プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2010

タカシ時間 vol.4
5月29日(土)・30日(日) 両日18:30
『2006年 秋ー2007年 冬』 (2007/42分)
『2007年 春ー初夏』 (2007/38分)
 
 
2005年12月から東京茅場町のギャラリーマキでスタートした新作上映会「季刊タカシ」は、年3、4回のペースで現在も続いています。神戸の「タカシ時間」では、映像作家・崟利子がこれまで作ってきた作品を新たな組み合わせでごらんいただきます。

《会費》1500円

 協力:ギャラリーマキ


日本映画名画鑑賞会
2010年6月5日(土)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


[貸館]SANAフィルムフェスタ「マスメディアが伝えないイラクがここにある」
2010年6月6日(日)14:00〜
 「SANA(光)衛星テレビ」は、世界から募金が集められ、イラクの市民メディアとして2007年4月に誕生しました。自由平等で平和なイラクの再建をめざす「イラク自由会議」が番組制作・運営を行い、民衆の文化、労働、教育、女性、子どもなどをテーマにニュース映像やドキュメンタリー番組などを放送しています。
 「イラク平和テレビ局inJAPAN」は、その番組を日本で観られるように翻訳・吹き替えしインターネット配信をしていますが、より多くの方々ご覧いただく機会として「SANAフィルムフェスタ」を開催しています。
 マスメディアが伝えないイラクを知り、戦争のない社会をつくるためのオリジナルな映像を発信し、交流する場です。
 
 
 特別上映「イラクの現在〈いま〉と希望 IFC(イラク自由会議)」40分
SANA衛星テレビ局制作/イラク平和テレビ局 in JAPAN 編集
アメリカによる7年間のイラク占領は数え切れない死者と生活破壊をうみだした。しかしその中でイラクの子どもたち、女性、若者、市民、労働者が平和で民主的なイラクの再建に立ち上がっている。IFC(イラク自由会議)がイラクの希望を切り開いている。イラク市民が設立したサナテレビが真実のイラクを伝える。
  その他、最新映像より
 
 
主催:イラク平和テレビ局 in Japan・兵庫
  (連絡先)黒川 078-784-2430  安東 090-3828-9579
   

《料金》大人1000円 シルバー/学生/障がい者500円


フリッツ・ラング連続上映 ドイツーアメリカ
2010年6月18日(金)〜20日(日)
サイレント末期からトーキー初期に、『ニーベルンゲン』(1924)、『メトロポリス』(1927)などの作品でドイツ映画黄金時代を代表する監督として活躍したフリッツ・ラング。1934年にナチス・ドイツから亡命した後は、ハリウッドで第二の黄金時代を築いた。
今回は、ドイツ時代に手がけたラングの初トーキー作『M』と、渡米後の第二作で代表作の『暗黒街の弾痕』を上映する。
 
「M」M
(ドイツ/1931/99分/35mm)
監督:フリッツ・ラング
脚本:テア・フォン・ハルボウ、フリッツ・ラング
撮影:フリッツ・アルノ・ヴァグナー
美術:カール・フォルブレヒト
出演:ペーター・ローレ、オットー・ヴェルニケ、グスタフ・グリュントゲンス
 
ベルリンで幼女ばかりを狙った連続殺人事件が起こる。警察の厳戒体制に迷惑した犯罪組織は、独自に犯人捜しに乗り出す。ラングとその妻のハルボウが「最もいまわしい犯罪は何か」と考え脚本を書いたサスペンススリラーの傑作。撮影はムルナウの『吸血鬼ノスフェラトゥ』『フォーゲルエート城』のヴァグナー。
 
  
 
「暗黒街の弾痕」You Only Live Once
(アメリカ/1937/86分/35mm)
監督:フリッツ・ラング 
脚本:ジーン・タウン、グレアム・ベイカー
撮影:レオン・シャムロイ
美術:アレクサンダー・トルボフ
音楽:アルフレッド・ニューマン
出演:ヘンリー・フォンダ、シルヴィア・シドニー、ウィリアム・ガーガン
 
前科を持つ青年が、無実の罪で銀行強盗犯にされ投獄される。脱獄を図るも、その最中に本当に殺人を犯してしまう。行き場の無い彼とその愛する妻との絶望的な逃避行。『夜の人々』『俺たちに明日はない』に先んじて作られた“ボニー&クライドもの”の名作。
 
