プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2011

山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉4 阪本順治
2011年3月25日(金)「行きずりの街」の上映のみ 
         26日(土)映画講座+上映

『活劇の行方』をはじめとする著書で、一貫して活劇の観点から映画を論じてきた日本映画批評を代表する山根貞男による「活劇論」です。
今回は、2010年公開の阪本順治監督『行きずりの街』を上映の後、論じます。
(25日は上映のみ)

(C)2010「行きずりの街」製作委員会

「行きずりの街」
(2010/123分/35mm)
製作:「行きずりの街」製作委員会
配給:東映
監督:阪本順治 原作:志水辰夫
脚本:丸山昇一 撮影:仙元誠三
出演:仲村トオル、小西真奈美、南沢奈央、窪塚洋介、菅田俊、ARATA、石橋蓮司、江波杏子
十二年をまたぐ愛を取り戻す主人公の行動が三日間で描かれ、それを二時間三分の上映時間で見せる。異なる長さの「時」の重層的な圧縮が独特の魅力を結晶させる。丸山昇一が志水辰夫の小説を巧緻に脚色し、阪本順治のもと、撮影の仙元誠三らスタッフと出演者が、それの立体化に成功している。
(「キネマ旬報・日本映画時評262」より構成)
 

山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『マキノ雅弘―映画という祭り―』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)、『成瀬巳喜男の世界へ』(蓮實重彦との共著編)などのインタビューや編著が多数ある。

 

《料金》
[上映のみ]
一般:1200円 学生・シニア:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア:900円
 
[映画講座+上映]
一般:1800円 学生・シニア:1500円
会員一般:1500円 会員学生・シニア:1300円

*招待券の使用不可 *ご予約受付中


即興ライブ演奏付き「イタリア麦の帽子」上映
2011年3月27日(日)16:00〜

結婚式当日を迎えた花婿。彼の馬が、逢い引き中の人妻の麦わら帽子を食べてしまい…。
後に、『自由を我等に』『巴里の屋根の下』などを手がけるルネ・クレール監督の軽快な傑作喜劇。
 
『イタリア麦の帽子』LE CHAPEAU DE PAILLE D’ITALIE
(フランス/1927/82分[20fps]/サイレント/16mm)
監督:ルネ・クレール
撮影:モーリス・デファシオ、ニコラ・ルダコフ
美術:ラザール・メールソン
出演:アルベール・プレジャン、オルガ・チェホヴァ、マリーズ・マヤ、アリス・ティソ、アレクシス・ボンディレ
 
演奏
尾中泰雄(バイオリン、マンドリン)、木内健弘(コントラバス)、ほか
 

《料金》
[生演奏付き上映会]
一般:1500円 学生・シニア:1200円
会員一般:1200円 会員学生・シニア:1000円


日本映画名画鑑賞会
2011年4月3日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


忘れられた映画の再発見 収蔵作品より
2011年4月9日(土)・10日(日)
第3回恵比寿映像祭(2月18日〜27日)で【忘れられた映画の再発見 神戸映画資料館セレクション】として当館の収蔵作品(所蔵:プラネット映画資料図書館)が上映されましたが、同じプログラムを凱旋上映いたします。さらに近年、国立近代美術館フィルムセンターに素材提供して復元した新大都映画2作品と大正期の珍しいフィルムをまとめて上映いたします。

Aプログラム
「ターチャンの海底旅行」
(1935/7分/サイレント/35mm)監督:政岡憲三
『くもとちゅうりっぷ』などの作品で知られるアニメ映画の巨星、政岡憲三の新発掘フィルム。ターちゃんとミーちゃんが豆潜水艦で海中散歩して遭遇する危機や冒険を描いた作品で、映画保存協会が「映画の里親制度」により2010年の「第5回映画の復元と保存に関するワークショップ」の課題として9.5ミリから35ミリにブローアップしたもの。本来はトーキーだが、音声現存せずサイレント上映。

 

