神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2025年9月14日(日)・15日(月・祝)

[貸館]柳澤壽男特集上映会〜雲からエネルギーをとれ

『風とゆききし』撮影中 柳澤壽男(左)

 

障害のある人々とカメラで向き合い、共に「福祉」をジッケンしつづけた柳澤壽男監督の「福祉映画5部作」を一挙上映します。
土本典昭、小川紳介と並ぶ「映画作家」として近年再評価が進む柳澤壽男のこれらの記録映画は、戦後の障害者の収容/自立をめぐる歴史と共鳴しあう歴史的価値の高い作品でもあります。劇映画、PR映画、記録映画とキャリアを重ね、それらの技法を熟知した柳澤は、いかにドキュメンタリー映画をもって発展させていったのでしょうか。
未ソフト化の4作品を含めたこの貴重な機会をお見逃しなく!

 

 

『夜明け前の子どもたち』
(1968/120分/16mm)
1963年に開設された滋賀県野洲町の重症心身障害児療育施設「びわこ学園」。手探りの養育が始まったばかりの学園には、元気で無邪気な子どもたちと、彼らを支えるために苦悩し格闘する職員たちの姿があった。 医療と教育の両面から子どもたちに働きかけようという「びわこ学園」の試みの記録で、障害者の記録映画に取り組んだ柳澤監督の原点ともいえる作品。亀井文夫監督『戦ふ兵隊』や羽田澄子監督『薄墨の桜』などの名カメラマン瀬川順一による被写体の生き生きとした描写とともに、それまでのPR映画には見られない柳澤演出の初々しさが感じられる。

 

 

 

 

『ぼくのなかの夜と朝』
(1971/100分/16mm DVD上映)
仙台市にある国立療養所西多賀病院(現・独立行政法人国立病院機構西多賀病院)は1947年に結核療養所として開設され、進行性筋萎縮症(筋ジストロフィー)の治療を全国に先駆けて取り組んできたことでも知られる。この映画は1969年の秋から1970年の春にかけ、西多賀病院のベッドスクールで生活する130人の筋ジストロフィーに冒された子供たちを記録したものである。病弱児童による詩を字幕で挿入しながら、不治の病に冒された子供たちの生きる意味や学ぶ意味を映画を通して考える。

 

 

 

『甘えることは許されない』
(1975/105分/16mm DVD上映)
1966年に開園した仙台市の重度身体障害者収容授産施設・西多賀ワークキャンパス。ワークキャンパスとは「働きながら学ぶ園」の意味を持ち、障害者が就労を柱にしつつ充実した生活の場を築くところで、この映画は1973年10月から1975 年5月にかけて撮影された。柳澤やスタッフは車椅子や松葉杖を頼りに働く人たちとともに、ひたすらに「働くとは一体どういうことか」を考えながら記録した。働くことに生き甲斐を見いだす障害者たちの姿を通し、私たちはもっと深く障害を受けている人の身になって物事を考えるように力を尽くさなければならないと実感する。

 

 

『そっちやない、こっちや コミュニティケアへの道』
(1982/113分/16mm)
愛知県知多市の療育グループの記録で、障害者にとってのコミュニティ・ケア=地域福祉とは何かを考える。知的な発達に障害のある方の家族の会「知多市手をつなぐ親の会」などの協力の下、成人となった知的障害者とその親たちの交流、指導員たちと一緒に考え設計した「家」づくりの困難、借り受けた宿舎を改造し共同作業所「ポパイノイエ」と名付けるコミュニティを完成させる様子などを丹念に記録する。「撮りながら考え、考えながら撮る」原則を貫いて人々を感動させるドキュメンタリーを2年の歳月をかけて完成した。山路ふみ子文化財団福祉映画賞受賞。

 

『風とゆききし』
(1989/154分/DVD上映)
盛岡市民福祉バンクは1975年にリサイクルと在宅福祉をドッキングさせた障害者福祉運動を開始し、1979年に財団法人化、1981年に盛岡市浅岸に付属農場いきいき牧場を開設して農耕型の福祉活動を始める。この牧場を中心に4年がかりで撮影した柳澤監督最後のドキュメンタリー映画。身障者がより自由に生き生きと生きるにはどうすればいいのか、福祉バンクの職員、所員、ボランティア、そして障害者の日常からさまざまな問題点が浮かび上がってくる。日本映画ペンクラブ推薦優秀作品。

 

 

主催:京都大学映画メディア合同研究室
協力:神戸映画資料館

《参加費》 無料(要予約)
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