プログラムPROGRAM
2017 10

イラスト:やまだないと

堀禎一監督最新作
『夏の娘たち~ひめごと~』
2017年9月29日(金)〜10月10日(火)[水・木休映]

「夏の娘たち~ひめごと~」
(2017/75分/HD[ブルーレイ上映])R-15
監督:堀禎一
製作:高津戸顕、森田一人、朝倉大介
脚本:堀禎一、尾上史高
撮影・照明・録音:渡邉寿岳
音楽・音響・整音:虹釜太郎
編集:堀禎一
助監督:永井卓爾
撮影協力:上田市フィルムコミッション、伊那谷市フィルムコミッション
宣伝:細谷隆広
配給:インターフィルム

出演:西山真来、鎌田英幸、松浦祐也、志水季里子、下元史朗、速水今日子、ビノシュ、和田みさ、櫻井拓也、小林節彦、川瀬陽太、外波山文明

長く止まっていた時間が動き出し、
人間関係が変わりはじめる。
それは自ら運命を選択する女たちのひと夏の物語。

[STORY]
山あいの小さな町に直美(西山真来)は養父の最期を看取りに戻って来た。義理の弟・裕之(鎌田英幸)との再会はふたりのあいだに秘密の過去をよみがえらせる。彼らは姉と弟の関係を越えて男女の仲に至っていた。裕之への愛を再燃させた直美だったが、やはりこの町に戻って来た幼なじみの義雄(松浦祐也)を前に思いは乱れる……。

 

知られざる最後の天才監督:堀禎一が、
原風景に横たわる普遍の土着的人間世界を、官能と禁忌の物語として表露する。

[INTRODUCTION]
ピンク映画でデビュー、ライトノベルやコミック原作の青春映画で高く評価されたのち、ドキュメンタリー作品を連作するなど、ジャンルを横断した活動を展開する映画監督・堀禎一6年ぶりの劇映画は、原点に回帰した官能と禁忌の物語。
地方都市を舞台にして冴えをみせる堀が今回ロケ場所に選んだのは、信州は長野県上田市。静岡県の斜面集落の四季を追ったドキュメンタリー『天竜区』シリーズの方法論をフィクションに取り込み、ひんやりと清冽な夏の風の吹くなか、それぞれの手で運命を選ぼうとする女性たちの姿が描かれる。
家族、血縁、地域に根差したきわめて土着的な人間関係に着目した作劇は、それらが決してなくなったわけではなく、今も現代の日本で孤独を抱え、愛を求め、惑い、迷い、揺れ動く人びとに普遍の出来事であることを浮かび上がらせる。
藤田敏八の『妹』のようにひとりの女の帰還から血をめぐるタブーの物語が動きはじめ、エドワード・ヤンの『ヤンヤン 夏の想い出』を裏返したように進み、いや、葬式で始まり結婚式で終わる物語とはずばり小津安二郎の『秋日和』そのもの――。映画史への鋭敏な自覚にもとづく豊饒な映画的記憶を下敷きにしながら、それらといずれも似て非なる堀禎一独自の世界が高地の涼しい空気のなかに展開する。
ヒロインの直美役に舞台、映像で活躍する西山真来。『乃梨子の場合』(’15)につづく映画主演作で、リアルな女性の息吹を表現している。共演は舞台で活躍する鎌田英幸、『怒り』(’16)『まんが島』(’17)の個性派・松浦祐也が演技を披露している。ほかに『ブルーレイン大阪』(’83)の志水季里子、『つぐない ゴールデン街の女』(’14)の速水今日子、『貌斬り』(’16)の和田みさ、『ローリング』(’15)の川瀬陽太、『濡れた欲情 特出し21人』(’74)の外波山文明、ビノシュ、櫻井拓也、小林節彦、下元史朗ら個性派俳優が脇を固めている。

 

 