「ノンキなトウサン竜宮参り(夢の浦島)」
(1925/10分/35mm)監督:木村白山
なまけ者のノンキなトウサンが、夢で海中のカフェー竜宮館で遊び、みやげに貰った玉手箱から出てきた鬼におどろかされ働き者になるというアニメーション。本来はサイレントだが、1942年に牧野周一の解説を入れたトーキー版。木村白山は看板描きからアニメに転身し「白山漫画」として知られた作家だが生没年、本名、出身地など不明で謎の多い作家。

「美の誕生」
(1948/9分/35mm)監督:岡崎宏三
川島雄三、豊田四郎、小林正樹ら多くの名監督と様々な作品を手掛け、80歳を越えても現役カメラマンとして活躍、2005年に86歳で没した撮影監督・岡崎宏三が監督・撮影したデンマーク体操の紹介映画で、女学生たちが音楽に合わせてリズミカルに体操する美を描く映像詩。そのカメラワークや編集などサイレント時代から培った岡崎の技が見どころ。

「煉獄に咲く花」
(1953/38分/35mm)監督:石山稔
ある売春婦の手記を映画化したもので、水害で家族を失い東京に出てきて路頭に迷っていたところ、声をかけてきた親切そうな女に騙されて娼婦に転落した女と、貧しい漁村から病身の母の治療費をかせぐために東京に出て娼婦になった女を主人公に、人身売買の悲惨な実体を批判する映画。「衆議院参議院婦人議員推薦」と字幕が出る。

 

 

「海魔陸を行く」
(1950/53分/35mm)監督:伊賀山正徳
漁師が蛸壺で捕まえた蛸が、行商中の魚屋の荷車から脱げ出し、線路で列車に轢かれそうになったり、野原の火災に巻き込まれたり、野山の各種動物に襲われるなど、さまざまな危機を乗り越えて故郷の海を目指すという風変わり極まりない映画。解説は徳川夢声が担当。残念ながらタイトルや若干のシーンが欠落している。

 

Bプログラム
「チャップリンとクーガン[仮題] 」
(1920年代/11分[16fps/部分]/染色/サイレント/35mm)監督不詳
チャップリンらしきキャラクターや「キッド」の子役ジャッキー・クーガンを思わせるキャラクターが登場し、日本の映画撮影を見学する内容のアニメーション。フィルム入手時には3巻あったが、内1巻は完全に溶けて画像が消滅していたので、残り2巻を不燃化したもの。文献の記録に見あたらない不思議な作品。

 

 

「元祖 大曲藝連鎖 東京江川巡業部」
(大正時代/1分[16fps/断片]/サイレント/35mm)監督不詳
幕末の軽業師・江川作蔵が南洋に渡って修得したと言われる玉乗りは、明治初年から関東大地震まで浅草六区で興行し大評判だった。この「江川の玉乗り」を撮影した映画も多数記録されているが動く映像は存在しないと思われていたので、断片ではあるが歴史資料的価値は高いはずである。

 

「怪談 皿屋敷[仮題] 」
(1923年以前/11分[16fps/断片]/染色/サイレント/35mm)監督不詳
フィルムセンターの調査によるとおそらく日本映画のなかで現存する最古の「皿屋敷もの」。断片なので作品名を特定できないが古い形式の映画の一例として興味深い。二重露光や逆回転撮影など後の特撮がすでに使用されており、当時の撮影技術を知る上でも貴重なフィルムである。

 

「剣劇女優とストリッパー 」
(1953/26分/35mm)
新大都映画 監督:平澤譲二 撮影:富澤恒夫 美術:古川健一 音楽:志村道三
出演:大都あけみ、奥山紗代、三島百合子、空飛小助、キャロル都
当時人気のあった女剣劇とストリップを組み合わせた客受け狙いの際物映画。田舎の芝居小屋で歌舞伎芝居が不入りだったが、東京から呼び寄せたストリップと歌舞伎の二本立て興行をしたところ大成功。映画スターに出世した女座長の回想として描く。無声映画の弁士として知られる加藤柳美が画面を説明。

