プログラムPROGRAM

年別アーカイブ: 2010

第2回神戸ドキュメンタリー映画祭
 記録映画に生きる 土本典昭の軌跡

2010年9月18日(土)〜26日(日)

 「水俣」シリーズなどを通して世界に大きな衝撃を与えた、日本ドキュメンタリー界を代表する監督・土本典昭(1928-2008)。第2回神戸ドキュメンタリー映画祭では、土本典昭の初期作品から晩年にいたる24作品を上映し、偉大なる映画作家の歩みを回顧します。
あわせて、土本と同時代の仲間たちを招いたトークイベント、ゆかりの映画人を招いた座談会も開き、ゲストが関係する作品を参考上映します。
 いま生きているものの記録として映画を撮り続けた土本は「いつもそこには考えることの快楽があった」と述べています。現実を見て、魅了されて、考え続けた土本典昭の作品は、いつまでも生き続けており、あらゆるものに開かれて、われわれを魅了し続けています。
 

19日(日)ゲストトーク
大津幸四郎
(監督/撮影監督)、小林茂(監督/撮影監督) 聞き手:山根貞男(映画評論家)
 
20日(月・祝)ゲストトーク
松本俊夫
(映像作家) 聞き手:山根貞男
 
25日(土)座談会
土本基子
(土本典昭夫人)、伏屋博雄(プロデューサー)、水野祥子(映画研究者)、安井喜雄(神戸映画資料館館長)
参考上映「天皇即位の日の記録」(1990/約10分/16mm)
 
《料金》無料(要・当日の上映会チケット)

カフェ・ロビースペース
2009年、東京国立近代美術館フィルムセンター展示室で開催された展覧会「ドキュメンタリー作家 土本典昭」の記録映像を、神戸ドキュメンタリー映画祭会期中ご覧いただけます。
制作:映画同人シネ・アソシエ

9月18日(土)13:00
「ドキュメント路上」
(1964/54分/35mm/FC所蔵ニュープリント)
東洋シネマ 撮影:鈴木達夫
高度経済成長の只中、都市整備の工事が急ピッチで進んでいた東京は日々交通戦争の状態であった。タクシー運転手を主人公に、違反や危険なしには働けない労働環境、そして交通事故が必然的に起こる実情を描き出す。警視庁の交通PR映画として作られたが、「映画青年の遊びの映画」と一蹴され、活用されずお蔵入りした作品。
 
9月18日(土)14:15
「留学生チュア スイ リン」
(1965/51分/16mm)
藤プロ 撮影:瀬川順一
文部省国費留学生として千葉大に学ぶチュア・スイ・リン君は、本国の英領マラヤがマレーシア連邦として独立することを知り、イギリスの特殊権益が続く限り本当の独立はないとして抗議の声を上げていた。本国は即刻チュア君に帰国命令を出し、文部省も彼の国費留学生としての身分を剥奪、大学も彼を除籍にした。帰国すれば投獄となるチュア君は、抗議行動と裁判に起ち上がる。
 
9月18日(土)15:30 / 24日(金)13:00
「パルチザン前史」
(1969/120分/16mm)
小川プロダクション 撮影:大津幸四郎、一之瀬正史
関西小川プロが製作参加した作品。京都大学全共闘のノンセクト学生を組織する京都大学助手の滝田修の革命運動を追う。軍事訓練の様子のほか、家庭を持ち、予備校の教壇に立ちながら大学解体を唱えることの矛盾について率直に語る滝田の姿。60年代末の学生運動の空気を伝える歴史的作品。
 
9月19日(日)13:00 / 25日(土)16:20
「水俣 患者さんとその世界」
(1971/完全版167分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
東プロダクション 撮影:大津幸四郎
1968年、政府は水俣病を公害病として認定し、原因はチッソの工場廃水との見解を示した。チッソを相手に裁判を起した29世帯を中心に潜在患者の発掘の過程までを描いた記録映画の記念碑的名作。大阪でのチッソ株主総会における患者の怒りの爆発で、この映画は劇的なピークをむかえる。土本監督の水俣第1作で、これを契機に水俣病が世界に知られることになった。
 
9月20日(月・祝)16:20
「水俣一揆 一生を問う人々」
(1973/108分/16mm)
青林舎 撮影:大津幸四郎、高岩仁
1973年3月20日、熊本地裁は患者の訴えを認め、チッソに慰謝料の支払いを命じた。その後、ひきつづきチッソ本社で直接交渉がくりひろげられる。「死ぬまで面倒をみてくれろ」と誓約書への署名を求める患者とつっぱねる会社側の対立の様子が、初めて同時録音で記録された。
 
9月22日(水)13:00
「医学としての水俣病 第一部 資料・証言篇」
(1974/82分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
1956年、50名余の「奇病」患者発見から始まる医学者チームの研究と記録をたどる3部作の第1部。水俣病の原因を膨大な研究映像を用いて病理学的に解明していく。さらに、水俣病が「社会病」でもあることを患者の医療補償を求める闘いの歴史によって示し、今日のヘドロ未処理の現状までを描いている。
  
9月22日(水)14:40
「医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇」
(1974/103分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
有機水銀がいかに人体に侵入するかを、病理解剖などを用いて示す。長年、新潟水俣病を追跡してきた新潟大学の調査が熊本の水俣病研究を補強。不知火海漁民の食生活に対する警告を発しつつ、水俣病患者認定のための患者負担など、医学のかかえる矛盾を明らかにする。
  
9月22日(水)16:40
「医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇」
(1975/91分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
現地での数十年間の臨床体験をもつ精神神経学者の活動と意見を軸に、今日の水俣病の臨床上の問題点と疫学的側面が描かれる。ここでは医学的判断がつかないとされる例、水俣病の認定を却下された例を取り上げ、水俣病研究が第二段階にさしかかったことを示唆する。
  
9月21日(火)13:00
「不知火海」
(1975/153分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:大津幸四郎
水俣が悲劇の土地として滅びてはならない、「ここで生き続ける人がある限り、ここは甦るのだ」との思いで制作された作品。「脳を手術したら治らないか」と初めて治療の可能性を尋ねる胎児性の少女に答えることのできない医師。水俣湾の対岸の島には、いまだ救済の手が届かない漁師たちの暮らしがあった。
 
9月20日(月・祝)13:00
「しばられた手の祈り」
(1977/40分/スライド)火種プロダクション
共同構成:前田勝弘、小池征人
自主制作のための火種工房を主宰する富山妙子は、新しい芸術運動として、詩と絵と音楽によるスライドを製作。これは政治犯釈放を訴えるために、金芝河の原作をもとに土本監督が構成したもの。音楽を高橋悠治が担当。
 
