プログラムPROGRAM

ピンク映画

続・新東宝ピンク映画 ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.1
“A History of Pink~昭和から平成へ~”

2018年6月16日(土)・17日(日)

前回は21世紀にはいってピンク映画デビューした「新人監督」の作品にスポットを当てたが、今回は“A History of Pink~昭和から平成へ~”と題し、昭和40年代から平成にかけて製作された作品群、とくに今年のベルリン映画祭で特集が組まれた国映の朝倉大介プロデュース作品を軸にシリーズでお届けする。

その1回目に選んだのは1984年に製作された滝田洋二郎、周防正行、広木隆一監督の極め付きの3作品。
 

「真昼の切り裂き魔」
(1984/60分/35mm)国映
監督:滝田洋二郎 企画:朝倉大介
脚本:夢野史郎 撮影:志賀葉一
照明:金沢正夫 助監督:片岡修二
出演:織本かおる、中根徹、麻生うさぎ、青木祐子、池島ゆたか、下元史朗
 
女性の下腹部を切りとって殺す残虐な切り裂き魔。雑誌編集者の亜矢はたまたま被害者の死体を発見する。ところがあるカメラ雑誌の投稿ページに掲載された写真には男が女に切りかかる様が写っていて……。異常犯罪の世界を描いた傑作ミステリー篇。若き滝田洋二郎監督の手腕が冴える。

 

「変態家族 兄貴の嫁さん」
(1984/62分/35mm)国映
監督・脚本:周防正行 企画:朝倉大介
撮影:長田勇市 美術:種田陽平
音楽:周防義和 編集:菊池純一
出演:風かおる、下元史朗、大杉漣、山地美貴、麻生うさぎ、首藤啓
 
周防正行監督の名を世に知らしめたピンク映画による小津スタイルの忠実な模倣。単なるキワモノではない充実した内容と完成度がその後の周防監督の活躍ぶりを予言するかのようだ。2月に急逝した俳優の大杉漣氏が30年前に70代の老け役に挑戦した貴重な作品でもある。
 

「白昼女子高生を犯す」(プリントタイトル『欲望の海 義母を犯す』)
(1984/60分/35mm)新東宝映画
監督:広木隆一 脚本:今成宗和
撮影:遠藤政史 照明:森久保雪一
助監督:富岡忠文
出演:首藤啓、甲斐よしみ、沖ようこ、野上正義、ひびき恭子、下元史朗
 
達夫は高校生の久美と典子を海岸でみかける。二人は家出中で久美のボーイフレンドはその海でサーフィン中に波にさらわれ行方不明になったという……。いまや日本を代表する映画監督の一人、広木(廣木)隆一監督の若き日の作品。冬の海の情景を効果的に使ったほろ苦い青春物語だ。

 

協力:ぴんくりんく

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生1000円 会員900円
《割引》当日2本目は200円引き
《プレゼント》ピンク映画月刊誌「ZOOM-UP」80年3月号(無くなり次第終了)、または新東宝ピンク映画ポスターをプレゼント。[提供:ぴんくりんく]


『名前のない女たち うそつき女』
2018年3月16日(金)〜20日(火) 17:10〜

「名前のない女たち うそつき女」
(2018/86分/ブルーレイ上映)
監督:サトウトシキ 原作:中村淳彦 脚本:加瀬仁美
撮影監督:小川真司 録音:岩間翼 助監督:大城義弘
音楽:入江陽 ラインプロデューサー:川上泰弘
プロデューサー:森原俊朗、小林良二、橘慎
制作会社:ソリッドフィーチャー
配給・宣伝:渋谷プロダクション
製作:「名前のない女たち うそつき女」製作委員会(オデッサエンタテイメント・渋谷プロダクション) 

出演:吹越満、城アンティア、円田はるか、笠松将、小南光司、吉岡睦雄、クノ真季子、不二子、川瀬陽太、飯田圭子、影山祐子、橘メアリー、辻やすこ、中村高華、稲生恵、高橋里恩、咲良七美、原口夏穂里、安部智凛、今岡瑛子、鈴木菜絵、いまおかしんじ、櫻井拓也

 

累計売り上げ数40万部を突破した
中村淳彦著「名前のない女たち」シリーズの
最新刊「名前のない女たち 貧困AV嬢の独白」を
完全映画化。

いまや社会問題化しているAV業界の中で生きる男と、企画AV女優として生きる女性。そこに関わる者たちの生々しい青春群像劇。
主演のルポライター志村役を演じるのは名優で名高い吹越満。企画AV女優の葉菜子役を演じるのは多摩大初代ミスコングランプリを経てモデル・女優活動をしている城アンティアと、葉菜子の妹明日香役にアイドルグループCANDYGO!GO!の元メンバー円田はるかがハードな濡れ場に初挑戦。若手実力派の笠松将、小南光司。そしてクノ真季子、吉岡睦雄、不二子、川瀬陽太が脇を固める。監督はピンク四天王のサトウトシキが務める。

 

→公式サイト

《料金》
一般:1700円 学生:1000円 シニア:1100円 会員:1000円
*初日サービスDAY 1100円
《プレゼント》
「新東宝ピンク映画 ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.3」上映の3月17日・18日に1日2作品以上(『名前のない女たち うそつき女』含む)のご鑑賞者、1日10名様、合計20名様にピンク映画月刊誌「ZOOM-UP」80年3月号をプレゼント(提供:ぴんくりんく)


新東宝ピンク映画
ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.3

2018年3月17日(土)・18日(日)

フィルムによる映画製作・配給がほぼ終焉を迎えつつある今、長年低予算による製作をおこなって数々の才能を輩出した成人映画(ピンク映画)の世界も例にもれず、フィルムでの配給も倉庫における保管もカウントダウンがはじまっています。
ピンク映画の老舗・新東宝映画の、なかでも21世紀にはいってピンク映画デビューした「新人監督」の作品にスポットを当てた特集シリーズ「ラスト・フィルム・ショー in 神戸」最終回。
 

「紅薔薇夫人」
 
(2006/70分/35mm)団鬼六、アートポート、日活、新東宝映画
監督・脚本:藤原健一 原作:団鬼六 撮影:中尾正人 照明:小川満 編集:金子尚樹
出演:坂上香織、大沢樹生、津田寛治、永瀬光、黒田瑚蘭、勝矢秀人

原作者団鬼六が生前もっとも愛着があったとされる原作小説をピンク映画の枠をはるかに超えた豪華キャストによって映画化。怨恨と劣情が妖奇な花を咲かせる嗜虐の美の世界。SM好きならずとも必見の問題作。藤原健一監督は2002年にピンク映画デビュー、一般映画・Vシネで活躍中。
 

「おんなたち 淫画」
 
(2007/63分/35mm)国映、Vパラダイス、新東宝映画
監督:大西裕 企画:朝倉大介 脚本:西田直子、加東小判 撮影:田宮健彦 助監督:海野敦
出演:吉岡睦雄、宮崎あいか、花村玲子、川瀬陽太、羅門ナカ、伊藤猛

一人の男と二人の女のどうにもならない三角関係をリアリズムと超現実的手法をとりまぜて描いた映画の迷宮。現段階で新東宝配給による最後の新人監督デビューとなる大西裕監督作品。独特なイメージ=映像スタイルと監督自身を重ねたようなユニークな主人公像が光る一篇。
 

「妖女伝説 セイレーンX 〜魔性の誘惑〜」
 
(2008/65分/35mm)竹書房、新東宝映画
監督:城定秀夫 脚本:高木裕治、城定秀夫 撮影:田宮健彦 編集:酒井正次 録音:シネマサウンドワークス
出演:麻美ゆま、松浦祐也、日高ゆりあ、中村英児、那波隆史

往年の大ヒットVシネを自由に翻案し映画化。一般映画・Vシネなど多方面で活躍中の城定秀夫監督がその手腕を存分に発揮し、70年代の東宝ホラー映画を彷彿とさせる吸血鬼物語を現代に蘇らせた。AV界のトップアイドルでがん克服でも話題になった麻美ゆまが女吸血鬼を熱演。

 

協力:ぴんくりんく

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生1000円 会員900円
《割引》
当日2本目は200円引き
《プレゼント》
「新東宝ピンク映画 ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.3」上映の3月17日・18日に1日2作品以上(『名前のない女たち うそつき女』含む)のご鑑賞者、1日10名様、合計20名様にピンク映画月刊誌「ZOOM-UP」80年3月号をプレゼント(提供:ぴんくりんく)


新東宝ピンク映画
ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.2

2018年2月3日(土)・4日(日)

3回シリーズの「ラスト・フィルム・ショー in 神戸」の第2回。
フィルムによる映画製作・配給がほぼ終焉を迎えつつある今、長年低予算による製作をおこなって数々の才能を輩出した成人映画(ピンク映画)の世界も例にもれず、フィルムでの配給も倉庫における保管もカウントダウンがはじまっています。ピンク映画の老舗・新東宝映画の、なかでも21世紀にはいってピンク映画デビューした「新人監督」の作品にスポットを当てた特集上映。

 

「妻たちの絶頂 いきまくり」
(2006/62分/35mm)新東宝映画
監督・脚本:後藤大輔 プロデューサー:池島ゆたか 撮影:飯岡聖英 助監督:伊藤一平
出演:千川彩菜、吉岡睦雄、結衣、柳東史、なかみつせいじ、佐々木基子

ピンク映画監督の伸輔は別れた妻時雨との物語を映画にしようと計画するが、結核だった妻の療養に生涯を投じた叔父の物語と自身の物語が脳裏で交錯し…。後藤大輔監督が現実とも幻想ともつかない複数の物語=時間を多元的に構成。アヴァンギャルドかつ自伝的要素が濃厚な異色作である。

 

「裸の女王 天使のハメ心地」
プリントタイトル「裸の牝たち 見られていっちゃう」
(2007/62分/35mm)新東宝映画
監督:田中康文 脚本:福原彰 撮影:小山田勝治 音楽:大場一魅 助監督:中川大資
出演:青山えりな、結城リナ、サーモン鮭山、田中繭子、岡田智宏