「アナタハン島の眞相はこれだ!! 」
(1953/53分/35mm)
新大都映画 監督:吉田とし子 撮影:亀谷明正 美術:大溝一彦 音楽:加藤光雄
出演:比嘉和子、髙野眞、小泉郁之介、諏訪孝介、加藤勇、佐伯徹、熊木浩介、里木三郎、大塚周夫
太平洋の孤島で1人の女性と32人の男達が共同生活していくうちに、男たちがその女性を巡って争うようになり、男性達の間で公然と殺し合いが行われるようになったという「アナタハンの女王事件」の映画化。当事者である比嘉和子本人が主演するという話題性を狙った際物映画で、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督が『アナタハン』を作るにあたって参考にしたとされる。初期の女性監督作品でもある。

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2プログラム目は200円引き


エジプト映画の巨匠 ユーセフ・シャヒーン
2011年4月16日(土)・17日(日)
エジプト映画界のフェリーニあるいは黒澤明とも呼ばれる、ユーセフ・シャヒーン監督。その作品は音楽あり活劇あり歴史あり政治ありの豊かな映像世界で、国際的に賞賛されてきた。
『アレキサンドリアWHY?』では1942年当時国際都市であったアレキサンドリアを、『放蕩息子の帰還』では1960年代ナセル時代末期の小さな町を舞台に物語を紡ぎ、中東現代史の相貌をも浮き彫りにしている。

 ユーセフ・シャヒーン YOUSSEF CHAHINE
1926年エジプト・アレキサンドリア生まれ。大学1年で渡米し、ロサンゼルスで映画と演技を学ぶ。帰国後、24歳の時に父親をモデルにした『誠実なパパ』(1950)で監督デビュー。以降、カンヌやベルリン等の国際映画祭で作品が上映され、高い評価を受ける。『アレキサンドリアWHY?』で、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。1997年『炎のアンダルシア』で、カンヌ国際映画祭の50回記念特別グランプリを受賞。世界を代表する11人の監督によるオムニバス作品『セプテンバー11』(2002)にも参加した。2008年、82歳で逝去。

 
「アレキサンドリアWHY?」 Iskandariyah… lih?
(エジプト/1979/132分/35mm)
製作:ミスル・インターナショナル・フィルム
配給:シネマトリックス、アイディ
監督:ユーセフ・シャヒーン
脚本:ユーセフ・シャヒーン、モフセン・ザイド
撮影:モフセン・ナスル
音楽:ファウド・ザヘリー
出演:モフセン・モヒーディーン、マフムード・メリーギ、モフセナ・タウフィーク、ライラ・ハマーダ、ザイナブ・セドキー
ベルリン国際映画祭銀熊賞・審査員特別賞
1942年のアレキサンドリア。演劇に情熱を燃やす18歳の青年の夢と友情、そして家族との絆を鮮やかな映像で綴る。シャヒーン監督の自伝的4部作(アレキサンドリア・シリーズ)の第1作。アラブ人青年とユダヤ人の娘の恋、エジプト人貴族とイギリス軍兵士のホモセクシャルな愛、そしてチャーチル暗殺を企むナショナリストや戦争成金など、多彩な人間模様。
題名の「アレキサンドリアWHY?」とは、アメリカへの演劇留学の夢断ちがたい主人公が自問する「アレキサンドリアよ、何故僕はここにいなければならない?」に由来するが、同時に「何故、私たちはいつも戦争の時代を生きなければならないのか?」というシャヒーンのプロテストの声も秘められている。
 
 
「放蕩息子の帰還」 Awdet el Ebn el Dal
(エジプト/1976/125分/35mm)
製作:ミスル・インターナショナル・フィルム
配給:シネマトリックス
監督:ユーセフ・シャヒーン
脚本:ユーセフ・シャヒーン、サラーハ・ジャヒーン、ファルーク・ベローファ
撮影:アブデル・アジズ・ファミー
音楽:アブー・ザイド・ハサン
出演:ショクリー・サラハーン、アーメッド・メヘレズ、ソヘイル・モルシェディ、サイド・アリー・クーイラート、ヒシャム・セリム
1952年の革命後、解放者としてのナセルの栄光が、1967年の第3次中東戦争の敗北や経済危機によって失われつつあった1960年代末期の小さな町が舞台。投獄されていた工場主一家の次男の帰還がもたらすある家族の崩壊と、そこから旅立つ若き恋人たちを対比させ描く。歌や踊りを多用するエジプト映画の伝統的手法を使って作られた、シャヒーン独自の “音楽悲劇(ミュージカル・トラジェディー)” 。
1962年にはナセル大統領の栄光を讃える大作『サラディン』を監督したシャヒーンだが、その後、政府の弾圧から逃れるため、64年から66年にかけてレバノンへの亡命を余儀なくされた。
    