堀禎一
1969年、兵庫県生まれ。東京大学仏文科を卒業後、佐藤真構成・編集のドキュメンタリー『おてんとうさまがほしい』(’94)の制作に参加。小林悟、北沢幸雄、サトウトシキ監督らの助監督を務めたのち、ピンク映画『宙ぶらりん』(’03 公開題:SEX配達人 おんな届けます/別題:弁当屋の人妻)で監督デビュー。3本のピンク映画を発表後、『妄想少女オタク系』(’07)で一般映画を監督。『憐 Ren』(’08)『魔法少女を忘れない』(’11)などのライトノベルやコミック原作映画、ピンク映画『東京のバスガール』(’08 公開題:したがるかあさん 若い肌の火照り/別題:恍惚)などを発表するかたわら、映画論、映画評の執筆も行う。2013年からは静岡県の集落に通いつめて定点観測ドキュメンタリー『天竜区』シリーズの製作をつづけている。
*東京での『夏の娘たち~ひめごと~』公開、および特集上映が大盛況の最中の2017年7月18日くも膜下出血により逝去。享年47歳。

STORY・INTRODUCTION・プロフィール文制作:磯田勉

→公式サイト
→予告編

《料金》
一般:1500円 学生・シニア:1100円 会員一般:1100円 会員学生・シニア:1000円
*初日サービスDAY 一律1100円

9月29日(金)初日上映前挨拶 西山真来(『夏の娘たち~ひめごと~』主演)

9月30日(土)堀禎一監督追悼特別上映
「宙ぶらりん」

(成人公開題「SEX配達人 おんな届けます」)R-18
(2003/64分/35mm)
東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
監督:堀禎一 脚本:奥津正人 撮影:橋本彩子
照明:安部力 音楽:綱元順也 編集:矢船洋介
制作:国映、新東宝映画
出演:恩田括、ゆき、加藤靖久、佐々木日記、涼樹れん、マメ山田、星野瑠海、伊藤猛
美香は同棲中のオサムとの結婚を望んでいるが彼はなかなかその気になれない。デリヘル嬢の運転手をしているオサムは新人に心惹かれ、弁当屋で働く美香は常連客にプロポーズされて困惑する……。 大人になりきれない男女の恋愛模様を繊細に綴った堀禎一のデビュー作。最新作『夏の娘たち~ひめごと~』と同じく青春の終わりが最後に訪れる。
《料金》
一般:1200円 学生・シニア:1100円 会員一般:1100円 会員学生・シニア:1000円
協力:東京国立近代美術館フィルムセンター


[貸館]天宮遥ピアノシアター Vol.1
~サイレント映画の素晴らしい世界&天宮遥の曲もきいてね~
2017年10月14日(土) 開場14時 開演14時30分

神戸出身のピアニスト天宮遥。
ピアニストとして、シンガーソングライターとして、テレビ・ラジオのCM音楽を手掛ける作曲家として、ラジオパーソナリティーとして活動の幅を広げてきたが、サイレント映画に魅了され2015年神戸映画資料館にてサイレント映画ピアニストとしてデビューを果たした。
第1回の自主公演となる今回は、喜劇王バスター・キートンの初期作品「キートンの鍛冶屋」と、大女優グロリア・スワンソンの初期作品「雨中の逃亡」を伴奏上映するほか、ラジオ関西「天宮遥の私はピアノ」のパーソナリティーとしておなじみの天宮遥の軽妙なトークと共にオリジナルピアノ曲の数々を披露する。

 

[上映作品]
「キートンの鍛冶屋」The Blacksmith
(アメリカ/1922/25分[18コマ]/16mm)
監督:バスター・キートン 出演:バスター・キートン、ヴァージニア・フォックス
鍛冶屋の見習いキートンは、ドジの連続。ある日、訪れた白馬の美女に夢中になり、馬の世話をしようと近づくと、それまで修理していた車に“嫉妬”されて油まみれに。おかげで白馬は手形だらけ。キートンが町へ出たものだから、迷惑の輪は拡がるばかり。だが、騒動に巻き込んだ白馬の美女を急場で救い、そのまま二人は、ハッピー・エンドと思いきや……。結末はいかに。

「雨中の逃亡」Teddy at the Throttle
(1917/30分[16コマ]/16mm)
キーストン・フィルム・カンパニー=トライアングル・ディストリビューティング作品
製作:マック・セネット 監督:クラレンス・G・バジャー
出演:ボビー・ヴァーノン、グロリア・スワンソン、ウォーレス・ビアリー、犬のテディ
今年、100周年を迎えるこの作品は、のちに大女優となったグロリア・スワンソンが登場。愛犬テディーはご主人さまを危機から救うことができるのでしょうか!?青春と共に歌って踊る、ピアノ伴奏がぴったりな作品です。汽車をつかったアクションシーンが圧巻の「元祖・勧善懲悪」ロマンティック・コメディの決定版!

