調査研究事業Research Project

平成30年度美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業
事業主体:一般社団法人 神戸映画保存ネットワーク


 
「怪談 皿屋敷[仮題]」一部抜粋
神戸映画資料館所蔵ID:50008

【フィルム状態】
フォーマット:35mm
長さ: 11分[16fps.]
音声:サイレント
色:染色・調色
完全度:部分

【内容について】
製作国:日本
種別:劇

字幕に青山主膳の用人・相川忠太夫や、お菊、さらには吉原・三浦屋の花魁・大淀太夫(実はお菊の妹でお縫)の名前が確認できることから、お菊の「皿屋敷」ものの一つとされる。2009年、フィルムセンター(現 国立映画アーカイブ)の「発掘された映画たち 2009」で上映された際、『怪談 皿屋敷』と仮題が付され、「おそらく日本映画のなかで現存する最古の「皿屋敷もの」。撮影・編集のスタイルから関東大震災以前の作品と推測できる」とされた。また、2018年、姫路文学館の特別展「怪談皿屋敷のナゾ 姫路名物お菊さん」で上映された折、同館学芸員・甲斐史子によって『文芸倶楽部』1916年6月号掲載の筋書「誌上の活動写真 怪談於菊虫」(桂田阿彌笠著)との類似が指摘され、1916年の天活作品『お菊虫』(怪談於菊虫/番町怪談お菊虫)の可能性があるとされた。この筋書によると、場面は全部で23場、そのうち18場「お菊古井戸へ斬込まる」の終りの部分と、19場「忠太夫苦悶の魘言(うわごと)」が残存フィルムの部分に該当する。女形の使用や書割のセット、室内場面で暖簾などが風に揺れていることから、スタジオでの室内撮影ではなく、野天での太陽光による撮影と思われる。同時代の皿屋敷ものとしては、女形の澤村源之助(四代目)一派が演じた1922年の松竹キネマ作品『番町皿屋敷』(監督:吉野二郎)なども考えられるが、いずれにせよ俳優の特定にはいたっておらず、今後の考証が待たれる。
調査者:佐崎順昭(映画史家)

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