2025年4月26日(土)〜29日(火・祝)、5月3日(土)〜6日(火・祝)
人生の幻影 ダグラス・サークの二都物語
ファスビンダーやアルモドバルなど、多くの映画作家たちに今なお影響を与え続けている偉大な映画作家ダグラス・サーク。彼がナチスドイツを逃れてハリウッドに渡り、デトレフ・ジールクからダグラス・サークへと名を変え、50年代に撮った『天が許し給うすべて』や『風と共に散る』、『悲しみは空の彼方に』などの華麗なメロドラマの数々は、60年代末になって再評価され始め、メロドラマ映画の概念を根底から覆すことになる。メロドラマの巨匠として、ダグラス・サークの評価は今や不動のものとなったと言っていいだろう。しかしサークが撮ったのは何もメロドラマばかりではない。アメリカ時代に彼が手がけた作品は、コメディやフイルム・ノワール、歴史物、さらには西部劇さえも含む。この特集上映では、まず第一弾として、ユニヴァーサル時代の多種多彩な作品を中心に10本を上映する。
第1弾 ユニヴァーサル時代前期の輝き 1951-1954
『奇蹟』 The First Legion
(アメリカ/1951/80分)Sédif Productions
監督:ダグラス・サーク 脚本:エメット・レイヴリー
撮影:ロバート・デ・グラス 音楽:ハンス・サマー
出演:シャルル・ボワイエ、ウィリアム・デマレスト、ライル・ベトガー、ウォルター・ハンプデン
田舎のイエズス会。寝たきりの修道士が聖人の夢を見て歩けるようになったから、さあ大変! この“奇蹟”で人々が押し寄せ、会は浮足立つが…。奇跡に懐疑的な修道士(シャルル・ボワイエ)と医師の心理的攻防、脊髄損傷で歩けなくなった少女の葛藤が物語を駆動する。『丘の雷鳴』と並ぶ修道会もので、皮肉屋の教区司祭を演じるウィリアム・デマレスト、少女役のバーバラ・ラッシュが素晴らしい演技を見せる。
『丘の雷鳴』 Thunder on the Hill
(アメリカ/1951/85分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:シャーロット・ヘイスティングズ
脚本:オスカー・ソウル、アンドリュー・ソルト
撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ 音楽:ハンス・J・サルター
出演:クローデット・コルベール、アン・ブライス、ロバート・ダグラス、アン・クロフォード
洪水を逃れて丘の上の修道院兼病院に避難した村人たち。そこへ死刑囚の若い女性がやってくるが…。彼女の無罪を信じる修道女(クローデット・コルベール)が、周囲に反対されながら事件の真相を探る。訳あり修道女が大活躍する女性映画。コルベールの唯一の味方の料理番修道女がいい味を出している。修道院のセットも凄い!
『ステキなパパの作り方』 Week-End with Father
(アメリカ/1951/84分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 脚本:ジョージ・W・ジョージ、ジョセフ・ホフマン、ジョージ・F・スレイヴィン
撮影:クリフォード・スタイン 音楽:フランク・スキナー
出演:ヴァン・ヘフリン、パトリシア・ニール、ジジ・ペルー、ジャニーン・ペロー
男の子2人を持つ未亡人と、女の子2人を持つやもめが、キャンプに出掛ける子どもを見送りに行き…。鬼ならぬ子どもの居ぬ間に熱烈な恋に落ちた2人の運命は如何に!? 真面目なヴァン・ヘフリンがとにかくヒドイ目に合う爆笑コメディ。生意気で難しい年ごろの子どもたちと犬たちの活躍も見もの!
『突然の花婿』 No Room for the Groom
(アメリカ/1951/82分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:ダーウィン・L・テイルヘット
脚本:ジョセフ・ホフマン
撮影:クリフォード・スタイン 音楽:フランク・スキナー
出演:トニー・カーティス、パイパー・ローリー、ドン・デフォー、スプリング・バイイントン
従軍前にベガスでスピード婚したパイパー・ローリーとトニー・カーティス。初夜に水疱瘡になったカーティスが「今度こそ」と意気込んで家に帰ると…。ローリーを操る母と15人の居候のせいで居場所がない夫。全員がカップルを邪魔しまくり、物事は中断しまくる。毒親と拝金主義という今日的テーマをはらみつつ、快調なテンポと動きでみせる新婚コメディ。
『僕の彼女はどこ?』 Has Anybody Seen My Gal?
(アメリカ/1952/89分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原案:エレナ・ホグマン・ポーター
脚本:ジョセフ・ホフマン
撮影:クリフォード・スタイン 音楽:ハーマン・スタイン
出演:パイパー・ローリー、ロック・ハドソン、チャールズ・コバーン、ジジ・ペルー
お洒落なイラストとテーマ曲で始まるコメディ。若き日に愛した女性の遺族に財産を残すかどうか迷う大富豪は、素性を隠して一家に下宿するが…。つつましく生活する一家は金で幸せになれるのか?というテーマを説教臭くなく軽快に描く。ドラッグ・ストアでの突然のミュージカル・シーンや、客として現れる未来の大スターにも注目!
