ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第14回 戦争映画
2015年9月19日(土)〜21日(月・祝)
第二次世界大戦を扱った数あるソヴィエト映画の中から、ドイツとソ連の戦闘を描いた3作品を上映。
「鬼戦車T-34」ЖАВОРОНОК
(1964/89分/35mm)レンフィルム
監督:ニキータ・クリーヒン、レオニード・メナケル
脚本:ミハイル・ドゥージン、セルゲイ・オフロフ
撮影:ニコライ・ジーリン、ヴィクトル・カラセフ
出演:ヴァチェスラフ・グレンコフ、ゲンナジー・ユフチン、ワレリー・ポゴレリツェフ
1942年、ドイツ東部にあるナチス軍の捕虜収容所では、捕虜を操縦士として乗せたソ連の戦車T-34を標的に射撃実験が行われていた。そんなある日、ソ連軍捕虜たちが戦車ごと大脱走を企てる。ソ連領を目指してドイツ中を走り抜ける本物の戦車T-34が主人公とも言える戦争映画。
「祖国のために」
ОНИ СРАЖАЛИСЬ ЗА РОДИНУ
(1972/135分/35mm)モスフィルム
脚本・監督:セルゲイ・ボンダルチュク
原作:ミハイル・ショーロホフ
撮影:ワジーム・ユーソフ
美術:フェリックス・ヤスケビッチ
音楽:ヴァチェスラフ・オフチンニコフ
出演:ワシーリー・シュクシン、ヴァチェスラフ・チーホノフ、セルゲイ・ボンダルチュク
戦線を実際に視察して書かれたショーロホフの長編小説の映画化。ナチス・ドイツ軍に圧倒されながらも不屈の意志で反撃を続けるソ連軍兵士たちや、戦闘シーンの臨場感は、ボンダルチュク監督の真骨頂。撮影は、ダネリヤの『モスクワを歩く』や『惑星ソラリス』等のタルコフスキー作品を多数手がけるワジーム・ユーソフ。
「炎628」ИДИ И СМОТРИ
(1985/143分/35mm)
モスフィルム、ベラルーシフィルム
脚本・監督:エレム・クリモフ
原作・脚本:アレシ・アダモーヴィチ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
美術:ヴィクトル・ぺトロフ
音楽:オレーグ・ヤンチェンコ
出演:アリョーシャ・クラフチェンコ、オリガ・ミローノワ、リュボミラス・ラウツァヴィチュス、ウラダス・バグドナス
1943年、ドイツ軍の侵攻を受けたベラルーシの村。たまたま銃を手に入れた少年がパルチザン部隊に加わるが、彼の村はそのせいで全員虐殺されてしまう。生の謳歌と残酷な死とが極端なまでに隣り合わせる戦場の無残を描く衝撃の作品。戦時下に実際にあった「ハティニ村虐殺事件」を題材にした小説の映画化で、そのような殺戮を受けた村の数が628にも及ぶという。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第13回 特撮ファンタジーの巨匠 プトゥシコ
2015年5月23日(土)・24日(日)
神話や民話をもとにしたファンタジックな特撮映画で知られるアレクサンドル・プトゥシコ監督の世界をご堪能ください。
「石の花」Каменный цветок

(1946/80分/35mm)モスフィルム
監督:アレクサンドル・プトゥシコ 原作:パーヴェル・バジョーフ
撮影:フョードル・プローヴォロフ 美術:ミハイル・ボグダノフ、ゲンナーヂィ・ミャスニコフ
音楽:レフ・シュヴァルツ
出演:ヴラヂーミル・ドゥールジニコフ、タマーラ・マカーロヴァ、ミハイル・トロヤノフスキィ、アレクセイ・ケリベーレル
幼くして石細工の技を心得、誰をも驚かす名匠となったダニーラ。そんな彼はさらに石工としての腕を磨くべく、許嫁のカーチャのもとを離れ、本物と見紛う石の花を作るよう依頼してきた「銅山の女主」のいる地下に下る。しかし、その誘いはダニーラに人間界を忘れさせ、その技を思いのままにしようとする山の主の罠だった。1946年にはカンヌ映画祭でカラー作品最優秀賞、翌年47年には文学・芸術分野でスターリン賞一等を受賞した作品。
「妖婆・死棺の呪い」Вий