マリとリンは幼なじみのストリッパーである。客の隆夫に求愛されたマリは彼の実家が大金持ちと聞いて結婚を承諾するが…。「紳士は金髪がお好き」をストリッパーの世界に置きかえたような気軽に楽しめるコメディ作品。本作が2作目となる田中康文監督が堂々たる娯楽作に仕上げた。

 

「うずく人妻たち 連続不倫」
プリントタイトル「今ここで抱いて、主人が寝てる間に…」
(2006/62分/35mm)新東宝映画
監督・脚本:福原彰 プロデューサー:深町章 撮影:清水正二 音楽:大場一魅
出演:佐々木麻由子、岡田智宏、里見瑤子、中村方隆、美月ゆう子、なかみつせいじ

年下の俊夫との不倫旅行の最中に小学生の娘が交通事故で死んでしまった光江。十二年後、彼女はひょんなきっかけで俊夫と再会するが…。新東宝映画社員でもある福原彰監督デビュー作。「よろめきドラマ」の極北ともいうべきスタイルと内容で密度の濃い映画的時間を現出させている。

 

協力:ぴんくりんく

2月3日(土)
『うずく人妻たち 連続不倫』上映後ミニトーク
ゲスト:福原彰
(監督) 聞き手:太田耕耘機(ぴんくりんく)

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生1000円 会員900円
《割引》
当日2本目は100円引き


新東宝ピンク映画
ラスト・フィルム・ショー in 神戸 vol.1

2018年1月20日(土)・21日(日)

フィルムによる映画製作・配給がほぼ終焉を迎えつつある今、長年低予算による製作をおこなって数々の才能を輩出した成人映画(ピンク映画)の世界も例にもれず、フィルムでの配給も倉庫における保管もカウントダウンがはじまっています。
「ラスト・フィルム・ショー in 神戸」では、ピンク映画の老舗・新東宝映画の、なかでも21世紀にはいってピンク映画デビューした「新人監督」の作品にスポットを当て三ヶ月、三回にわたり特集上映を行います。

 

「人妻ブティック 不倫生下着」
プリントタイトル「人妻・未亡人 不倫汗まみれ」
(2002/62分/35mm)新東宝映画
監督・脚本:佐藤吏 撮影:飯岡聖英
音楽:大場一魅 編集:酒井正次
助監督:小川隆史
出演:沢木まゆみ、松田信行、ゆき、岡田智宏、なかみつせいじ、佐々木基子

君枝は心臓の弱い夫健治の代わりに働いて家計をまかなっている。一方で心の隙間を埋めるようにセールスマン佃と関係をもっていて…。人生の影の部分も描きながら揺れる若妻の心に鮮やかな光をあてた佐藤吏監督2002年のデビュー作。Vシネで人気だった沢木まゆみが好演。

 

「未亡人教授 白い肌の淫らな夜」
プリントタイトル「未亡人教授 年下の愛人」
(2004/61分/35mm)新東宝映画
監督・脚本:小泉剛 撮影:田宮健彦
美術:小島伸介 音楽:鈴木ミワ
助監督:松本唯史
出演:佐々木麻由子、松重伴武、谷川彩、北川明花、伊藤猛、大槻修治

家業の酒屋を手伝う時男は高校時代の同級生の母で大学教授をしている綾子と久しぶりに再会して心をひかれる。「未亡人もの」でありながら青春ストーリーでもあるというしなやかな二重性がスリリングな小泉剛監督のデビュー作。本企画中唯一人の向井プロ(獅子プロ)出身監督。

 

「色情団地妻 ダブル失神」
(2006/64分/35mm)国映・新東宝映画
監督:堀禎一 脚本:尾上史高、堀禎一
撮影:橋本彩子 照明:山本浩資
音楽:網元順也
出演:葉月螢、牛嶋みさを、冴島奈緒、チョコボール向井、加藤靖久、安奈とも

元プロボクサーで取り立て屋をやっている夫とその妻、そして夫がプロレスラーの夫婦…。生活苦と不倫のためにひび割れてゆく夫婦関係を2003年デビューし、2017年7月に惜しまれながら急逝した堀禎一監督が丁寧に描出。もろくもしたたかな絆で結ばれた夫婦の姿を通して時代の混沌とした不気味さが浮き彫りになる。

 

協力:ぴんくりんく

1月20日(土)
『未亡人教授 白い肌の淫らな夜』上映後舞台挨拶 小泉剛
(監督)
『色情団地妻 ダブル失神』上映後ミニトーク ほたる(葉月螢)

《料金》入れ替え制1本あたり
一般1200円 学生1000円 会員900円
《割引》
当日2本目は100円引き


映画史のミッシングリンクを追え! Part2
「エロ本水滸伝」の時代へ、武智鉄二『幻日』発見!

『幻日』

日本映画史には、今なお多くのミッシングリンクが眠っている……。1960年代以後、日本映画界の最底辺に広がっていった独立プロ、そして「ピンク映画」と呼ばれた独立プロ作品の世界には、今なお多くの謎と秘密が隠されている。それは、まさしく映画史の正史を揺るがす秘密の花園である。
昨年、「本木荘二郎」「香取環」をテーマに行われた連続上映企画「ミッシングリンクを追え!」の第2弾。今回もまた葵映画作品ほか、伝説的作品、幻の名作、謎の珍品などなどを発掘、徹底検証する!

70年代末から80年代初頭、幻の映画雑誌といわれた「ズームアップ」をめぐって展開するピンク映画のニューウエーブ伝説。元祖・桃色アイドル・原悦子主演作。秋山駿の名でマキノ映画ゆかりの名優・津崎公平が監督に挑戦した幻の傑作。あの巨乳アイドル女優・中村京子が出演していた幻の映画。
歌舞伎界の異端児にして日本映画界の異端児、危険人物とまでいわれた武智鉄二監督が夏目漱石『夢十夜』をエロチシズムで染め上げた未公開作品『幻日』。ストリッパーだった妻の面影を追い発掘された初期ピンク映画の異色作『色じかけ』。
どの作品も、一筋縄ではいかない迫力に充ち溢れ、数奇な運命を経て来たフィルムばかりだ。今見逃したら、今度はいつ観ることが出来るのかはわからない……。
猥褻裁判に発展した『黒い雪』の直後、映画界随一のスキャンダリスト・武智鉄二が挑んだシュールでエロチックな世界の真相とは? 伝説の名エロ本編集者・池田俊秀の軌跡を追いながら検証する幻のピンク映画の深層とは? 幻の映画伝説を追うとびきりスリリングな二日間。失われた映画が、いま甦る!!

 

『エロ本水滸伝』刊行記念
幻の映画雑誌『ズームアップ』の時代
2017年10月21日(土)
60年代の黄金期が終り、70年代に入り失速した「ピンク映画」の世界。低予算と性を売り物にした現場は荒れていた。雑誌と同じように、過酷な表現の場として注目し応援する映画雑誌が生まれた。77年創刊の「ズームアップ」である。池田俊秀編集長は、誌面の多くを「ピンク映画」と連動して作り始める。グラビアやインタビューにピンク女優が登場し、現場取材や紹介記事、そして脚本や批評を募集して活性化を目指したのだ。小川恵、原悦子、日野繭子、山本晋也、中村幻児、高橋伴明……多くの女優たち監督たちが「ズームアップ」に登場、注目された。その軌跡と業績を、映画文化に即して検証してみよう。自主映画や日活ロマンポルノ、東映ポルノとも入り乱れ、活性化する時代の熱気を感じて欲しい。貴重な関連作品の上映に刮目せよ!

「暴行爛熟未亡人」

(1977/60分/16mm)葵映画
監督・脚本:西原儀一 撮影:関谷四郎
出演:原悦子、杉佳代子、泉ユリ、水木明、磯敏也、 高崎隆一、西原譲、古賀比呂志
1976年、平凡パンチ「メイト・ガール」で売り出した原悦子は、大蔵ピンクで映画デビューする元祖「ポルノ・アイドル」。78年からは日活ロマンポルノへ活躍の場を移すが、その直前に出演した独立プロ作品。現存するピンク時代の原悦子作品としては貴重な一本でもある。ズームアップ誌上でも人気者だった。

「いろ乃湯 裸女百態」
 
(1970/71分/16㎜)葵映画
監督・脚本:秋山駿 撮影:池田清二
出演:真湖道代、有沢真佐美、宝井京子、黒瀬マヤ、藤ひろ子、九重京司、松浦康、久保新二
「いろの湯」の主人貞造(九重京司)は、今夜も番台で女湯を覗いている。そこには青木(松浦康)の妾(黒瀬マヤ)やホステス(真湖道代)がいた……。マキノ門下の見習い助監督からピンク映画の名優となる津崎公平。秋山駿を監督名に撮った二本目の作品は、山本晋也に対抗し庶民を描いた浮世風呂映画。

「OL初体験 後ろの悦しみ」

(1984/60分/35㎜)葵映画
監督・撮影:西原儀一 脚本:福田慎二
出演:中村京子、杉田智子、谷いづみ、久保雪子、岩本玲子、神原明彦、垂水直人、板倉元
60年代にドル箱だった葵映画作品も、80年代には台頭する新世代ピンクに押されていた。「西原儀一」の名で若手が監督、現代風に見せた一本。新人の杉田智子が主演だが、元祖巨乳アイドルのビデオ女優・中村京子の数少ないピンク出演作品として注目される珍品だ。

トーク① 「桃色映画 ズームアップの時代」
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター) ゲスト:伊藤裕作(文章家) 参加費1000円
参考部分上映有り

 

昭和エロスの巨匠・武智鉄二、幻の未公開作品『幻日』発見!
2017年10月22日(日)
映画史を書き換えかねない、幻の未公開作品『幻日』が発見された。猥褻裁判の被告にもなった性の巨匠・武智鉄二。過激でスキャンダラスな作品群の中で行方不明とされて来た『幻日』。能面師の見た淫らな夢の中に、何が隠されているのか。「日本人の精神構造を追求した武智芸術の結集作!!」「女は真珠貝で自分の墓を掘り能面師は砂丘に女を埋める……」。公開予定の宣伝文案も過激で難解だった。『白日夢』『黒い雪』で、60年代の日本映画界を震撼させた武智鉄二が、そのボルテージをさらに上げ完成させた『幻日』が、長い眠りから覚め、今、忽然とスクリーンに出現する。ぜひ、その歴史的現場に立ち会って欲しい。数奇な運命を旅したフィルムの再生を見守って欲しい。

