神戸映画資料館

PROGRAM プログラム

11月25日(金)〜27日(日)

布村建ともうひとつの東映映画

昭和の子供たちへ 夢を映し出すフィルムがあった!!

東映教育映画にその人ありといわれた布村建(ぬのむら・たつる)さんが本年1月2日に亡くなった(享年85)。プロデューサー、ディレクター、また著述家としても活躍、知る人ぞ知る特別な足跡を遺した。少年の日に見た児童向教育映画の感動から教育映画部を所属先に選び、多くの名作、佳作を企画・製作、演出。戦後日本映画史を駆け抜けた、その軌跡と全貌を検証・研究する。
鈴木義昭(企画協力/映画史家)

 

布村建傑作選① 自然観察の世界1
「鳥のからだ」(1965/20分)企画:布村建 監督:近藤正弥 脚本:布村建 撮影:砂川徹
「みんながねているあいだも」(1965/15分)企画:布村建 監督・脚本:大西竹二郎 撮影:村山和雄
「うさぎの観察」(1968/16分)企画:布村建 監督:近藤正弥 脚本:布村建 撮影:川尾俊昭
「なつの田やはたけのむし」(1967/11分)企画:布村建 監督:布村建 脚本:中山周平 撮影:中根洋
「地球の科学-地震はなぜおきるのか」(1972/19分)企画:布村建、神英彦 監督:近藤正弥 脚本:近藤正弥 撮影:中根洋

ジョン・フォード、小津安二郎が神様だった映画少年は、自然観察の分野に腕を振るう。「趣味的には自然科学。子ども番組のシリーズを入れると担当作、およそ二百本」。その中から本館所蔵の布村作品を時代順に。脚本を書いた『鳥のからだ』『うさぎの観察』、監督作『なつの田やはたけのむし』。今日も興味の尽きない『地震はなぜおきるのか』など。

 

布村建傑作選② 生きものの記録
「ニホンザル-その群れと生活」(1969/35分)企画:布村建、神英彦 監督:酒井修 脚本:酒井修 撮影:村山和雄 ※ドレスデン映画祭、芸術祭入賞、文部大臣賞受賞
「昆虫記の世界-カリバチの習性と本能」(1976/29分)企画:布村建 監督:布村建、川崎龍彦 脚本:布村建、川崎龍彦 撮影:川崎龍彦、中根洋 ※科学技術映画祭入選、短編映画100選、文部大臣賞受賞

キネマ旬報文化映画ベストテン第3位『ニホンザル-その群れと生活』は、野生ニホンザルの興味深い生態から人間の心理や文化、社会の根源をさぐる。やはりキネマ旬報文化映画第3位『昆虫記の世界』は、ファーブルの昆虫記で特に興味深い獲物をとるカリバチの生態を記録する。川崎龍彦と共同監督で、教育映画祭最優秀作品賞ほか受賞多数。

 

布村建傑作選③ 自然観察の世界2
「川原のようすと水の流れ」(1972/16分)企画:布村建 監督:吉田嗣郎 脚本:吉田嗣郎 撮影:吉田嗣郎 ※教育映画祭最優秀作品賞、文部大臣賞受賞
「自然界のつりあい-動物の数は何で決まるか」(1972/24分)企画:布村建 監督:川崎龍彦 脚本:布村建 撮影:川崎龍彦 ※文部大臣賞受賞
「水中の小さな生物たち-一匹を支える一兆」(1975/20分)企画:布村建 監督:細見吉夫 脚本:細見吉夫 撮影:川崎龍彦

『川原のようすと水の流れ』は、上流から河口まで流れや様子の違いを空撮を交え、また野外、屋内の実験と観察で立証する。演出、監督、撮影は布村とコンビワークも多い吉田嗣郎。2007年に山形国際ドキュメンタリー映画祭でも上映された『自然界のつりあい』は、アメリカシロヒトリを材料に卵の何%が成虫になるかを克明に追跡。

 

東映教育映画名作選① 豊田敬太作品集
「九十九里浜の子供たち」(1956/32分)ドキュメント映画 企画:赤川孝一 監督:豊田敬太 脚本:岩佐氏寿 撮影:浦島進
「おかあさんの耳は買えない」(1959/35分)劇映画 企画:赤川孝一、栗山富郎 監督:豊田敬太 脚本:古川良範 撮影:赤川博臣 出演:不忍郷子、石矢博、佐野布美子、川上夏代ほか