(1967/78分/35mm)モスフィルム
監督:コンスタンチン・エルショーフ、ゲオールギィ・クロパチョーフ 原作:ニコライ・ゴーゴリ
撮影:ヴィクトル・ピシャーリニコフ、フョードル・プローヴォロフ
美術:アレクサンドル・プトゥシコ、ニコライ・マルキン、ローザ・サトゥノーフスカヤ
音楽:カレン・ハチャトゥリャン
出演:レオニート・クラヴリョーフ、ナターリヤ・ヴァルレイ、アレクセイ・グラズィーリン、ニコライ・クトゥーゾフ
神学校生ホマー・ブルートは旅先で遭遇した魔女の老婆に苦しめられ、殺めてしまう。しかし、その亡骸は地主の美しい娘に姿を変えていた。旅を切り上げキエフに戻ったホマーが数日後に呼び出された先はなんと自分の殺めた娘の埋葬式。祈祷を上げる三夜のあいだホマーは復讐を謀ろうとする悪霊たちから逃れようとし、最後の夜、彼を付け狙う悪霊たちが、地面にまで睫毛の垂れた鉄の顔を持つ妖怪ヴィイを召喚する。当時モスフィルムスタジオの学生監督だったクロパチョーフとエルショーフのフィルムをベースにプトゥシコの特撮技術と幻想美が加味された、ソ連時代最初で最後のホラー映画。
「ルスランとリュドミーラ」Руслан и Людмила

(1972/約110分149分/35mm)モスフィルム
監督:アレクサンドル・プトゥシコ 原作:アレクサンドル・プーシキン
撮影:イーゴリ・ゲレイン、ヴァレンチン・ザハーロフ 美術:オーリガ・クルチーニナ
音楽:チーホン・フレンニコフ
出演:ヴァレーリィ・コージネツ、ナターリヤ・ペトローヴァ、アンドレイ・アブリコーソフ
原作は19世紀ロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンによる同名の物語詩。豪傑ルスランは自らの婚礼の席で、許嫁であったキエフ大公国の姫リュドミーラを黒魔術師チェルノモールにさらわれてしまう。大公スヴェトザールは、娘に恋心を寄せる男たちに向かって、姫を取り返した者に結婚を許すと告げると、ルスランを始めとする若者たちがリュドミーラの救出に向かう。プトゥシコの晩年最後にして、最も興行収益の多かった作品でもある。
作品解説:東海晃久
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》

1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部
会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター
会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第12回 グルジア特集3
2015年3月7日(土)・8日(日)
ミニトーク「入門:グルジアの歴史と文化」
3月8日(日)「青い山/本当らしくない本当の話」上映終了後
ゲスト:伊藤順二(コーカサス近代史/京都大学准教授)
聞き手:楯岡求美(ロシア文化史/神戸大学准教授)
「グルジアは、大国ロシアと中東・イスラム地域とのはざまで独自の文字や文化を維持し続けています。多くの苦難を経たからこそ、涙と笑いのないまぜになったグルジア映画の世界が醸造されたのでしょう。日本ではあまり語られることの少ないグルジアの歴史と文化について、グルジア近代史をご専門とする伊藤順二さんにお話を伺います。ケフィヤ・ヨーグルトと黒海だけではないグルジアの豊かな文化の一端をご紹介したいと思います。
共催:神戸大学大学院国際文化学研究科 研究プロジェクト「映像におけるタブーと美の相克」
「インタビュアー」
Несколько интервью по личным вопросам

(1978/95分/35mm)グルジアフィルム
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ
脚本:ザイラ・アルセニシヴィリ、エルロム・アフヴレジアニ、ラナ・ゴゴベリーゼ
撮影:ヌグザル・エルコマイシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:ソフィコ・チアウレリ、ギア・バドリーゼ、カテワン・オハヘラシヴィリ、ジャンリ・ロラシヴィリ
仕事にも家族にも恵まれ、幸せな人生を送っていると信じている女性が、夫に裏切られて途方に暮れる。グルジアの女性監督が、日常の中で女性たちが直面する問題を繊細に描く。主役の新聞記者を演じるのはパラジャーノフの『ざくろの色』などで知られるソフィコ・チアウレリ。
「転回」
Круговорот