天宮 遥 あまみや はるか
神戸生まれ。4歳からピアノをはじめ、楽しくも厳しい音楽教育を受けて現在に至る。
シンガーソングライター、ピアニスト、作曲家としてジャンルを越えた音楽活動を展開中。
演奏と歌はオリジナル、映画音楽、クラシック、童謡など多岐にわたり、全国で「歌う講演会」活動を展開中。
ラジオをこよなく愛し、自らの出演のほか制作にも携わる。レギュラー番組は、ラジオ関西「天宮遥の私はピアノ」ほか。
音楽療法の可能性を追ったドキュメンタリー番組「音楽療法の現場を追う」、企画制作出演した「アイラブピアノ」は、平成21年度 民間放送連盟賞優秀賞を受賞。
神戸を舞台にした映画作品「Real Blue」の音楽を担当するほか、三宮センター街2丁目アートミュージアムの音楽を制作。
神戸大学発達科学部音楽表現論コース卒業、兵庫教育大学大学院芸術系コース卒業。
天宮遥公式ホームページ

《料金》 当日1500円


映画史のミッシングリンクを追え! Part2
「エロ本水滸伝」の時代へ、武智鉄二『幻日』発見!

『幻日』

日本映画史には、今なお多くのミッシングリンクが眠っている……。1960年代以後、日本映画界の最底辺に広がっていった独立プロ、そして「ピンク映画」と呼ばれた独立プロ作品の世界には、今なお多くの謎と秘密が隠されている。それは、まさしく映画史の正史を揺るがす秘密の花園である。
昨年、「本木荘二郎」「香取環」をテーマに行われた連続上映企画「ミッシングリンクを追え!」の第2弾。今回もまた葵映画作品ほか、伝説的作品、幻の名作、謎の珍品などなどを発掘、徹底検証する!

70年代末から80年代初頭、幻の映画雑誌といわれた「ズームアップ」をめぐって展開するピンク映画のニューウエーブ伝説。元祖・桃色アイドル・原悦子主演作。秋山駿の名でマキノ映画ゆかりの名優・津崎公平が監督に挑戦した幻の傑作。あの巨乳アイドル女優・中村京子が出演していた幻の映画。
歌舞伎界の異端児にして日本映画界の異端児、危険人物とまでいわれた武智鉄二監督が夏目漱石『夢十夜』をエロチシズムで染め上げた未公開作品『幻日』。ストリッパーだった妻の面影を追い発掘された初期ピンク映画の異色作『色じかけ』。
どの作品も、一筋縄ではいかない迫力に充ち溢れ、数奇な運命を経て来たフィルムばかりだ。今見逃したら、今度はいつ観ることが出来るのかはわからない……。
猥褻裁判に発展した『黒い雪』の直後、映画界随一のスキャンダリスト・武智鉄二が挑んだシュールでエロチックな世界の真相とは? 伝説の名エロ本編集者・池田俊秀の軌跡を追いながら検証する幻のピンク映画の深層とは? 幻の映画伝説を追うとびきりスリリングな二日間。失われた映画が、いま甦る!!