  
 
9月21日(火)16:00
「わが街わが青春 石川さゆり水俣熱唱」
(1978/43分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:一之瀬正史
水俣病の公式発見から20年、胎児性水俣病の患者たちも20歳を迎えた。「何かデッカイことをやりたい!」一人の青年が石川さゆりショーを考えついた。身体の痛みをひと時忘れ、一人前の大人として仕事を果たそうと奮闘する若い患者たち。
  
9月23日(木・祝)13:00
「偲ぶ・中野重治 葬儀・告別式の記録 1979年9月8日」
(1979/55分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
中野重治を偲ぶ映画人有志の会
プロレタリア文学作家、中野重治の葬儀と告別式の記録。知人、友人が思い出を語り、会葬者の流れに代表作「雨の降る品川駅」「わたしは嘆かずにはいられない」の朗読が重ねられる。
 
9月26日(日)15:20
「海とお月さまたち」
(1980/50分/16mm)
日本記録映画研究所 撮影:瀬川順一
海の潮の流れを支配する月と、その潮の流れをよんで漁をする漁師たち、そして不知火海に生きる様々な魚たちを詩的に描いた児童向き映像ファンタジー。
 
 
    
9月21日(火)17:00
「水俣の図 物語」
(1981/111分/16mm)
青林舎 撮影:瀬川順一、一之瀬正史
丸木位里、丸木俊夫妻が、巨大壁画「水俣の図」の制作に取り組む。彼らを絵に向かわせていく不知火海の美しさと、裏腹な人間の受難の問題。瀬川順一のキャメラ、武満徹の音楽、石牟礼道子による詩が「絵の記録映画」を構成する。
  
9月23日(木・祝)14:10
「原発切抜帖」
(1982/45分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:渡辺重治
世界唯一の原爆被爆体験国から原子力大国へかけ進む日本の戦後史を、新聞記事の早めくりで一息に見直す試み。主役は土本による新聞記事のスクラップブックで、小沢昭一が軽妙なナレーションを付けている。
 
9月23日(木・祝)15:10
「海盗り 下北半島・浜関根」
(1984/103分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
青林舎 撮影:清水良雄
横なぐりのヤマセふぶく下北半島の小さな漁村、浜関根。1981年、ここに原子力船「むつ」の新母港を建設するという話がにわかに降ってわいた。この映画は浜関根の漁業権をめぐる攻防を漁民の側から見た記録である。プルトニウム半島化する下北半島での漁民の「海盗リ」に対する死闘を描く。
 
9月23日(木・祝)17:10
「はじけ鳳仙花 わが筑豊わが朝鮮」
(1984/48分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
幻燈社 撮影:清水良雄
戦時下の旧満州で過ごした植民地体験から、加害者としての日本人を描くことを模索する画家・富山妙子。彼女の作品に高橋悠治の音楽、李礼仙の語りが加わり、劇中劇のように身の上ばなし「身世打鈴(シンセタリョン)」が展開する。
  
9月26日(日)16:30
「ひろしまを見たひと 原爆の図丸木美術館」
(1985/25分/スライド)
原爆の図丸木美術館、青林舎 撮影:本橋成一
丸木位里、丸木俊夫妻の共同制作の原点は、1945年8月6日に原爆が落とされた広島の惨状である。この悲劇を繰り返さないよう平和への祈りを込めて描かれたのが、超大作「原爆の図」。夫妻の40年に及ぶ共同制作の足跡をたどり、作品を解説したスライド作品。
 
9月20日(月・祝)13:55 [参考上映「銀輪」と2本立て]
「日本一ぶりの里訪問記」
(1986/27分/ビデオ)青林舎 撮影:清水良雄
日本一の養殖ぶりの産地、鹿児島県長島町・東町漁協のPR映画。限られた漁場、僻地・離島という条件の下、東町漁協は養殖ぶり日本最大の産地として成長した。沿岸漁業と養殖漁業の両立、網元制度の廃止、漁協中心の新しい協同性の確立など、その軌跡を探る。 
  
9月26日(日)13:00
「よみがえれカレーズ」
(1989/116分/16mm/FC所蔵ニュープリント)
記録社、シグロ 共同監督:熊谷博子、アブドゥル・ラティーフ 撮影:一之瀬正史 他
土本がアフガニスタンに取材した第1作。1988年5月15日のソ連軍撤退開始から同年12月までの約5ヶ月間、現地撮影が行われた。内戦の爪あとが残る中、帰国した難民、地下水脈 “カレーズ” を守る民衆らの姿を見つめる。
 
9月24日(金)15:20
「回想・川本輝夫 ミナマタ 井戸を掘ったひと」
(1999/42分/DVCAM)
土本典昭仕事部屋
長く水俣病運動の先頭に立ち、1999年12月に急逝した川本輝夫。その生前の姿を土本の水俣作品に見る。市会議員になって活動を続けたが、彼の「井戸を掘った者はおいてきぼりです」の言葉から運動の複雑さを浮かび上がらせる。追悼集会で上映された土本典昭による「私家版」ビデオである。
  
9月24日(金)16:20
「もうひとつのアフガニスタン カーブル日記1985年」
(2003/42分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ 撮影:高岩仁、一之瀬正史
1985年のアフガニスタン初訪問時に撮影された内戦下の首都カーブルが記録されている。新しい祝日・革命記念日の20万市民の素顔など「民主共和国」時代の日常を描く。
  
9月24日(金)17:20
「在りし日のカーブル博物館1988年」
(2003/32分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ 撮影:高岩仁、一之瀬正史
アフガニスタンの文化財は、1992年民主共和国の崩壊以後、その7割が破壊されたり、略奪されて海外に流出して失われた。しかし、カーブル博物館が1993年に破壊される前の88年、土本らは幸運にも代表的文化財を撮影していた。世界唯一の在りし日の博物館の記録である。『よみがえれカレーズ』の未使用ネガから復元し、将来のアフガニスタンの資料映像となるように「私家版」として完成させた。  
 
 
9月26日(日)17:15
「みなまた日記 甦える魂を訪ねて」
(2004/100分/DVCAM)
映画同人シネ・アソシエ
1996年「水俣・東京展」に掲げる水俣病犠牲者の遺影を集めるため、土本が約1年間水俣に滞在した時にビデオキャメラにおさめた素材を2004年にまとめた。撮影の数年後、改めて仮編集のままのビデオを見た土本がまず再発見したのは「“墓場”(埋立地)を『水俣病を記憶する場』(聖地)に作りかえていった」患者自らの働きかけだった。水俣最終作にして土本の遺作となった、水俣の甦りを訪ねる旅の記録。
 