*画質が良好ではありません。ご了承の上ご鑑賞ください。
『僕と祭りで会わないかい?』 Meet Me at the Fair
(アメリカ/1953/88分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:ジーン・マーキー
脚本:マーティン・バークレイ、アーヴィング・ウォーレス
撮影:モーリー・ガーツマン
出演:ダン・デイリー、ダイアナ・リン、チェット・アレン、スキャットマン・クローザース
インチキ精力剤を売り歩くドクが偶然助けたのは孤児院から脱走してきた少年と犬だった。孤児院のための資金を選挙資金に流用する政治家と地方検事は、劣悪な孤児院の実情を知られまいと汚い手を使うが…。ドクと相棒のイーノック、ドクに惚れているクラブの歌姫、地方検事の婚約者。彼らは悪徳政治家から少年を守れるか!? 大人も子供も歌う痛快コメディ。
『私を町まで連れてって』 Take Me to Town
(アメリカ/1953/78分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 脚本:リチャード・モリス
撮影:ラッセル・メティ 音楽:ジョセフ・ガーシェンソン
出演:アン・シェリダン、スターリング・ヘイドン、フィリップ・リード、リー・パトリック
無実の罪を着せられた歌手のアン・シェリダンが、腐れ縁の男と保安官から逃げて舞台に復帰する。一方、寡の父の花嫁探しをする3人兄弟が彼女を見初める。この2つが平行して猛スピードで展開する胸のすくようなコメディ。シェリダンが教会建設のために興行をうっている最中に起こる捕物アクションの素晴らしさ。悪人は常に高いところに登り落下するのだ!
『わが望みのすべて』 All I Desire
(アメリカ/1953/80分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:キャロル・ブリング
脚本:ジェームズ・ガン、ロバート・ブリーズ
撮影:カール・ガスリー 音楽:デヴィッド・M・リーバーマン
出演:バーバラ・スタンウィック、リチャード・カールソン、ライル・ベトガー、マーシャ・ハンダーソン
“家庭を顧みないタレントママ像”をバーバラ・スタンウィックが熟演! 鏡や窓などを使ったきめ細やかさ&エモーショナルなサークの演出によって、繊細かつダイレクトに感情を揺さぶってくる。多くの登場人物と複雑な人間関係を80分でさばいてしまう50年代ハリウッドの底力が凄い。
『アパッチの怒り』 Taza, Son of Cochise
(アメリカ/1954/79分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:ジェラルド・D・アダムズ
脚本:ジョージ・ザッカーマン 撮影:ラッセル・メティ
音楽:フランク・スキナー、ハンス・J・サルター
出演:ロック・ハドソン、バーバラ・ラッシュ、グレッグ・パーマー、バート・ロバーツ、モリス・アンクラム
先住民を主人公にしたサーク唯一の西部劇。白人共存派のアパッチ族のターザ(何とロック・ハドソン)と徹底抗戦派の弟は、同じ女性をめぐって対立するが…。掟を破る同胞を自ら罰するため、騎馬隊の制服まで着るターザにびっくり。居住区に定住し農耕を営むことは民族としての敗北なのか!? 今も連綿と続くアイデンティティをテーマにしている。
『心のともしび』 Magnificent Obsession
(アメリカ/1954/108分) ユニヴァーサル
監督:ダグラス・サーク 原作:ロイド・C・ダグラス
脚本:ロバート・ブリーズ、サラ・Y・メイソン、ヴィクター・ヒアマン
撮影:ラッセル・メティ 音楽:フランク・スキナー
出演:ジェーン・ワイマン、ロック・ハドソン、バーバラ・ラッシュ、アグネス・ムーアヘッド、オットー・クルーガー
ご都合主義すぎる展開でラストまで突っ走る「おぞましく狂ったストーリー」(サーク談)。それを音楽と色彩と陰影によって「夫の命を奪った男を許し愛することはできるのか」というテーマの圧倒的メロドラマに仕上げるサークの剛腕演出が凄い。希望を失ったワイマンが手探りで室内を彷徨い死を考えた瞬間、扉が開きハドソンが駆け寄り抱きしめる!
4月26日(土)講座 井上正昭(翻訳・映画研究) 参加無料(要当日の映画半券)
*全作品デジタル上映
《料金》 1本あたり(当日2本目以降は100円割引)
一般:1300円 シニア(65歳以上)・障害者:1100円 ユース(25歳以下):700円 会員:1000円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039
協力:ダッサイ・フィルムズ、井上正昭