 

『エロ本水滸伝』刊行記念
幻の映画雑誌『ズームアップ』の時代
2017年10月21日(土)
60年代の黄金期が終り、70年代に入り失速した「ピンク映画」の世界。低予算と性を売り物にした現場は荒れていた。雑誌と同じように、過酷な表現の場として注目し応援する映画雑誌が生まれた。77年創刊の「ズームアップ」である。池田俊秀編集長は、誌面の多くを「ピンク映画」と連動して作り始める。グラビアやインタビューにピンク女優が登場し、現場取材や紹介記事、そして脚本や批評を募集して活性化を目指したのだ。小川恵、原悦子、日野繭子、山本晋也、中村幻児、高橋伴明……多くの女優たち監督たちが「ズームアップ」に登場、注目された。その軌跡と業績を、映画文化に即して検証してみよう。自主映画や日活ロマンポルノ、東映ポルノとも入り乱れ、活性化する時代の熱気を感じて欲しい。貴重な関連作品の上映に刮目せよ!

「暴行爛熟未亡人」

(1977/60分/16mm)葵映画
監督・脚本:西原儀一 撮影:関谷四郎
出演:原悦子、杉佳代子、泉ユリ、水木明、磯敏也、 高崎隆一、西原譲、古賀比呂志
1976年、平凡パンチ「メイト・ガール」で売り出した原悦子は、大蔵ピンクで映画デビューする元祖「ポルノ・アイドル」。78年からは日活ロマンポルノへ活躍の場を移すが、その直前に出演した独立プロ作品。現存するピンク時代の原悦子作品としては貴重な一本でもある。ズームアップ誌上でも人気者だった。

「いろ乃湯 裸女百態」
 
(1970/71分/16㎜)葵映画
監督・脚本:秋山駿 撮影:池田清二
出演:真湖道代、有沢真佐美、宝井京子、黒瀬マヤ、藤ひろ子、九重京司、松浦康、久保新二
「いろの湯」の主人貞造(九重京司)は、今夜も番台で女湯を覗いている。そこには青木(松浦康)の妾(黒瀬マヤ)やホステス(真湖道代)がいた……。マキノ門下の見習い助監督からピンク映画の名優となる津崎公平。秋山駿を監督名に撮った二本目の作品は、山本晋也に対抗し庶民を描いた浮世風呂映画。

「OL初体験 後ろの悦しみ」

(1984/60分/35㎜)葵映画
監督・撮影:西原儀一 脚本:福田慎二
出演:中村京子、杉田智子、谷いづみ、久保雪子、岩本玲子、神原明彦、垂水直人、板倉元
60年代にドル箱だった葵映画作品も、80年代には台頭する新世代ピンクに押されていた。「西原儀一」の名で若手が監督、現代風に見せた一本。新人の杉田智子が主演だが、元祖巨乳アイドルのビデオ女優・中村京子の数少ないピンク出演作品として注目される珍品だ。

トーク① 「桃色映画 ズームアップの時代」
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター) ゲスト:伊藤裕作(文章家) 参加費1000円
参考部分上映有り

 

昭和エロスの巨匠・武智鉄二、幻の未公開作品『幻日』発見!
2017年10月22日(日)
映画史を書き換えかねない、幻の未公開作品『幻日』が発見された。猥褻裁判の被告にもなった性の巨匠・武智鉄二。過激でスキャンダラスな作品群の中で行方不明とされて来た『幻日』。能面師の見た淫らな夢の中に、何が隠されているのか。「日本人の精神構造を追求した武智芸術の結集作!!」「女は真珠貝で自分の墓を掘り能面師は砂丘に女を埋める……」。公開予定の宣伝文案も過激で難解だった。『白日夢』『黒い雪』で、60年代の日本映画界を震撼させた武智鉄二が、そのボルテージをさらに上げ完成させた『幻日』が、長い眠りから覚め、今、忽然とスクリーンに出現する。ぜひ、その歴史的現場に立ち会って欲しい。数奇な運命を旅したフィルムの再生を見守って欲しい。

「色じかけ」

(1965/75分/16mm)高千穂映画プロダクション
監督:南部泰三 脚本:糸文弘 撮影:塩田繁太郎
出演:田口勝則、細川直也、朝霧待子、芦原しのぶ、白井勉、天野良一、中島京子、松原加幸
人気ストリッパーで、成人映画数本に出演した芦原しのぶ。死後、亡き妻の面影を求めて夫が捜し当てた奇跡のフィルム。タクシー運転手を誘惑する未亡人(芦原しのぶ)、その顛末は……。大都映画、満映を経て戦後独立プロを立ち上げた南部泰三監督の現存する貴重な作品。脚本は、松竹演劇部出身の糸文弘。
→特設ページ:芦原しのぶ『色じかけ』上映に至る経緯について