   
参考上映
9月20日(月・祝)13:55
[「日本一ぶりの里訪問記」と2本立て]
「銀輪」
(1956/12分/35mm/FC所蔵ニュープリント)
新理研 監督:矢部正男、松本俊夫、樋口源一郎 撮影:荒木秀三郎
のちに実験映画作家として活躍する松本俊夫が中心になって制作した、日本自転車工業会の海外PR用映画。少年の自転車へのあこがれを幻想的に表現している。松本が前衛芸術グループの実験工房とともに構想をまとめ、武満徹が音楽を、円谷英二が特殊撮影を担当。幻の映画だったがフィルムセンターがオリジナルネガをもとにデジタル復元した。
参考上映
9月19日(日)17:30
「阿賀に生きる」
(1992/115分/16mm)
阿賀に生きる製作委員会 監督:佐藤真 撮影:小林茂
80年代の水俣を描いた『無辜なる海』(1983/香取直孝監督)のスタッフだった佐藤真が、水俣と同様の問題を抱える新潟県・阿賀野川に着目、川筋に生きる人々の暮らしや公害の事実を、3年にわたる長期滞在で撮影した作品。福祉ドキュメンタリーで知られ、作り手と被写体の人たちがともに考えながら映画をつくった柳澤壽男監督に師事した小林茂カメラマンの影響が強く感じられる。
  
参考上映
9月25日(土)13:00
「映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事」
(2006/94分/DVCAM)
ビジュアルトラックス 企画・製作: 伏屋博雄 監督:藤原敏史 撮影: 加藤孝信
これまでの作品のファイルや新聞切抜帖、スティンベック(フィルム編集机)やビデオ編集機の置かれた土本の仕事部屋。伏屋博雄、藤原敏史、石坂健治らは何度も仕事部屋を訪ね、土本が長年追い続けてきた「水俣」や『ある機関助士』『ドキュメント路上』『不知火海』など自作への思いを聞く。そこに各作品の名シーンを挿入し、土本作品初体験の観客にも理解しやすく構成されている。さらに、久しぶりに水俣へ出向いた土本の姿をカメラは追う。
 
参考上映
9月18日(土)17:50
「大野一雄 ひとりごとのように」
(2007/100分/DVCAM)
クエスト 監督・撮影:大津幸四郎
平野克己監督の『魂の風景・大野一雄の世界』(1991)で撮影を担当した大津幸四郎が、腰を打ち歩行不能になり、言葉も不自由になりながらも、100歳を超えてなお舞台に立ち続ける舞踏家・大野一雄の姿を描く。今年6月1日、惜しまれつつ103歳で亡くなった大野を偲ぶ上映でもある。
 
   

《料金》入れ替え制
1回券
一般:1200円 学生・シニア・障がい者:1000円
会員一般:1000円 会員学生・シニア・障がい者:900円

3回券(前売り)
2600円(非会員共通) 2300円(会員共通)

期間中フリーパス券(限定10枚/取扱は神戸映画資料館のみ)
*3×3.5cm程度の顔写真(モノクロコピー可)をご用意ください。
12000円(会員共通)

〈前売りチケットの取り扱い〉
神戸映画資料館、プラネット・プラス・ワン
 
*当日券、および整理券は、12:00からその日のすべての上映会分を販売、発行いたします。
*前売り3回券、フリーパス券、および招待券をお持ちの方は、受付にて整理券をお求めください。

主催:神戸プラネット(神戸映画資料館)
後援:長田区役所 
助成:しみん基金KOBE、アサヒビール芸術文化財団、芸術文化振興基金
協力:新長田まちづくり株式会社
上映素材・写真提供および協力:東京国立近代美術館フィルムセンター、シグロ、映画同人シネ・アソシエ、自由工房、アテネ・フランセ文化センター、火種プロダクション、東町漁業協同組合、モンタージュ、徳間書店、クエスト、大津幸四郎、伏屋博雄、「阿賀に生きる」製作委員会、小林茂、高岩純子


日本映画名画鑑賞会
2010年10月3日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


川本喜八郎追悼 『蓮如とその母』と人形アニメーション
2010年10月23日(土)・24日(日)
人形アニメーション作家、人形作家として知られる川本喜八郎さんが今年8月23日に85歳で逝去された。NHKで人形劇「三国志」の人形美術を担当。昨年8月には新長田恒例の三国志祭にゲストとして来られ、人形を持ち込んで講演やサイン会が行われた。その逝去を悼み、滋賀県の同和問題啓発映画として企画された長編人形アニメーション『蓮如とその母』を上映し、プロデューサーの安東民兒さんを迎えて川本アニメ製作のエピソードを聞く。川本氏が師事したチェコのアニメ作家、イジー・トルンカの作品や、持永只仁らがアメリカのテレビ放映用に作った作品を参考上映。
  
Aプログラム
「蓮如とその母」
(1981/92分/16mm)
監督:川本喜八郎 脚本:新藤兼人 原作:平井清隆 撮影:田村実
音楽:武満徹 プロデューサー:安東民兒
人形制作:川本喜八郎、佐藤三郎
アニメーション:川本喜八郎、峰岸裕和、大向とき子、田嶋冨美子、桂沢良弘
声の出演:大門正明、渡辺美佐子、池上季実子、三國連太郎、小沢昭一、泉ピン子、高松英朗 他
語り:小池朝雄
室町時代に浄土真宗の僧として、衰退していた本願寺を中興した蓮如の半生を描いた長編人形アニメ。自らの低い身分を思って、あえて寺に捨てることしかできなかった蓮如の母の愛についても描く。劇場では公開されず、永らく幻の映画であった。
 