「色じかけ」

(1965/75分/16mm)高千穂映画プロダクション
監督:南部泰三 脚本:糸文弘 撮影:塩田繁太郎
出演:田口勝則、細川直也、朝霧待子、芦原しのぶ、白井勉、天野良一、中島京子、松原加幸
人気ストリッパーで、成人映画数本に出演した芦原しのぶ。死後、亡き妻の面影を求めて夫が捜し当てた奇跡のフィルム。タクシー運転手を誘惑する未亡人(芦原しのぶ)、その顛末は……。大都映画、満映を経て戦後独立プロを立ち上げた南部泰三監督の現存する貴重な作品。脚本は、松竹演劇部出身の糸文弘。
→特設ページ:芦原しのぶ『色じかけ』上映に至る経緯について

「幻日」

(1966/78分[第三巻欠落]/35mm)第三プロ
製作:長島豊次郎 監督・脚本:武智鉄二 撮影:高田昭 下着:鴨居羊子
※「夏目漱石生誕百年記念映画『夢十夜』より(公開告知の文章より)
出演:柴田恒子、内田良平、川口秀子、津崎公平
能面職人(内田良平)が注文の若い能面を彫れず、気分転換に出た街で出会う美女(柴田恒子)と過ごす不思議な体験。美女に誘われるまま、夢なのか現実なのか……。その妻に武智夫人の川口秀子。美女を連れ去る男には津崎公平。昭和41年秋に完成したが、一般公開されていない。元松竹女優の柴田恒子の裸身は鮮やかに美しい。撮影は『白昼の通り魔』の高田昭。

「女湯・女湯・女湯」

(1970/77分/パートカラー/16mm)東京興映
企画・製作:清一世 監督:山本晋也 脚本:太田康 撮影:笹野修司
出演:白川和子、一星ケミ、小島マリ、松浦康、久保新二、野上正義
昭和の人気テレビ番組『時間ですよ』の原型といわれる山本晋也監督の「女湯」シリーズ。第4作目となる本作は、フーテンの寅を想わせる三助(松浦康)が、義理と人情とバカさを発揮する。ヒロインに白川和子、銭湯の主人に野上正義。静岡県三島市の銭湯を借り切り撮影、全篇半分に及ぶ女湯シーンの裸女乱舞は画期的。晋也伝説が始まる傑作喜劇だ。

トーク② 「発見された『幻日』と歌舞伎界の異端児・武智鉄二の軌跡」
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター) 参加費1000円
参考部分上映有り

作品解説:鈴木義昭

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円 会員一般1000円 会員学生・シニア900円
《割引》2本目は200円引き


映画史のミッシングリンクを追え! 2 Days

この夏、ルポライター鈴木義昭が長年温めてきた『「世界のクロサワ」をプロデュースした男 本木荘二郎』(山川出版社)が刊行される。そして、神戸大学の映画研究者・板倉史明による1960年代後半から1970年代におけるピンク映画の製作体制の研究論文(『戦後日本の産業空間:資本・娯楽・興行』所収/森話社)も間もなく発表される。
近年、世界的に高まりつつあるピンク映画研究の最前線を上映とトークでお届けする二日間。初日は黒沢明映画のプロデューサーで後にピンク映画に転じた本木荘二郎関連作品を中心に、二日目は昨年10月に逝去された女優の香取環さんを追悼するプログラムを組んだ。

 

「世界のクロサワをプロデュースした男 本木荘二郎伝」刊行記念
本木荘二郎とその時代
2016年8月20日(土)
baisyunbou02「売春暴行白書」
(1970/72分/パートカラー/16mm)葵映画
監督:渡辺護 脚本:門前忍 撮影:池田清二
出演:青山リマ、大月礼子、千原和加子、浅香なおみ(鈴木いづみ)、吉田純、太田彰二、国分二郎
ラピュタ阿佐ヶ谷で大規模な特集上映が組まれるなど再評価への気運が高まる渡辺護監督。この『売春暴行白書』は長らく失われたと考えられていたが、西原儀一から鈴木義昭が譲り受け神戸映画資料館に寄託した葵映画作品フィルムの中に含まれていた。プリントは良好な状態とは言い難いが補修をすれば上映に耐えると判断、今回のみ特別に上映することにした。「ピンクの黒澤」という異名のあった渡辺護は、「黒澤明作品」をこよなく愛する映画監督だった。本木荘二郎が切り拓いた「ピンク映画」の世界に、東京・滝野川の映画館の息子で黒澤明のように映画好きな青年だった渡辺護のような監督が生まれたのは奇縁だったか。


manokuti02「魔の口紅」

(1949/66分/16㎜)映画芸術協会
企画:本木荘二郎
監督:佐々木康 脚本:鈴木兵吾
原作:斎藤良輔 撮影:石本秀雄
音楽:万城目正
出演:水島道太郎、喜多川千鶴、月形龍之介、浜田百合子
「山の手劇場」を舞台に活動するレビュー劇団で、人気女優が自殺したあと妹がその劇団に入ったが、それから次々と不思議な事件が起き、ついに姉の貞操を奪った悪魔は警察に捕まる。山本嘉次郎、成瀬巳喜男、黒澤明、谷口千吉らによって設立された映画芸術協会の作品で、後にピンク映画監督に転身した本木荘二郎が企画。西条八十作詩・万城目正作曲の主題歌「花の宴」など歌う場面も多い。なお上映プリントは、トップのクレジット部分とラストの一部が欠落しています。ご了承ください。

トーク① 8月20日(土)15:50〜18:00 参加無料
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター)
参考上映
『ヌード肉体まつり』(製作年不詳/10分/35mm/監督:相良武雄)
『狂熱の果て(監督:山際永三)』予告篇(1961/3分/35mm/大宝映画)
ほか多数

 

追悼・香取環 ミッシングリンクを生きた女優
2016年8月21日(日)
mesuwana02「牝罠」
(1967/72分/パートカラー/16mm)葵映画
監督・脚本:西原儀一 撮影:池田清二
照明:森康 製作:後藤充弘
出演:香取環、中原美智、森三千代、渚マリ、田中敏夫、山田晴生、椙山拳一郎
結婚式を控えた農家の一人娘・陽子(香取環)は、三人の若者に襲われ純潔を散らされる。上京し銀座のホステスに、やがてバーを経営するまでになるが、その肉体には男を憎み狂わす魔性が棲みついていた。美しさゆえに都会の中でもがき苦しみ流転し堕ちていく女。日活出身の香取環と宝塚映画出身の西原儀一が、独立プロ全盛期に結実させた伝説的作品。


hikisakareta02「引裂れた処女」

(1968/72分/パートカラー/16mm)葵映画
監督:西原儀一 脚本:千葉隆志(西原儀一)
撮影:池田清二
出演:香取環、白川和子、清水世津、中尾有理、時沢芳恵、矢島広志、名和三平、松浦康
清純で健康的なホステスの雅美(香取環)は結婚を申し込まれる。男の実家があるという温泉町へと連れられて行くが、待っていたのは女の生き血を吸う売春組織だった。壮絶な地獄絵図の中で「女王」香取環がもがく。「団地妻」以前の白川和子が盲目の少女で登場するのも必見。

トーク② 8月21日(日)15:55〜17:00 参加無料
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター) × 板倉史明(神戸大准教授)
参考上映
『激情のハイウェー』(部分)(1965/8分/カラー/35mm)
西原儀一監督のピンク映画監督デビュー作品、葵映画第一作
ほか

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円
会員一般1000円 会員学生・シニア900円

《割引》2本目は200円引き

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[シアター内で同時開催]本木荘二郎、幻のピンク映画ポスター展
提供:東舎利樹ポスターコレクション

特設ページ:さよなら、香取環 鈴木義昭

関連記事
・なぜ、いま「本木荘二郎」なのか!?
・香取 環の部屋


[貸館]おコメダーズの映画まつりin神戸 -誰も教えてくれないアイノカタチ-
2015年4月25日(土)・26日(日)

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4月25日(土)・26日(日)
『おやじ男優Z』(池島ゆたか監督/105分)

4月25日(土)
『川下さんは何度もやってくる』
(いまおかしんじ監督/82分)

『恋のプロトタイプ』(中村公彦監督/87分)

4月26日(日)
『もうひとりのルームメイト』(中村公彦監督/30分)

『そして鬼になる』(田代尚也監督/22分)

『背徳の海 情炎に溺れて』(竹洞哲也監督/60分)

○おコメダーズのトークショー
ゲスト 25日=櫻井拓也さん、堀 有里さん 26日=田代尚也監督

○上映後、池島ゆたか監督、出演キャストらによるトークショー

○トークショー終了後、池島ゆたか監督、出演キャストらによる映画資料館ロビーでの簡単な懇親会あり(飲み物別料金/21時終了予定)

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★物販
「おやじ男優Z」公式パンフレット
「おやじ男優Z」原作者・有末剛/著書「緊縛師A 恍惚と憂鬱の日々」
「恋のプロトタイプ」DVD
「川下さんは何度もやってくる」DVD※特典としてレンタル用ジャケット

一日通し券1500円
問合せ先 090-1670-6547(担当・三輪)


渡辺 護 はじまりから、最後のおくりもの。
12月5日(金)〜9日(火)

12月6日(土)・7日(日) 15:40〜
トーク:井川耕一郎監督、北岡稔美さん

表面  [更新済み]ピンク映画五十周年記念作品
「色道四十八手 たからぶね」
(2014/71分/カラー/ビスタ/35mm)
企画・原案:渡辺護
監督・脚本:井川耕一郎
撮影・照明:清水正二
特殊造形:新谷尚之
編集:酒井正次
プロデューサー:太田耕耘キ(ぴんくりんく)、林田義行(PG)
出演:愛田奈々、岡田智宏、佐々木麻由子、なかみつせいじ、ほたる、野村貴浩

公式サイト

一夫(岡田智宏)は千春(愛田奈々)と結婚し、幸せの絶頂にいた。ところが千春には別の顔があった。彼女は数年前から叔父の健次(なかみつせいじ)と不倫していたのだ。「復讐しよう!」と一夫に訴える叔母の敏子(佐々木麻由子)。でもどうやって……?

