特集:子ども映画の愉しみ

CIE映画

戦後、CIE(民間情報教育部)は文部省に最新鋭の16ミリ映写機(ナトコ)1300台を無償貸与して各都道府県に配布、併せて供給されたアメリカなどの短篇教育映画を巡回上映して日本の民主主義啓蒙に努めました。この、GHQが占領政策として上映を推進したCIE映画から日本の教育映画の歴史を振り返ります。

10月22日(土)14時40分〜 参加無料
講演:CIE映画と日本の映画教育  講師:阿部彰
(大阪大学名誉教授)

 

Aプロ

カナダにおける学校施設や授業法の刷新、学校統廃合の過程をドキュメンタリータッチで紹介する『みんなの学校』、住んでいる町の成り立ちの調査を通じて研究の愉しさを学ぶ『町も学校』、アメリカ民謡の作曲家フォスターの伝記映画『フォスター名曲集 第5篇 夢路より』、アメリカにおける報道のあり方を描いた『新聞の自由』の4作品。

『町も学校』

『新聞の自由』

『新聞の自由』

みんなの学校 Everyone’s School
(CIE封切1948/17分/16mm)
カナダ国立映画局製作 監督:W. A. マクドナルド、イディス・スペンサー 撮影:ジョン・ノーウッド

町も学校 Near Home
(CIE封切1948/23分/16mm)
ベーシック・フィルムズ製作 英国政府国際映画局配給 英国インフォメーション・サービス映画
撮影:ジエラルド・ギブス 配役:リチャード・ドナルド・フインレイ 日本語版製作:大映株式会社

フォスター名曲集 第5篇 夢路より Beautiful Dreamer
(CIE封切1949/16分/16mm)
アドイミラル・ピクチュアズ会社 監督:ジェイ・リチャード・ウェストン
脚本:アルフレッド・スマレエイ 音楽監督:ケン・ダービー 撮影:ウィリアム・ウットン
録音:コーリー・クック
出演:ドン・リード、ジョイ・グイネル、ボウル・セオドア、キングスメン合唱団

新聞の自由 Freedom of the Press
(CIE封切1950/17分/16mm)

 

Bプロ

雨具がなくて欠席者が続出する問題を小学校の児童たちが自主的に解決していく過程を追う『こども議会』、捨て猫を介抱する母猫にすねて家出する子猫が、いろいろな危難にあいながらわが家に戻るまでをオペレッタ形式で表情が豊かに描くアニメーション『すて猫トラちゃん』、そして3本目の有名なドキュメンタリー『北地のナヌック(極北のナヌーク)』は本来は無声であるが、今回上映するのは国内に現存する数少ないプリントの一本で戦後トーキー化されたものの日本語版。

『こども議会』

『こども議会』

『北地のナヌック』

『北地のナヌック』

こども議会 Children’s Diet
(1947/CIE封切1950/19分/16mm)
東宝教育映画 製作:米山彊 脚本・演出:丸山章治 撮影:完倉泰一 編集:今泉善珠 音楽:清瀬安二

すて猫トラちゃん
(1947/24分/16mm)
日本動画社、東宝教育映画部 製作:井関輝雄 演出:政岡憲三 脚色:佐々木富美男
作詞:佐伯孝夫 作曲・指揮:服部正 録音:岡崎三千雄 作画・撮影:日本漫画映画

北地のナヌック(極北のナヌーク) Nanook of the North
(1922/CIE封切1951/50分/16mm)
製作・撮影・監督:ロバート・J・フラハティ

 

Cプロ

第二次大戦後のソ連やヨーロッパなどの世界情勢をアメリカの視点で描いた『平和への意志』、教育委員会制度の趣旨を啓発することをねらいに、とくに日本向けに製作された『新しい村の学校』、盲児幼稚園の教育を描く『わが子はめくら』、仲間にとけこめず社会適応性に乏しい「優秀児」を集めた特別学級における実践を紹介する『実験学校』の4作品。

『平和への意志』

『平和への意志』

『実験学校』

『実験学校』

平和への意志 The Will for Peace
(CIE封切1951/33分/16mm)

新しい村の学校 New Rural School
(1949/CIE封切1951/19分/16mm)
ハーバード・カアコウ・プロダクション製作

わが子はめくら My Child Is Blind
(CIE封切1952/21分/16mm)
製作:ヴィクター・D・ソロウ

実験学校 Experimental Elementary School
(1949/CIE封切1952/16分/16mm)
製作・監督:ヴィクター・ソロウ

 

 

学研映画


学習研究社(学研)は1946年に小学生向け学習雑誌「学習」を創刊し教育系出版社として誕生しました。1950年には視聴覚教育の重要性と発展性に着目しスライド教材の製作に着手、その5年後の1955年から教材映画の製作をスタートしました。理科や社会科など学校現場で使われる教材映画や児童向け人形アニメーションなど、その初期から70年代までの代表作を5つのプログラムでご覧いただきます。
解説:山本直美(学研教育アイ・シー・ティー)