 
Bプログラム3本立て
「草原の唄」
(チェコスロヴァキア/1949/21分/16mm/日本語字幕無し/モノクロ版)イジー・トルンカ
ジョン・フォード『駅馬車』のパロディ。駅馬車で移動中の若い女性が通りすがりのカウボーイに一目ぼれ。だが馬車はギャングに襲われ、女性もさらわれてしまう。崖っぷちでカウボーイとギャングの一騎討ちが始まる。
「手」
(チェコスロヴァキア/1965/18分/16mm)イジー・トルンカ
トルンカの遺作で、チェコの来るべき時代(「プラハの春」以降の暗黒の時代)を予言した作品として、高い評価を受けている。
「リトル・ドラマー・ボーイ」Little Drummer Boy
(日米合作/1968/30分/16mm/日本語字幕無し)
人形アニメーター:中村武雄、田畑博司 ナレーション:グリア・ガースン
製作:アーサー・ランキン・Jr.
クリスマス・シーズン向けにアメリカで放映されたテレビ作品で、エルサレムでの不思議な少年の物語。
Cプログラム
「マッド・モンスター・パーティ」Mad Monster Party
(日米合作/1966/90分/16mm/日本語字幕無し)
監督:ジュールス・バス アニマジック・テクニシャン:タッド・モチナガ(持永只仁)
人形アニメーター:太田サトル、中村武雄、真賀里文子、園哲太郎、見米豊
怪物島に住むフランケンシュタイン男爵の跡目相続パーティに招かれたドラキュラ、ミイラ男、透明人間、狼男、ノートルダムのせむし男、ジキル博士とハイド氏、アマゾンの半魚人たちが繰り広げるドタバタ。キングコングもどきも登場。
  
  

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2本目は200円引き


日本映画の再発見
2010年10月29日(金)〜31日(日)
これまで上映の機会に恵まれなかった時代ものをまとめて上映しようという試みである。懐かしのスターも多数出演。お楽しみに。
  
「襤褸(らんる)の旗」
(1974/115分/白黒/35mm)
製作:映画「襤褸の旗」製作委員会 
監督:吉村公三郎 脚本:宮本研 撮影:宮島義勇、関根重行
出演:三国連太郎、荒木道子、田村亮、志村喬
明治時代の栃木・群馬の渡良瀬川周辺で起きた足尾銅山の公害事件「足尾鉱毒事件」に材をとった作品。農民の苦しみを体感し公害と環境破壊に対して闘った田中正造代議士の半生を描いた本格的な劇映画で、実際に臭い土を食べるなど三国連太郎の熱演が語り草となっている。三里塚の農民と支援の労働者・学生が大挙出演協力したことでも知られる。公開は劇場でなくホールで行われたため、見た人も少ないだろう。今回、公開から三十有余年を経て、三里塚芝山連合空港反対同盟の協力で35ミリ版の上映が実現した。
 
  
「忍術千一夜」
(1939/50分/白黒/16mm)
製作:大都映画
監督:大伴竜三 脚本:三品文雄
出演:近衛十四郎、水川八重子、クモイ・サブロー、大岡怪童、高原富士子
解説:加藤柳美
 
珍しい大都映画で、若き近衛十四郎が活躍する時代劇コメディー。美男子侍・近衛十四郎とその友達の小太り侍が「忍術虎の巻」を手に入れ忍術遊びをしながら旅をする内、美人の姫・水川八重子がいる藩に流れつく。姫の縁談話がこじれ姫は誘拐されるが、二人の活躍で救出される。加藤柳美の解説が入ったプリントでの上映。
 
 
60年代・70年代テレビ時代劇2本立て
(16mm)
1960年代から70年代にかけて、フィルムで製作されたテレビ用時代劇を日替わりで上映。29(金)・30日(土)は60年代の作品、31日(日)は70年代のものを上映します。(番組の詳細は当日のお楽しみ。
*3日間とも別の作品を上映します。
  

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2本目は200円引き


タカシ時間 vol.7
11月6日(土)・7日(日) 両日18:30

『伊丹 2009年初夏−晩秋』
(2009/65分)
 
2005年12月から東京茅場町のギャラリーマキでスタートした新作上映会「季刊タカシ」は、年3、4回のペースで現在も続いています。神戸の「タカシ時間」では、映像作家・崟利子がこれまで作ってきた作品を新たな組み合わせでごらんいただきます。
 
今回上映する『伊丹 2009年初夏−晩秋』は、東京の「季刊タカシ」の10回目を記念して制作された、伊丹シリーズの集大成ともいえる長編です。
 
無名の「風景」に名を与える~映像作家 崟利子についての試論

《会費》1500円

 協力:ギャラリーマキ


日本映画名画鑑賞会
2010年11月7日(日)
上映作品は、当日のお楽しみとさせていただきますが、選りすぐりの傑作・名作を揃えて上映しますので、どうぞご期待ください。
 
(会員の皆様からの上映作品タイトルの問い合わせを、上映1週間前より電話・e-mailで受け付けます。会員番号をご確認の上、お問い合せください)

《料金》
一律500円


GEIDAI-ANIMATION 01 + in KOBE
11月13日(土)・14日(日)
2008年4月、東京藝術大学大学院映像研究科に新しく設置されたアニメーション専攻。その第一期生の修了制作作品を一挙上映します。
上映作品は素材、手法、ジャンルもそれぞれ異なり、実に多彩。鉛筆、油彩、水彩、クレヨン、粘土、人形、実写、CGなどさまざまな素材、画材を使用し、企画を何度も練り直し、それぞれが独自のアプローチで作品を作り上げています。
作者ひとりひとりが独自の世界を追及したアニメーション創造の軌跡の中に、日本のアニメーションの将来を感じることができるでしょう。
[紹介サイト]

13日(土)上映後18:20〜トーク
大見 明子
(『収集家の散歩』)、北村 愛子(『服を着るまで』)
 
《料金》無料(要・当日の上映会チケット)

「四ッ谷いろは」
(2010/6分32秒)
監督:安西 奈々
声:神田 山陽
アシスタント:中村 由尚、羽根田 充弘
「ちょいとでました四ッ谷でござい」って、街である「四ッ谷」さんが、ただ動きたくない理由を季節のせいにして狸寝入りをしているお嬢さんを、街へと連れ出した!
そしてお嬢さんは、不思議な世界に少しずつ入り込んでいく。
「賢者の贈り物」
(2010/12分48秒)
監督:石井 寿和
音楽:余田 有希子 ナレーション:清川 元夢
声:山村 さやか、阿部 安朗
O・ヘンリーの同名小説の映像化。マジシャンのジムとその妻デラのクリスマスの物語。
自慢の長い髪を売ってジムの懐中時計に合うチェーンを買うデラ。夜、変わり果てたデラの姿に言葉をなくすジム。泣き出したデラにジムがプレゼントを渡すと……
 
「収集家の散歩」
(2010/6分13秒)
監督:大見 明子
サウンドデザイン:Taro Peter Little
ある日のある収集家の散歩。自分のマンションを出て、ぶらっと近くの公園を散歩する。公園に行くと、歩きながら何気なく見たものが、次々にに頭の中に集められていく。
日常の中で私たちが目にしたものは、どのように記憶の中に集められていくのだろう。
 