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


完成披露上映会「ミッシング」「コウノトリが…」
2011年4月24日(日)16:30〜
*13:30〜関係者のみの上映あり
神戸映画資料館では、毎夏、映画作りのワークショップを開催してきました。
昨2010年は、ワークショップ生が主要スタッフ(脚本・監督・出演ほか)をつとめた『コウノトリが・・・』を製作。
さらに年末には『シャーリーの好色人生』などを手がける佐藤央監督を招聘して、『ミッシング』の撮影を新長田で行いました。この撮影にはワークショップ生の有志や神戸芸術工科大学の学生も参加し、低予算の自主製作で出来ることを、映画のプロの現場から実地に学ぶ機会としました。脚本に小出豊を迎え、佐藤央監督の新境地を示す作品です。
この度、完成したばかりの2作品の披露上映を行います。
「ミッシング」
(2011/55分/HD)製作:神戸映画資料館
監督・編集:佐藤央 脚本:小出豊 撮影・照明:四宮秀俊
録音:新垣一平 音楽:近藤清明 美術:大石佳奈
助監督:大岸智博 制作:唐津正樹
キャスト:土田愛恵、きく夏海、信國輝彦、昌本あつむ、八尾寛将、堀尾貞治
夫と1人息子のヒロと幸せな生活を送っていた清瀬晧子は、軽い気持ちからヒロとの約束を破ってしまう。その日以来、ヒロは二度と帰ってこず、「自分のせいだ」と自らを責める晧子は夫と別れ1人ヒロを待ち続ける。それから5年の月日が過ぎ…。

 この映画は、何かとても大事なものを失ってしまった人々について語った映画です。自分にとってとても大事なものを失ってしまうと、弱さからか、たとえそれが自分のせいでなくても自分のせいだと思ってしまう。この映画ではそのことを「因果」と呼んでいますが、そのような「因果」と呼ばれる事柄に直面してしまった人々を見つめる眼差しが、この映画のテーマとなっています。
 ほぼ映画初出演であるキャストの昌本あつむと堀尾貞治さん始め、主演の土田愛恵さん、きく夏海さんらキャストの方々と、スタッフとしてみぞれの振る年末に獅子奮迅の活躍を見せてくれた神戸芸工大の若者たちの息吹が息づいたこの映画を楽しんでいただければと切に願います。

  監督・佐藤央

[監督]佐藤央
1978年大阪生れ。映画美学校フィクションコースを卒業後、2005年、短編ドキュメンタリー『キャメラマン 玉井正夫』を監督(フィルムセンター、三重映画フェスティバル、神戸映画資料館などで上映)。2007年、オムニバス映画『夢十夜 海賊版』の一本「不安」(第八夜)、2009年には『シャーリーの好色人生』を監督し、冨永昌敬(『パンドラの匣』『乱暴と待機』)との二本立て映画『シャーリーの好色人生と転落人生』として全国で公開。各方面で高い評価を得る。2009〜10年には自主制作で『結婚学入門(恋愛篇・新婚篇)』の2作を続けざまに監督した。
 
[脚本]小出豊
1974年生まれ。映画美学校フィクションコースを卒業後、2006年、『お城が見える』(第4回CO2オープンコンペ部門優秀賞)を監督。2009年には初長編『こんなに暗い夜』(ハンブルグ映画祭、シネマ・デジタル・ソウルなどで上映)、オムニバス映画『葉子の結婚』「月曜日」を監督し、各地で話題を呼んだ。その他の仕事に、万田邦敏「県境」「一日限りのデート」(BS-i)の脚本などがある。映画批評誌「シネ砦」団員。
 
