神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2023年8月4日(金)18:00

[貸館]うつろい 神戸からブラウンシュバイクへ 国本隆史上映会

僕は2012年に神戸から北ドイツのブラウンシュバイクに移住ました。
当初は3年で日本に戻るつもりが、気がつけば滞在11年。
その間に制作した作品を、父の故郷・神戸で上映します。

今回神戸映画資料館で上映する作品、それぞれに流れるテーマは「うつろい」です。
うつろう人への眼差し、うつろう自分への眼差し。
うつろい先で家族をうしなうこと、そして新たに生まれるうつろう人との友情です。

 

国本隆史
神戸のたかとりコミュニティセンターで働いた後、2012年ドイツへ移住。ブラウンシュバイク美術大学にて、Candice Breitz教授とEli Cortiñas教授に師事。マイスター学位取得。作品に「ヒバクシャとボクの旅(2010)」「ロベルト(2019)」「松の樹の下で(2022)」など。
www.takashikunimoto.net
@takashi.kunimoto.10

 

上映作品
『故郷から故郷へ』  38分
2016 digifile (HD) col, sound
国本は、テレビのニュースのような大げさな話ではなく、慣れない土地での生き抜こうとする地味で日常的な闘いに光を当てる。映画の中の人物に、好奇心を持って接近しながら、尊敬の念を持って距離を保つ。そして、成功だけでなく失敗も描かれている。彼は、混乱した感情、疑問、憧れ、希望に、どれぐらい自分が影響を受けているか隠さない。そして、「最終的に自分の居場所はどこにあるのだろう」と問いかけている。(Ann Claire Richter / Brunswick newspaper)

 

『父に関する諸作』 約45分
2019-2022 digifile (HD+16mm) col, stereo
与えることと悲しむことの2つの刃の愛を見て味わう。静けさに包まれた穏やかな表情、水面に映る幽玄な反射、そして心の中で沸き上がる不安。悲しみに境界はない。そのため映画の境界も曖昧となる。過去と現在が一緒になり、記憶と混ざり合う。パンデミックの中、画面と向き合い、愛する人たちが引き離され、列車が駅から離れていく。もしあなたが愛したことがあり、そして失ったことがあるなら、国本隆史のこの映画を見てください。観ないと、芸術作品を見逃すことになるから。(Sarai Meyron / Artist)

 

『ロベルト』 50分
2023 digifile (HD+Super8+16mm) col, stereo
作品は自己言及のパラドックスでから始まる−「ドイツ人とドイツ在住の外国人は真実を言わない」。だが、二人の交わす言語は意味の次元で成立するものではない。途切れ途切れ、不安と信頼の間を振動しながら流れる時間をデジタルカメラと8ミリフィルムで記録した。焼け跡のように残るのは、ロベルトの青い瞳より通行人の冷ややかな視線、それと似ているかもしれない観客自身の視線だ。(Image Forum Filmfestival, 2019)

 

神戸映画資料館にて上映会を開く理由
2012年に僕は神戸からドイツへ移住しました。
福島第一原発の事故への不安に苛まれる家族を守るための選択でした。移住前までは、新長田・鷹取の移民、特にその子どもたちと一緒に活動をしていましたが、この選択を境に、自分自身が移民となり、移民の子どもの親となりました。その時はまさか11年も海外に住むと想像もしていませんでしたが、今は子どもが成人するまで住む計画を立てています。
はじめは言葉が分からず、友人もなく、習慣に戸惑い、まるで子どもになったかのようでした。語学学校で言葉を習得したとて、心の気後れは消えず、社会に参画できず、透明人間になったかのようでした。その状況を変えるべく、映像作品を作り始めました。それは人と繋がり、地域に参加するための手段でした。そのカメラは同じ町に住む移民に向けられ、自己の現在と未来を投影しつつ、撮影を重ねていました。そんな時に、いつも頭の片隅にいたのは、一緒に活動した神戸の子どもたちであり、その家族であり、同僚であり、お世話になったまちの人々でした。
また神戸は父の故郷。コロナ禍の影響で、父の最期に居合わせることができなかったため、離れた場所から看取るために
喪失を感じるために作品を作りました。それは同時に、ふるさとから離れ、移住先で家族を失う人たちに想いを馳せる作業でした。その時から、いつか映像と共に、父のふるさとへ一緒に帰りたいと思っていました。
個人的な思いから生まれた作品が、どこかで誰かに響き、想定外の共鳴に繋がるのであれば、これほど嬉しい上映会はありません。ブラウンシュバイク美術大学で制作した作品も一部お見せする予定です。もし関心があり、ご都合がつく方々は来てください。宜しくお願いいたします。

 

《料金》 一般:1000円(学生無料)
主催:Wasabi Chili Films 予約:神戸映画資料館 info@kobe-eiga.net

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