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2本目は200円引き


山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉3 木村威夫
2010年6月26日(土)
2008年に「山根貞男連続講座〈加藤泰の世界〉」と題し、ほぼ月に一回開催した人気企画が、テーマを「活劇」に広げ再開しました。
『活劇の行方』をはじめとする著書で、一貫して活劇の観点から映画を論じてきた日本映画批評を代表する山根貞男による「活劇論」です。
この講座では、毎回講義に入る前に関連する作品を参考上映します。
  
参考上映作品 [関連企画] [木村威夫追悼上映]
「ツィゴイネルワイゼン」「夢幻彷徨」
 

山根貞男(映画評論家)
1939年大阪生まれ。映画批評誌「シネマ69」(1969-71)を編集・発行。蓮實重彦とともに海外の映画祭で加藤泰、鈴木清順、成瀬巳喜男の特集に関わる。1986年より始めた「キネマ旬報」での日本映画時評は現在も連載中である。主な著書に『映画狩り』、『映画の貌』、『マキノ雅弘―映画という祭り―』などがあり、『映画渡世』(山田宏一との共編)、『加藤泰、映画を語る』(安井喜雄との共編)、『成瀬巳喜男の世界へ』(蓮實重彦との共著編)などのインタビューや編著が多数ある。

 
 

《料金》

会員1800円 学生会員・シニア会員1500円
*招待券の使用不可
*会員のみご予約受付中


木村威夫追悼上映 幻想とリアリズム
2010年6月25日(金)〜27日(日)

今年3月21日、91歳で逝去された木村威夫監督を追悼します。
80代半ばで初監督した短篇『夢幻彷徨』、遺作となった『黄金花』のほか、美術監督作品として鈴木清順監督とのコンビ作『ツィゴイネルワイゼン』を上映します。
 
「山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉3」でも美術監督・木村威夫を取り上げ、その美術世界が生み出す活劇性を論じていただきます。
 
[関連企画] [山根貞男 連続講座〈新編:活劇の行方〉3](6月26日)
 

木村威夫(きむら・たけお)
1918年生まれ。日本を代表する美術監督の一人。美術監督作品に、『警察日記』(1955/久松静児)、『赤い波止場』(1958/舛田利雄)、『東京流れ者』(1966/鈴木清順)、『ツィゴイネルワイゼン』(1980)、『夢見るように眠りたい』(1986/林海象)、『深い河』(1995/熊井啓)、『父と暮らせば』(2004/黒木和雄)など多数。
2004年に、80代半ばにして短篇映画『夢幻彷徨』を初監督。『街』(2004)、『OLD SALMON 海をみつめて過ぎた時間』(2006)、『馬頭琴夜想曲』(2007)の後、2008年、初の劇場長篇『夢のまにまに』を手がけ、長篇2作目の『黄金花』が遺作となった。

「黄金花(おうごんか) ―秘すれば花、死すれば蝶」
(2009/79分/35mm)
製作:プロジェクト ラム、エアプレーン レーベル、太秦
配給・宣伝:太秦
原案・脚本・監督:木村威夫
プロデューサー・音楽:川端潤 協力プロデューサー:林海象
撮影監督:小川真司  録音:浦田和治  整音:久保田幸雄
美術:丸山裕司  装飾:嵩村裕司  編集:白尾一博
出演:原田芳雄、松坂慶子、川津祐介、松原智恵子、三條美紀、野呂圭介、絵沢萠子、飯島大介、牧口元美、真実一路、中沢青六、河村博重(能)、麿赤兒、長門裕之、あがた森魚
 
植物学者の牧草太郎博士はじめ、物理学者、役者、自称映画女優、バーのママ、板前、質屋、などなど、多くの孤独な老人が身を寄せている老人ホーム「浴陽荘」。
虚と実、夢と現実、日常と非日常、生と死、相反するすべてのものを包み込み、傷つき苦しみながらも、生きることへの限りない想いが浮き彫りになってくる…。
植物学者・牧博士の時空を超えた魂の物語=ファンタジー。
 
「途方もなく面白い。いや、正確には、デタラメかつリアルな時空を生み出す奔放な造形力の途轍もなさが面白い。鈴木清順の映画の数々で摩訶不思議な美術をくりひろげた木村威夫だからこその仕業であろう。」(山根貞男/「キネマ旬報」2010年1月下旬号「日本映画時評251」より)
 