「服を着るまで」
(2010/9分17秒)
監督:北村 愛子
音楽:松岡 美弥子
効果:宮澤 詩織
声:銀木 沙織
私たちは、朝起きて、服を着た瞬間から社会システムの中で生きていくのである。それが正しい世界なのかどうかはわからない。そこから逃れようとしても、いつかは戻らなければならない。
 
「指を盗んだ女」
(2010/4分15秒)
監督:銀木 沙織
サウンドデザイン:宮岡 和寛
ある日、母親の手を離した子供が指を奪われる。母の愛情が別の側面を見せるとき、 子供の指は幼虫になって手のひらを離れて行く。2人の関係は誰にも知られる事なく、家は2人を隠す様に佇んでいる。指を奪われた子供はどのように成長するのだろうか。
 
「つままれるコマ」
(2010/6分40秒)
監督:田中 美妃
音楽・音響監督:長島 みのり
効果:三浦 美穂
人生を親につままれて成長してゆく僕。親の行動に左右された受動的な僕の生き方。
お父さんがサイコロを動かし、お母さんが僕をつまみ上げ、僕は進んでゆく。
その家族の仕組みはいつまで続けられる事ができるのか。僕はついに切り離す事を決断する、、、。
 
「強迫的な秩序についてのカエル」
(2010/4分05秒)
監督:永迫 志乃
音楽:磯崎 祥吾
効果:堤 裕吏衣
仲間のカエル達を整列させることに執着する一匹のカエルの話。
社会を構成する要素のひとつである「整列する、させられる」という関係性に注目し、その中で予定外の出来事が起きた場合の混乱、収束を描いた。
 
「CLIMBER」
(2010/5分49秒)
監督:野中 晶史
音楽:村上 史郎
効果:高橋 享平
長く長く続く岩の柱があった。クライマーがその柱をひたすら登っていく。
彼ら1人1人が積み重ねの象徴である。
彼らは何らかのゴールを目指して上へ登るわけではない。登り続ける事自体が目的でありその行為にゴールは無い。
 
「PapA」
(2010/3分45秒)
監督:松井 久美
音楽:村上 大輔
演奏:杉原 加恵
光と物体が存在すれば、そこに必ず影が出来る。
先に影を見つけたとしたら、光を遮っている物体が存在していることが証明出来る。
もしもその影が消えてなくなったとしたら…物体も消滅したと考えるべきで、それが現実なのである・・・。
 
「Googuri Googuri (グーグリィ グーグリィ)」
(2010/8分22秒)
監督:三角 芳子
音楽:横山 夏子
声:通畠 寿里、古川 タク
女の子の想像の話。
「ぐーぐりぃ ぐーぐりぃ」はおじいちゃんと女の子の間だけでわかる秘密の言葉 。おじいちゃんは時に山のようであり、樹や海のように思えたり、そこから女の子の想像は鳥のように無限の想像の世界を自由にはばたいてゆくのです。
 
「わからないブタ」
(2010/10分00秒)
監督:和田 淳
カラーデザイン:尼子 実沙
サウンドデザイン:高橋 享平
家の前にとても大きなブタがいる。その家には人間が住んでいる。みんなブタのことを知っているし、ブタもみんなのことに気づいているが、それぞれどれくらいにどんなふうに知っているかは判らない。 お母さんもお父さんのことが判らない。
   
協力:東京藝術大学
 

《料金》一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


アニメーション発掘
2010年11月13日(土)・14日(日)
 
東京藝術大学大学院のアニメーション専攻第一期生の作品上映に併せ、最近復元された大藤信郎と政岡憲三の2作品を含む日本の1920〜30年代のアニメーションを一挙上映。13日には10月の人形アニメーション上映の続きとして持永只仁の日米合作アニメを上映。14日には珍しい作品を参考覆面上映。
  
Aプログラム
「春の唄」
(1931/4分/35mm)大藤信郎
国立近代美術館フィルムセンターで今年開かれた大藤信郎作品の特集上映のために9ミリ半染色フィルムから35mm染色版に拡大複写されたもの。童謡「春の唄」にシンクロするレコード・トーキー作品だが、今回はサイレント上映。
「ターチャンの海底旅行」
(1935/7分/35mm)政岡憲三
ターちゃんとミーちゃんが豆潜水艦で海中散歩して遭遇する危機や冒険を描く政岡アニメの新発掘作品。映画保存協会が「映画の里親制度」により、今年の「第5回映画の復元と保存に関するワークショップ」の課題として復元したもの。9ミリ半から35ミリに拡大。本来はトーキーだが、音声現存せずサイレント上映。
[関連サイト] 映画保存協会・第六回映画の里親
「茶釜音頭」
(1934/10分/35mm)政岡憲三 
山寺の和尚と小僧、狸の茶釜一家がくりひろげるドタバタ。音声付き可燃性35ミリフィルムとサイレント版16ミリの2本のプリントから長尺版35ミリへ復元された。
『茶釜音頭』と同様に国立近代美術館フィルムセンターで2004年に開催された「日本アニメーション映画史」のために作成した以下の35ミリプリントを一挙上映。
「茶目子の一日」(1931/5分)西倉喜代治 
「ノンキなトウサン竜宮参り(夢の浦島)」(1925/10分)木村白山
「太郎さんの冒険撮影」(1929/5分)相原隆昌、山本早苗 
「西遊記・孫悟空物語」(1925/5分)大藤信郎 
「村祭」(1930/2分)大藤信郎 
「海国太郎・新日本島万歳」(1938/8分)鈴木宏昌 
「あめやたぬき」(1931/4分)宮下万蔵
「兎と亀」(1924/6分)山本早苗 
「五匹の力(森の五匹の動物たち)」(193710分)鈴木宏昌 
 
 
Bプログラム
「ウィリー・マックビーンの冒険」
(日米合作/1963/92分/16mm/日本語字幕無し)
演出:持永只仁、浅野竜麿 
人形アニメーター:持永只仁、中村武雄、岡本忠成、田畑博司、及川功一
大天才ラスプーチン・フォン・ロットン教授は歴史を変えるため自身で発明したタイム・マシンで出発する。この企てを知った教授の飼っていた猿のパブロはタイム・マシンの設計図を盗み出し、ウィリー少年と協力、タイム・マシンを組み立て教授の跡を追ってタイム・トラベルの旅に出る。西部アリゾナ、スペイン、イギリス、古代エジプト、そして未来宇宙へ。
Cプログラム
[参考覆面上映]お楽しみ外国アニメーション
(16mm/日本語字幕無し)
  
  