「幻日」

(1966/78分[第三巻欠落]/35mm)第三プロ
製作:長島豊次郎 監督・脚本:武智鉄二 撮影:高田昭 下着:鴨居羊子
※「夏目漱石生誕百年記念映画『夢十夜』より(公開告知の文章より)
出演:柴田恒子、内田良平、川口秀子、津崎公平
能面職人(内田良平)が注文の若い能面を彫れず、気分転換に出た街で出会う美女(柴田恒子)と過ごす不思議な体験。美女に誘われるまま、夢なのか現実なのか……。その妻に武智夫人の川口秀子。美女を連れ去る男には津崎公平。昭和41年秋に完成したが、一般公開されていない。元松竹女優の柴田恒子の裸身は鮮やかに美しい。撮影は『白昼の通り魔』の高田昭。

「女湯・女湯・女湯」

(1970/77分/パートカラー/16mm)東京興映
企画・製作:清一世 監督:山本晋也 脚本:太田康 撮影:笹野修司
出演:白川和子、一星ケミ、小島マリ、松浦康、久保新二、野上正義
昭和の人気テレビ番組『時間ですよ』の原型といわれる山本晋也監督の「女湯」シリーズ。第4作目となる本作は、フーテンの寅を想わせる三助(松浦康)が、義理と人情とバカさを発揮する。ヒロインに白川和子、銭湯の主人に野上正義。静岡県三島市の銭湯を借り切り撮影、全篇半分に及ぶ女湯シーンの裸女乱舞は画期的。晋也伝説が始まる傑作喜劇だ。

トーク② 「発見された『幻日』と歌舞伎界の異端児・武智鉄二の軌跡」
鈴木義昭
(映画史研究家/ルポライター) 参加費1000円
参考部分上映有り

作品解説:鈴木義昭

《料金》入れ替え制
一般1200円 学生・シニア1000円 会員一般1000円 会員学生・シニア900円
《割引》2本目は200円引き


サイレント映画鑑賞会 キートン映画デビュー100周年

2017年10月28日(土)14:00

「恋愛三代記」Three Ages
(アメリカ/1923/58分/無声/16mm)
監督:バスター・キートン、エディ・クライン
出演:バスター・キートン、ウォレス・ビアリー、マーガレット・リーヒー
ピアノ伴奏:天宮遥

いつの世も変わらないもの、それは恋。原始時代、ローマ時代、現代の3つの時代をまたにかけ、バスター青年、乙女、ライバルの3人が壮大な三角関係を繰り広げる大河ドラマ…ならぬドタバタ喜劇。
19本の2巻もの短編喜劇を作ったあと、キートンが満を持して挑んだ初の長編作品である。とはいえ長編の構成にまだ自信のなかったキートンは、尊敬するD・W・グリフィス監督に倣い『イントレランス』のパロディ映画にすることを思いついた。「うまくいかなければ短編に編集しなおして公開できるように」とのキートンの目論見だったが、できあがったのはナンセンスなギャグにウィットを効かせたオフビートな傑作長編であった。まさに時代を超えて存分に楽しめる爆笑巨編、乞うご期待!

 

「キートンの線路工夫」The Railrodder
(アメリカ/1965/24分/16mm)
監督:ジェラルド・パッタートン
出演:バスター・キートン

『恋愛三代記』から42年後に作られた無声短編映画。ロンドンの橋の上で突然カナダへ行きたくなった老キートンは、テムズ川にドボンと飛び込み、大西洋を渡ってカナダの海岸に現れる。そこで都合よくカナダ鉄道のトロッコを見つけ、いざ太平洋へ向けてカナダ横断の一人旅に出る。
あるキートンファンの言によれば、当時カナダ国立映画制作庁はカナダの風物を宣伝する”プロパガンダ映画”(笑)を量産していたらしい。『線路工夫』もその内の一本で、カナダ国有鉄道のPR映画である。喜劇王キートンが主演した(しかも貴重なカラー作品)ことで、『線路工夫』は半世紀以上経った今も傑作として愛されている。今年はカナダ建国150年ということで、カナダ各地でも上映イベントが行われているそうだ。