 
「夢幻彷徨 MUGEN-SASURAI」
(2004/35分/DVCAM)
製作・配給:ワイズ出版
監督・原案・美術思考:木村威夫 脚本:山田勇男
撮影監督・編集:白尾一博 企画・製作:岡田博
出演:銀座吟八、藤野羽衣子、秋桜子、飯島大介、石川真希、佐野史郎
 
木村威夫が85歳にして初めて監督に挑んだ短篇作品。戦後の日本を舞台に、2人の男女の魂の彷徨を、セリフを排し、映像と音楽だけで鮮烈に描く。自らの戦争体験を元にしながらも、自由なイメージの連鎖として結実したこの作品には木村美術が凝縮されている。
25日・27日[併映:木村威夫美術監督作品(覆面上映)]
 
 
「ツィゴイネルワイゼン」
(1980/144分/35mm)
製作:シネマ・プラセット 配給:リトルモア
製作:荒戸源次郎 監督:鈴木清順
原作:内田百閒 脚本:田中陽造
撮影:永塚一栄 音楽:河内紀
美術:木村威夫、多田佳人 照明:大西美津男
出演:原田芳雄、大谷直子、大楠道代、藤田敏八、麿赤児、樹木希林
 
1980年、東京タワーの下に銀色のドーム型テントの移動映画館「シネマ・プラセット」を建て、そこで上映されロングラン・ヒットした伝説的作品で、仕掛け人は『赤目四十八瀧心中未遂』『人間失格』の監督、荒戸源次郎。内田百閒の「サラサーテの盤」ほかいくつかの短編小説をもとに繰り広げられる、鈴木清順監督の斬新かつ大胆な幻想譚。
   
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き


タカシ時間 vol.5
7月9日(金)・10日(土) 両日18:45

 
『西天下茶屋おおいし荘』
(1998/37分)
1999年の山形国際ドキュメンタリー映画祭「日本パノラマ」部門で上映された作品。
 
『2008年夏−秋』 (2008/38分)
 
 
 
2005年12月から東京茅場町のギャラリーマキでスタートした新作上映会「季刊タカシ」は、年3、4回のペースで現在も続いています。神戸の「タカシ時間」では、映像作家・崟利子がこれまで作ってきた作品を新たな組み合わせでごらんいただきます。
 
無名の「風景」に名を与える~映像作家 崟利子についての試論

《会費》1500円

 協力:ギャラリーマキ


ジョン・フォード連続上映 その4 30年代のフォード
2010年7月9日(金)〜11日(日)
『駅馬車』(1939)、『荒野の決闘』(1946)、『黄色いリボン』(1951)などで知られる大映画監督ジョン・フォード。彼の代表作のほか、知られざる傑作も取りまぜ連続上映していく。
第4回目は、フォードが30年代に手がけたバラエティに富んだ3作品。
 
「肉弾鬼中隊」The Lost Patrol
(アメリカ/1934/66分/35mm)
監督:ジョン・フォード
原作:フィリップ・マクドナルド
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ハロルド・ウェンストロム
音楽:マックス・スタイナー
出演:ヴィクター・マクラグレン、ボリス・カーロフ、ウォーレス・フォード、レジナルド・デニー
 
第一次大戦中のメソポタミア砂漠で、姿の見えないアラブ軍に追い詰められる英国軍中隊。限られた空間と登場人物で作られたフォード初めての戦争映画。一人また一人と味方が銃弾にたおれていく中で極限状態に陥る兵士たちの心理を描き出す。『フランケンシュタイン』(1931)のボリス・カーロフが伍長を演じている。
 
 
「俺は善人だ」The Whole Town’s Talking
(アメリカ/1935/95分/16mm)
監督:ジョン・フォード
原作:W・R・バーネット
脚本:ジョー・スワーリング、ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・オーガスト
出演:エドワード・G・ロビンソン、ジーン・アーサー、ウォーレス・フォード、アーサー・ホール、エドワード・ブロフィ
 
小心者のまじめな会社員が、脱獄中のギャングに瓜二つなことから巻き起こる騒動を軽妙に描く。エドワード・G・ロビンソンの一人二役で、主人公が心を寄せる女性同僚にジーン・アーサー。
 