 
「コウノトリが…」
(2011/45分/HD)製作:神戸映画資料館
監督:村津蘭 脚本:小林紗季 撮影:岡山佳弘 
録音:堀修生 美術:南山真之 助監督:大岸智博 
制作:山本暢俊、橋口明弘
キャスト:小川尊、真塩優、根村茂次、西山真来、佐々木嘉子、岩村襟子、
原田佐之助、上田洋子
10年後、少子化対策で政府は代理母制度を奨励するが、代理母の数は足りていない。産婦人科医である洋介は中絶と養子へ出す母親が多い現実に違和感を感じつつも、子どもセンターで働いている。ある日古い友人に頼まれ、非正規の代理母出産を引き受けるが、依頼した葉子も代理母の亜紀も子どもに関心は薄く…。

 「10年後」という設定で脚本を書くこと、映画の文法に沿って作品を組み立てていくことが今回WSのお題でした。WS生で選んだテーマは「10年後母性はどこに行くのか」。「10年後」というテーマは現代という時代をどのように捉えるか、ということでもあります。WS生自身が作った脚本を基に、俳優・演出・美術・制作等それぞれの役割から想像し、手探りで作った「10年後」。多くのWS生が映画製作が初体験の中で、猛暑の下撮られたこの作品で「現代」が少しでも浮かびあがればと願います。
  監督・村津蘭

《料金》1000円


ストローブ=ユイレの21世紀
2011年4月29日(金・祝)〜5月8日(日)[期間中休館日無し]
最初の長編『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』で国際的に知られるようになって以来、その独自の制作姿勢により、孤高の映画作家と称され、ゴダールと同様、特別の注目を浴びてきたストローブ=ユイレ。“撮るたびに映画を発明しなおしている” と賞賛され、その作品は映画の自由と厳格さを同時に持つ。2006年にユイレが没した後も、ストローブは制作を続けている。今回は、 彼らの2000年以降の作品を特集上映する。

ジャン=マリー・ストローブ Jean-Marie Straub  ダニエル・ユイレ Danièle Huillet
ジャン=マリー・ストローブ(1936‐)とダニエル・ユイレ(1936‐2006)は、40年以上にわたって共同で映画製作を行い、私生活におけるパートナーでもあった。フランスからドイツを経てイタリアに行き、つねに異邦人として映画を撮り続けた。2000年以前の作品に、『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』(1968)、『モーゼとアロン』(1974)、『すべての革命はのるかそるかである』(1977)、『アメリカ(階級関係)』(1984)、『シチリア!』(1998)などがある。

  
Aプログラム
「労働者たち、農民たち」
Ouvriers, paysans(Operai, contadini)
(2000/123分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
原作はヴィットリーニの長編小説「メッシーナの女たち」の独白体で構成された第44章から第47章。映画に登場し証言するのは、社会的混乱の中、行き場をなくし、山中で新たな村を再建しつつある戦争難民たち12名であり、彼らがそれぞれ微妙に食い違う固有の観点から報告するのは、前年の秋からその年の初春にかけての苦難や対立とそれを乗り越えた喜びである。ただし、農民と労働者を演じる人々は撮影が行なわれた時代の服装のまま定点を動かず、「冬の出来事」の回想は具体的に映像化されることはない。
 