takarabunek225年に渡りピンク映画専門誌の発刊、ピンク映画のアカデミー賞といわれる〈ピンク大賞〉を主宰する「PG」と、関西を拠点に月刊でフリーペーパーの発行やイベントを企画する「ぴんくりんく」が、2012年に〈ピンク映画五十周年〉記念映画として企画し、翌13年に巨匠・渡辺護に監督を依頼。渡辺は四十八手と春画という日本独特のエロティシズムを題材にした脚本で、新たなピンク映画のスタンダードを作ることを宣言した。
だが、渡辺監督は製作中にガンであることが判明。12月24日に他界する。「井川が撮れ。映画を完成させろ」という渡辺監督の遺志を受け、脚本の井川耕一郎が初めて商業映画のメガフォンを取った。

ヒロイン・千春役は、2012年〈ピンク大賞〉で女優賞&艶技賞のダブル受賞という快挙を成し遂げ、いまピンク映画界で最も期待される女優・愛田奈々。そして、35ミリフィルム撮影という映画づくりにこだわり、業界が誇るベテランスタッフ・キャストが結集し、ピンク映画への熱き思いにあふれた、五十周年というアニバーサリーに相応しい本格エロス作をつくりあげた。

 

abazure07渡辺護監督の幻のデビュー作を新発掘
「あばずれ」
(1965/60分・短縮版/モノクロ/スコープ/16mm)
製作:扇映画
監督:渡辺護 脚本:吉田貴彰
撮影:生田洋 音楽:小谷松実
照明:村井徹二 録音:杉崎喬
編集:宮田二三夫 美術:豊島六郎
出演:左京未知子、黒木純一郎、飛鳥公子、天野良一、千田啓介、喜多ひろみ、宇佐美健

abazure061965年、渡辺護は『あばずれ』を撮って監督デビューする。16才の立子(飛鳥公子)は、父・剛造を死に追いやり、全財産を奪った後妻・文枝(左京未知子)に復讐を誓って家を出る……。少女の復讐譚は、少年時代に見て感動した監督・衣笠貞之助、脚本・伊藤大輔『雪之丞変化』(35)に触発されたものだった。渡辺のデビュー作は自身の映画体験の原点に遡るものであったのだ。

abazure02その後、渡辺は『あばずれ』を二度リメイクしている。『少女縄化粧』(79)と『変態SEX 私とろける』(80)。年に12本以上撮っていた売れっ子監督時代に、なぜリメイクを考えたのだろうか。忙しさの中で何かを見失いそうになっている自分に危機を感じてのことだろうか。

『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』(11)の撮影中に探りたかったのは、渡辺さんの中で『あばずれ』が持つ意味だった。渡辺さんは「下手くそな演出だから、見直したくない」と言う一方で、こうも言っていた。「一生懸命、一カットずつ真剣にこだわって撮ってる。逆にそれ、今やったらできないってことがあったりするんだよ」。渡辺さんの言葉は矛盾している。だが、矛盾しているということは、渡辺さんの中で『あばずれ』が遠い過去ではなく、常に生々しい現在であったということだ。2013年に渡辺さんは亡くなった。だが、2014年、『あばずれ』の16mmプリントが発見された。渡辺さんの現在が甦ったのだ。私はその奇跡を何としても見てみたい。

 

hitode02-1「(秘)湯の町 夜のひとで」
(1970/73分/パートカラー/スコープ/16mm)
製作:わたなべプロ
監督:渡辺 護 脚本:日野洸(大和屋竺)
撮影:池田清二
出演:大月麗子、吉田純、二階堂浩、港雄一
さすらいのエロ事師を描く系列の代表作。温泉街に流れ着いた久生と雀。監督の久生はブルーフィルムの傑作を撮ろうとするが……。愛する久生と離れ離れになった女優の雀がぼろぼろになって早朝の川原にたたずむラストには、悲哀を突き抜けた崇高さが感じられる。

 

《料金》入れ替え制
[たからぶね]前売 1200円
*神戸映画資料館・第七藝術劇場・京都みなみ会館 3館共通
*劇場窓口でご購入1枚につき『色道四十八手 たからぶね』官能ショット生写真(5種) を1枚プレゼント!!(絵柄はお選びいただけません。限定数のため、なくなり次第終了となります)
 
[たからぶね・あばずれ・夜のひとで]
一般1300円 学生・シニア1200円
会員1000円 会員学生・シニア900円

*1作品ご鑑賞につき、『色道四十八手 たからぶね』のポストカード(2種)と35mmカットフィルムを1セットプレゼント!(なくなり次第終了)
*当日2本目は200円引き
*招待券のご利用不可


渡辺護自伝的ドキュメンタリー 1部・2部一挙上映
2014年11月29日(土)・30日(日)

半世紀にわたり映画を撮りつづけた巨匠・渡辺護にカメラは密着する。本作は監督自身の映画演出を具体的に探るドキュメンタリーであり、昨年末故人となった同監督が残してくれた貴重な映画史の証言である。

渡辺護自伝的ドキュメンタリー第1部
「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」
(2011/122分/DVCAM)
構成:井川耕一郎
出演・語り:渡辺 護
撮影:松本岳大、井川耕一郎
録音:光地拓郎 編集:北岡稔美
構成補:矢部真弓、高橋 淳
製作:渡辺 護、北岡稔美
協力:渡辺典子、太田耕耘キ、淡島小鞠、荒木太郎、広瀬寛巳、向井淳子、映画美学校

井川耕一郎監督による解説
2009年の秋、私の脚本で渡辺さんが撮るはずだった映画が製作延期になり、急にやることがなくなってしまった。
「渡辺さん、ぼーっとしていても時間のムダですから、何かしませんか?」
「するって、何を?」
「渡辺さんがいて、カメラがあれば、映画はできるでしょう。渡辺さんがカメラの前で自分のことを語ればいいんですよ」
というわけで、始まったのがこのプロジェクトである。

撮影は2009年12月にスタート。2010年3月までは週末のたびに渡辺さんの家で、4月以後は月一回のペースで映画美学校で行われた(研究科の授業の記録ということである)。
12月に撮影は終了したが、あと一、二回の撮影が必要なようである。

プロジェクトの全体像は以下のとおり。
第1部:『糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護』(2時間)
第2部:「渡辺護が語るピンク映画史」(2時間)
第3部〜第10部:「渡辺護による自作解説」(30分×8本)
(第3部以後は、作品をいくつかの系列に分け、渡辺護が自作解説を行うという構成になる予定)

今日、上映するものはプロジェクトの第一部で、渡辺さんが監督デビュー作『あばずれ』を撮るまでのことを語っている(ちなみに、第1回ズームアップ映画祭で作品賞をとった『少女縄化粧』が『あばずれ』の時代劇版リメイクであることはあまり知られていないのではないか)。
と言っても、これは単なる序論ではない。なにしろ、二百本以上の映画を撮った男が自分の人生を語るのだ。その語り口が、映画と似てくるのは当然のことだろう。
たとえば、渡辺さんが語る1945年8月6日には、事実と異なる部分がある。しかし、遠くで起きたことが直感的に分かってしまうというのは、『おんな地獄唄 尺八弁天』でも、『谷ナオミ 縛る』でも見られたことだ。
つまり、第一部は、渡辺護が自分の人生を題材にしてつくった新作というふうに見ることもできるだろう。

渡辺護の演出については、たとえば、次のように書かれてきた。
「カツキチからカツドウヤへ転進する途上で演劇青年として叩き込まれたスタニスラフスキーシステムに始まる一連の古典的な素養は、ここでもまた自在に活用され切っていると言っていい」
(『日本映画テレビ監督全集』1988年版・キネマ旬報社)
「早稲大学演劇科から八田元夫演出研究所に参加。TV時代劇の出演などもこなしたことからか、今にいたるも、踊って(自ら演技の模範を示して)演出するというのも、マキノ雅広などのカツドウ屋を彷彿とさせる」
(別冊PG vol5『PINK FILM CHRONICLE 1962-2002 幻惑と官能の美学』2002年)
だが、文字でこのように書かれても、どういう演出なのかはつかみにくいのではないだろうか(「カツドウヤ」、「スタニスラフスキー・システム」、「踊って」、「マキノ雅裕」がどのようにつながるのかが見えてこない)。第一部『糸の切れた凧』が、渡辺護の演出をより具体的に探る試みの第一歩になっていればいいのだが……。

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右端が渡辺護、左から2人目が山本晋也

渡辺護自伝的ドキュメンタリー第2部
「つわものどもが遊びのあと 渡辺護が語るピンク映画史」
(2012/138分/DVCAM)
出演・語り:渡辺護
製作:渡辺護、北岡稔美
撮影:松本岳大、井川耕一郎
録音;光地拓郎
編集:北岡稔美
構成補:矢部真弓、高橋淳
構成:井川耕一郎
協力:渡辺典子、新東宝映画株式会社、銀座シネパトス、太田耕耘キ(ぴんくりんく編集部)、林田義行(PG)、福原彰、荒木太郎、金子サトシ、宮田啓治、鈴木英生、高橋大祐、映画美学校

井川耕一郎監督による解説
渡辺護自伝的ドキュメンタリープロジェクトの第二部をピンク映画史にすることは、早いうちから決めていたことだった。
渡辺さんならピンク映画史が語れるだろう。そう思ったのは、『映画芸術』1970年11月号に載ったエッセイ「何が難しいことだって ピンク監督の弁」を読んだときだ。
ピンク映画の現場を面白おかしく紹介することをねらったそのエッセイは、短いものではあったけれども、ベッドシーンの撮り方や女優のタイプの移り変わりを具体的な例をあげながら書いていた。それはピンク映画史を記述する試みでもあったのだ。

第二部にとりかかる前に考えた方針は、『史記』の列伝のように行こうということだった。
つまり、人を語ることがそのまま歴史を語ることになるというスタイルである。
まずは「若松孝二と向井寛」、「小森白と山本晋也」というふうにお題を立ててインタビューをすることから始め、その後は自作解説の流れの中で、スタッフやキャストがどんな人だったかを聞くようにした。
渡辺さんの話は脱線脱線また脱線といった調子で、多くのひと、多くのエピソードが次々と出てきた。それらをすべて第二部にとりこむことはとうていできない。こぼれ落ちた重要な話は第三部以後の自作解説篇でとりあげることになるだろう。