 
「スコットランドのメアリー女王」Mary of Scotland
(アメリカ/1936/123分/16mm)
監督:ジョン・フォード
原作:マックスウェル・アンダーソン
脚本:ダドリー・ニコルズ
撮影:ジョセフ・オーガスト
音楽:マックス・スタイナー
出演:キャサリン・ヘプバーン、フレデリック・マーチ、フローレンス・エルドリッジ、ダグラス・ウォルトン、ジョン・キャラダイン
 
陰謀の渦巻く16世紀。スコットランドの女王メアリーの波乱の人生を描いた歴史劇。主人公メアリーにキャサリン・ヘップバーン、彼女の最後の恋人ボスウェル伯にF・マーチ、イングランド女王エリザベス1世をF・エルドリッジという豪華キャスト。
 
協力:プラネットプラスワン
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2本目は200円引き


[貸館]ホラー映画向上委員会 MebiusRing 上映会
2010年7月24日(土)13:30 / 14:40 / 15:50 (各回に監督挨拶)

バイオレンス! ホラー! スプラッタ!
自主制作アニメ作家 長尾武奈の超過激残酷クレイアニメ作品を一挙上映!!

「ていえぬシアター in 神戸」(40分)
制作:長尾武奈
DigiCon6 優秀賞&楳図かずお特別賞受賞、学生残酷映画祭2009 審査委員特別賞、その他)
長尾監督制作による『チェーンソーメイド』を始めとした、残酷で超キュートなクレイアニメを他数本上映致します。
 
主催・お問い合せ:ホラー映画向上委員会 MebiusRing
 

料金 一律700円


日本映画名画鑑賞会
2010年7月25日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


日本映画名画鑑賞会
2010年8月1日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


竹中労の仕事 パート1
まぼろしのチャンバラ・グラフィティ『大殺陣 にっぽん剣優列伝』発掘と「日本映画縦断」再考
2010年8月27日(金)〜29日(日)
長らく見ることができず「幻の映画」といわれた『大殺陣 にっぽん剣優列伝』。元祖ルポライター・竹中労の代表作のひとつ「日本映画縦断」から生まれた、その映像版だが、竹中が「神様」と言ったアラカンこと嵐寛寿郎から「怪優」団徳麿まで登場する、ザッツ「チャンバラ・エンタティメント」。
今年、プロデューサーである伊藤公一氏が永眠され、故人も強く望んでおられた再上映の為、フィルムが竹中の弟子・鈴木義昭に託された。この特集は、その偉業を偲ぶとともに、竹中労の仕事の再発見を意図したものである。
 竹中労
  
 

8月28日(土)トーク《並木鏡太郎とマキノ映画》
山際永三(映画監督)×鈴木義昭(ルポライター)

山際永三監督は新東宝撮影所を経て佐川プロ製作・大宝配給『狂熱の果て』で監督デビュー。『チャコちゃん』『コメットさん』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』などの作品を監督し、テレビの黄金時代に活躍した。粕三平らと第一次「映画批評」を編集、実験映画『炎 1960〜1970』の作家としても知られ、石井輝男プロダクションを率いるなど多才で知識と経験豊富な監督である。並木鏡太郎監督の遺稿となった自伝的小説「京都花園天授ヶ丘 マキノ撮影所ものがたり」(愛媛新聞社)の出版に尽力、また遺品を立命館大学アートリサーチセンターに寄贈するなど並木監督との関わりが深い。
 
参考上映「夜討曽我」 (1929/24分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:並木鏡太郎 出演:沢田敬之助、河津清三郎 
並木鏡太郎監督の処女作で、曽我十郎祐成と五郎時致の兄弟が父の仇を討つ有名な曾我物語の映画化。加藤泰が「伊藤大輔 詩と真実」のあとがきで伊藤全作品の写真収集を評価した故・赤井祐男氏が古道具屋の店頭で発見した貴重なフィルムで、赤井氏は並木監督全作品の写真・解説付きの自作アルバムをつくり監督に進呈したことを付記したい。

8月29日(日)トーク《団徳麿と東映京都》
宮崎博(元東映俳優、「チャンバラ人生」著者)×鈴木義昭(ルポライター)

