神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2024年3月8日(金)〜12日(火)

「東北記録映画三部作」酒井耕・濱口竜介 監督作品

ここに、被災の風景はほとんど現れない。
あるのはただ、語ること、そして聞くことだ。

『なみのおと』、『なみのこえ』(『気仙沼』編、『新地町』編)、『うたうひと』は、酒井耕、濱口竜介両監督が東日本大震災の被災地で、2年の歳月をかけて丁寧につくりあげた東北三部作である。しかしここに、被災の風景はほとんど現れない。あるのはただ、語ること、そして聞くことだ。
『なみのおと』、『なみのこえ』では、夫婦、親子、兄弟、姉妹、同僚といった親しい関係にある人々が、あらためて、それぞれ相手と向かい合い、震災と向かい合い、話を交わす。通常は生涯を通して出逢うことももなかっただろう強烈な体験が引き金となって、彼らの対話は人間関係の本質に深く触れはじめていくのである。
一方『うたうひと』は東北の民話語りを題材に、みやぎ民話の会、小野和子の活動を追ったものだ。震災を直接扱ったものではないが、人はすぐにも『なみのおと』、『なみのこえ』と通底し、呼応しあう、まったく同じ「態度」を見て取るだろう。語ることと聞くこと。聞くことと語ること。今、もっとも忘れてはならない一つの態度を、この三部作は語りかけようとしている。

 

『なみのおと』(2011/142分)

製作:東京藝術大学大学院映像研究科 プロデューサー:藤幡正樹、堀越謙三
監督:濱口竜介、酒井耕 撮影:北川喜雄 整音:黄永昌

津波被害を受けた三陸沿岸部に暮らす人々の「対話」を撮り続けたドキュメンタリー。友人、家族、仕事仲間など親しいもの同士が震災について語り合う口承記録の形がとられている。互いに向き合い対話する事は震災そのものに向き合うことでもあるのかもしれない。被災地の悲惨な映像ではなく、対話から生成される人々の「感情」を映像に残すことで、後世に震災の記録を伝える。

 

『なみのこえ 気仙沼』(2013/109分)
『なみのこえ 新地町』(2013/103分)

製作:サイレントヴォイス プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕 実景撮影:北川喜雄 整音:鈴木昭彦

『なみのおと』から一年。気仙沼と新地町での対話が記録された。「被災者」の声ではなく、現実にそこに生きる「一人ひとり」の声として。百年後、私たちは死者であり、この映画は「死者の声」になっているだろう。ここに収められた彼らの声と、今は聞く事のできない波に消えた声が、100年後の未来で繋がっていることを祈って、この映画『なみのこえ』は撮られている。『なみのこえ 気仙沼』『なみのこえ 新地町』の二編構成。

 

『うたうひと』(2013/120分)

製作:サイレントヴォイス プロデューサー:芹沢高志、相澤久美
監督:濱口竜介、酒井耕 撮影:飯岡幸子、北川喜雄、佐々木靖之 整音:黄永昌

古来より口伝えで人々に受け継がれてきた民話。奇想天外な物語のみならず、「語り手」と「聞き手」の間に生まれる独特の場が、創造的なカメラワークによって記録され、スクリーンに再現される。背景となった人々の暮らしと共に語られることで、先祖たちの声が甦る。映画と民話の枠を超えた、新たな伝承映画が誕生した。物語の考察なども含め十数話を収録。

 

このたびの能登地震により犠牲となられた方々に、謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災地域の皆様が一日も早く平穏な日々を取り戻せることをお祈り申し上げます。
本上映会の収益の一部を被災地の支援に役立てていただける団体に寄付いたします。
(サイレントヴォイス、神戸映画資料館)

ご報告(2024年4月5日)
本上映会の収益の一部と、募金箱にいただいた寄付金の合計14,272円を一般社団法人RQ災害教育センターに寄付したことをご報告いたします。
(一般社団法人サイレントヴォイス、神戸映画資料館)

 

《料金》 1本あたり
一般:1500円 シニア(65歳以上):1300円 ユース(25歳以下):1000円 会員:1200円
《割引》当日2本目は200円引き
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

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