《料金》入れ替え制
1プログラムあたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2プロ目は200円引き
当日、[GEIDAI-ANIMATION 01 in KOBE]をご覧の方は200円引き


GEIDAI-CINEMA #4 in KOBE
11月20日(土)〜23日(火・祝)
2005年に設立された東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻。その4期生の修了作品5本を上映します。
先輩にあたる1期生から3期生には、加藤直輝監督(1期生/『アブラクサスの祭』今秋公開)、池田千尋監督(1期生/『東南角部屋二階の女』)、濱口竜介監督(2期生/『PASSION』)、瀬田なつき監督(2期生/『彼方からの手紙』)、真利子哲也監督(3期生/『イエローキッド』)らがおり、すでに映画界で頭角を現しています。
新たに誕生した日本映画の才能をご覧下さい。

20日(土)16:10〜トーク
第4期生監督:大橋礼子、栗本慎介、後閑広、長谷部大輔、ヤング ポール

ゲスト:黒沢清(映画監督)
 
《料金》無料(要・当日の上映会チケット)
 
[関連イベント] 11月19日(金)18:00〜〈黒沢清、「映画」を語る〉
       会場:神戸市外国語大学小ホール(学生会館2F)
       主催:神戸市外国語大学黒沢清監督講演会実行委員会

コメント
  目の前に2010年の過酷な現実があり、背後からは鉄壁の映画史が責めたて、上には観客というもやもやした圧力、足元には自分自身という底なしの黒い穴……そんな息詰まる緊張の中で、どこに属することも拒否した驚くべき不機嫌な映画が5本、いっせいに誕生した。しかも、この5本は決して孤独ではない。各々が各々に対して開かれ、連帯を求めて盛んに触手を伸ばしあっている。何かものすごいことが始まる前触れのようだ。
   黒沢清(映画監督) [各作品に対するコメントは↓]
 
[紹介サイト] 筒井武文(映画監督)による解説あり
「海への扉」
(2010/70分/HD[上映DVCAM])
監督・脚本:大橋礼子 制作:名倉愛
撮影監督:安部雅行 録音・整音:宮城則仁
美術:松尾博美 編集:後河大貴
助監督:川口力 楽曲提供:toe
音楽:王健治、青木瑠生
出演:兼子舜、富田理生、大浦龍宇一、
洞口依子、ガダルカナル・タカ、千浦僚
新聞配達員のケンは、もぐりとして大学に通っている。ケンが考古学研究室の前で骨片を盗むのを、ハルは見ていた。「こんなに人に近付いたのは初めてだ」真夜中の路上で抱き合う二人。共に暮らし始めた矢先、再び盗みを働いたケンは捕えられる。准教授の敷島は、盗みを咎めずに、研究へとケンを引き入れるのだった。ある夜、ハルの元に敷島がやってきて告げる。彼女が、死者によく似ているのだと。恋人たちの孤独な旅は、加速していく。

黒沢清監督によるコメント(11月20日のトークより)
堂々とした青春映画です。本当にしっかり作っています。物を投げたり走ったりという細かいアクションを確実に撮影し、巧みに編集された映画のお手本のような作品です。
また、主役の若い二人もいいのですが、洞口依子さんやガダルカナル・タカさんなどベテラン陣の演技がまた素晴らしいです。普通の商業映画を見ているような手ごたえを感じます。

 
「cage」
(2010/61分/HD[上映DVCAM])
監督:栗本慎介 制作:小川大樹
撮影監督:白浜哲 助監督:市原悠
録音・MA:鳥越惣太 美術:川西那奈
編集:若林龍 脚本:栗本慎介、島村隆
音楽:theygroup
出演:中丸新将、大谷英子、内田雅樹、
玉城タイシ、比嘉玲子
地方公務員・戸籍課の元宮は趣味のバードウォチングで山を訪れた際、男が黒い袋を埋めているのを目撃してしまう。後日、役所で婚姻届を提出しにきた女がその男の車に乗ったことから、次第に事件への妄想を膨らませ、元宮は女の生活を監視し始める。

黒沢清監督によるコメント(11月20日のトークより)
見れば見るほどよくなってくる作品です。いくつかのカットは本当に素晴らしいです。すれ違いざまにスピンして追っかけてくるカーアクションとか、車からの見た目で山を撮っているカット、冒頭の不穏な雰囲気など印象的なカットがいたるところにあります。
本格的なサスペンス映画になっていて、ヒッチコックと青山真治があわさった映画です。

 
 
「テト」
(2010/104分/HD[上映DVCAM])
監督・脚本:後閑広 製作:柄本かのこ
助監督:森内康博 撮影:白浜哲
照明:菊池のどか 美術:濱瀬乃理子
装飾・CG:有吉信寛 録音・MA:中島智也
編集:真下雅敏 音楽:CARRE
出演:阿部翔平、安藤サクラ、
裵・ジョンミョン、モロ師岡、史朗、
安達俊信、松岡大、渡辺幸作、山崎雄太
諜報員訓練生のテト。総合格闘技ジムで鬱憤を晴らす日々を送る女子高生のハト子。ハト子はテトを見た日に猫の自殺を目撃し、戦う意思に目覚める。一方でテトは上官からの最終試験としてある集団への潜入を命じられる。そこはある孤児院出身者で構成された劇団。夜毎、民話の「狐目の寅吉」という伝説の無法者をモデルにした舞台のリハーサルが繰り返される。舞台劇と時代劇が交錯していく中で、テトと座長も奇妙な相似形を形成し始める…。

黒沢清監督によるコメント(11月20日のトークより)
やりたい放題と言っていいでしょう。こういう映画を待っていました。スパイ映画です。若い人が映画をつくるならこうあるべきだというようにワンカット、ワンシーンが何でもありで、立て続けにいろんなことが起きる、とっても楽しい映画です。
ゴダールみたいな楽しさです。「ウイークエンド」のころ、五感の才能が全面に開花しています。

 
「浮雲」
(2010/55分/16mm)
監督:長谷部大輔 プロデューサー:江口友起
撮影監督:浅見貴宏 助監督:関力男 音:青木瑠生
美術:難波和之 編集:橋本良平
出演:梶田豊土、松元夢子、野村喜和夫、淡島小鞠、ほたる
愛葉るび、岡部尚、西本竜樹、工藤和馬
クモスケは身ごもった恋人・ふみよを捨て、昔の恋人・清子に会いにいく。妹の光と夫のさちおは突然住みついたクモスケに疑いの目を向けるが、清子の弟の振りをして平然と暮らすクモスケ。ある日、便秘に苦しむ清子はクモスケに便を口から吸い出してほしいと懇願する。さちおは妻が便を吸い出されていることに嫉妬し、光に同じ行為をしてしまう…。奇妙で悲しい人たちとの出会いと別れ。その先には…。