(1986/100分/35mm)グルジアフィルム
監督:ラナ・ゴゴベリーゼ
脚本:ザイラ・アルセニシヴィリ、ラナ・ゴゴベリーゼ
撮影:ヌグザル・エルコマイシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:レイラ・アバシーゼ、リヤ・エリアワ
二人の初老の女性——元スタア女優と言語学者が久しぶりに再会して起こる二人の人生の急転回。女性の生き方に焦点を当てた作品を発表し続けたグルジアの女性監督の代表作。第2回東京国際映画祭(1987)最優秀監督賞受賞。
「青い山/本当らしくない本当の話」
Голубые горы, или Неправдоподобная история

(1984/95分/35mm)グルジアフィルム
監督:エリダル・シェンゲラーヤ
脚本:レゾ・チェイシヴィリ 撮影:レヴァン・パータシヴィリ 音楽:ギア・カンチェーリ
出演:ラマーズ・ギオルゴビアーニ、ヴァシーリイ・カフリアシヴィリ
作家ソソは「青い山」という小説を書き上げ、出版社に持ち込む。ソソは何度も足を運んで結果を聞こうとするが、出版社の誰もが本来の仕事以外の何事かで忙しい。秋が過ぎ、冬も過ぎ、春になっても、まだ誰も原稿を読んでくれていない。やがて、原稿の行方もわからなくなり……。官僚社会を皮肉ったエキセントリック・コメディー。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》

1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部
会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター
会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第11回 グルジア特集2
2014年11月22日(土)~24日(月・祝)
グルジア映画の新時代を開いたと言われるレゾ・チヘイーゼとテンギス・アブラーゼの作品を上映。
「戦火を越えて」
Отец солдата
(1964/92分/35mm)
グルジアフィルム
監督:レゾ・チヘイーゼ
脚本:スリコ・ジゲンティ
撮影:レフ・スーホフ、アルチール・フィリパシビーリ
音楽:スルハン・ツィンツァーゼ
出演:ゼルゴ・ザカリアーゼ、ケテワン・ボチョリシヴィリ、ウラジミール・プリワツェフ、アレクサンドル・レベデフ
第二次大戦中のグルジア。戦争で負傷した息子を見舞いに行こうとした農夫が、なりゆきでドイツへ反撃する部隊の兵士となってベルリンまで行くが……。英雄物語ではない個人的体験として戦争を描く。テンギス・アブラーゼと共同監督した『青い目のロバ』(1955)によりグルジア映画の新時代を開いたと言われるレゾ・チヘイーゼ監督作品。
「ルカじいさんと苗木」
Саженцы
(1973/90分/35mm)
グルジアフィルム
監督:レゾ・チヘイーゼ
脚本:スリコ・ジゲンチ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
音楽:ノダル・ガブーニャ
出演:ラマーズ・チヒクワーゼ、ミシコ・メスヒ
幻のナシの苗木を探して、グルジアを旅するルカじいさんとその孫が主人公のロードムービー。二人は道中で出会った人々に助けられながら旅を続ける。昔ながらのもてなしの美徳を保ちながらも、大きく変貌していく町や農村、人間の姿が描かれる。
「希望の樹」
ДРЕВО ЖЕЛАНИЯ
(1977/108分/35mm)
グルジアフィルム
監督:テンギス・アブラーゼ
原作:ゲオルギー・レオニーゼ
脚本:レヴァズ・イナニシヴィリ、テンギス・アブラーゼ
撮影:ロメール・アフヴレディアニ
音楽:ベジーナ・クヴェルナーゼ、ヤコヴ・ボボヒーゼ
出演:リカ・カヴジャラーゼ、ソソ・ジャチヴリアニ、ザザ・コレリシヴィリ、ソフィコ・チアウレリ
ロシア革命前の、グルジア東部の小さな村。美しい娘が羊飼いの恋人から引き離され、金持ちと結婚させられたことから起こる悲劇をコーカサス地方の豊かな自然を背景に描き出す。美しくも残酷な処罰のシーンや、愚かしくも魅力的な村人たちが印象的な、アブラーゼのグルジア史三部作の第二作。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》

