたい、忘れられない、忘れて欲しくない…。神戸にあふれるそんな複雑な想いを描いたこの「神戸の映画」を繰り返し上映することで、この街の人々の思いを分かち合い、次の時代に引き継いでいければと思っています。

「その街」で生まれ育ったこどもたちが
新たな一歩を踏み出すために

こどもの頃に体験した震災というものに、いま改めて向き合おうとするふたりの若者に寄り添いながら、物語は進んでゆく。ロケ地の多くは実際に大きな被害を受けた地域であり、撮影には遺族を含め神戸の方々も参加した。一方、非被災者である多くのスタッフたちが、この作品を生み出す過程で悩み、苦しんだのも事実。様々な傷を抱えた被災者と、非被災者の間に存在する「溝」を見つめ、それを乗り越えることの難しさと大切さを伝える『その街のこども 劇場版』は、今を生きるすべての「こどもたち」が決して忘れてはならない未来への希望を描いている。

[公式サイト]

《料金》
一般:1200円 学生・高校生・シニア:1000円 中学生以下:700円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

上映とトークセッション
新春幻灯会 幻灯の運動表現
2015年1月3日(土)13:30~(終了予定17:00/途中休憩あり)

「自転車にのってったお父ちゃん」

「自転車にのってったお父ちゃん」

 

スクリーンに静止画像を大きく映し出す映像装置としての幻灯(スライド)は、動画を映し出す映画とは異なり、しばしば「運動を欠く」とみなされてきました。しかし、今回上映する1950年代の幻灯作品は、多様な「運動」の表現を試み、もしくは観客を「運動」へと駆りたてる役割を担ったもので、それぞれにユニークな「動く/動かす」ポテンシャルを備えています。上映とトークを通じて、幻灯による「運動」を発見する機会にお立ち会いください。(鷲谷花)

トークセッション
細馬宏通
滋賀県立大学人間文化学部教授。ことばと身体動作の時間構造、視聴覚メディア史を研究。著書に『浅草十二階 塔の眺めと〈近代〉のまなざし』(青土社)『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史』(新潮選書)『うたのしくみ』(ぴあ)など。
鷲谷花
早稲田大学演劇博物館招聘研究員。2010年より幻灯の研究を本格的に開始し、その成果発表とともに全国各地で上映活動も行っている。『淡島千景―女優というプリズム』(青弓社)や、池田浩士編『大東亜共栄圏の文化建設』(人文書院)ほかに寄稿。

上映
My beautiful picture「松川事件 1951」
(1951年)
製作:人民幻燈協会、(日本労農救援会)
*福島大学松川資料室所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映
1949年8月17日未明に福島県松川町付近で発生した列車転覆事故の犯人として、東芝松川工場及び国鉄の労働組合員20名が逮捕・起訴され、翌50年に死刑を含む有罪判決を受けた「松川事件」の、被告救援運動の一環として製作された。松川事件に関連する多数の映像作品の中でも最初期に作られ、事件のイメージの原型を描き出した作品といえる。

My beautiful picture「野ばら」
(1952年)
原作:小川未明 製作:人形劇団プーク
配給:光影社 脚色:高橋克雄
演出:川尻泰司 美術:田畑精一、石井マリ子
撮影:佐竹晴雄 制作:厚木たか
*神戸映画資料館所蔵
光影社の依頼により人形劇団プークが製作した「世界名作物語」シリーズの1本。人形劇の舞台の実況を撮影したものではなく、当時のプーク劇場の裏手にオープンセットを手作りして撮影され、実在する植生や本水、空を使ったリアルな空間設計が印象的な作品となっている。第4回世界青年学生祭文化コンクールで名誉賞受賞。

g-jitensha02「自転車にのってったお父ちゃん』
(1956年)
製作:東大セツルメント川崎こども会

作画・構成:加古里子(かこ さとし)

配給:日本幻灯文化社
*熊本学園大学水俣学研究センター所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映(提供:早稲田大学演劇博物館)
東大川崎セツルメントのこども会の自主製作による幻灯作品。実際に起きた労災事故の犠牲者の遺児による作文と画をもとに、こども会による取材と討論を重ね、数年かけて完成されたという。児童画的な素朴な画風の一方、「自転車」の運動と静止の表現など、フィルム式幻灯の特性を活かした表現上の工夫の数々が精彩を放つ。
 
その他、おまけ上映あり

《料金》
予約:1800円
当日:一般2000円 学生・会員1800円 高校生以下1000円

*ご予約受付中
info@kobe-eiga.net 宛に、お名前、連絡先(電話)、参加希望日を書いてお送りください。
追って予約受付確認のメールを差し上げます。

主催:神戸映画資料館
協同企画・作品解説:鷲谷花
協力:早稲田大学演劇博物館、福島大学松川資料室、人形劇団プーク、加古里子


ロメール&シャブロル『ヒッチコック』刊行記念
ひとはどうしてヒッチコック主義者でありうるのか
2014年12月27日(土)・28日(日)

ヒッチコック、新たな波
映画史を発見することからヌーヴェル・ヴァーグは始まり、ヒッチコック(とホークス)を再発見することを通じて「作家主義」は標榜された。推理ものの通俗的娯楽映画と思われていたヒッチコックのなかに、映画のみが実現し得る形式(フォルム)の体系によって形而上学的主題が周到に仕組まれていることを解き明かしたのが、批評家時代のロメールとシャブロルによる1957年の挑発的書物『ヒッチコック』である。当時ロメール37歳、シャブロル27歳。その二人も既に亡く、ヒッチコック作品が上映・放映される機会もめっきり減った昨今であるが、原著刊行から半世紀以上の後に不意に登場することになった日本語訳『ヒッチコック』を受けて、訳者2氏によるレクチャーと、若き監督と脚本家とを交えたトークセッションも加え、あらためてヒッチコックの画面に、視覚の愉楽とサスペンスに、その作劇術と演出術に、つまりは「映画術」に、目を凝らす好機になればと願う。(éditions azert)