それにしても第二部制作中、ずっと気になっていたことがあった。それはエッセイ「何が難しいことだって ピンク監督の弁」から感じ取れる渡辺さんの目だ。
1970年の時点で、渡辺護はピンク映画の代表的監督の一人となっていたはずだ。監督として脂がのってきた頃である。なのに、遠い昔をふりかえるかのようにピンク映画の現場を見つめているこの目は、一体何なのか?
一気にしゃべりまくるような調子のいい文体で書かれているけれども、このエッセイの裏側には、ひやりと冷たい何かが流れている。
そして、その冷たさは、『(秘)湯の街 夜のひとで』のラストシーンに映る川の冷たさを思い出させるのだが……。

10月の終わり頃、用があって渡辺さんの家を訪ねた。
予想していたとおり、渡辺さんは元気がなかった。
「向井が死んで……野上(正義)が死んで……なんで若松まで……、若ちゃんとは会って話をしたいと思っていたんだ……」
それだけ言うと、渡辺さんは黙ってしまった。
しかし、第三部をつくるうえで確認しておきたいことがあったので尋ねてみると、渡辺さんは次第にいつもの調子を取り戻してきた。
息つぎなしでしゃべり続ける渡辺さんを見て私は思った。
いつまでもしょんぼりしていてはいけないのだ。そんなことを亡くなったひとは望んでいない。生き残った者には語り伝える義務がある。
渡辺さんの語りの中で、ピンク映画の活気がよみがえる。撮って、飲んで、ケンカをしてをくりかえすつわものどもの群像喜劇、お楽しみ下さい。

渡辺 護(わたなべ まもる)
1931年、東京生まれ。1965年 、成人映画『あばずれ』で監督デビュー。映画監督本数:約230作品。谷ナオミ、東てる美、美保純、日野繭子、可愛かずみ…数々のスター女優を発掘しヒロインに育て上げてきたピンク映画界の第一人者。2013年12月24日逝去。

井川 耕一郎(いかわ こういちろう)
1962年生まれ。脚本家・映画監督、映画美学校 講師。ピンク映画の脚本は、1994年『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(監督:鎮西尚一)、1996年『黒い下着の女教師』(監督:常本琢招/O・V)など。最近作は2008年『喪服の未亡人 ほしいの…』(監督:渡辺護)。2000年『寝耳に水』(出演:長曾我部蓉子)監督。35mmのピンク映画『色道四十八手 たからぶね』が今年公開。

[12月公開予告]
ピンクリンク編集部 企画
「渡辺 護 はじまりから、最後のおくりもの。」
〜『あばずれ』から『色道四十八手 たからぶね』まで

《料金》
一般1300円 学生・シニア1100円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》当日に限り2本目は200円引き
*ご入場者に渡辺護監督ポストカードと『色道四十八手 たからぶね』35mmカットフィルムをプレゼント!(なくなり次第終了)
*各上映回、先着10名様にピンク映画ポスター・プレゼント


ピンクリンク編集部 企画
ピンク映画50周年 特別上映会 〜映画監督・渡辺 護の時代〜
2月8日(金)〜11日(月・祝)
「紅壺」
(1965/85分/モノクロ/シネマスコープ/16mm)
監督:渡辺 護 脚本:吉田貴彰、池田 央
撮影:生田 洋 音楽:小谷松実 照明:村井徹二
録音:杉崎 喬 編集:宮田二三夫
助監督:大島 功
出演:真山ひとみ、原あけみ、黒木純一郎、上野山功一、千田啓介、岩城力也、四志譲二、今井孝行
渡辺護・第2回監督作品で、現存する最古の渡辺護監督作品。2001年にプラネット映画資料図書館とピンクリンク編集部の共同調査により奇跡的にフィルムが見つかった。「マノン・レスコー」の翻案で、ある少女がスターになるまでの物語。嫉妬、ゴシップ、陰謀…、芸能界のどす黒い人間模様。後に日活に移り活躍した真山ひとみのデビュー作である。60年代の銀座・高級クラブ街でのロケシーンは、当時の映像の記録としても貴重。
 
「婦女暴行事件 不起訴」
(1979/61分/カラー/シネマスコープ/35mm)
監督:渡辺 護 脚本:小水一男 撮影:久我 剛
照明:近藤兼太郎 音楽:飛べないアヒル
編集:酒井正次 録音:東音スタジオ
助監督:鈴木敬晴
出演:日野繭子、青野梨麻、風間舞子、港まゆみ、斉藤由次、白鳥邦彦、上野 淳、大杉 漣、豊島六郎、藤村 俊
80年前後は第2次ピンク映画ブームの時代であり、最後のピンク映画黄金時代。渡辺 護はその頃アイドル人気を誇った日野繭子をヒロインに、緊縛モノの傑作『少女縄化粧』(1979/脚本:高橋伴明)など数々の傑作を生みだす。本作は横須賀を舞台に、当時の若者たちの“いま”が描かれ、雨に煙る港町ヨコスカが素晴らしい。出演者にクレジットされている豊島六郎とは渡辺護のこと。
  
「三日三晩裏表」
(1969/63分・短縮版/パートカラー/シネマスコープ/16mm)
監督:東元 薫
脚本:原 良輔 撮影:鈴木志郎 照明:大廣 海
音楽:東 楽 編集:井原花子
録音:東音スタジオ 助監督:長石多可男
出演:野上正義、一星ケミ、王 春蘭、司 乱子、石田 覚、田口和也、千曲守夫、神原明彦、築地 博、山田春夫、桜井のり子、関 孝、河辺和子、津崎公平
監督の東元 薫=梅沢 薫(1934〜1998)は、若松孝二監督『壁の中の秘事』(1965)の助監督を務めた後、向井寛監督に師事。1965年『十代の呻吟<うめき>』で監督デビュー。勝新太郎のそっくりさんが登場する『好色座頭市 四十八手斬り』(1969)、非情なタッチで描いた『濡れ牡丹 五悪人暴行篇』(1970)などが当時大ヒットした。
60年代フォルクスワーゲンのワンボックス・バンが颯爽と登場するオープニングが、めちゃくちゃオシャレでカッコイイ! なりゆきで強盗犯人になってしまった青年(野上)が、執拗に刑事(津崎)に追いかけられるアクション・ムービー。
 
   
「おんな地獄唄 尺八弁天」
(1970/75分/パートカラー/シネマスコープ/16mm)
監督:渡辺 護 脚本:日野 洸(=大和屋竺)
撮影:池田清二 照明:栗本一雄 音楽:林伊久馬
編集:宮田二三夫 録音:目黒スタジオ
助監督:西村智之
出演:香取 環、国分二郎、辰巳典子、青山リマ、日野新二、野上正義、武藤周作、吉田純
脚本の大和屋 竺(1937〜1993)は、早世の天才脚本家であり映画監督。日活・助監督部を経て、若松プロへ。1966年『裏切りの季節』で監督デビュー。監督作『荒野のダッチワイフ』(1967)は今も伝説の名作である。ピンク映画、ロマンポルノ、TVドラマ、TVアニメなど多方面に脚本を執筆したが、特にアニメ「ルパン三世」の脚本家として有名。
そんな大和屋とがっぷり組んだ本作は、渡辺護の初期監督作品の中でも屈指の傑作。女侠客・弁天のお加代が主人公の『男ごろし極悪弁天』(1970)の続編となる任侠時代劇である。お尋ね者の女極道・弁天の刺青を入れたお加代(香取)と、吉祥天の刺青のセイガク(国分)、運命の愛の物語。
 
「男と女の肉時計」
(1968/58分・短縮版/パートカラー/シネマスコープ/16mm)
監督:向井 寛 脚本:宗 豊 撮影:東原三郎
照明:土井士郎 音楽:芥川 隆 編集:香園 稔
録音:東音スタジオ 助監督:小津寛一郎
出演:柴田美恵、泉 ユリ、島 ルミ、桧みどり、相原香織、小野 保、城 浩、寺田 司、大平宣容、田口一矢、大原譲二
監督の向井 寛(1937.10.16〜2008.6.9)は、1962年『二人の少年』で監督デビュー。1965年、向井プロダクションを設立し成人映画に進出、ピンク第一回監督作品『肉』(出演:内田高子)を撮る。向井プロからは数多くの監督が輩出され、滝田洋二郎や瀬々敬久らも向井プロの出身である。本作は美人局(つつもたせ)をしながら暮らす男と女のお話。組長の情婦に手をつけてしまった男は、落とし前をつけるために、交通事故を装った殺しの依頼を受けるのだが…。
 
「素肌が濡れるとき」
(1971/70分/カラー/シネマスコープ/16mm)
監督:梅沢 薫
脚本:池田正一 撮影:久我 剛 照明:秋山和夫
編集:エディ編集社 音楽:金子新一
録音:日本録音センター 助監督:吉岡宣孝
出演:真湖道代、野上正義、港 雄一、泉 ユリ、瀬川ルミ、青山美沙、宝井京子、相原香織、真理野恵美、神原明彦、名和三平、城 浩、香の浦恵、浅野悦子、椿 ユカ、滝沢明広、出口泰児、大浜ゆう子、田代愛子、中津ともえ
出演の野上正義(1940.3.2〜2010.12.22)は北海道出身。1964年『鉛の墓標』(監督:若松孝二)でピンク映画初主演。成人映画のみならず、一般映画、TVドラマ、舞台、CM…と幅広く活躍し、1,000本以上の映画に出演した。ピンク映画50年の歴史の中で最も活躍した人を唯一人選ぶとしたら、女優でも監督でもなく、俳優・野上正義の名前を挙げる人も多いだろう。ピンク映画、ゲイポルノなど監督作も約20作品ある。
本作ではそんな野上さんが実にかっこよく、まるで野上さんのプロモーション映画のよう! ほぼ全篇、主演・野上正義の映画となっていて、ピンクなのにホモセクシャルなシーンまである自由さ。
 
*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
 
企画:ピンクリンク編集部
 
[関連企画]
西日本初公開「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


西日本初公開「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」
2013年2月8日(金)〜12日(火)
ピンクリンク編集部 企画
ピンク映画50周年 特別上映会 〜映画監督・渡辺 護の時代〜

