神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2023年9月30日(土)・10月1日(日)

アウトサイダーのまなざし in 神戸 第5回

~国映/新東宝ピンク映画60周年記念特別上映会~

「新東宝ピンク映画 ラスト・フィルム・ショー」の後続企画「アウトサイダーのまなざし2」から2作品を上映。本シリーズの最終回です。

 

『馬と女と犬』
プリントタイトル『馬と犬と貴婦人』
(1990/60分/35mm)新東宝映画
監督:佐藤寿保 脚本:夢野史郎 撮影:稲吉雅志
出演:岸加奈子、佐野和宏、佐々木ゆり、上原絵美、高橋達也、小林節彦

妹を殺した過去を持つ女、屍姦趣味の男、記憶喪失の女。人里離れた海辺を舞台に日常から疎外された者たちの愛憎が交錯する。「獣姦」という題材で記録的大ヒットとなった本作だが、佐藤寿保=夢野史郎コンビの詩情豊かでありながらも過激な世界観はいささかも揺らぐことはない。

 

『痴漢ONANIE覗き』
(1992/60分/35mm)国映
監督・脚本:佐野和宏 撮影:斎藤幸一
出演:中川みず穂、岸加奈子、佐野和宏、小林節彦、梶野考、今泉浩一

平凡な日常を送る夫婦のもとに元高校教師である妻の姉が転がり込む。やがて死んだはずの姉の恋人が現れ……。ピンク四天王のひとり佐野和宏がテネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』をモチーフに平穏な日常に生じた亀裂によって微妙に壊れていく男女の愛を切なく綴った。

 

ピンク映画は性を商品として扱う性質からのみでなく、成り立ちもまたどこか「アウトサイダー」的でした。それは戦後しばらくのあいだ娯楽の王者として経済界の第一線にいた映画産業がテレビの普及にともなって急速に凋落したとき、まるでそれに乗ずるような形で、あたかもある不可視の意図によって設置されでもしたように、高度経済成長の背後でうごめく欲望を回収する装置として稼働を始めたのでした。
しかしそういったピンク映画の作り手たちの多くは、他の独立系の製作者と同様あるいはそれ以上に、たとえパワフルであってもアウトロー(反社会的存在)ではありませんし、コリン・ウィルソンが述べたほどに深く預言者的・神秘主義的なアウトサイダーでなかったとしても、社会の周縁に寄り添いながらもその外部に存在し、常識や社会通念を越えて、配給会社や劇場への多少の忖度は容れつつも強力なスポンサーや様々な権力に従う理由も必要もない立場で、たとえささやかであってもこの世界に何らかの光をもたらそうと努め続けたのです。
今回上映する作品の多くが主人公たちが事件や犯罪、あるいは日常の様々な出来事を通じて社会通念や一般常識から逸脱し、葛藤し、あるいはそれらと闘う姿を描いているのは決して偶然ではありません。そんな登場人物たちを見つめる監督=アウトサイダーたちのまなざしは、意識的・無意識的を問わず、あらゆる真摯な創作に共通のあの基底的なメッセージを体現しているかのようです。「共同体(=社会一般通念)の外に出よ、孤独を恐れるなかれ、そして一人の人間たれ」——と。
福原彰(新東宝映画)

 

協力:ぴんくりんく
R18+ 18歳未満の方はご鑑賞いただけません。

《料金》1本あたり
一般:1200円 ユース(25歳以下):1000円 会員:900円
《割引》当日2本目は200円引き
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

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