出版案内
本イベント開催時に先行発売!
『ヒッチコック』
エリック・ロメール&クロード・シャブロル=著
木村建哉・小河原あや=訳
インスクリプト、2015年1月10日刊行
世界初のヒッチコック研究書、本邦初訳。ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家二人が、刊行時までのヒッチコック全作品を仔細に論じ上げる、1957年「作家主義」のマニフェスト。秘密と告白、悪の誘惑、精神かつ道徳としてのモラル、堕罪と救済のカトリシズム、同時代的政治性、そしてサスペンス。ヒッチコック映画の精髄に迫る一冊。「ヒッチコックは、全映画史の中で最も偉大な、形式の発明者の一人である」(「結論」より)。

12月27日(土)17:20〜(終了予定18:50)
レクチャー「ヒッチコック映画の見方」木村建哉+小河原あや

12月28日(日)15:30〜(終了予定17:00)
トークセッション「ヒッチコック映画の撮られ方」濱口竜介+高橋知由+木村建哉+小河原あや

[参考上映]
「三十九夜」The 39 Steps
(1935/86分/16mm上映)
製作:マイケル・バルコン、イヴォール・モンタギュー
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:チャールズ・ベネット
台詞:イアン・ヘイ 原作:ジョン・バカン『三十九階段』
撮影:バーナード・ノウルズ
出演:ロバート・ドーナット(リチャード・ハネイ)、マデリン・キャロル(パメラ)、ゴッドフレー・タール(ジョーダン教授)、ペギー・アシュクロフト(クロフターの妻)
ロメール&シャブロルは、『殺人!』、『リッチ・アンド・ストレンジ』とともに本作をヒッチコックのイギリス時代の三本の最高傑作の一つに挙げている。追われつつ追う、というその後のヒッチを代表するパターンを確立した記念碑的作品である。主人公ハネイは、イギリス諜報部員である女性を偶然匿うが、彼女は謎の組織「三十九階段」に殺される。ハネイは殺人の濡れ衣を着せられ、警察に追われつつ、その過程で知り合ったヒロインとともに、「三十九階段」の陰謀を阻止し、その正体を明らかにしようとする。「この物語の中でヒッチコックを魅了したのは、それが非常に正確に、犯罪もののプロットを純粋なままに体現しているということだ」。

「海外特派員」Foreign Correspondent
(1940/120分/16mm上映)
製作:ウォルター・ウェンジャー
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:チャールズ・ベネット、ジョーン・ハリソン
台詞:ジェームズ・ヒルトン、ロバート・ベンチリー 撮影:ルドルフ・マテ
出演:ジョエル・マックリー(ジョン・ジョーンズ)、ラレイン・デイ(キャロル・フィッシャー)、ハーバート・マーシャル(スティーヴン・フィッシャー)、ジョージ・サンダース(フォリオット)
主人公のアメリカ人ジャーナリストは、ナチスのスパイたちによって誘拐されたオランダ高官の行方を追うが、自らもスパイに追跡され殺されそうになる。スパイの首領は、ヒッチコック好みの、エレガントで魅惑的な悪役だがその正体は……。オランダ、イギリス、大西洋上と舞台を移しつつ「波瀾に富んだ、ユーモラスなあるいは残酷な山場がいくつか続き、そのトーンは『三十九夜』を思い出させる」。一方で「ハリウッドのメカニズムは、ヒッチコックにとって貴重な助けであった。イギリスだったならば、例えば、殺人者が山高帽と雨傘の大群を掻き分けて進むテロの場面を、同じように見事には演出できなかっただろう」。

「汚名」Notorious
(1946/102分/16mm上映)
製作:アルフレッド・ヒッチコック、バーバラ・キオン
監督:アルフレッド・ヒッチコック 脚本:ベン・ヘクト
撮影:テッド・テツラフ
出演:イングリッド・バーグマン(アリシア・ヒューバーマン)、ケイリー・グラント(デヴリン)、クロード・レインズ(アレクサンダー・セバスチャン)
ヒロインであるアリシアの父は、ナチスのスパイとしてアメリカの裁判所で有罪判決を受ける。ヤケになって堕落した生活を送っていたアリシアは、政府の捜査官デヴリンから、汚名を雪ぐために協力するよう依頼される。父の友人たちであるナチスの残党の巣窟への潜入捜査だ。予想外にもヒロインは、残党たちのリーダーから求婚され受け入れざるを得なくなる。愛し合いながらもそれを認めないままに、アリシアとデヴリンは捜査を続けるが……。「主人公二人の不幸は、互いに対する先入観の犠牲者である彼らが、救済の「言葉」を発するのを拒むことに由来する。彼らは、すべてのヒッチコック映画の鍵である(…)告白の徳を理解していないのである」。

 
作品紹介:木村建哉(引用はすべてロメール&シャブロル『ヒッチコック』から)
 
協力:éditions azert

《料金》1日通し
一般2000円 学生・シニア1800円 会員1800円 学生会員・シニア1500円
《割引》2日続けて参加の方は2日目200円割引


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。