元東映京都撮影所専属俳優の宮崎博は、映画の古都・京都と時代劇の草創期・黄金時代を語り、また撮影所の合理化を語り、その復興への情熱を語る「チャンバラ人生」(白地社)の著者。片岡千恵蔵門下だった宮崎と竹中労の交流は、1966年8月、竹中が東映京都撮影所で争議中の東映俳優労働組合を支援したことに始まる。宮崎は、多くの映画に助演する一方で、戦後時代劇の黄金期でありながら矛盾に苦悩した撮影所にあって、「東俳労」委員長として活躍した。さらには、映画『祇園祭』をめぐっては伊藤大輔監督、竹中らとともに初期の制作運動の中心にあった。竹中の映画論の記念碑的連載「日本映画縦断」では、当時京都の大部屋にあった怪優・団徳麿、マキノゆかりの岡島艶子らを竹中に紹介するなど、強力なブレーンであった。「日本映画縦断」の舞台裏と、その意味するところを知る数少ない映画人でもある。
 
参考上映「野情」 (1928/31分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:後藤秋声 出演:団徳麿、原駒子
悪の数々で捕り手に追われる三鬼平九郎(団徳麿)とその情婦・乙姫お新(原駒子)であったが、お新は世間並みの真面目な所帯苦労がしたかった。そこにお新を慕う男が現れ、平九郎の元を去るのだった。このフィルムは数少ない現存する団徳麿主演の無声映画で『銀蛇』と改題された時代劇映画である。独自の扮装術で様々な役柄を演じた怪優ダントクこと団徳麿は、竹中労の名著「日本映画縦断」のインタビューでその存在を再認識させた。東亜、帝キネ、月形プロ、右太プロ、千恵プロ、新興、マキノトーキー、日活、松竹、東横、東映と渡り歩きピンク映画にも出演するなど、日本映画史を体現した団徳麿の発言から学ぶべきことは多い。

「江戸怪賊伝 影法師」
(1925/80分[16fps]/サイレント/16mm)
指揮:マキノ省三 監督:二川文太郎 原作・脚色:寿々喜多呂九平
出演:阪東妻三郎、高木新平、牧野輝子
それは、バンツマから始まった! 傾向と異端へと疾走する「日本映画縦断」の発端には、バンツマがいる…。阪東妻三郎が演じる「影法師」と呼ばれる義賊が悪を倒し弱きを助ける物語を軸に、影法師を慕う女たち、偽の影法師を登場させるなど、省三、二川、寿々喜多コンビの力量を垣間見ることができる。16mmプリントの欠落部を9.5mmプリントから補足した版を上映。
 
「右門一番手柄 南蛮幽霊」
(1929/99分[16fps]/サイレント/16mm)
監督:橋本松男 脚色:山中貞雄 原作:佐々木味津三
出演:嵐寛寿郎、頭山桂之助、尾上紋弥
竹中労は言った、「アラカンより他に神はなし」。「聞書アラカン一代 鞍馬天狗のおじさんは」の著者・竹中労と、アラカンこと嵐寛寿郎の縁は深い。アラカンなくして、元祖ルポライターの青春もなかったに違いない。嵐寛寿郎が演じるご存知むっつり右門とおしゃべり伝六、あばたの敬四郎らが繰り広げる右門捕物帖の一篇。殺人と三百両盗難という謎だらけの事件を右門の見事な推理で解決する。山中貞雄が脚本を担当。
  
「欲情の河」
(1967/64分/16mm)プロダクション鷹
監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠 編集:沢本完 音楽:河原淳
出演:水城りか、上田明美、佐藤洋、団徳麿、湊武雄
マダガスカルから航海を終え神戸港に帰ってきた船員と高級娼婦との出会いと恋愛を軸に、さまざまな男女関係を絡めて描いたピンク映画。神戸大丸、三宮神社、花時計、六甲山、神戸の夜景、さんちかタウンのネオンなどに加え、大阪城、奈良公園、ドリームランド、平等院と関西ロケを多用している。団徳麿は、娼婦の高校時代の回想シーンに父親役で登場、子供想いの好人物を演じている。やがては東京進出を計る木俣堯喬監督のプロ鷹、関西時代の現存作品。水城りかは、当時のプロ鷹専属女優。
   
「狂った牝猫」
(1968/63分/16mm)プロダクション鷹
監督:木俣堯喬 撮影:荒井誠
出演:水城りか、団徳麿、上田明美、佐藤洋、湊武雄
団徳麿が主演の「ピンク映画」。香港、大阪を回って名古屋空港に到着したミス・パシフィックの山野夕子は、製糸会社の新作発表会に出演するため会場に急いでいた。到着寸前に見知らぬ男に拉致され、夕子の出ない発表会は中止になった。実はその製糸会社の専務(団徳麿)が夕子のために購入しておいたマンションの一室に拉致したのだった。専務と夕子は肉体関係を結びながらライバル会社に身売りするなどの悪行を企むのだが…。関西拠点の独立プロ・プロ鷹のピンク映画に出演したといわれる団徳麿だが、現存する主演作品のフィルムは極めて貴重である。
 