黒沢清監督によるコメント(11月20日のトークより)
ピンク映画の経験が生きていると思います。よくこのタイトルをつけたと思いますし、どうしてこんな映画を撮るのか、よくこんなことを平然とやるなと、いつもびっくりしています。男と女の愛の物語ですが、これはもうとんでもない愛の物語です。
学生映画という枠も超えて、おもいっきり個性的な映画で強いて言えば鈴木清順や田中登ですかね。

 
 
「真夜中の羊」
(2010/73分/HD[上映DVCAM])
監督・脚本:ヤング ポール
製作:李桓美 撮影:和野花
録音:鳥越惣太 美術:金子弘明
編集:後河大貴 音楽:網守将平
出演:岡部尚、宮本りえ、山田キヌヲ、
松浦祐也、吉岡睦雄、本城丸裕、
綾田俊樹、なかみつせいじ
不動産屋に勤務する沢口慎二は、ある時偶然、落下してきた隕石を発見する。その翌日、10年間失踪していた姉・栞が彼の前に現れる。突然の帰郷に戸惑いを隠せない慎二。一方、彼の周囲では不思議なことが起こり始め、栞が歌う不穏なメロディが街へと広がっていく。
栞の不思議な存在感を中心に、慎二の婚約者である麻紀をはじめとして人々は変化して行くが、一体彼女は何者なのか。そして慎二は、奇妙な事態に巻き込まれていく…

黒沢清監督によるコメント(11月20日のトークより)
これは大傑作だと僕は思います。宇宙人が侵略してくるというSFホラーの王道を堂々と、ずばり、「ボディ・スナッチャー」を日本で完璧にやっていますがそれだけではありません。
監督自身の独特の個性も十分に出ていて、不思議な味わいがあります。いたるところにハッと息をのむような瞬間が連続するような映画です。

 
  
協力:東京藝術大学
 

《料金》入れ替え制
1本あたり
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
2本目は200円引き


濱口竜介作品集
11月20日(土)〜23日(火・祝)
昨年12月、神戸映画資料館で関西初上映した『PASSION』。濱口竜介監督の東京藝術大学大学院の修了作品で、その新人離れした演出術は驚きをもって迎えられた。
今回は、濱口監督の初期作品から、最新作『永遠に君を愛す』(2009)を一挙上映する。
Aプログラム2本立て
「何食わぬ顔」
(2002-03/43分/8ミリ→DV)
監督・脚本:濱口竜介 撮影:濱口竜介、渡辺淳
出演:松井智、岡本英之
浪人生の松井は、予備校の夏期講習の為に東京へ出て来た。同じ予備校に通う里恵もたまたま日程が一緒だ。松井にはほかに本当の目的があった。一足先に東京へ出てしまった同級生の育子に会うこと。育子に会う約束を取りつけるも、彼女には他の男たち(岡本、濱口)との先約があった。一方、里恵も松井をデートに誘うが…。どこまでもすれ違い続ける5人の心。彼らの日常的非日常。
「みんなの顔がとても好きでした(自分除く)」(監督談)
「はじまり」
(2005/13分/DV)
監督・脚本:濱口竜介
撮影:松本浩志
出演:梅田つかさ、花澤拓巳
今夜、世界は俺のものだ!
受験を間近に控えた中学3年生の友子は、年末に余裕のサッカー観戦。友達とも別れ、帰るいつもの田舎道。誰もいない帰り道で一人、詩のような言葉を唱えながら歩いていた時、偶然同じクラスの洋太にばったり出会った。
ENBUゼミナール卒業制作。
 
 
Bプログラム2本立て
「Friend of the Night」
(2005/44分/DV)
監督・脚本・撮影:濱口竜介
出演:岡本英之、鈴木里美
若手のシナリオライター・衛(まもる)は今まで手を付けたことのない「ホラー」という発注にうまく応えられないでいる。友人の結婚式で、同級生の奈美に出会った衛はその夜、彼女にとって「何が一番恐いか」を聞き出そうとする。最初ははぐらかしていた奈美だが、やがて「A」というかつての友達のことを語り始める。笑いとともに始まった「ある夜の友人」の話が、やがて衛と奈美の関係までも微妙に震わせていく。
「元々、主演の岡本英之が所属していたバンド“The Chronicles”主催の〈音楽×映画〉イベントの為に作られたもの。〈ラブホラー〉という発注だったが、できあがったものはラブともホラーとも言いがたい不思議な作品になりました」(監督談)
「記憶の香り」
(2006/27分/16ミリ)
監督:濱口竜介
脚本:小林美香 撮影:佐々木靖之
出演:藤川俊生、河井青葉
繰り返しの日常の中で出会った女の子によって運命を狂わされていく一人の男。
東京藝大2期の同期・小林美香の脚本に魅入られたように、あれよあれよとできあがった魔性の短編。河井青葉との初仕事でもある。「“他の人の脚本”や“映画音楽”など初めて尽くしでした。絶対に二度見て欲しい作品」(監督談)
 
 
Cプログラム
「PASSION」
(2008/115分/HDCAM[上映DVCAM])
監督・脚本:濱口竜介 製作:藤井智 撮影:湯澤祐一 照明:佐々木靖之 
美術:安宅紀史、岩本浩典 録音:草刈悠子
編集:山本良子 助監督:野原位
制作担当:渡辺裕子
出演:河井青葉、岡本竜汰、占部房子、
岡部尚、渋川清彦
 [紹介サイト]
 [日本映画の新しい地平02「PASSION」] コメント有り
 
結婚を間近に控えた一組のカップル。仲間の祝うパーティーの席上で、期せずして男の過去の浮気が発覚する。男と女は別れ、それぞれの夜を過ごす。等身大の20代男女が、夜の横浜を舞台に繰り広げる軽佻浮薄な恋模様、にも形而上学的な愛に関する考察、にも見える。彼らの辿り着いた結論に対して起こるのは感動か、嘲笑か。東京藝術大学大学院の修了作品。その新人離れした演出術で驚きを与えた。
 