バスター・キートン Buster Keaton (1895~1966)
映画の中で決して笑わない「偉大なる無表情」で知られるコメディアン/映画監督。チャップリン、ロイドと並ぶ世界三大喜劇王の一人。寄席芸人の両親と共に3才から舞台に立つ。超人的な身体能力でサイレント喜劇の傑作を生んだ。天性の映画作家でありウディ・アレンら後世の監督にも影響を与え続けている。晩年もテレビやサーカス、舞台等で活躍。最後まで現役を貫いた。代表作は『探偵学入門』(1924)『大列車追跡』(1926)『キートンの線路工夫』(1965)サミュエル・ベケットの唯一の映画作品『フィルム』(1965)等。今年2017年はキートンの映画デビュー百周年にあたる。

解説:いいをじゅんこ

《料金》2本立て(入替無し)
一般1000円 学生900円 会員900円
《割引》[第13講コメディ学入門] 参加者は200円引き

クラシックコメディの素晴らしい世界をみんなで楽しむ会
第13講コメディ学入門
BK100 ── 祝・映画デビュー100周年 バスター・キートンの生涯 ──

2017年10月28日(土)15:40〜17:40

クラシック喜劇研究家/ライターのいいをじゅんこが、ひと組の喜劇王にテーマをしぼり、みどころ、歴史、笑いのツボなどを楽しく紹介します。レッツ温故知新!
今回のテーマは
「BK100 ── 祝・映画デビュー100周年 バスター・キートンの生涯 ──」

1917年、バスター・キートンは『デブ君の女装』(The Butcher Boy)で映画デビューした。今年は100年目の記念の年にあたる。キートンの姿が初めてフィルムに焼き付けられたその日は、リュミエール兄弟が世界で初めて映画興行を行った日と同じくらい、映画史において重大な、記憶されるべき日である…と言うのは、おおげさだろうか?(ちなみにキートンが生まれたのは”映画誕生”と同じ1895年である。)

サイレントからトーキーへと映画は移り変わり、やがてテレビが登場。メディアは変遷しても、キートンの喜劇は変わらなかった。まるで吹き荒れる嵐の中心にいるかのように、キートンの喜劇にブレはなかった。だが実生活では、最初の妻との確執、MGMからの解雇、アルコール依存症との戦いがあり、さらにそこからの復活と再評価の時代があった。

コメディ学入門では過去に2回バスター・キートンを取り上げている(第8・9講)。そこではキートンのギャグ解析や映画術を中心に講義した。キートンの喜劇人としてのキャリアに、私生活をいたずらに重ね合わせることはしたくない(とりわけ悲劇的な側面は)というのがわたしのスタンスだが、「人間キートン」に光をあてることで、逆に見えてくるものもあるかもしれない。わたし自身もそんな期待を持ちながら、今回の講座ではキートンの実生活での波乱にもふれ、バスター・キートンの全生涯をていねいに振り返ってみたい。

講座の前のサイレント映画上映会は、キートンの長編処女作『恋愛三代記』(1923)と、晩年の代表作『キートンの線路工夫』(1965 カラー!)の豪華二本立て。さらに講座の翌日には旧グッゲンハイム邸でキートンの最高傑作『大列車追跡』の上映も予定している。神戸の地でキートン映画デビュー100周年を祝える幸せを、今ひしひしと噛みしめている。

「サイレント喜劇のすばらしき世界(The Wonderful World of Silent Comedy and more)」(運営:いいをじゅんこ)

《参加費》 1000円
*予約受付中
info@kobe-eiga.net まで、参加者様のお名前・ご連絡先(メールアドレスまたはお電話番号)をお知らせください。


これまでのプログラム|神戸映画資料館

※内容は予告無く変更する場合があります。

※作品によっては、経年退化で色褪せしている場合がございます。予めご理解ご了承の上、ご鑑賞くださいますようお願い申し上げます。