 
Bプログラム
「放蕩息子の帰還/辱められた人々」
Il ritorno del figlio prodigo/Umiliati
(2003/64分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
『労働者たち、農民たち』の挿話を再利用した「放蕩息子の帰還」と、その後日譚「辱められた人々」の二部構成。後者では、山中の共同体に地主代行や元パルチザンらが訪れ、土地所有権を侵害する違法性、自給自足経済の割りの悪さを説き、共同体を崩壊させる。
撮影のレナート・ベルタは、ダニエル・シュミット、ゴダール、オリヴェイラ監督作品も多く手がけている。
Cプログラム
「ルーブル美術館訪問」Une visite au Louvre
(2004/48分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ レナート・ベルタ
映画『セザンヌ』(1989)に続き、ジョアシャン・ガスケの創作的回想録「セザンヌ」のガスケとの対話の一部を参照しつつ、セザンヌが見たであろうルーヴル美術館所蔵の美術作品を注視する。対話の形で語られるセザンヌの思弁的な絵画論が女性の声で画面外で語られる。
Dプログラム
「あの彼らの出会い」Quei loro incontri
(2006/68分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
パヴェーゼの神話的対話詩篇「レウコとの対話」の最後の5篇「人類」「神秘」「洪水」「ムーサたち」「神々」を映画化。古代ギリシャの神々、半神半人、森の精、死すべき運命を持つ人間らの間で交わされる対話がオリュンポスに見立てた山腹で演じられる。
Eプログラム 4作品
「ヨーロッパ2005年、10月27日」Europa 2005 27 octobre
(2006/12分/デジタルベータカム)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
ストローブ=ユイレが初めてDVを用いたシネトラクト(アジビラ映画)。イタリア国営放送の委嘱により2006年春に撮られた。警察に追われ変電所に隠れていた15歳と17歳の移民少年が感電死したクリシー=ス=ボワの事故現場を撮影する。この事故が各地の暴動のきっかけとなった。
 
「アルテミスの膝」Il Ginocchio di Artemide/Le Genou d’Artemide
(2007/26分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、エンデュミオンと見知らぬ者の対話「野獣」を映画化。監督名義はストローブ単独である。パヴェーゼ生誕100周年の2008年に公開予定だったが、2009年に延期された。出演は『あの彼らの出会い』のダリオ・マルコンチーニとアンドレア・バッチ。
 
「ジャン・ブリカールの道程」Itineraire de Jean Bricard
(2008/40分/35mm)
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
ジャン・ブリカールは1932年にロワール河近辺で生まれ、その地域で暮らし、92年に引退するまでヴェルト島の砂質採取事業の責任者だった。ドイツ占領期などの過去を振り返る彼の談話は、1994年2月24日に社会学者ジャン=イヴ・プチトーが録音したものである。
撮影は、リヴェット、イオセリアーニ、ガレル監督作品などでも知られるウィリアム・ルプシャンスキで、残念ながら2010年に逝去した。
 
「ジョアシャン・ガッティ」Joachim Gatti
(2009/2分/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
2009年7月8日、34歳の活動家、映画作家ジョアシャン・ガッティはモントルイユでデモ活動中、警官にフラッシュボールのゴム弾で撃たれ、片目が破裂し、視力を失った。本作では、事故以前の彼の写真にルソーのテクストがかぶさる。
Fプログラム 3作品
「魔女-女だけで」Le streghe, femmes entre elles
(2009/21分/35mm)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
『あの彼らの出会い』『アルテミスの膝』に引き続きパヴェーゼの「レウコとの対話」の一篇、魔女キルケーと女神レウコテアーの対話「魔女」を映画化。仏語題「女だけで」は同じパヴェーゼ原作のアントニオーニ『女ともだち』(1955)の仏語題。ジョヴァンナ・ダッディ、ジョヴァネッラ・ジュリアーニ出演。
 
「コルネイユ=ブレヒト」Corneille – Brecht
(2009/78分[26分×3バージョン]/デジタルベータカム)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
副題「ローマ、私が恨む唯一のもの」。コルネリア・ガイサーがコルネイユの「オラース」第4幕第5場と「オトン」の短い一節を読む。その後、ブレヒトのラジオ劇「ルクルスの審問」が読まれる。編集の異なる3ヴァージョン上映。
 
「おお至高の光」O somma luce
(2009/17分/HDV)関西初上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ダンテ「神曲」天国篇・最終第33歌、第67節「おお至高の光」から最後までを、ジョルジョ・パッセローネが朗読する。冒頭の黒味にシェルヒェン指揮、エドガー・ヴァレーズ「砂漠」初演ライブ演奏(1954)が流れる。
 
 
協力:アテネ・フランセ文化センター 
  

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり 
一般1500円 学生・シニア1200円
会員1200円 会員学生・シニア1000円