 
Dプログラム
「永遠に君を愛す」
(2009/58分/HD[上映DVCAM])
監督:濱口竜介
脚本:渡辺裕子 撮影:青木穣
出演:河井青葉、杉山彦々、岡部尚、
菅野莉央、天光眞弓、小田豊
永子と誠一は、結婚式当日を迎えたカップル。しかし永子の表情はどこか浮かない。彼女は別れた恋人・寿志との間に起こったことを誠一に言えずにいた。一方の寿志も、招待状を受け取ったものの結婚式に向かうか決断できないでいる。結婚式はカップルにとっては普段と異なる特別な一日。それはまた花嫁の元恋人にとっても同じだ。それぞれの思いが交錯する、晴れ舞台直前の数時間。そのなかで明らかになってしまう“秘密”……。『PASSION』を経た濱口監督が、脚本には東京藝大1期の渡辺裕子を迎え、さらなる挑戦として撮り上げた最新作。
濱口組常連となった岡本英之が本業(ミュージシャン)で出演し、それまでにない軽やかさを映画に与えているのも見逃せない。

濱口竜介
1978年神奈川県出身。1998年東京大学文科三類に入学。同年から自主映画製作を始める。
2003 年に同大学文学部を卒業後、映画・ドラマの助監督、経済番組のアシスタント・ディレクター/ディレクターを経て2006年に東京藝術大学大学院映像研究科に入学。
4本の映画を製作し、2008年修了。

 
  
協力:東京藝術大学
 

《料金》
一般1200円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円

《割引》
当日、[GEIDAI-CINEMA #4 in KOBE]をご覧の方は200円引き


[貸館]新作 Midori 上映会
2010年11月27日(土)16:00 / 18:30

ある張り込みの一日を描く竹中哲也の最新作。
出演はテレビや映画で活躍中の内藤和也と 演劇集団よろずやの鈴木那奈子。
ある事件の張り込みにやって来た中年の刑事と新人の若い女性刑事の一日をオフビートな笑いと幻想的な映像で描く人間ドラマ。
監督はPFFにて2001年『岸辺のフイルム』で準入選の竹中哲也が担当。同時上映は2008年制作の『岸辺の情景』
「Midori」(パートカラー/39分/DV/2010年制作)
「岸辺の情景」(カラー/51分/DV/2008年制作)
主催・お問い合せ:竹中哲也
         moviefac-1138◎docomo.ne.jp(◎を@に替えて送信してください)
 

料金 1000円


[貸館]SANAフィルムフェスタ「マスメディアが伝えないイラクがここにある」
2010年11月28日(日)14:00〜
 「SANA(光)衛星テレビ」は、世界から募金が集められ、イラクの市民メディアとして2007年4月に誕生しました。自由平等で平和なイラクの再建をめざす「イラク自由会議」が番組制作・運営を行い、民衆の文化、労働、教育、女性、子どもなどをテーマにニュース映像やドキュメンタリー番組などを放送しています。
 「イラク平和テレビ局inJAPAN」は、その番組を日本で観られるように翻訳・吹き替えしインターネット配信をしていますが、より多くの方々ご覧いただく機会として「SANAフィルムフェスタ」を開催しています。
 マスメディアが伝えないイラクを知り、戦争のない社会をつくるためのオリジナルな映像を発信し、交流する場です。
 
 
主催:イラク平和テレビ局 in Japan・兵庫
  (連絡先)黒川 078-784-2430  安東 090-3828-9579
   

《料金》大人1000円 シルバー/学生/障がい者500円


新作ドキュメンタリー「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
第23回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門 正式出品作品
2010年12月3日(金)〜14日(火)[水・木は休館]
名誉のために命を賭け、栄光と偏見に挑んだ65年目の真実。
兵士たちの最後の証言で綴るドキュメンタリー
知られざる歴史のヴェールが開かれる!

 
「442 日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」
442 Live with Honor, Die with Dignity
(2010/日米合作/97分/HD[ブルーレイ上映])
製作:442フィルムパートナーズ(UTB フイルムヴォイス NTTラーニングシステム、かねふくアメリカ、米国日本ハム、トレンド社)
制作:UTB+フイルムヴォイス
企画・脚本・監督:すずきじゅんいち 
撮影監督:小渕将史 
編集:水原徹 音楽:喜多郎
 アメリカ陸軍442連隊は、第二次大戦時に日系二世で編成された部隊で、アメリカ軍史上最も多くの勲章を受けた。
 本作は父母の祖国・日本と戦う苦悩を抱えながら、アメリカの中で人種差別と戦い、ヨーロッパ戦線ではファシズムと戦った伝説の兵士たちのドキュメンタリー。終戦後、トルーマン合衆国大統領は「諸君は敵だけでなく偏見とも戦い、勝ったのだ」と賛辞を送り、自ら生還者を激励した。
 アメリカ国内における日系人の地位向上に寄与しただけでなく、フランスをはじめとしたヨーロッパ諸国では、長期間ナチスドイツに占領されていた自分たちの町を解放に導いたヒーローとして、現在も語り継がれている。
 しかし、日系人強制収容所から出征した兵士たちが、ユダヤ人強制収容所を解放したという真実は、ほとんど知られていない。
 日系アメリカ人として、星条旗を背負って戦う自尊心と愛国心、その一方で敵性国民に指定された人種差別への怒りと哀しみ、葛藤を描いた問題作。現在、元兵士たちは80代半ばから90代と高齢になり、当事者たちによる貴重な証言はこれが最後になるかも知れない。
 
「東洋宮武が覗いた時代 Toyo’s Camera – Japanese American History during WW2-」 に続く米国日系人史映画の第二作目。前作同様、監督はベテランのすずきじゅんいち、音楽はゴールデングローブ賞やグラミー賞受賞者の喜多郎、その他メインスタッフも、同じメンバーである。 ハリウッドの日米バイリンガル放送局UTBと、日本からはフイルムヴォイスが共同で製作に当る。
 
[公式サイト]
 

《料金》
【当日券】
一般1800円 学生・シニア1000円
会員1000円 学生会員・シニア会員900円


[貸館]「人生はやけっぱちだ!!」映像上映会
2010年12月19日(日)14:00〜16:00
 
 「なんかもやもやしている」。そんな一言から始まった
  神戸市長田に住むベトナム人の子どもたちの挑戦。
 「女装する」「須磨ビーチで首まで埋まる」
 「ナンパする」「噴水に飛び込む」。
  それぞれの“やけっぱち”を記録した映像の発表会を開催します。
  2010年の締めくくり。ぜひ見に来てください。
特別ゲスト:いまおかしんじ(映画監督)
主催:多言語センターFACIL [詳細]
 

料金 無料
※席に限りがあるため、事前にお申し込み願いします。
ワールドキッズコミュニティ Tel. 078-736-3012(担当:村上・国本)


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。