Dプロ 社会科映画

理科映画とならんで、学研映画の草創期を支えた社会科映画を特集したプログラム。学習雑誌や出版物、スライドなどで得た教材制作のノウハウにより、初期は「映画の形をした教材づくり」に力点がおかれていたが、『貨物駅』『魚市場』などには当時の世相や風俗が映し出され、歴史的付加価値ももつようになっている。また全盛期を迎えた日本映画の手法を巧みに取り入れ、『のうかのくらし』では教材らしからぬ映画技法が垣間見られる。

『郷土を調べよう』

『郷土を調べよう』

『のうかのくらし』

『のうかのくらし』

貨物駅
(1961/15分/ブルーレイ)
脚本:道家和祥 演出:佐藤洸 撮影:林伸好

郷土を調べよう
(1961/16分/16mm)
演出:森下博美 撮影:鈴木鉄男

のうかのくらし
(1968/10分/16mm)
脚本・演出:小野豪 撮影:金井勝 音楽:木下忠司

遣唐使 海外文化の移入
(1965/16分/16mm)
脚本:佐藤洸、福井康雄 演出:小野豪 撮影:八木正次郎 アニメーション:岡田一利 音楽:長沢勝俊

魚市場(うおいちば)学習映画大系社会科シリーズ
(1958/11分/16mm)
脚本:森田純 演出:阿久津好伸 撮影:星信夫

 

Eプロ アートアニメーション

パペット(人形)、紙、フィルムなど、様々な手法で制作された学研のアートアニメの特集プログラム。1960年代に学研は、渡辺和彦という社員監督を中心に、およそ40本のアートアニメーション映画を制作した。『いなかねずみとまちねずみ』『きたかぜとたいよう』のような半立体アニメは、当時珍しい「多層式撮影台」といって、ガラスのレイヤーを何枚も重ねて最上段から撮影する特殊技術が用いられていた。また、『マッチ売りの少女』『セロひきのゴーシュ』のような人形アニメは、多くが佐々木章氏により造形された人形を用いていた。凹凸が少なく、のっぺりとした顔が特長的である。

『いなかねずみとまちねずみ』

『いなかねずみとまちねずみ』

『セロひきのゴーシュ』

『セロひきのゴーシュ』

いなかねずみとまちねずみ
(1960/9分/35mm)
脚本・演出:渡辺和彦 作画:清水耕蔵 音楽:宅孝二

きたかぜとたいよう
(1960/8分/35mm)
脚本・演出:渡辺和彦 アニメーター:寺司香智子 作画:清水耕蔵 音楽:今井重幸

マッチ売りの少女
(1967/18分/35mm)
原作:アンデルセン 脚本:神保まつえ 演出:渡辺和彦 人形アニメーター:和田京子、見米豊、武川和子 人形:佐々木章 音楽:林光

みにくいアヒルの子
(1968/18分/35mm)
脚本・演出:渡辺和彦 人形アニメーター:和田京子、見米豊、尾崎良 人形:佐々木章 音楽:斎藤高順

以上4作品、フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

セロひきのゴーシュ(1963/19分/ブルーレイ 16mm
原作:宮沢賢治 脚本・演出:神保まつえ 人形アニメーション:飯田純子、和田京子 人形:佐々木章

 

Fプロ 理科映画

学研映画が、教育映画としてその地位を確固たるものとした理科映画を集めたプログラム。1950年代の教育映画といえば、広告や宣伝を目的として作られた、いわゆるPR映画が大部分を占めていた中で、学研は教材に特化した映画を作る。生物学などに明るい学研の科学雑誌の編集部員をスタッフに加え、第一号映画作品『カニの誕生』を制作。その後、理科専用のスタジオを建設し微速度撮影や顕微鏡撮影なども完備されると、『しょうじょうばえ』など動物の生態を観察したり、実験を行ったりする特殊撮影も行われるようになった。

『カニの誕生』

『カニの誕生』

『きる 切断のなぞをさぐる』

『きる 切断のなぞをさぐる』

カニの誕生
(1955/10分/16mm)
脚本:藤平波三郎 構成:高綱則之 撮影:清水ひろし、中村聖

かげ
(1971/9分/16mm)
脚本・演出:建部賢太郎 撮影:金子泰生 音楽:斉藤高順

動物を分類する
(1971/16分/16mm)
脚本・演出:菅能琇一 撮影:秋山泰宏

しょうじょうばえ
(1970/16分/ブルーレイ)
脚本・演出:菅能琇一 撮影:松本慶一

きる 切断のなぞをさぐる(1971/27分/16mm)
脚本・演出:定村武士 撮影:平野光徳 音楽:桑野研郎

 