《割引》
2プログラム目は200円引き


日本映画名画鑑賞会
2011年5月22日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


外国映画名画鑑賞会
2011年5月28日(土)・29日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
今回は、ジャン・ルノワールのアメリカ時代の2作品。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)
  

《料金》入れ替え制
1本あたり 
会員900円 学生会員・シニア会員700円
《割引》
2本目は200円引き
*非会員のかたは、1日会員(登録料100円)のご登録でご覧いただけます。


日本映画名画鑑賞会
2011年6月5日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


アルトーと映画
2011年6月11日(土)・12日(日)
 
シュルレアリスムの過激な詩人で、特異な演劇理論家でもあったアントナン・アルトー。彼が俳優として出演する『裁かるゝジャンヌ』と、同じく出演した超大作『ナポレオン』の製作秘話をつづったドキュメンタリー『ナポレオン生誕 映画革命児アベル・ガンス』を上映する。
アルトーが最も映画と親密だった時代で、この2作と同じ時期にジェルメーヌ・デュラック監督『貝殻と僧侶』(1927)の脚本を手がけている。映画芸術が到達した高みを示すプログラム。
 
[関連企画] 神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第1回 文学芸術全方位トークセッション

 
「裁かるゝジャンヌ」La Passion de Jeanne d’Arc
(フランス/1927/110分[18fps]/サイレント/16mm)
監督・脚本・編集:カール・テホ・ドライヤー
撮影:ルドルフ・マテ
舞台美術:ヘアマン・ヴァルム、ジャン・ユーゴー
出演:ルネ・ファルコネッティ、ウジェーヌ・シルヴァン、モーリス・シュッツ、ルイ・ラヴェ、アントナン・アルトー
 
ドライヤーのサイレント映画の到達点を示す傑作。実際には数ヶ月間にわたって続いた裁判から、ジャンヌ・ダルクが処刑された1日を凝縮して描く。火刑台に送られるジャンヌに付きそう修道士の役をアルトーが演じている。
 
「ナポレオン生誕 映画革命児アベル・ガンス」
Abel Gance et son Napoleon

(フランス/1983/60分/35mm)
監督・脚本:ネリー・カプラン
製作:クロード・マコウスキー
撮影:ジャン・モンシニー
音楽:ベティ・ウィルメッツ、ユベール・ロスタン
 
『鉄路の白薔薇』(1923)などで知られるサイレント時代の巨匠アベル・ガンス。本作品は、歴史的大作『ナポレオン』(1927)制作の秘密を、未公開フィルムを通じて綴る。オリジナル構想は12時間を超えるものであったという。何台ものカメラを使用し、斬新な撮影手法を試みるなど、勃興期にある映画の果敢な挑戦。マラー役でアルトーが出演。1981年にフランシス・フォード・コッポラによって、三面マルチスクリーンとオーケストラ演奏で甦った。   
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1000円 学生・シニア900円
会員900円 会員学生・シニア700円

《割引》
2本目は200円引き
レクチャー:第1回 文学芸術全方位トークセッション参加者は1本目も200円引き

協力:神戸芸術工科大学


[貸館]ホラー映画向上委員会 MebiusRing 上映会
2011年6月17日(金)19:00
         18日(土)13:15 / 15:15 / 17:15 / 19:15

*両日とも先着15名様にゾンビ肉ジャーキープレゼント!
 
「コリン LOVE OF THE DEAD」COLIN
(2008/イギリス/97分)監督:マーク・プライス
 
わずか45ポンド(約4800円)で作られたゾンビ映画が世界に衝撃を走らせた!
歴史に残る切なく、哀しいゾンビ映画がついに神戸へ上陸。
 
 
 
 
 
 
主催・お問い合せ:ホラー映画向上委員会 MebiusRing

(C)2008 NOWHER FAST FILM PRODUCTION

料金 一律1500円


映画の旅 ___現代日本映画を代表する3監督
2011年6月24日(金)〜28日(火)
 
2001年に群馬県で開催された「第16回国民文化祭・ぐんま2001 in たかさき」で行われたシンポジウム「21世紀と映画表現の可能性」のために製作された短編『2001年 映画と旅』(黒沢清監督)、『新世界』(阪本順治監督)と、同じ文化祭での企画「青山真治スペシャル」用に撮られた中編『すでに老いた彼女のすべてについては語らぬために』の3作品を一挙上映。
 