1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部
会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター
会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第10回 グルジア特集1
2014年9月13日(土)~15日(月・祝)
パラジャーノフ、イオセリアーニ、ダネリヤなど、特異な才能を生み出した旧ソ連のグルジアを特集する。
「田園詩」
Пастораль
(1975/98分/35mm)グルジアフィルム
監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:オタール・イオセリアーニ、レヴァズ・イナニシヴィーリ他
撮影:アベサロム・マイスラッゼ
音楽:エカテリーナ・ポポーヴァ
出演:ナナ・イオセリアーニ、タマーラ・ガバラシヴィーリ、ミハイル・ナネイシヴィーリ、レーリ・ザルディアシヴィーリ
グルジアのとある奥深い農村に学生音楽家たちが休暇を兼ねて楽器練習に訪れ、再び都会に帰るまでの束の間のひと時が描かれる。監督にとってソ連時代最後の長篇作品となった本作にはグルジア映画特有のコミカルなたとえ話の体裁もなければ、主人公もあらかた不在で、筋書きは意識的に排除され、第一作「落ち葉」の冒頭で描かれていた農村風景の変奏として描かれていくかに見える。しかし、農村の方言はグルジア人にも分からぬ言葉で、都会人と村人たちのそれぞれの世界は互いに閉じたままで、いつまでも出会うことがない。本作はこの出会いの不在をまるで唯一の主人公であるかのように映し出している。(東海晃久)
「秋のマラソン」
Осенний марафон
(1979/94分/35mm)モスフィルム
監督:ゲオルギー・ダネリヤ
脚本:アレクサンドル・ヴォローヂン
撮影:セルゲイ・ヴロンスキィ
音楽:アンドレイ・ペトローフ
出演:オレーク・バシラシヴィーリ、ナターリヤ・グンダレヴァ、マリーナ・ネヨーロヴァ、エヴゲーニィ・レオーノフ
舞台は70年代末のレニングラード。大学教員で翻訳家でもある主人公ブズィーキンはタイピストのアーラと不倫。子供が欲しいと言われるも、妻ニーナと別れる勇気のない彼はいつもの優柔不断さから二人のあいだで引き裂かれ続ける。ソープオペラ的題材を用いながらも、ダネーリヤは主人公を同僚や隣人たちとのあいだをピンボールのように弾いていっては、自らの得意とするシチュエーションの虜に仕立て上げる。不甲斐ないと罵られるべきブズィーキンは次第に観る者の前に、自らの吐き出した糸に絡みとられていく蜘蛛の悲哀を帯び始める。(東海晃久)
短篇集
「結婚」
Свадьба
(1964/20分/35mm)グルジアフィルム
監督:ミハイル・コバヒーゼ
バスで知り合った女性にプロポーズを決意した若者の運命。セリフや言葉を排し、映像と音楽だけで作られた映画大学の卒業制作。60年代グルジアの映像実験の代表作。
「傘」
Зонтик
(1967/20分/35mm)グルジアフィルム
監督:ミハイル・コバヒーゼ
自由に跳ね回る傘をつかまえ、軽やかにスキップする男に少女が引き寄せられる。グルジアの監督コバヒーゼは、軽妙な短編で注目されるも、実験性ゆえに不遇をかこった。
「ピロスマニのアラベスク」
Арабески на тему Пиросмани
(1986/20分/35mm)グルジア記録映画スタジオ
監督:セルゲイ・パラジャーノフ
グルジア出身のパラジャーノフが、グルジアの国民的画家の運命と作品に捧げたオマージュ。様々な映像手法を駆使しつつ画家の生涯と作品に迫るドキュメンタリー。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》