Gプロ 産業映画

学研が官公庁や企業から受託して制作した産業映画を集めたプログラム。学研は教材映画制作の一方、様々な団体から映画制作を請け負っていた。その中には公害や環境問題を取り上げた『黒い霧 スモッグに挑む』のように、ドキュメンタリー映画として現在も受け継がれる作品もある。また1970年の大阪万博では、部内に万博映画制作室が設置され、パビリオン内で投影する大型展示映像の制作なども行った。

『Expo’70 人類の広場』

『Expo’70 人類の広場』

『黒い霧 スモッグに挑む』

『黒い霧 スモッグに挑む』

Expo’70 人類の広場
(1970/20分/ブルーレイ上映)
脚本・演出:福井康雄

黒い霧 スモッグに挑む
(1965/27分/ブルーレイ上映)
脚本:秋山智弘 演出:定村武士 撮影:佐竹荘一

純白の太陽
(1966/20分/ブルーレイ上映)
脚本・演出:畑正憲 撮影:岩間勇水

 

Hプロ 昭和の子どもたち

学研映画に収録されている人々や町の様子などから、当時の世相や風俗をふり返るプログラム。学研は多数の児童向け教育映画を制作する中で当時の子どもたちの活き活きとした姿を映し出してきた。彼らを取り巻く生活習慣、服装、髪型、話し方に至るまで、深い郷愁にかられる作品を選定した。

『おこったエンピツたち』

『おこったエンピツたち』

『えんそく』

『えんそく』

おこったエンピツたち
(1963/17分/16mm)
脚本・演出:小野豪 撮影:佐竹荘一 特殊技術:渡辺和彦 音楽:斉藤高順

えんそく(1960/13分/16mm)

てんぐ祭りとがき大将
(1975/45分/16mm)
脚本:関功 演出:瀬藤祝 撮影:金子泰生 音楽:西山登

 

清水宏監督作品


『風の中の子供』、『みかへりの塔』、『しいのみ学園』など、みずみずしい子どもたちの姿を戦前から戦後にかけて描き続けた清水宏監督。その中でも自主製作時代の「蜂の巣映画」を中心にしたプログラム。

Iプロ

清水監督は戦災孤児を引き取りともに生活をしていたが、その子どもたちを出演させてオール・ロケーションで撮影した作品。下関に降り立った復員兵が出会った浮浪児たちを連れて広島、神戸と山陽道を歩いて行く。山中貞雄、小津安二郎、そして溝口健二が天才と呼んだ、清水宏監督の「子ども」と「旅」のテーマが凝縮されている。
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蜂の巣の子供たち
(1948/86分/35mm)
蜂の巣映画部 監督・脚本:清水宏 撮影:古山三郎 音楽:伊藤宣二
出演:島村俊作、夏木雅子、久保田晋一郎、岩本豊

 

Jプロ

当時、植民地であった朝鮮で即興的に撮影された小品『ともだち』、『みかへりの塔』などの長篇の合間を縫って製作した『團栗と椎の実』、清水宏の珍しい記録映画『奈良には古き佛たち』。長篇作以上に清水映画の魅力にあふれた短篇作品のプログラム。

『ともだち』

『ともだち』

『團栗と椎の実』

『團栗と椎の実』

ともだち
(1940/13分/35mm)*音声欠落
大日本文化映画製作所 監督・脚本:清水宏 撮影:厚田雄治
出演:横山準、李聖春、南里金春
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

團栗と椎の実
(1941/29分/35mm)
松竹大船 監督・脚本:清水宏 撮影:森田俊保
出演:大塚紀男、横山準、大山健二、若水絹子、大藤亮

奈良には古き佛たち
(1953/36分/35mm)
蜂の巣映画部 監督:清水宏

 

Kプロ

『その後の蜂の巣の子供たち』に続く「蜂の巣映画」三部作の3本目。奈良でお寺の案内をして生活する戦災孤児の少年たちを、大仏が静かに見守っているかのような心温まる作品。

daibutsu01大佛さまと子供たち(予定)
(1952/102分/35mm)
蜂の巣映画部 監督・脚本:清水宏
撮影:古山三郎 音楽:伊藤宣二
出演:岩本豊、硲由夫、宮内義治、久保田晋一郎、川西清
フィルム提供:東京国立近代美術館フィルムセンター

 


Kobe Documentary Film Festival 2016
第8回神戸ドキュメンタリー映画祭
10月15日(土)・16日(日)、21日(金)〜25日(火)

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〈ホームムービーの日 in 神戸〉
日本の新作ドキュメンタリー「さとにきたらええやん」
特集:子ども映画の愉しみ

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