→特集上映

渡辺 護監督・井川耕一郎監督、来場トークショー
2月9日(土)17:20〜 2月10日(日)13:00〜 *要 映画鑑賞チケットの半券


 
「糸の切れた凧 渡辺護が語る渡辺護」
(2011/122分/DVCAM)
構成:井川耕一郎
出演・語り:渡辺 護
撮影:松本岳大、井川耕一郎
録音:光地拓郎 編集:北岡稔美
構成補:矢部真弓、高橋 淳 
製作:渡辺 護、北岡稔美 
協力:渡辺典子、太田耕耘キ、淡島小鞠、荒木太郎、広瀬寛巳、向井淳子、映画美学校
 
監督生活50年にならんとする巨匠・渡辺護にカメラは密着する。本作は渡辺護の映画演出を具体的に探るドキュメンタリーでありつつ、また渡辺護が自分の人生を題材にして作った新作映画でもある。
 

ピンク映画というのは1時間前後の尺の中に、セックスシーンが4回、5回ないといけないとか、何分間に1回ないといけないとかいう条件のもとで作られますよね。その条件は、監督にとってふつう「制約」として受け止められるじゃないかと思うんです。できたら無理矢理セックスシーンなんて入れたくはないけど、そうしないといけない決まりだから仕方なく撮る、というふうに。しかし、ある一群の監督や脚本家たちにとってはそれが制約ではなく、いや始めは制約であったにもかかわらず、すぐにセックスそのものがドラマの中心テーマに据えられるようになるという奇妙な逆転が起りますよね。渡辺さんもそうだったのか。でなければ、2百本以上のピンク映画は撮れないのか。しかしこのドキュメンタリーを見ていると(聞いていると)、渡辺さんにとっての関心はピンクそのものではなく、ピンクだろうとなんだろうと如何に面白く撮るか(如何に面白く語るか)、ただそれだけなんだということがわかってきました。つまり渡辺さんにとってピンクは、驚くべきことに今もなお「たまたまそうだった」であり続けているのではないかということです。渡辺さんには「映画」という糸が、ずっと切れないままつながっているんではないでしょうか。
    ───万田邦敏(映画監督)
 
もしオリヴェイラが渡辺護を見たら、ええ! サイレント時代から映画を撮ってた人が俺以外にもいたの!とビックリするのではないだろうか。もちろん渡辺護は100歳ではない。ピンク映画の黄金期を支え、200本以上の映画を撮り続けた彼のデビューは1965年。彼の映画にずいぶんと遅れて出会った私たちは、その画面に、彼が語る言葉に、肉体に、マキノ、伊藤、衣笠ら活動大写真の興奮が息づいている不思議に呆然とした。井川耕一郎がドキュメンタリーの製作に踏み切ったのも、何としてもこの不思議を記録せねばならないと思ったからに違いない。渡辺護が語るのは体験談ではない。“体験”なのだ。クラシカルな嗜好とは無縁の、現在であり続ける“体験”。彼の映画がオリヴェイラ同様刺激的なのはそれ故だ。我々はスクリーンを通じて、スクリーンを見ている時だけ、この“体験”を共有できる。渡辺護の演出を捉えたメイキング映像は抱腹絶倒の面白さ!
    ───高橋洋(映画監督)

 

渡辺 護(わたなべ まもる)
1931年、東京生まれ。1965年 、成人映画『あばずれ』で監督デビュー。映画監督本数:約230作品。谷ナオミ、東てる美、美保純、日野繭子、可愛かずみ…数々のスター女優を発掘しヒロインに育て上げてきたピンク映画界の第一人者であり、現役映画監督。

井川 耕一郎(いかわ こういちろう)
1962年生まれ。脚本家・映画監督、映画美学校 講師。ピンク映画の脚本は、1994年『女課長の生下着 あなたを絞りたい』(監督:鎮西尚一)、1996年『黒い下着の女教師』(監督:常本琢招)など。最近作は2008年『喪服の未亡人 ほしいの…』(監督:渡辺護)。2000年『寝耳に水』(出演:長曾我部蓉子)監督。

 

《料金》
一般1300円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


昭和桃色映画館 50年目の幻のフィルムと活動屋たち 後編

特設コーナー1
なぜ、いま「本木荘二郎」なのか!?
~「昭和桃色映画館50年目の幻のフィルムと活動屋たち」上映企画に寄せて~

特設コーナー2
「プロ鷹クロニクル」への招待、、
あるいは「特集」を楽しく御覧いただく為に!

鈴木義昭(映画史家・ルポライター)


成人映画系の「ピンク映画」とも呼ばれる「独立プロ映画」が誕生して、今年で「50周年」を迎えた。今もなお製作を続けるのは老舗の大蔵映画一社という情況は、「消え行くピンク映画」の印象は拭えない。だが、逆に昭和の「独立プロ映画」への郷愁とオマージュ、マニアックなファンの心理は高まっているようだ。2009年の「60年代・独立プロ伝説 西原儀一と香取環」、2011年の「まぼろしの昭和独立プロ伝説」と神戸映画資料館ならではの「発掘上映」に各方面からの注目と賛辞が集中した。
戦後の日本映画史における「独立プロ」「成人映画」の実態と全貌は、「50周年」を迎えて、ようやく明らかになろうとしているようだ。神戸映画資料館のフィルム収集、保存、修復という活動もまた、「独立プロ」の仕事、成人映画の「まぼろしの女優たち」を発掘・研究して、「娯楽映画の裏面史」「もうひとつの映画史」に光を当てる。本邦唯一のプリントが、伝説から目覚める時を待っているようだ。それらが伝説の活動屋たちによって、いかに作られたかを検証してみよう。また、神戸のスクリーンで、新しい「伝説」が刻まれるかも知れない。
 
プロ鷹クロニクル PART-1
9月28日(金)・29日(土)
「好色魔」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽:スクリーン・ミュージック
出演:美矢かほる、鶴岡八郎、野上正義、相原香織、立花加倖、矢島弘、起田志郎
65年8月「プロダクション鷹」は、京都で発足した。東映の番線落ちの添え物映画を作らないかという要請に応えてのものだった。本作は、プロ鷹四周年記念作品。鳥がさえずり人間の欲望と無縁の山の中に、一人の獣のような男が現われ、欲望のまま蛮行をくりかえす。強烈なレイプ。山小屋の占拠。迷い込んだアベックの運命は……。鶴岡八郎が好色魔を演じて怪演、恐怖と猟奇の世界に引きずり込む。プロ鷹出演作の多い美矢かほるが好演。
 
「灼熱の暴行」
(1968/67分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督;木俣堯喬 撮影:杉田正二 照明:加藤広明 音楽:スクリーン・ミュージック 録音:東京録音現像 現像:目黒スタジオ
出演:星冴子、美矢かほる、港雄一、鶴岡八郎、金田洋、渡正夫、島田一郎、木村正治、木村昌治、鬼塚大吉、ジョン・クライフトン
同じく「プロ鷹四周年記念」を銘打ち、八丈島小笠原黒潮園にオールロケした大作。何度も映画化された「アナタハン事件」を想わせる漂流譚。沈没船から辛くも逃れ、南海の孤島に漂着した男女五人の生存者たち。孤島で見たものは、異常な状況下で展開する色と欲との人間模様だった。専属を多数抱えたプロ鷹が売り出した星冴子、姉御ぶりも勇ましい美矢かほる、そして重要な役で木俣堯喬監督自身も出演、声の吹き替えは津崎公平だった。
  
「或る色魔」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽:スクリーン・ミュージック 照明:桑名正浩 編集:矢折省一 
出演:谷ナオミ、林美樹、桂奈美、鶴岡八郎、野上正義、山本昌平、乱孝寿
最愛の妻を寝取られた夫は、怒りに震えて狂おしい「色魔」に変貌した。どこにでもいる実直な課長の心の底には、獣が潜んでいた。『好色魔』と対をなし連続的に作られた鶴岡八郎主演の狂気サスペンス。早春のある日、夜更けから朝にかけ単純そうに見える三つの事件が起きた。通り魔。ガス漏れ。スピードの出し過ぎ。初動捜査では、三つの事件に関連があるとは思われなかったが。デビューまもない谷ナオミの若く豊満な肢体も必見だ。
 
   
プロ鷹クロニクル PART-2
9月30日(日)・10月1日(月) 
「娼婦」
(1968/57分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠 音楽:河原淳
出演:水城リカ、ほかプロ鷹常連俳優陣
東京に拠点を移し、精力的に映画作りを進めたプロ鷹は、女優の発掘・育成も手がけた。初期の五社出身の女優たちが年長になった為もあるが、自分たちで女優を育てるメリットが大きいだろう。水城リカはその筆頭。本作は、水城をフィーチャーした女性の転落物語。雷鳴の中で自らを回想する女。ハイキングの日、雨さえ振ってこなければ山小屋で犯される事もなかった。純情なればこそ、娼婦にまで身を堕としていく。それでも生きていく女。
 
「広域重要指定犯108号 嬲りもの」
(1969/55分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督・脚本:木俣堯喬 撮影:杉田正二 美術:衣恭介
出演:久保新二、芦川絵里、清水世津、浜田恵美、宮瀬健二、鶴岡八郎、木南清、矢島広志
時代が激しく揺れた69年、「連続射殺魔」といわれた永山則夫の事件を、未解決で永山が逃亡中だった段階で映画化して、一部で大きな反響を呼んだ作品。桃色映画らしくデフォルメされているが、当時の社会の荒れた気分を切り取っていて興味深い。ホテルの庭でガードマンをピストルで射殺。女と車で京都まで逃げるが、事件は意外な方向に。永山役には、その後怪優となる久保新二の若き日。当時人気の芦川絵里、清水世津らが犯される。
 