1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部
会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター
会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第9回 キラ・ムラートワ
2014年6月28日(土)・29日(日)
旧ソ連とルーマニア間で領土争いが繰り返されていたベッサラビア(現モルドバ共和国)生まれで、ウクライナを中心に活動するキラ・ムラートワ監督の2作品を上映する。2013年のロッテルダム国際映画祭では最新作が上映され特集が組まれるなど、約50年にわたり活躍する女性監督。
「長い見送り」
Долгие проводы
(1971/95分/35mm)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督:キラ・ムラートワ
脚本:ナタリア・リャザンツェワ
撮影:ゲンナジー・カリューク
音楽:オレーグ・カラワイチューク
出演:オレグ・ウラジーミルスキー、ジナイーダ・シャルコ
離婚した母親と、思春期の多感な息子のあいだの葛藤を、瑞々しくも大胆なタッチで描いたムラートワの監督第2作。「ロング・グッドバイ」を意味する原題を持つこの作品と、これとは真逆のタイトルを持つ単独監督デビュー作『短い出会い』の初期2作はアイロニカルにも「地方メロドラマ」と称される。キャメラの繊細な動き、突飛なモンタージュ、音とイメージのずれなど、その斬新な映像センスがすでに比類ない才能を感じさせる驚くべき傑作。党の要請に部分的に従わなかったために、この作品は16年間お蔵入りとなり、ムラートワは以後長きにわたって映画を撮れなくなる。次第に壊れてゆく母親を演じるジナイーダ・シャルコの、ジーナ・ローランズを彷彿とさせる神経症的な演技がすばらしい。
「灰色の石の中で」
Среди серых камней
(1983年/83分/35mm)
オデッサフィルム(ウクライナ)
監督・脚本:キラ・ムラートワ
原作:ウラディミール・コロレンコ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
出演:イーゴリ・シャラーポフ、スタニスラフ・ゴヴォルーヒン
舞台はおそらく19世紀のロシア。母を亡くしたばかりの少年ワーシャは、妻の想い出に浸って自分を見てくれない父親を避けるようにひとり街を遊び歩くうちに、同い年ぐらいの兄妹と知り合い、奇妙な浮浪者たちが隠れすむ教会の地下に入り浸るようになる。子供向けの物語を借りた大人のための寓話。『長い見送り』の直後からすでにシナリオが書き始められていたが、度重なる検閲によって細部の改変を強いられ、ムラートワはついには完成作から自分の名前を外してしまう。絶えず動き回り、いっせいに話し始める人物たち。理解しがたい行動と、反復される支離滅裂な言葉。混沌としたイメージは、これ以後の作品に共通するものであり、むしろ『長い見送り』以上にムラートワ作品の特徴が現れていると言ってもいい。
作品解説:井上正昭
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》

1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部
会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター
会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第8回 サイレント黄金時代とエルムレル
2014年3月22日(土)・23日(日)

写真提供:国立中央映画博物館
(Museum of Сinema, Moscow)
「帝国の破片」ОбломокИмперии
(1929/100分[18コマ]112分[16コマ]/無声/35mm)
ソフキノ・レニングラード
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:フリードリヒ・エルムレル
脚本:フリードリヒ・エルムレル、カテリーナ・ヴィノグラーツカヤ
撮影:エヴゲニー・シネイデル、グレープ・ブシュトゥエフ
出演:フョードル・ニキーチン、リュドミラ・セミョーノワ
第一次世界大戦で記憶を失った男が、意識を取り戻すと目の前に現れたのは、全く見知らぬ革命政権後の世界であった。ソヴィエト版浦島太郎とも言える物語で、フロイトの精神分析の影響も見られる。ソヴィエト映画サイレント時代の転換期の作品。