日活京都撮影所の俳優、新興キネマ、理研科学映画を経て、赤川孝一の招きで東映教育映画と契約した豊田敬太は、長欠児童のドキュメンと『九十九里浜の子供たち』などで東映教育映画の基礎を築いた。布村が東映入社した年の『おかあさんの耳は買えない』は児童劇映画の傑作。「戦後間もない頃、映画は児童文化の一翼を担っていた」。

 

東映教育映画名作選② 関川秀雄作品集
「野口英世の少年時代」(1956/49分)製作:大川博 監督:関川秀雄 脚本:片岡薫 撮影:北山年 出演:大源寺英介、岸輝子、原保美ほか
「友情物語」(1957/50分)監督:関川秀雄 脚本:大島善助 撮影:仲沢半次郎 出演:福原秀雄、三好久子、富田浩太郎、東京都墨田区立小学校生徒ほか

ハリウッド活劇ばかり観ていた布村少年が、『ターザンの逆襲』と二本立てで観て新鮮に感じた『野口英世の少年時代』は、東宝争議レッドパージから東映に転じた関川秀雄が東映教育で撮った児童劇映画の名作。伊福部昭の音楽も重厚な『友情物語』は、鉄道員や警察官など関川作品の重要要素も盛り込み、東京下町の戦後を映し出す。


特別招待作品
「オサムの朝」(1999/106分)劇映画 監督:梶間俊一 原作:森詠 撮影:阪本善尚 美術:桑名忠之 製作協力:東映東京撮影所 配給:シネカノン
出演:中村雅俊、森脇史登(少年時代)、手塚理美、榎木孝明、原田龍二、石田ひかり、原日出子、石橋蓮司ほか

東映東京撮影所仲間である梶間俊一が「ノスタルジックな少年ものを作る」のは「同世代に属する私にとっても人生の加齢を考えさせるニュース」と書いた。激動の戦後映画を生きる仲間への連帯と友情を忘れなかった布村らしい。少年時代の夢を胸に映像を撮り続けた布村が絶賛した「少年映画」の傑作を通し時代と表現を考える。

 

参考上映 無料(要当日鑑賞チケット半券)
「春らんまん結婚記」(1987/56分)劇映画 企画:福岡県 監督:内藤誠 脚本:桂千穂 作画監督:矢吹公郎 出演:志水季里子、森篤夫、山本奈津子、山本紀彦、垂水悟郎、岩本多代、丘さとみ、十勝花子ほか

『不良番長』『番格ロック』などで知られる内藤誠監督は、布村建プロデュースで3本の東映教育作品を演出した。本作は福岡県企画による被差別問題人権啓発喜劇で隠れた名作といわれる。脚本は日活ロマンポルノや大林宜彦作品の桂千穂。志水季里子、山本奈津子ら日活系、東映京都の丘さとみらの出演、矢吹公郎のアニメも見どころ。

 

トークと上映「もうひとつの東映映画史 布村建追悼」
「はだしのジョゼ」(1978/40分)劇映画 監督・脚本:内藤誠 原案:初瀬隼人 撮影:大山年治 助監督:崔洋一 出演:ビクトール・マヌエル・マリーニャ、我妻光弘、植木まり子、岩本多代、太和屋竺ほか

『オサムの朝』美術の桑名忠之は、「花の八期生」で布村建とは東映同期生。同じく八期(1959年)入社内藤誠監督の『はだしのジョゼ』は教育映画製作開始20周年記念募集プロット入選作、混血サッカー少年と内気な少年の交流を描く。1970年東京撮影所入所の梶間俊一監督とともに、ブレない民主派布村建の軌跡と少年映画について回想する。
トーク 梶間俊一(映画監督) × 鈴木義昭(映画史家)

 

 

《料金》
一般:1200円 ユース(25歳以下):700円 会員:1000円
《割引》当日2プロ目は200円引き
予約受付
メールと電話によるご予約を承ります。鑑賞を希望される日時と作品名、お名前、電話番号をお知らせください。予約で満席でなければ、当日に予約無しでもご入場いただけます。
info@kobe-eiga.net 078-754-8039

協力:東映株式会社 教育映像部、梶間俊一
企画協力・解説:鈴木義昭
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

PageTop