「大殺陣 にっぽん剣優列伝」
(1976/75分/16mm)羅針盤
製作:伊藤公一 監督・脚本・原作:夢野京太郎
撮影・編集:井上修 ナレーション:西村晃
竹中労(夢野京太郎)が情熱を傾けた「浪人街」リメイクの予告篇的意味合いで、映像ルポの一環として作ったチャンバラ映画のアンソロジー。大正から昭和初期にかけて隆盛したチャンバラ活動写真36本の名場面を集め、夢野京太郎の斬新な脚本によって新たな生命が吹き込まれた。銀幕の剣豪たちとともに、マキノ映画を始め映画黄金時代の青春が甦る。だが、76年に公開されて以後、さまざまな理由で忘れられた幻の映画となった。この映画のプロデューサー・伊藤公一は、週刊誌時代から竹中の同志だったが、今年2月1日に永眠。今回の「追悼上映」が浮上した。撮影・編集の井上修はNDU(日本ドキュメンタリスト・ユニオン)のスタッフで、近年も台湾原住民の靖国合祀問題を追いかけた『出草之歌 台湾原住民の吶喊 背山一戦』で健在ぶりを示した。『浪人街』リメイクで竹中と協働中のマキノ雅弘と稲垣浩が監修に当たり、ナレーションには「二代目水戸黄門」、昭和の名優・西村晃が名調子を披露している。
   
「山上伊太郎ノート」
(1978/50分/8mm)
監督:栄華京(河野真吾) 撮影:木内克幸
不世出の天才シナリオライター・山上伊太郎の生涯を追い続けた竹中労。山上の業績を讃えて、またフィリッピン戦線に殉じた山上を偲んで、京都妙心寺に「伊太郎地蔵」を建立した。1977年から毎年「伊太郎忌」を開き、多くの映画人が山上に想いを馳せたが、このフィルムは「第2回伊太郎忌」の記録。竹中労、滝沢一、岡島艶子、関本郁夫などゆかりの映画人が登場する。白井佳夫編集長時代のキネマ旬報に竹中が連載した「日本映画縦断」に触発された若者たちが結成したグループ「なには映画村」。主に十三の博愛社で定期的に時代劇映画を上映するなど意欲的で、後のシナリオライター西岡琢也もメンバーだった。その「なには映画村」が奔走した「伊太郎忌」は現在まで続いている。
 
「わが映画人生 並木鏡太郎監督」
(1990/97分/ビデオ)日本映画監督協会
監督:山際永三
日本映画監督協会が大切な日本映画の「財産」を記録し伝える目的で製作し、映画監督が個人史を語る『わが映画人生』。1988年、沢島忠監督による松田定次監督へのインタビューから始まり、現在も年間6本のペースで撮影が進められている。マキノから新東宝へ時代劇を中心にした娯楽映画一筋に生きた並木鏡太郎監督に、新東宝時代に助監督に付いた経験のある山際永三監督が聞き役を務めた貴重な証言映像。
 
 
『大殺陣・にっぽん剣優列伝』と伊藤公一さんのこと
 新宿の小さなスペースだった。紀伊國屋本店の裏に今もある「アドホックビル」というビルの中にあった画廊兼用の会場は、今はもうない。いつ頃まであったかも、今は記憶にない。そこで『大殺陣・にっぽん剣優列伝』という映画の有料試写会がおこなわれたことだけは、確かだ。五十人位はいただろうか。
 満員だった。この映画が『浪人街』リメークの予告篇になるはずだったのだが…、と竹中が語った。前年から「キネマ旬報」誌上で、熱気を帯びていた『浪人街』リメーク運動、その中心的なツールとして、この映画が製作されたことを忘れることはできないだろう。「年表」を見れば、この映画が完成するのとほぼ時を同じくして、『鞍馬天狗のおじさんは/聞書アラカン一代』『日本映画縦断③山上伊太郎の世界』が上梓されている。その少し前には、深作欣二らが書いた「浪人街・ぎんぎら決闘録」が気に入らないと、自ら書いた「浪人街・天明餓鬼草紙」の脚本を、竹中は仕上げている。風雲急を告げるように、この『大殺陣』が世に送り出された。
   鈴木義昭(ルポライター)
全文を読む
    

