神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

2022年3月19日(土)〜21日(月・祝)

アレクサンダー・クルーゲ小特集2022

作家主義的な技法、モンタージュ原理、記録とフィクションの混淆、これらはアレクサンダー・クルーゲの幅広い創作活動において一貫した特徴である。1966年から85年にかけて14本の長編映画と約30本の短編映画を発表したクルーゲは、その手法をそのまま新しい創作フィールドであるテレビ番組制作に持ち込んだ。今回の小特集はメディアの移行期を挟んでクルーゲの唯一無二の映像作家活動に迫るプログラムである。とりわけテレビオムニバス『サーペンタイン・ギャラリープログラム』での知的好奇心と若々しい諧謔精神の横溢する諸作に注目してほしい。
渋谷哲也(企画協力/ドイツ映画研究)

 

「危急の際に中道は死」
In Gefahr und größter Not bringt der Mittelweg den Tod
(1974/86分/ブルーレイ)
監督:アレクサンダー・クルーゲ、エドガー・ライツ
撮影:ギュンター・ヘルマン、アルフレート・ヒュルマー、エドガー・ライツ
出演:ダグマー・ベッダーリヒ、ユッタ・ヴィンケルマン、アルフレート・エーデル

金融都市フランクフルトの迷宮に入り込んだ二人の女。一人は男と同衾して金を奪う泥棒、もう一人は西側の生活を探る東ドイツのスパイ。折しも住居不法占拠の若者と警察の抗争が繰り広げられていた。記録映像とフィクションから時代の表情を大胆に切り取った野心作。ニュージャーマンシネマの第一世代を代表するクルーゲとライツの共同監督作品。

 

©Alexander Kluge

「盲目の映画監督」
Der Angriff der Gegenwart auf die übrige Zeit
(1985/113分/ブルーレイ)
監督:アレクサンダー・クルーゲ
撮影:ヴェルナー・リュリング、トーマス・マウフ
出演:ユッタ・ホフマン、アルミン・ミューラー=シュタール、ハンス・ミヒャエル・レーベルク

「時間」と「映画」に関わるエピソードを緩やかな連関でつなぎ合わせたユニークなエッセイ映画。フィルムを第二次大戦の破壊から守ろうとするスタジオ管理人夫婦、休暇中に閑職に追いやられる女性医師、視力を失いつつある映画監督によるオペラ映画の製作。クルーゲは本作の監督した後、劇場映画から離れてテレビ番組制作に向かう。

 

「サーペンタイン・ギャラリー・プログラム」
(1995-2005/100分/ブルーレイ)
監督:アレクサンダー・クルーゲ
出演:ペーター・ベルリング、アレクサンドラ・フォン・デア・ヴェート

クルーゲが所有するテレビチャンネルdctpの文化番組をギャラリーイベント用に組み合わせたオムニバス。ミニチュア映画、フェイクインタビュー、クルーゲ本人による朗読と字幕を組み合わせたコラム映画、ある人物の数奇な運命噺、オペラ『ノルマ』1幕フィナーレの紹介など、テレビドキュメンタリー・古典映画・文学のエッセンスが絶妙に配合される。

 

3月21日(月・祝) 参加無料
レクチャー 講師:渋谷哲也(ドイツ映画研究/日本大学文理学部教授)

 

アレクサンダー・クルーゲ Alexander Kluge
1932年生まれ。第二次大戦の空襲を生き延び、大学で法学・歴史学・教会音楽を学ぶ。弁護士となり、その後作家活動を始める。アドルノの仲介でフリッツ・ラング監督『大いなる神秘』の撮影に加わる。60年、ペーター・シャモニと短編『石の獣性』を共同監督。62年「オーバーハウゼン宣言」の起草者となる。以後新しいドイツ映画の基盤を作るため、公的映画助成や映画高等教育機関の開設を主導した。66年、初長編『昨日からの別れ』でヴェネツィア映画祭銀獅子賞、続く長編第二作『サーカス小屋の芸人たち 処置なし』で同映画祭金獅子賞を受賞。78年様々な監督たちに呼びかけてオムニバス『秋のドイツ』を制作した。
映画理論家として「映画とユートピア」(64年)、「言葉と映像」(共著、65年)などを発表。また、小説家として「履歴書」でベルリン芸術賞を受賞。72年には、社会思想家としての主著「公共性と経験」(共著)を発表。
1987年からテレビの文化番組を制作し、友人だった劇作家ハイナー・ミュラーをはじめ様々な芸術家や文化人のインタビューを行った。
近年はファン・デ・ラ・クルス監督と共作で再び劇場映画『ハッピー・ラメント』(2018)、『オルフェア』(2020)を発表している。

 

《料金》*入替制 *レクチャー無料
一般:1000円 ユース(25歳以下):900円
会員/ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都受講生:900円
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

特別協力:Alexander Kluge、ゲーテ・インスティトゥート大阪・京都
協力:アテネ・フランセ文化センター、同志社大学今出川校地学生支援課
企画協力・解説:渋谷哲也

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