2024年4月20日(土)
連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見 第19回
ボリシェヴィキ国における帽子箱を持った少女の異常な冒険
──ボリス・バルネットの愉しみ
このシリーズ講座では、映画史の節目を刻んできた傑作を毎回一本ずつ上映し、検証してゆく。時代の中から生まれながら、時代を超えて生き残る。古典とはそういうものだ。それは、つねに〈来るべき〉作品であり、映画館のような場所でそのつど〈発見〉される。このような観点から、作品を映画史の中にきっちりと位置づけ、それがいかにして生まれ、どのように受容され、それ以後の映画にどんな影響を与えたのかを検証する一方で、あたかも新作を見るように、その映画を純粋に味わい、どこにその〈映画的〉魅力があるのかを探ってゆく。
13:30〜 上映
『帽子箱を持った少女』
Девушка с коробкой
(ソ連/1927/68分/サウンド版/デジタル)
監督:ボリス・バルネット
脚本:ヴァレンティン・トゥルキン、ワジム・シュルシェネヴィチ
撮影:ボリス・フランツィッソン、ボリス・フィリシン
美術:セルゲイ・コズロフスキー
出演:アンナ・ステン、イワン・コワル・サムボルスキー、セラフィマ・ビルマン、パーベル・ポーリ、ウラジミル・フォーゲリ
14:50〜 講座(終了予定16:20)
講師:井上正昭(翻訳・映画研究)
「優雅さがごく自然に厳密さと争い合うあの稀なカメラの動き」「生まれながらの物語作家を圧倒するような話術の才能」と若きゴダールが絶賛した、ロシアの天才的映画作家ボリス・バルネット。今回の講座では、彼の映画の魅力がすでに溢れるほど詰まっている単独監督デビュー作『帽子箱を持った少女』を取り上げる。バルネットのユニークな個性が遺憾なく発揮されている作品という意味では、例えば『青い青い海』の方がことによるとふさわしいのかもしれないが、今回は入門編ということで、万人に受けそうなこのスラップスティック・コメディの傑作を選んだ。幸福感に包まれながらただただ画面を見つめ続けていたいと思う作品ではあるが、あえて、当時の歴史的文脈の中に置き直して、愚直に細部を読み込みこんでいきながら、この作品の魅力とバルネット映画の極意のようなものを探っていきたい。同時代のロシアのサイレント喜劇や、メズラブポム社というユニークな映画会社の存在なども視野に入れ、バルネットが師事したレフ・クレショフとの微妙な関係などにも注目しつつ、様々な角度から、この作品に迫りたいと思う。とにもかくにも、面白いこと請け合いの作品なので、まずは見て楽しんでいただきたい。
井上正昭
1964年生まれ。Planet Studyo + 1 で映画の自主上映にたずさわる。訳書に『映画監督に著作権はない』(フリッツ・ラング、ピーター・ボグダノヴィッチ/筑摩書房 リュミエール叢書)、『恐怖の詩学 ジョン・カーペンター』(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)、共著に『映画を撮った35の言葉たち』(フィルムアート社)がある。
ブログ「明るい部屋:映画についての覚書」
《参加費》 上映+講座
一般:2000円 ユース(25歳以下):1400円 会員:1700円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039
協力:ダッサイ・フィルムズ