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 会員学生・シニア900円

《割引》
2本目は200円引き

 
[関連企画] 「竹中労の仕事 パート2」は来年以降に予定しています。


[貸館]SANAフィルムフェスタ「マスメディアが伝えないイラクがここにある」
2010年9月5日(日)14:00〜
 「SANA(光)衛星テレビ」は、世界から募金が集められ、イラクの市民メディアとして2007年4月に誕生しました。自由平等で平和なイラクの再建をめざす「イラク自由会議」が番組制作・運営を行い、民衆の文化、労働、教育、女性、子どもなどをテーマにニュース映像やドキュメンタリー番組などを放送しています。
 「イラク平和テレビ局inJAPAN」は、その番組を日本で観られるように翻訳・吹き替えしインターネット配信をしていますが、より多くの方々ご覧いただく機会として「SANAフィルムフェスタ」を開催しています。
 マスメディアが伝えないイラクを知り、戦争のない社会をつくるためのオリジナルな映像を発信し、交流する場です。
 
 
主催:イラク平和テレビ局 in Japan・兵庫
  (連絡先)黒川 078-784-2430  安東 090-3828-9579
   

《料金》大人1000円 シルバー/学生/障がい者500円


タカシ時間 vol.6
9月4日(土)・5日(日) 両日18:30

 
 
『春松さんの話』 (2010/45分)
 
『2007年夏−秋』 (2007/25分)
 
2005年12月から東京茅場町のギャラリーマキでスタートした新作上映会「季刊タカシ」は、年3、4回のペースで現在も続いています。神戸の「タカシ時間」では、映像作家・崟利子がこれまで作ってきた作品を新たな組み合わせでごらんいただきます。
 
無名の「風景」に名を与える~映像作家 崟利子についての試論

《会費》1500円

 協力:ギャラリーマキ


青山真治監督最新短篇『だうん』関西初上映
+特別対談 青山真治 × 丹生谷貴志

2010年9月11日(土)
 
16:00 上映『だうん』その他1本
17:00 対談 青山真治 × 丹生谷貴志(終了予定18:30)
  
上映作品
「だうん」(2010/3分20秒)
監督:青山真治 撮影:今井孝博
今年6月、ショートショートフィルムフェスティバルのミュージックショート部門で特別上映された最新作。
【青山監督のことば】構想半月、来日中だったアルノー・デプレシャン監督の宿泊先にお邪魔して撮影したのを皮切りに四日の撮影、三日の編集+小直しで完成した。ここへ来て私も「楽に弾く」というハリー細野氏のニューオリンズ体験に近づこうとする意志が、というかそれはそもそもミーターズのポーターさんも言ってたんだが、ともあれそっちへ傾いてきたのだった。そのひとつの成果。
 

青山真治
1964年、北九州市生まれ。立教大学時代に映画研究会に所属。大学卒業後、助監督を経て、95年オリジナルビデオ『教科書にないッ!』を初監督。96年『Helpless』で劇場映画デビュー。2000年、カンヌ国際映画祭に出品した『EUREKA』が国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞。その後の主な作品に、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(2005)、『サッド ヴァケイション』(2007)、フランスで制作した中篇「Le Petit Chaperon Rouge」(2008)などがある。
小説家としても活躍し、自作のノベライズ小説「EUREKA」で三島由紀夫賞を受賞。最新映画批評集として「シネマ21」(2010)がある。
 
丹生谷貴志
思想、映画、文学と幅広い分野で批評活動を行う。神戸市外国語大学教授。著書に「死体は窓から投げ捨てよ」(96)、「ドゥルーズ・映画・フーコー」 (96)、「家事と城砦」(2001)、「三島由紀夫とフーコー“不在”の思考」(2004)などがあり、2009年5月号の雑誌「ユリイカ 特集クリント・イーストウッド」には論考「クリント・イーストウッドを巡る二、三の覚書」を寄稿している。

 

《料金》

会員1800円 学生会員・シニア会員1500円
*非会員は、当日1日会員(100円)制度をご利用いただけます(予約は不可)。
*招待券の使用不可
*会員のみご予約受付中


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。