「裸体の街」
(1969/55分/パートカラー・ワイド/16mm)
企画・脚本・監督:木俣堯喬 撮影:杉田正二 音楽スクリーン・ミュージック
出演:芦川絵里、田中小実昌(友情出演)、美矢かほる、清水世津、桂奈美、星リナ、三木悠子、鶴岡八郎、野上正義、黒木護、小代一夫(ミノルフォンレコード)、田中敏夫、関多加志
冒頭からコミさんこと田中小実昌が客引きに登場。主題歌の「裏町人生」に乗せて哀愁を漂わせるスクリーン。下町に生まれ、運命に翻弄される少女。義理の母に育てられたタミ子(芦川絵里)はアイマイ屋に売られ、好色な男に処女を奪われる。家出した彼女は、中学時代の同級生の次郎(黒木護)に出会い、若い恋が芽生える。若く美しい肉体に群がる男たち。懸命に生きる二人。せつなく一途な青春映画の佳作。プロ鷹五周年記念特別作品。
 

9月29日(土)トーク
《本木荘二郎と桃色映画の50年を考える
 後篇:桃色映画を撮り続けて死んだ活動屋が残したものとは…》
鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
本木荘二郎は、東宝撮影所に戻ることも、テレビや一般映画で再起することもなく桃色映画を撮り続け、1977年62歳で急死した。多くの出来事があったが、本木が映画を離れることはなかった。本木が「ピンク」に埋没しようとしていた頃、多くの活動屋が一旗上げようと業界の扉をたたいた。関西でうぶ声を上げためずらしい「エロダクション」プロ鷹もそのひとつだった。「プロ鷹」は、京都の映画人だった木俣堯喬監督が率いて関西から東京に乗り込んだ独立活動屋集団。本木荘二郎を軸に、桃色映画監督の人間模様を追う。関連映像の上映あり。
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹
前編 8月31日(金)〜9月3日(月)

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き


昭和桃色映画館 50年目の幻のフィルムと活動屋たち 前編
 
成人映画系の「ピンク映画」とも呼ばれる「独立プロ映画」が誕生して、今年で「50周年」を迎えた。今もなお製作を続けるのは老舗の大蔵映画一社という情況は、「消え行くピンク映画」の印象は拭えない。だが、逆に昭和の「独立プロ映画」への郷愁とオマージュ、マニアックなファンの心理は高まっているようだ。2009年の「60年代・独立プロ伝説 西原儀一と香取環」、2011年の「まぼろしの昭和独立プロ伝説」と神戸映画資料館ならではの「発掘上映」に各方面からの注目と賛辞が集中した。
戦後の日本映画史における「独立プロ」「成人映画」の実態と全貌は、「50周年」を迎えて、ようやく明らかになろうとしているようだ。神戸映画資料館のフィルム収集、保存、修復という活動もまた、「独立プロ」の仕事、成人映画の「まぼろしの女優たち」を発掘・研究して、「娯楽映画の裏面史」「もうひとつの映画史」に光を当てる。本邦唯一のプリントが、伝説から目覚める時を待っているようだ。それらが伝説の活動屋たちによって、いかに作られたかを検証してみよう。また、神戸のスクリーンで、新しい「伝説」が刻まれるかも知れない。
 
小林悟 元祖独立プロ監督
8月31日(金)・9月1日(土)
「不能者」
(1967/86分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:小林悟 撮影:浜野誠之 音楽:竹村次郎
出演:仲小路彗理、島たけし、清水世津、谷ナオミ、白川和子、鶴岡八郎、椙山拳一郎、松井康子
桃色映画を開拓した監督の一人小林悟は、ヌーベル・ヴァーグを担う監督となってもおかしくはなかった。幼馴染みの恋人は理解してくれたが、少年の悩みは晴れなかった。身体的コンプレックスから、性的関係が上手にできない主人公たち。都会の風俗の中で揉みくちゃになっていく。放浪と多作とに明け暮れた異能の活動屋が、当時パートナーだった女優・松井康子を製作者に、果敢に挑戦した意欲作。異形だが、ならではの青春映画の佳作。
 
「女紋交悦」
(1971/71分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:小林悟 脚本:岡田昇平 撮影:池田清二
出演:宮下順子、山本昌平、保津美アヤ、吉田純、田中敏夫、市村譲二、日野伸二
幸せな夫婦生活を送っていたが、交通事故で不能になってしまった夫。看病しながら酒場で働く甲斐甲斐しい妻。だが、夫婦の絆は、肉欲の前にはもろく愚かしいものでしかなかった。乱心と絶頂。二人の葛藤や絶望を照らし出すように明滅する光、幻想と迷宮へ招待するような音楽。脚本にも参加した山本昌平の迫真演技。デビューまもなく体当たりで悩殺する宮下順子。日活ロマンポルノ裁判の参考試写作品になったことでも知られる作品。
 
「ニッポン発情地帯」
(1971/68分/パートカラー・ワイド/35mm)オムニバス全5話 
監督:小林悟 脚本:神谷伸之、千葉隆志、小林悟 撮影:池田清二
出演:杉村久美、野沢はるみ、志野原千恵、島江江梨子、小池ジュン、相原香織、野上正義、大河原功、久保新二、今泉洋、浅川洋子、宮本圭子、市村譲
緊張感と才気の漲る作品から捨てばちな作品まで、起伏の激しいエロスのアルチザンだった小林悟。旧知の西原儀一に再会、葵映画で作品を撮るように。失神を売り歩く男、妻の秘密、関西パンマの実態など艶笑小話をオムニバス形式で巧みに撮った。女優たちをはじめキャストもスタッフも若々しく新しかった。大手のポルノ攻勢に、業界は変貌していった。小林も、この頃から開き直ったように、女の裸体を舐めるように撮り始めるのだった。

※『ニッポン発情地帯』フィルム状態不良の為、急きょ差し替えて上映いたします
「好色回春物語」
(1970/69分/パートカラー/16mm) 
製作:葵映画 監督:武田有生 脚本:中原圭司(石森史郎) 撮影:舵川常義
出演:白川和子、青山美沙、黒瀬マヤ、鶴岡八郎、里見孝二、今泉洋、関多加志
『約束』『同棲時代』など青春映画の名脚本家として知られる石森史郎先生の「ピンク映画時代」の脚本作品が見つかった! 斎藤耕一の助監督などを経て成人映画で一本立ちした武田有生監督作品。「有生は文芸調のなかなかいい作品を撮ってね。気も合って何本もホンを書いているんだ」(石森)。亀松(鶴岡八郎)は会社を経営していたが、別荘に引きこもり回春法に精を出し、女中相手に発散していた。ある日、純情そうな娘が女中としてやってきたのだが……。ピンク時代の白川和子の愛らしい姿も見られる貴重な発掘作品である。
 
   
時代を作った活動屋たちと発掘フィルム
9月2日(日)・3日(月) 
「禁じられた乳房」
(1966/80分/白黒・ワイド/16mm)
監督:小川欽也 脚本:五里木純一郎 撮影:岩橋秀光 美術:宮坂勝巳 音楽:長瀬貞夫
出演:新高恵子、左京未知子、森美千代、飛田八郎、大原百代、九重京司、野上正義、椙山拳一郎
若々しく力強い演出を見せる小川欽也。「50年間撮り続けた活動屋」である。小川監督自身が保持されている貴重なフィルムは、関西地区初上映。子供に会いたい一心で脱走を図る女囚。転がり落ちていくように、運命の坂を走らされ殺人を犯した。ヒロイン新高恵子は、桃色映画界初期を代表するスター女優の一人。ラテン系歌手だったが、憧れの映画の世界に飛び込む。美貌と演技力は、同郷の寺山修司に見出され演劇界へ転進していった。
「女体開花」
(1968/61分/パートカラー・ワイド/16mm)
監督:奥脇敏夫
出演:水咲陽子、青木マリ、椙山拳一郎、渡辺允雄、泉田洋志、中野歩、立花加幸
結婚、それは何? 幸せ、人間の絆、家庭、どうして? 問いかける男女。蜜月旅行に出た新婚男女たちは、ホテルの部屋で。男女には「性生活の知恵」こそ必要と説き、味のある演出ぶりの奥脇敏夫監督。初代「ピンクの女王」香取環のパートナーだったこともある、黄金時代を代表する「桃色活動屋」だ。売り出し中の新人女優水咲陽子、青木マリの新妻ぶり。屈指の演技派ぶりを見せる椙山拳一郎。当時求められていた、典型的なヒット作品だ。
 
「濡れた紅薔薇」
(1972/64分/カラー・ワイド/16mm)
監督:向井寛
脚本:棟由多歌 撮影:鈴川芳彦
出演:武藤周作、千原和加子、沖さとみ、芹河美奈、嵯峨正子、三条聖子、安藤麗子、丸美園子、港雄一、吉岡一郎、吉田純、他
60年代に数々の傑作を発表した俊英監督向井寛は、70年代に入っても軽快なフットワークで作品を撮り続けていた。「処女喪失」をテーマにしたレコードを企画した主人公が、テレコを片手に街頭インタビューに飛び出した。OL、女子高生、女優、歌手など、様々な女性の性的エピソードがオムニバス風に描かれる。一億総ハレンチ時代といわれたが、女性の「処女性」はまだまだ大きなテーマだった。冒頭、監督自身も颯爽と登場して懐かしい。
 
「パンマSEX裏のぞき」
(1973/63分/カラー・ワイド/35mm)
監督:関孝二 撮影:長島訓 照明:明地五郎 編集:中島照雄
出演:港雄一、北見マリ、西条マリ、城モニカ
関孝二は、「女ターザン」を皮切りに桃色映画初期からアイデアマンといわれ、時代風俗に敏感で作品にも取り入れた。「パンマ」も、昭和の風俗。「パンパン・マッサージ」の略と言っても、既に「パンパン(街娼)」が死語だが。ヤクザ(港雄一)は情婦(北見マヤ)と温泉に来た。頼んだアンマ(河森真樹)の顔を見て驚く。それは、以前そのヤクザの女房だったが、彼に酒をかけられ盲になり捨てられ、この温泉に流れてきた女だったのだ。
 