写真提供:国立中央映画博物館
(Museum of Сinema, Moscow)
「新バビロン」НОВЫЙ ВАВИЛОН
(1929/102分[18コマ]115分[16コマ]/無声/35mm)
ソフキノ・レニングラード
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督・脚本:グリゴリー・コージンツェフ、レオニード・トラウベルグ
撮影:アンドレイ・モスクヴィン
出演:エレーナ・クジミナ、ピョートル・ソボレフスキー
アメリカ文化の影響を受けた前衛的劇団「フェクス」から映画界に転じ、その後のレンフィルムを担ったコージンツェフとトラウベルグの初期作品。1871年、民衆の蜂起によるパリ・コミューンを舞台に、バリケードを挟んで引き裂かれる恋人たちを描く。
「呼応計画」Встречный
(1932/110分/35mm)
ロスフィルム
監督:フリードリヒ・エルムレル、セルゲイ・ユトケーヴィチ
脚本:レオ・アルンシタム、レオニード・リユバシェフスキー、フリードリヒ・エルムレル、セルゲイ・ユトケーヴィチ
撮影:アレクサンドル・ギンツブルグ、ジョゼフ・マルトス、ウラジーミル・ラポポルト
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
出演:ウラジーミル・ガルジン、マリア・プリュメンターリ=タマーリナ、タチヤーナ・グレーツカヤ
国が掲げる第1次五カ年計画の早期遂行のため、労働者によって自発的に立てられた高い目標計画(呼応計画)のもと、タービン建設に取り組む労働者たちを、社会主義建設に燃える若者と旧世代の熟練労働者の断絶とともに描くトーキー初期作品。
* 「帝国の破片」と「新バビロン」の上映スピードは18コマ(1秒間に進むコマ数)を予定していましたが、試写の結果16コマが適切であると判断しました。それにより上映分数が予定より長くなります。
休憩時間の短縮等の処置でタイムテーブルに大きな変更は無い予定ですが、ご了承ください。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:東京国立近代美術館フィルムセンター、ロシア映画社、国立中央映画博物館、国際交流基金
[関連企画] 3月22日(土)
講演:フリードリヒ・エルムレルとソ連無声映画の黄金時代(1925-1930)
講師:マクシム・パヴロフ(国立中央映画博物館 副館長)
主催:国際交流基金
《料金》
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円
《割引》
当日に限り2本目は200円引き
ロシア・ソヴィエト映画 連続上映
第4回 SF大国1
2013年10月5日(土)・6日(日)
科学的な空想にもとづくサイエンス・フィクション(SF)というジャンルは、現実を離れたものを描いているにもかかわらず(あるいはそうであるからか)、不思議なほどその時代の様相を映し出す。今回は、1920年代の『アエリータ』に始まるソヴィエトの多様なSF映画を3回に分けて特集する予定です。
5日(土)は、サイレント映画『アエリータ』を、神戸を中心に活躍する山川亜紀さんの生伴奏でご覧いただきます。
「アエリータ」
(1924/125分[16コマ]/無声/35mm)
メジラプポム・ルーシ
監督:ヤーコフ・プロタザノフ
原作:アレクセイ・トルストイ
撮影:ユーリー・ジェリャプジスキー、エミール・シューネマン
美術:セルゲイ・コズロフスキー
出演:ユーリア・ソーンツェワ、ニコライ・ツェレテリ、ヴァレンチナ・クインジ、ニコライ・バターロフ
ロシア・アヴァンギャルド時代に作られたソ連初のSF映画。火星ロケットを設計する技師が、妻をピストルで撃ってしまい、ロケットで火星へ逃げる。そこでは火星の女王アエリータが大臣と権力闘争を繰り広げていた。ロケットで同行した赤軍兵士は、火星の奴隷たちを煽動し蜂起させる……。
伴奏:山川亜紀(コンポーザーピアニスト)
大阪音楽大学音楽学部ピアノ科卒業。各種コンサートにおいて独奏、伴奏、 アンサンブル等、多数出演。その他、教育CD-ROMの音楽制作、編曲、司会、高齢者や障害児の音楽療法にも携わる。 2000年、オリジナル曲1stアルバム「clear wind」を、2009年、2ndアルバム「with Friend」を発表。 大阪音楽大学演奏員。日本ピアノグレード認定協会審査員。長田のピフレホールで定期的に開かれている演奏会「おもしろ音楽博物館」でもおなじみ。
主催:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター
協力:ロシア映画社
《料金》
[5日(土)・生伴奏付き]
一般1800円 学生・シニア1500円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1500円 学生・シニア1300円
アテネ・フランセ文化センター会員1500円
*招待券の利用不可
[6日(日)]
一般1200円 学生・シニア1000円
神戸プラネットシネマ倶楽部会員1000円 学生・シニア会員900円
アテネ・フランセ文化センター会員1000円