[関連企画] 神戸映画資料館レクチャー:映画の内/外
第2回 帝国の映画_青山真治 × 丹生谷貴志対談

 
「2001年 映画と旅」
(2001/15分/DV)
監督・撮影:黒沢清 出演:市沢真吾、高橋洋、古澤健、藤森朋果
国際映画祭参加時に撮られたなにげない風景のモンタージュに暴力的なショットなどが挿入され、不気味な空気を放つ。
 
「新世界」
(2001/18分/DV)
監督:阪本順治 出演:原田芳雄
大阪・新世界界隈を彷徨う「流し」の男(原田芳雄)。酒を飲んで難民問題をつぶやく彼の目的とは……。
 
「すでに老いた彼女のすべてについては語らぬために」
(2001/51分/DV)
監督:青山真治 出演:万田邦敏、西山洋一、大九明子
現在の風景やニュースフィルム、昭和天皇や大逆事件で絞首刑にされた幸徳秋水と菅野スガ子の写真などの映像に、中野重治(小説「五勺の酒」・詩「雨の降る品川駅」)と夏目漱石(随筆「思い出すことなど」)のテキストの朗読が重ねられる青山真治による「映画史」であり、日本現代史。
   

《料金》3本立て
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
[レクチャー:第2回 帝国の映画_青山真治 × 丹生谷貴志対談]参加者は200円引き


[貸館]『AI〜ある彼女の世界征服!?』
2011年7月2日(土)10:30 / 13:00 / 15:00 / 17:00 / 19:00
『AI〜ある彼女の世界征服!?』
(2011/104分)
脚本:澤田耕耶 監督:加藤謙司
プロデューサー:伊藤真一
 
2009年日テレジェニック小泉麻耶を主演に迎えたサイエンスロマンス
共演には期待の新人籠谷和樹、(ウォーターボーイズ)の浅井純、
(SEGA三国志大戦イメージガール)こままりえ、(初代オールナイターズ)真田せつこ
更に(沖縄映像祭準グランプリ作品で主演を演じた)水井 真希
(グラビアアイドル)内野未来などが友情出演者!
音楽監督には元ZIGGYのギタリスト松尾宗仁とねユニットZINXのボーカリスト妹尾研祐を迎えた。
液晶モニタの中で彼女は目覚めた。
彼女は目覚めると僕がプログラムした通り『貴方がマスターですか?』と笑顔で聞 いてきた。
「そ、そう。僕が君を創ったんだ」僕が満足そうにそう言ってやると彼女は笑顔を絶やさずに『死ね変態!』と言っ た。
『キモいんだよ!何この暗い部屋。ヲタクじゃん。ニートじゃん。引きこもりじゃん。』
僕は驚愕のあまり「こ、こんな口の悪いの創ってない!』そういうと、彼女の表情が変わった。
『そうよ、本当はこの娘を創りたかったのよね、マスター?』
『そっくりよ ねぇ?自分の欲求のためにこのアイドルに似せて私を創って、いやらしい事しようと考えていたんでしょう?キモいっつーの!』
僕はあまりの恥ずかしさのあまりマウスに手をかけた。
「失敗だ!こんなの消してやる!」『あら、私を消す気?でもその瞬間に貴 方の個人情報をの世界中に発信するわ!』
彼女はそう言って僕を嘲笑した。マウスの手が止まる。血の気が引いていくのが解った。
僕はとんでもないものを創ってしまった。しかし彼女は不敵に笑うと『私の言う事を聞いてくれればそんな事しな いわ』と囁く。
「な、何をする気だ」僕がそう聞くと、彼女の唇はこう動いた。
『セ・カ・イ・セ・イ・フ・ク』
主催:∞SpiralRecord(有)アップルプロモーション
お問い合せ:∞SpiralRecord

料金 一律1500円
(受付は当日10:00〜)


日本映画名画鑑賞会
2011年7月3日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。