9月1日(土)トーク
《本木荘二郎と桃色映画の50年を考える
 前篇:黒澤明の盟友、撮影所を去り桃色映画の開拓者となる!》
鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
ピンク映画第一号は『肉体の市場』だが、半年遅れて本木荘二郎監督『肉体自由貿易』が公開される。「50年」の歴史がスタートした。それまで黒澤明のなくてはならない相棒、盟友プロデユーサーとして『羅生門』を始め数々の名作を生み出した本木は、ある理由から東宝撮影所を追われ、いつしか「街場」といわれる桃色映画の監督となる。それは、その後「ピンク映画」と呼ばれるジャンル、市場を切り拓くこととなった。本木の助監督だった小川欽也を筆頭に、小林悟、関孝二、向井寛、奥脇敏夫、草創期の監督たちは根っからの活動屋たちばかりだった。本木と競うように、桃色映画を撮った監督たち、その知られざる作品と素顔をも検証する。関連映像の上映あり。
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹
後編 9月28日(金)〜10月1日(月)

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き


まぼろしの昭和独立プロ黄金伝説 後編
2011年10月21日(金)〜24日(月)
 9月の「まぼろしの昭和独立プロ黄金伝説 前編」に続く後編をお届けします。初代ピンクの女王・香取環さんをお招きしての、「特別編 伝説の女王・香取環」と「第三の伝説 追憶 向井寛の世界」。
 本特集に先立って行なわれていた、東京・ラピュタ阿佐ヶ谷の「60年代まぼろしの官能女優たちⅡ」の最終週、「昭和桃色映画館」出版記念会に熊本から急きょ駆けつけてくれた香取環さん。さらに今度は神戸映画資料館にも駆けつけてくれることに。上映プログラムを変更して、お気に入り&特選作品を準備した。「まぼろしのヒロイン」が長時間にわたってファンとの交流の場を持つのは初めてと言っても良い。記念すべき日となろう。
 若松孝二とともに、60年代桃色映画の最前線を疾走し、その人気を若松と二分したといわれる向井寛。だが、あくまで過激で時代の先頭にあり続ける若松と違い、滝田洋二郎をはじめ後進の育成やプロデユーサー業、穏やかな作風へとも転じた向井寛の作品世界は、今日その多くが散逸しフィルムは失われ省みられることが少ない。「ドキュメント」「反戦」「情念」「犯罪」「スキャンダル」……、向井寛が挑んだテーマは、そのまま時代のテーマでもあった。08年に物故した向井寛監督の世界をひらき、研究の第一歩となる画期的上映が実現した。
*予告していた内容を一部変更しています。
 
←香取環さん(右)。向井寛監督夫人の内田高子さん(左)と、ラピュタ阿佐ヶ谷「60年代まぼろしの官能女優たち」(09年)開期中の「対談」(「昭和桃色映画館」収録)記念撮影
 

10月22日(土)15:35〜トーク
スペシャルゲスト:香取環  聞き手:鈴木義昭
(映画史家・ルポライター)
《昭和独立プロ黄金伝説・その2 初代ピンクの女王・香取環》
「神戸は想い出の土地なの」、われらが初代「ピンクの女王」は言った。「女王」は赤木圭一郎と同期の第四期ニューフェイスとして日活撮影所入り、久木登紀子の本名でデビュー。多くの日活青春映画に出演しながら、1961年『肉体の市場』で勃興期の独立プロに身を投じ香取環として生まれ変わり、活躍が始まる。昭和桃色映画史に燦然と輝く「女王」の軌跡は、そのまま60年代の桃色映画の歴史だ。目の眩むような日本映画の黄金時代の記憶! 72年に映画界を引退してから長く消息を絶ち沈黙を守り続けた「女王」が、鈴木義昭の取材に応じたのは四年前。伝説の名作と知られざる佳作を語り、女優として女性として語り始めた。「女王降臨」を、いま、体感せよ!(鈴木義昭)
 
 参考上映 :香取環出演映画名場面集、「昭和桃色映画館」出版記念会記録映像(後篇)
 
鈴木義昭
1957年、東京都台東区生まれ。76年、「キネマ旬報事件」で竹中労と出会い、以後師事する。ルポライター、映画史研究家として芸能・人物ルポなどで精力的に執筆活動を展開中。
著書に「ピンク映画水滸伝」(青心社)、「風のアナキスト・竹中労」(現代書館)、「日活ロマンポルノ異聞 国家を嫉妬させた映画監督・山口清一郎」(社会評論社)、「若松孝二 性と暴力の革命」(現代書館)、「ちんこんか ピンク映画よどこへ行く」(野上正義著・責任編集/三一書房)、近刊に「昭和桃色映画館」(社会評論社)がある。

[特設コーナー]香取環の部屋

 
「特別編 伝説の女王・香取環」
10月21日(金)・22日(土)
「牝罠」
(1967/ 72分/16mm/パートカラー)葵映画
監督・脚本:西原儀一 撮影:池田清二 照明:森康 製作:後藤充弘
出演:香取環、中原美智、森三千代、渚マリ、田中敏夫、山田晴生、椙山拳一郎
結婚式を控えた農家の一人娘・陽子(香取環)は、三人の若者に襲われ純潔を散らされる。上京し銀座のホステスに、やがてバーを経営するまでになるが、その肉体には男を憎み狂わす魔性が棲みついていた。美しさゆえに都会の中でもがき苦しみ流転し堕ちていく女。日活出身の香取と宝塚映画出身の西原が、独立プロ全盛期に結実させた伝説的作品
 
 
「女は二度燃える」
(1969/45分短縮版/16mm/パートカラー)ワールド映画
監督:奥脇敏夫 脚本:俵ヒト見 撮影:武田勝也 音楽:辻正
出演:香取環、里見孝二、相原香織、真湖道代、高鳥和子、青葉洋子
遊泳中に溺れ死んだという姉(相原香織)、その死に疑問を抱いた妹(香取環)が姉の恋人だった男(里見孝二)に近づき真相を探る。眩しい陽光ときらめく海、極度におさえた台詞、ボートの揺らぎの中での性愛。日活映画が得意とした海の映画の系譜を超えるかのように、復讐に燃える女を、当時パートナーだった奥脇敏夫の下で巧みに熱演する香取環。
 
  
「桃色電話 (ピンクでんわ)」
(1967/60分/16mm/トリミング版/パートカラー)葵映画
監督・脚本:西原儀一 脚本:久木登 撮影:池田清二 音楽:古関正 美術:加山大洋
出演:香取環、椙山拳一郎、清水世津、森三千代、千月のり子、松井康子、田中敏夫
ポン引きの拳(椙山拳一郎)に付いて来た薄汚れた友子(香取環)は、少し頭が弱く失敗ばかりするが憎めない。当時流行のデートクラブで働く友子だが、やはり失敗ばかり。初代「ピンクの女王」香取環は西原儀一の葵映画専属となり、愛らしい絶妙演技を魅せて人気を不動のものとする。「忘れられない作品」という、彼女自身によるリクエスト上映!

香取環(かとり・たまき)
1939年熊本市生まれ。九州女学院高校在学中にミス・ユニバース熊本代表、全国大会で準ミスに選出。卒業後、日活第四期ニューフェイスに応募し入社。同期に赤木圭一郎がいた。本名の久木登紀子の名で多くの作品に助演したが、61年に日活を退社。佐久間しのぶの芸名でテレビにも出演。62年、ピンク映画第一号『肉体の市場』に主演、芸名を香取環と改名。以後、その演技力で60年代のピンク映画に「女王」として君臨。72年に映画界を引退。

   
「第三の伝説 追憶 向井寛の世界」
10月23日(日)・24日(月) 
「暴行少女日記♀(めす)」
(1968/16mm/80分/パートカラー)向井プロ
監督:向井寛 脚本:宗豊 撮影:東原三郎 音楽:芥川隆 
出演:一星ケミ、佐東洋一、小野保、久保新二、津村伸一、城浩、エディ・リンドン、吉野洋子
関西の底辺に生まれ、母に反発しながら自らも肉体を売って成り上がろうとする少女(一星ケミ)。男を騙し、男に騙されながら生きていく姿は、あまりに痛々しい。ドキュメンタリー出身の向井寛ならではのカメラワークは、底辺の町に生きた少女の物語を刻み込む。一時代を築いた向井のシャープな映像感覚の中で、奔放な一星の演技が輝く幻の傑作登場!
「セックス女優残酷史」
(1968/76分/35mm/パートカラー)日本芸術協会
監督:向井寛 脚本:浜多加志 撮影:伊藤正治 美術:清水好 音楽:芥川隆
出演:一星ケミ、久保新二、相原香織、井川美千代、相澤梨花、火鳥こずえ、佐東洋一、小野保
六本木「野獣会」にも属していたという一星ケミは、激しい存在感で60年代後期独立プロ屈指のスターだった。プロデューサーと恋人との狭間で揺れ動いて生きる姿は、肉体を武器に芸能界を生きたケミ自身であり、多くの「ピンク女優」の姿でもあろうか。向井寛はスキャンダラスでスタイリッシュなアングルの中に、女の身も心も描写しようとする
 
「秘伝腹芸十八番」
(1969/72分/35mm/パートカラー)青年芸術協会/東京興映
監督:向井寛 脚本:宗豊 撮影:浜野誠之 音楽:芥川隆 照明:大田博
出演:藤井貢、火鳥こずえ、乱孝寿、江島裕子、水木洋子、松本寛、市村譲二、平野元
藤井貢は、慶応大学ラグビー部出身で戦前松竹蒲田の青春スター。戦後も時代劇などで活躍したが、フリーとなって向井寛作品の常連に。一代で築き上げた相場師(藤井貢)の腕と才覚は老いてなお発揮され、英雄色を好む性癖に翻弄される女たち。高度成長期の男たちの愛憎劇に正面から肉迫する、向井寛らしい正攻法の人間ドラマ。
 

向井寛(むかい・ひろし)
1937年満州大連に生まれる。九州大学経済学部中退。今井正、野村浩将、佐伯清らに師事。劇映画の助監督の傍ら、62年に教育映画『二人の少年』で監督デビュー。63年、『地熱』で東京都産業映画部門・金賞受賞。65年に向井プロダクションを設立。同年の『肉』で成人映画に進出。精力的に監督作品を発表する一方、プロデユースにも手腕を見せた。『GOING WEST 西へ…』(97年)など一般作品の監督も多い。08年肝不全の為永眠。

 
*プリント状態が悪く映写機にかからない場合は上映作品が急遽変更になる場合があります。
企画協力:鈴木義昭、東舎利樹

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

トークイベント 1000円
《割引》
2本目は200円引き


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。