平成30年度美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業
事業主体:一般社団法人 神戸映画保存ネットワーク
題名不明(村の記録)一部抜粋 → 題名判明 「関東の遭難と小川水兵」
神戸映画資料館所蔵ID:50054
【フィルム状態】
フォーマット:35mm
長さ: 4分[16fps.]
音声:サイレント
色:白黒・染色・調色
完全度:部分
【内容について】
製作国:日本
種別:劇
製作年:1920年代 1925年
製作会社:国際活映(国活)巣鴨撮影所
監督:内田吐夢
撮影:円谷英一(英二)
出演:西沢武夫、本田歌子、水島欽三郎、水島三千男
解説(2024年7月更新)
現存部分から推測できる物語は、座礁した帝国海軍の水兵を村民が救助した場面があることから、1924年12月に福井県越前海岸沖で起こった特務艦関東遭難事件などが考えられた。それを題材にした劇映画は『日本劇映画総目録』(朱通祥男編、日本アソシエーツ、2008年)によれば、日活の『噫 特務艦関東』(1925年1月公開、監督:若山治、出演:南光明)と、国活の『特務艦関東と小川水兵』(製作年不詳)の2本である。しかし日活作品は出演俳優の相違などから当該作品の可能性は低いと思われた。国活作品に関しては、雑誌『音楽と映画』1925年3月号の口絵に「国活巣鴨スタヂオ作品『関東と小川水兵』」の写真があり、水兵と村娘の扮装が残存映像と似ていることと、同誌の広告に「『関東の遭難と小川水兵』全3巻/監督 内田吐夢 撮影 田谷英一[ママ] /配役 清水老医長…水島欽三郎 小川水兵…西沢武夫 母お国…鈴木はま子 妹お春…本田歌子」を確認することができた。さらに残存映像に映っている俳優の水島欽三郎と子役の水島三千男(のちの水島道太郎)が、内田吐夢が国活巣鴨撮影所の解散後に同じスタジオを利用して監督した社会教育映画研究所の『少年美談 清き心』(1925年)に出演している二優と同一人物であることが判明した(ちなみにこの作品は神戸映画資料館が発掘した作品であり、初公開時の題名は『潔き歩み』である)。また。『福井新聞』の伊与登志雄氏の調査により、座礁した関東艦が見える夜間の映像は、岩の形状などから南越前町糠の現在「特務艦関東艦遭難之地」の碑が立つ付近と考証された。以上のことからこの断片映像は『関東の遭難と小川水兵(特務艦関東と小川水兵/関東と小川水兵)』と推定された。なおこの作品の封切年月日は1925年1月30日、封切館は東京・魚河岸キネマである(『都新聞』同日の7面、「活動」欄)。
調査者:佐崎順昭(映画史研究者)